「うわっ、すっげえ~!!」の原点へ Jリーグ開幕、期待膨らむハイライト

川端暁彦

新しい風の予兆は常にある

新国立には歴代3位の観衆が詰め掛けた 【Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images】

 この試合に限定しての特記事項があるとすれば、「数」かもしれない。

 52,142人。

 新国立競技場に集まった人数は、スーパーカップで歴代3位の数字だという。1位は1995年、旧国立競技場で行われた「ヴェルディ川崎vsベルマーレ平塚(※)」の53,167人。過去最高水準の記録となった(ちなみに2位は、埼玉スタジアムで開催された2019年の「川崎フロンターレvs浦和レッズ」)。

 一方、この満員のスタジアムで実際に取材しながら、最も深く印象に残ったのは、試合の場面ではなかったりもする。

 新国立は記者が記者席へ向かう導線と、観客がメインスタンド上段へと向かう導線がバッティングしている構造で、たまたまスタンドに出るべく歩いていたときのことだった。前を行く小さな男の子がスタンドを見渡し、こんなシンプルな言葉を残した。

「うわっ、すっげえ~!!」

 これが個人的ハイライトシーンだった。

 大きなスタジアムに観衆が詰め掛け、熱を持って見守り、声を出す光景。それ自体が一つのエンターテインメントなのだという当たり前のことを、感動した様子の少年の様子から再確認させてもらう形となった。

 おそらく、2月23日のエディオンピースウイング広島でも同様の光景があちこちで見られるはずだし、たとえ新設でないスタジアムであっても、開幕という機会は各クラブが動員に力を入れることもあり、やはりフレッシュな“お客さん”の割合がかなり増える。絶対に、この日の少年のような子がいるのだ。

 関係者やファンの口からも「閉じコン」と自虐的に言われるようになって久しいJリーグだが、実際は“一見さん”も別に珍しいわけではない。彼らの抱く「うわっ、すっげえ~!!」を増幅するような、あるいはそうした感情から少し遠ざかってしまったファンの心に火を入れるような、そんな熱い試合が続々と展開されていくことを、強く期待している。

※当時の呼称

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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