日本企業のDXは
成果が求められるフェーズに突入
「DX」はもはやバズワードではなくなり、多くの日本企業にとって“自分事”となっているようです。まずは、日本企業のDXの現状について聞かせてもらえますか。
PwCコンサルティングが、大企業を含む日本企業の幹部社員約1100人を対象に実施した「日本企業のDX推進実態調査2022」によると、自社が「経営戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」という回答は59%に達しています。すでに日本企業の約3分の2は、「全社DX」が経営における重要なアジェンダであると認識していることが分かります。
DXの取り組み状況
59%が「経営戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答。
日本では、「全社DX」が経営における重要なアジェンダとして一般化している
また、DXによって「十分な成果が出ている」という回答は10%ですが、「何らかの成果が出ている」という回答と合わせると63%に達しており、単なる掛け声の段階を脱却し、成果を求めるフェーズに突入していることが分かります。
私は最近まで、セールスフォース・ジャパンで製造業のお客様および関西のお客様への直販営業を統括してきましたが、数多くの企業経営者と対話をしてきた肌感覚でも、日本企業のDXが成果を求めるフェーズに移行しているというのは間違いないと思います。
とくにコロナ禍以降、その勢いは確実に増しています。対面での商談や展示会がすべてデジタルでの実施に置き換わり、デジタルでのコミュニケーションが急速に加速していますからね。
富士通も、コロナ禍の発生から間もない時期にDXプロジェクトを立ち上げ、この2年間で一定の成果を上げられておられるようですね。
2020年7月に、「Fujitsu Transformation」(略称「フジトラ」)という全社DXプロジェクトをスタートさせました。単なる業務変革ではなく、「経営のリーダーシップ」「現場の英知の結集」「カルチャー変革」の3点を意識した変革を推し進めています。
組織面では、全社のデジタル変革を統括するCDXO(最高デジタル変革責任者)にCEOの時田自らが就任、これにCOO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)、CIO(最高情報責任者)を加えた4人で構成されるステアリングコミッティ(運営委員会)がプロジェクト全体のかじ取りを行う体制を整え、経営がコミットする形を取りスタートしました。
また、国内の主要な事業部門や海外リージョンから「DX Officer」(DXO)を選出し、部門横断での改革の推進や全社施策の各部門・リージョンへの浸透など、現場・各部門レベルのDXをリードしています。
スタートから2年が経過しましたが、ご指摘のように成果は少しずつ表れています。例えば、非財務目標の一つとして経営目標に掲げている「DX推進目標」があり、この2年で(5点満点中)1.3点向上しています。
DXで十分な成果を上げている企業では、富士通のように全社DXを統括する新たな責任者や、DX専任組織が活躍しているケースが多いようですね。
富士通では社内DX投資を積極的に行われているとのことですが、セールスフォースのお客様でも、経営層だけでなく現場でも正確なデータを見て意思決定するために、顧客データを全社で見える化して精度の高い提案につなげるDDDM(Data Driven Decision Making)という取り組みを行っている企業が増えています。Slackを使って営業担当者同士や他部門の担当者と密接にコミュニケーションを交わし、生産性を上げるといった取り組みも広がっています。
DX推進組織と成果創出の関係性
DXの成功確度を高めるためには、全社横断型DX専門組織を新たに立ち上げ、
全社的な活動として推進することが重要
シニアマネージャー
石浦 大毅 氏
パートナー
武藤 隆是 氏
専務執行役員
アライアンス事業統括本部長
浦野 敦資 氏
CEO室 CDXO Division
Division長
原 博樹 氏
グローバルサプライチェーン本部
サプライチェーン企画部
マネージャー
石崎 千恵 氏