ヤマタノオロチならぬ「フタマタのマムシ」 ”奇跡のヘビ”が3連休に限定公開へ

神話やRPGの怪物のような「双頭のニホンマムシ」。11月3日からの限定公開を前に特別に現地取材してきた。

双頭のニホンマムシ

日本神話に、「ヤマタノオロチ」という怪物がいる。出雲国(今の島根県)に棲んでいた大蛇で、首が8本あったという。

スサノオノミコトが酒を飲ませてオロチを退治したところ、その尾から太刀が出てきた。天皇家に代々伝わる三種の神器のひとつ、「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」である。


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■神話やSFに登場

「複数の頭を持つ怪物」が登場するのは、日本神話に限らない。ギリシャ神話には、3つの頭を持つ犬の怪物・ケルベロスが、冥府の門を守る番犬として描かれている。

東ローマ帝国の紋章として用いられた「双頭の鷲」は、その後継者たちに引き継がれ、今も「スカンデルベクの鷲」としてアルバニアの国旗に。

現代の作品でも、ゴジラに登場する3つの竜のような首を持つ怪獣・キングギドラが有名だ。そんな神話のようなSFのような毒蛇が、今月3日から6日まで限定公開される。

群馬県太田市にあるジャパン・スネークセンターは、1965年に開園したヘビ専門の動物園。日本蛇族学術研究所が運営する、研究機関でもある。

ジャパンスネークセンター

昭和レトロな雰囲気もあるこちらについ先日持ち込まれたのが、頭が2つある「双頭のニホンマムシ」の赤ちゃんだ。


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■専門家に直撃

高木優

研究員で同センターの広報も務める高木優さんによると、これまで60年近いセンターの歴史で、アオダイショウやシマヘビ、ジムグリ、奄美産ハブの「双頭」は持ち込まれたことがあるという。ただ、マムシは初めて。

また、専門家である高木さんでも生きている「双頭のヘビ」を見るのは初だそう。ヘビの双頭はそもそも極めて珍しい奇形だというが、今回は野生で見つかったのがとくに奇跡的。

飼育下で生まれた場合は、孵化してすぐに保護することができるが、自然においてはそうはいかない。たまたま人間に見つかることで、救われた面もありそうだ。


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■3連休限定で公開

双頭のニホンマムシ

というのも、双頭ヘビの多くは、それほど長く生きられないのだという。今回の個体についても2つある頭部のうち、左側はやや不完全形成で右目がない状態。

体内の消化器官がどうなっているのか(2つあるのか1つなのか)もまだわからないため、今は餌も与えていない。

ただ、ヘビはもともと代謝が低いことに加えて、毎年秋に産まれるマムシの赤ちゃんは通常あまり餌を摂らなくても越冬できる、と高木さん。

ヘビの体調を確認したうえで、11月3日からの3連休と平日1日の限定で一般公開される運びとなった。


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■雌雄はまだ不明

今回の個体は関東地方で捕獲されたものだが、高木さんによれば、「おそらく9月か10月初めくらいに生まれたばかりだろう」とのこと。

同じくらいにセンターで誕生したニホンマムシ(写真下/頭は1つ)と比べると、やはり異常事態であることがよくわかる。

ニホンマムシ

現段階では雌雄は不明。専用の道具を使って確認するが、もう少し成長しないとわからないそう。

双頭のニホンマムシ


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■貴重なアルビノマムシも

アルビノマムシ

なお、現在ジャパン・スネークセンターでは、アルビノのニホンマムシも飼育されている(マムシのアルビノは黒い色素が欠落して赤い色素が残るため完全な「白蛇」ではない)。

こちらも双頭と同じくらい希少なため、「両方が生で見られるのは本当に貴重な機会です」と語る高木さん。とくに短命と言われる双頭マムシは、いつまで生きていてくれるかわからない。

2025年の干支が巳年のため、「それまで生きてくれたら…」と望みをかけるが、今後、餌がとれるのか。不完全な左の頭が壊死してしまわないか。まだわからないことだらけだ。


■大蛇や毒蛇もたくさん

グリーンマンバ

珍しいマムシたち以外にも、さまざまなヘビが飼育・展示されている。

2008年に東京・原宿で起きたいわゆる「毒ヘビ51匹事件」で、無許可飼育されており、飼い主を噛んだことでニュースになったコブラの仲間・グリーンマンバも今はこのセンターで会うことができる。

「種類が同じ」ということではなく、まさにこのヘビに噛まれた(飼い主は一時意識不明の重体に)ということ。

アミメニシキヘビ

毒蛇以外にも、巨大なニシキヘビやオオアナコンダなども迫力満点だ。ヘビとのふれあい体験も楽しめる(もちろん安全なヘビと)。


【ジャパン・スネークセンター】

住所:群馬県太田市藪塚町3318(東武桐生線 藪塚駅 徒歩15分)


■執筆者プロフィール

タカハシマコト:ニュースサイトSirabee編集主幹/クリエイティブディレクター

1975年東京生まれ。1997年一橋大学社会学部を卒業。2014年NEWSYを設立し、代表取締役に就任。東京コピーライターズクラブ(TCC)会員。カンヌライオンズシルバー、TCC審査委員長賞、ACCシルバーなどの広告賞を受賞。

著書に、『ツッコミュニケーション』(アスキー新書)『その日本語、お粗末ですよ』(宝島社)

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(取材・文/Sirabee 編集部・タカハシマコト

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