“女帝”ブル中野が沈黙を破り表舞台に登場!=kamipro発

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ブル中野が沈黙を破り表舞台に久々登場、1993年のプロレスを語る! 【kamipro】

 『1976年のアントニオ猪木』著者の柳澤健氏による好評連載『1993年の女子プロレス』。
 今回登場するのは“ブル様”ことブル中野だ。97年に現役を引退しプロゴルファーを目指してからは、ダイエット本の出版や専門誌等に何度か登場したのみで、ここ数年は、マスコミはもちろん、一部の関係者としか連絡を取っていなかったというブル様が、今回、沈黙を破り表舞台にひさびさに登場! たっぷりと“プロレス”を語ります!!

――今回のインタビューは「1993年の女子プロレス」、つまり、いわゆる団体対抗戦に至るまでの状況を中心にお聞きしたいと思っています。
 ただ、団体対抗戦以前に、ブル様には、世代交代の波が押し寄せているわけで、「普通はここで引退でしょう」というタイミングが何度もあったと思うんです。


ブル 普通だったら何回もやめてますよね(笑)。

――下から上がってくる若いヒールもいるわけですし。当然、肩叩きしてきた人も山ほどいたと思うんですけど?

ブル 肩、痛かったですよ(笑)。

極悪同盟の全盛は去り、時代は着実に動いていた…… 【kamipro】

──アハハハハ! 肩叩きされてしまったブル様が、どのようにしてアジャ・コングとバイソン木村のジャングルジャックに行ってしまった流れを引き戻そうとしたのか。その点に非常に興味があります。
 ジャングルジャックがユニバーサルプロレスに参戦したことによって、全女の会場には、これまで少なかった男性ファンが、目に見えて増えてきたわけですよね。男性ファンはもちろんジャングルジャックを応援したでしょう。


ブル そうですね。でも、お客さんが来て自分の試合を観てもらえば「あれ?(ほかの選手とは違うぞ)」と思わせる自信があったんで。アジャやバイソンたちに人気があっても、一時的に男性のお客さんを連れて来てるだけと思ってましたから。来た客は全部こっちがもらおう、と。

――さすが! 「いい試合を見せて、男の客は私がもらっていくよ」と思っていた、ということですね。

ブル はい。その頃の私は、アジャの身体を使ってお客さんと話をしていたし、闘っていたと思うんです。

――アジャの身体を使って、客と話をする! 凄いですねぇ。90年8月には、後楽園ホールでブル中野&グリズリー岩本vs.アジャ&バイソンのジャングルジャックという試合がありました。アジャ様は「凄い試合だった」と振り返っていましたが、追われる立場のブル様から見て、上り調子のジャングルジャックと闘ったあのタッグマッチはどういう試合だったんでしょうか?

ブル あの試合はお客さんにウケたんですね。「私はアジャとはまったく違う道で行くから、そっちもその道で行けよ」と、そういう思いが伝えられた試合だったんじゃないでしょうか。

――自分が思ったことはできた?

ブル あの試合で初めてリングの中で泣いたんですよ。本気で。ビデオに映っちゃってるんですけど(苦笑)。

――どういう感情がこみ上げてきたんですか?

ブル 全部でしたね。寂しいとか悔しいとか。「アジャはホントに別の道を行くんだな……。これが一番いいんだよな」と。でも「まだ負けるわけにはいかないよ」という思いも当然ありましたし。

アジャとの連日のシバキ合いで「相手の気持ちがわかってきちゃう」と振り返るブル様 【kamipro】

――たしか、あの試合ではグリズリーがバイソンにフォールされて、ジャングルジャックがブル様とグリズリーをペアとして超えていく、という図式でした。「悔しいけど、私は負けないよ」という思いだったんでしょうか?

ブル いえ、そういう感じはまったくなかったですね。グリズリーやバイソンはまったく関係なくて、アジャとの対立をこれからやっていくんだな、と。「いままでのことはなしね」という。

――「いままでのこと」というのは、精神的な繋がりということでしょうか?

ブル すべて。極悪同盟からやってきたこととか、すべてをなしにしてここからホントに憎み合っていくんだな……っていう。

――アジャ様はブル様と闘うとき「最初の頃は怖いし、痛いし……。ホントに殺してやろうと思っていた」とおっしゃっていました。でも、時が経つにつれて、だんだん変わっていった、と。あれほど危険で激しい試合をしているのに、凄く痛いことをやり続けながら、「あなたを超えたいんです!」とアジャ様は訴え、「まだそういうわけにはいかない。そんなことされちゃ、私は困るんだよ!」とブル様は返していた、と。「お互いが言葉ではなく、技で会話をしていた」と言っていました。ブル様も同じでしたか?

ブル そうでしたね。最初はやっぱり、お互いに凄い思いや葛藤があったと思うんです。そこまで行き着いちゃうと、今度は相手の気持ちがわかってきちゃうんです。だって、毎日痛いじゃないですか。

──そりゃあ、痛いでしょう!(笑)。

ブル 「きっとあっちも痛えんだろうな……」って(笑)。試合をしててわかるんですよ。

――アハハハハハ!

ブル そのうち、「あ、こいつ調子悪いんじゃないか?」とか、心配したりとか。それぐらいわかっちゃうんですよ。ほとんど毎日試合をしていたので。

――毎日のようにアジャ様とぶつかっていたんですか!?

ブル 金網の前なんて、一カ月ぐらい毎日ずっと試合が組まれてましたね。

――そんなにやってたんですか!

ブル お互いに大きかったので、扱い方がまだわからないんですよね。それまではベビーフェイスの細いコたちを相手にしてたから。今度は同じぐらいの体型をどう相手にしていいか全然わからなくて。でも、会社もそれをわかっていたんで毎日当てていたんだと思います。

――大型の女子選手同士が対戦するためのトレーニングみたいな感じですか?

ブル そういう感じだったと思います。

──なるほど! ヒール同士が闘うことがなかったわけですものね。その後、大一番の金網デスマッチとなるわけですが、アジャ様と心の交流ができるようになったのは金網マッチの後なんですか。それとも、それ以前からなんですか?

ブル どうだろう? 2回目の金網で決定的になっていったんですかね。

――個人的には、2度目の金網マッチを経て、ブル様は突き抜けてしまって「この人は神様になってしまった」と思ったんですよ。

ブル ありがとうございます(微笑)。

──40年以上ある女子プロレスの歴史上、最高の瞬間はあの金網からのギロチンだと僕は思っています。『週プロ』の表紙にもなりましたし。

ブル 次の週はくどめ(工藤めぐみ)が両ヒジつけて目をつぶった表紙でしたけど(笑)。

──アハハハハ!(※実際、くどめが表紙になったのは翌年)。金網のときの話を聞かせてください。ブル様が金網の上に立ったときのことを、アジャ様に聞いたんですよ。「どんな気持ちで下にいたんですか?」と。

ブル はい。なんて言ってました?

――「ああ、この人は普段どおり、あの高いところからでも、普通に落ちてくるんだろうな」と思っていたそうです。

ブル あ、そうなんですか。

――「凄えな! やっぱりこの人には勝てねえよ」とも言っていました。

ブル そうですか(微笑)。

――僕はそれを聞いて、ゾクゾクしたんですね。次の質問はもうおわかりだと思います。金網の最上段に上がってどうだったんですか。練習なんかしたことないわけですよね?

ブル ないです(笑)。金網自体が組めなかったんで、試合でやったのが初めてですね。

女子プロレス史に残る屈指の名シーン、金網上からのギロチンにまつわる秘話とは!? 【kamipro】

――自伝の『金網の青春』を読み返してみると、試合の前に「『そうだ! 私、金網から飛び降りればいいんだ』、『あそこからギロチンをやればいい』と思って、その日はグッスリ寝た」って凄く簡単に書いてあったんですよ。僕からしてみたら、どうしてそれでグッスリ寝られるんだろう、と……(苦笑)。僕には理解できないです。おかしいです!

ブル あそこから飛び降りてギロチンをしたら、お客さんは絶対に納得するだろうな、と。

――そりゃしますよ!

ブル 「あ、これで私は(初戦の)借りが返せる」と思ったんです。前の金網のとき、「金返せ!」って言われたんで。

──一戦目は、ユニバーサルつながりで、外道(※当時・ブルドッグKT)さんがレフェリーをすることになり、アジャ様に有利なレフェリングをして、不透明決着になったんですよね。

ブル そうです。「金返せ!」と言われたことが頭にあったんで、お客さんにどうやってでも「参った!」って言わせなかったら私の負けだな、と。それで「あ、金網からギロチンやればいいんだ」って思いついて。これだったら「もういいよ」とお客さんが納得してくれる答えが見つかったなって。「よかった……。もうこれで寝られる」と思ったんですね。

――それまでは寝られない日もあったんですか?

ブル ありましたね。試合の前まではアジャの写真を家のあっちこっちに貼ってたんですよ。トイレの中にも貼ったし。

──え〜、そんなことをしてたんですか(笑)。

ブル もう、ずっとアジャのことしか考えてなかったですね。「ホント、好きなんじゃないか?」「付き合ってるんじゃないか?」って思うぐらい(笑)。

――アハハハハハ!

ブル それぐらい金網の試合のことをずっと考えてましたね。「どうするか? 何するか?」って。

――それくらい最初の金網マッチの「金返せ!」コールが許せなかった、と?

ブル それがすべてですね。お客さんに対してホントに申し訳ないな、と……。初めての経験だったんですね。どんな会場でも「お客さんに満足してもらう」と思って試合をしていたのが、「金返せ!」コールが起こったときは、もうどうしていいかわからなくて……。

――「飛び降りるのが怖い……」とか、そういうものが吹き飛ぶくらいの屈辱だったんですね。

ブル そうですね。とにかくもう、絶対にお客さんを納得させて「参った!」って言わせなかったら、「私はもう辞めるしかないな……」と思ってましたから。

──そこまで思い詰めていたんですか。

ブル 金網から飛び降りたとき、「背骨が突き抜けて死ぬかもしれないけど、まあいいや」って感じで。だから、下のアジャがどうかとか考えてなかったです。……いま考えたら申し訳ないですけど(笑)。

――そのときはそれどころではなかった、と。実際に金網の上に立って、飛び降りる直前、合掌ポーズを決めていましたけど、そのあとに、一瞬、よろけて落ちそうになりましたよね。

伊藤薫 あのとき、私は反対側でアジャ様のセコンドに付いてたんですけど、「うわっ、絶対に落ちる!」と思いましたね。

――あの場面、ビデオとかで何度観ても「うわっ……!」って思いますよ。ご自身は「やべぇ」とかって感じだったんですか?

ブル これ言っちゃっていいんですかね?

──えっ、どういうことですか?

ブル いや、全部計算なんですよ。

――え〜〜〜っ、ウソ!?

伊藤薫 中野さん、そこは言わないほうがいいんじゃないですか(笑)。

――いや、全然大丈夫ですよ! そこが凄いんですから!

ブル ただ、拝んだのは計算じゃなかったですよ。

――「ちょっと後ろにグラッってやれば、客が沸くかな?」と考えてやったんですか?

ブル ですね。金網の上に立ったら、グラッっていうのはやってみようかなって思ってましたね。

――ス、スゲェ……。

※このあとも、いまだから語れる女子プロレスの驚愕のエピソードがてんこ盛り! 女子プロレス界で一時代を築いた偉大なるプロレスラー・ブル中野のロングインタビューは『kamipro』でしか読めません! マジだぜ!!

【09年9月29日/都内・某所にて収録】
(聞き手/柳澤健 試合写真/平工幸雄)

【kamipro】

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独占スペシャル対談
石井慧×亀田興毅

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小林まこと インタビュー
「石井は吉田vs.ホイス戦の衝撃を上回らなきゃダメ」

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國保尊弘ワールドビクトリーロード取締役
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青木真也インタビュー
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