【写真】やぶもとさんとかんばらさんが笑顔を向けている

アルビノとは、目と皮膚と毛髪をはじめとした全身(眼皮膚白皮症)、または目のみ(眼白皮症)が、先天的にメラニン色素をつくれない、もしくは少ししかつくれない体質のことです。(各種の合併症をともなうヘルマンスキー・パドラック症候群などの類縁疾患もある。)

アルビノの特性を持つ人は、世界で約2万人に1人の割合でいると言われています。メラニン色素が足りないために肌が白く、髪や体毛は白や褐色、金色。目の色も青や茶色、灰色で、多くの人はロービジョン(弱視)や紫外線に対する対応が必要です。

この記事ではアルビノの詳しい症状や当事者の声、サポート団体について解説します。

目次

・アルビノとは
・アルビノの症状
・アルビノの治療法、症状との付き合い方
・アルビノ当事者のみなさんの声
・アルビノ当事者のみなさんへのサポートについて
・読んでくださった方へのメッセージ

アルビノとは

アルビノは、メラニン色素が足りないために肌が白く、髪や体毛は白や褐色、金色など、見た目に特徴が現れやすい体質を指します。受け止め方は一様ではないものの、個性的な見た目や症状への無理解から、葛藤を繰り返している当事者の方もいます。

小児慢性特定疾病情報センターはアルビノ(眼皮膚白皮症)を以下のように定義しています。

眼皮膚白皮症(oculocutaneous albinism; OCA )は、出生時より皮膚、毛髪、眼のメラニン合成が低下ないしは消失することにより、全身皮膚が白色調であり、青~灰色調の虹彩、白~茶褐色あるいは銀色の頭髪を呈する。眼の症状を伴うことが多い。皮膚症状が判然とせず、眼の症状のみのものは眼白皮症。(ocular albinism;OA)

また、この記事の監修者である石井拓磨先生は、「アルビノ(アルビニズム・白皮症・白子症)について〔暫定版2〕」において、このように説明しています。

それぞれの症状には軽重があるものの、全身の皮膚の色素 欠乏(白色皮膚→日光による紅斑を来しやすい)、頭髪に加えて眉毛や睫や体毛などを含む 全身の毛の色素欠乏(白色~灰色~金色~茶色)、虹彩(瞳)の色素欠乏による羞明(まぶ しがること)及び眼底網膜の色素欠乏による視力低下(0.5 程度の軽度視力低下~0.05 程度 のロービジョンレベル)があるものの知的な問題は全くなく、他の合併症もない全身型の眼皮膚型白皮症です。

アルビノの症状

前提として、アルビノはすべて先天的症状であり、非進行性です。具体的には以下の症状が挙げられます。

眼の症状:
強い光を受けた際に不快感や眼の痛みなどが生じたり(羞明)、眼球が左右に細かく揺れたりすること(眼振)があります。

皮膚の症状:
メラニンが無いか、あるいは極端に少なくなっているため、紫外線発癌に伴った皮膚癌の発症のリスクが高いと言われています。しかし、それぞれの肌の状態に合わせた紫外線防御対策を行っていれば、過度に気にする必要はありません。

頻繁に日焼けを起こしている場合は、適切な紫外線防御策が講じられていない可能性があります。お近くの大学や基幹病院などの皮膚科あるいは末尾に紹介したサポートグループでご相談してみてください。

アルビノの治療法・症状との付き合い方

2019年8月の時点では確立された根治的治療法は見つかっていません。しかし、眼の症状、皮膚の症状に関しては、紫外線との付き合い方を工夫することで低減できます。

・日焼けや皮膚の光老化を予防するサンスクリーン剤や、サングラス、つばが長い帽子の着用。

・UVカット加工の服の着用。特に黒などの濃い色は、紫外線の透過率も低くて良いと言われています。

・10時から14時が紫外線量が多いと言われているため、より紫外線対策を入念に行いましょう。

・日焼けなど皮膚の症状で不安がある場合は、速やかに皮膚科を受診し、必要に応じて、お近くの大学や基幹病院などの皮膚科あるいは末尾に紹介したサポートグループに相談してください。

アルビノ当事者のみなさんの声

<肌や髪が白いのも個性として楽しみたい。生まれつき色素が少ないアルビノ当事者の会を主宰する薮本舞さん>

【写真】笑顔のやぶもとさん

見た目に症状がある人たちをサポートする「見た目問題相談センター」の相談員、アルビノ当事者とご家族の交流の場をつくる「アルビノ・ドーナツの会」の代表である薮本舞さん。

この記事では、アルビノであることでこれまでどんなことを経験をし、どんな思いを抱えてきたのか。幼い頃から現在に至るまでの話をお聞きしました。

<薮本さんが経験してきた困りごと>

子育てにおけるご両親の困惑:
薮本さんが生まれたとき、ご両親は「なぜこんなに肌や髪が白く生まれてきたのか」ととても困惑したといいます。医師からは「あまり日光に当てないでください」と言われていたため、ご両親は夕方に公園に連れて行くなど、舞さんのために様々な工夫をしていました。しかし、周囲からは、「子どもの肌や髪が白いのを見られたくないから夕方に遊ばせているんじゃないか」といった心ない噂が広まることもあり、周囲の理解に苦しんだと言います。

バイト・就職活動の問題:
学生時代に接客業のバイトの面接に行くと「髪の色を染めていて白い色になっているわけではないとわかるが、逐一お客様にあなたの髪の色のことを説明できないので、採用できません」といって断られた経験が何度もあったそう。就職活動をはじめる際にも、大学の就職課に「障害があるならば希望する仕事に就けないと思う」と言葉をかけられてしまい、その事実をなかなか受け止められなかったと言います。

【写真】微笑んで立っているやぶもとさん

人との違いで様々な壁にぶつかった薮本さんですが、大人になり同じアルビノである人たちと出会ったことで、世界が広がったそう。今は、アルビノ当事者が集まる「アルビノ・ドーナツの会」で悩みを共有できる仲間ができて、前向きな気持ちになったと話します。

”違い”によってつながった人というのが面白いんです。ドーナツの会で知り合った人もそうなのですが、本当に濃いつながりになります。もちろん、髪の毛の色で就職が・・・など悩みを共感してつながることもありますが、その先で就職できたことを一緒に喜べたりもして。そういう「喜び」に目を向けていきたいと私は思っています。(記事より引用

<生まれつきの白い肌と金髪。アルビノであることは、私にとっては自然なこと。神原由佳さんが“人と違う“外見を受け入れるまで>

【写真】座って微笑むかんばらさん

「見た目問題」当事者として積極的に啓蒙活動をしている神原由佳さん。当事者同士の交流やセミナーを通した家族支援を行う「日本アルビニズムネットワーク」やアルビノだけではなく、アザや脱毛症、その他の「見た目」に特徴がある人たちが集まる「NPO法人マイフェイス・マイスタイル」に参加しています。

この記事では、神原さんの人生を振り返りながら、これまでの経験を綴っていただきました。

<神原さんが経験してきた困りごと>

学校での対応への戸惑い:
弱視であるために、小学校の授業中には短眼鏡やルーペを使用。しかし、そうした“特別扱い”が余計なお世話だと嫌な気持ちになり、さらに「できない」ということに恥ずかしさを感じてしまったそう。配慮を受けられることは「権利」なのだと認識できるようになったのは、本当に最近のことだと言います。

【写真】笑顔のかんばらさん

日常生活では、明るい色の服を着たり、遮光レンズが入ったおしゃれなメガネを着用して、アルビノであることを含めてトータルコーディネートを楽しむ神原さん。大学では「『見た目問題』当事者の子どもを持つ親の語り」について研究し、ご両親に娘がアルビノであることをどう感じているのかインタビューしたことで、より自分自身を受け入れられるようになったといいます。

今思うのは、人を傷つけるのも、人を笑顔にするのも、すべて人だということ。私は今日まで生きてきて、色々な人に育ててもらい、成長させてもらったということを実感しています。私はこれからも、私のまわりにいる愛おしい人たちと一緒に生きていきたいです。(記事より引用

アルビノ当事者のみなさんへのサポートについて

誰かにサポートしてほしいと思ったとき、当事者会で同じアルビノ当事者の人とのつながりをつくるのがおすすめです。当事者の集まる団体を掲載しますので、参考にしてみてください。

・「アルビノ・ドーナツの会」アルビノ当事者とご家族の交流の場をつくる
・「日本アルビニズムネットワーク」アルビノ当事者と家族のための団体
・「見た目問題相談センター」見た目に症状がある人たちをサポートするセンター
・「NPO法人マイフェイス・マイスタイル(MFMS)」見た目の症状に悩む人たちをサポートするNPO法人

読んでくださった方へのメッセージ

個性的な見た目や症状への無理解から生じる障害に直面しやすいアルビノ。自分自身や周囲の人々がアルビノについて知ることによって、少しずつアルビノである人たちの困りごとを和らげていくことはできるでしょう。

アルビノに限らず、障害は個人のものではなく、他者や社会との関係から生じるもの。

誰もが生きやすい社会を実現するために、まずアルビノについて知り、それぞれ自分にできることで寄り添っていただけたら嬉しいです。

参考文献・サイト:
アルビノ(アルビニズム・白皮症・白子症)について〔暫定版2〕石井拓磨先生:PDFページ
小児慢性特定疾病情報センター:ホームページ
Genetics Home Reference:ホームページ
難病情報センター:ホームページ
日本皮膚科学会ガイドライン:ホームページ

監修者:石井拓磨先生(社会医療法人蛍水会 名戸ヶ谷病院小児科
【写真】監修者のいしいたくま先生