声優・福原香織の仕事観「『福原香織』でいることが楽しい」

2019年よりさくマガにて連載を続けてきた声優・福原香織さん。これまで、福原さんにゆかりのある方との対談や、仕事観などについてご自身で執筆いただいた記事などをお届けしてきました。

連載最終回となる今回は、これまでの内容を振り返ってどう感じているか、また、出産を経たいま、どのような変化があったかなどについて語っていただきました。

福原香織プロフィール写真

福原 香織(ふくはら かおり)さん

8月11日生まれ、千葉県出身。ブライトイデア所属。幼いころから声優を目指し、15歳のときに単身上京。2005年声優デビュー。代表作『らき☆すた』柊つかさ役、『咲-Saki-』天江衣役、『Aチャンネル』るん役 他、アニメ・ゲーム・歌手活動など、さまざまなキャリアを積む。2016年から2019年の約3年間、フリーランスとして活動。

Twitter(@FukuharaKaori)ファンクラブ(福原香織オフィシャルファンクラブ

やったことがないことも、まずはやってみること

ーー連載を振り返ってみて、いまどのように感じていますか?

文章が主体の連載はさくマガが初めてで、対談などの記事もありましたが、自分でも文章を書きました。学生のころの読書感想文すらしんどいタイプだったのに、ついに数千文字という未知の世界に足を踏み入れてしまいました(笑)。

何日もかけて記事を書くんですけど、自分で読み返してみると、「読みにくいな」と感じたり、句読点をどこに入れるか、段落をどこで区切るのか……いろいろ悩みました。文章を書くことの難しさを実感しましたね。

自分の曲の作詞などで文を書いたりもしますが、やはり記事を書くのとは違いますね。5000文字もある歌なんてないじゃないですか(笑)。さくマガの読者はビジネスパーソンが多いとお聞きしていましたし、いつもよりビジネスライクな文章のほうがいいのかなって考えたり……最初は手探りでやっていた感じです。

でも、振り返るとすごく楽しかったです! パソコンを持ち歩いて、時間があればカフェで文章を書いたりして、いつもとは違う気分になれました。

ーーとくに印象に残った回はありますか?

仲のいい人やお世話になっている人など、いろいろな方とお話させていただいて、どの回も印象に残っていますが、田中さん(さくらインターネット代表)との対談はとくに印象深いです。

声優 福原香織 × 社長 田中邦裕 対談「やりたいこと、どうやってできるに変えてますか!?」

大きな会社の社長さんなのに、私がオファーしてからすぐにお返事いただいて、すぐにインタビューが実現したんですね。実際にお会いしたら、すごく話しやすくて、とても丁寧に接してくださいました。

いろいろなタイプの社長さんがいらっしゃると思いますが、「こんな大きな会社の社長さんが、こんなに親しみやすい方なんだ!」とびっくりしました! お話もとても上手で、私が聞き役なのに、話を引き出してくださいましたし、本当におだやかにお話されますよね。

ーーさくマガのコンセプトは「やりたいことをできるに変える」ですが、この連載を通じてやりたいことができるに変わったことはありますか?

これから「できるに変える」ための再確認ができたような気がしています。

連載を通じて、私がこれまでやってきたことを振り返ることも多かったんですね。どうやってデビューしたか、フリーランスのときにどう仕事に取り組んできたか。そういったことを改めて話すことで、自分ががんばってきたことや、いまの自分の課題などの整理ができたと思います。

あと、発信することの大切さは感じましたね。先ほども話した通り、こういった連載ははじめてだったのですが、はじめてのことって勇気がいるじゃないですか。なにか言われたらどうしよう、面白くなかったらどうしよう、みたいな怖さはあったんです。

そんななかで飛び込んでいったのですが、いざやってみると、ファンの方に「知らない話が聞けた」と言ってもらえたり、ほかにもポジティブな感想をいただけて、意外というか……シンプルにうれしかったです。

改めて、やったことがなくても、やってみることは大事だなと感じましたね。

 

正直に自分の状態をシェアすることが大事

インタビューを受ける福原香織さんの写真

ーー福原さんは、子育てしながらお仕事をされていますが、苦労したことはありますか?

体調を整えたり、頭を切り替えるのにとても苦労しました。

会社員の方は、産休・育休として定まっているものがあって、もちろん人にもよりますが、多くの方は1年ぐらいはお休みされるのかなと思います。でも、声優は個人事業主なので、明確に産休として設定されているものがありません。

どのタイミングでどうするかは、自分と所属事務所次第なんですね。出産を発表するかも正直悩みましたし、発表するタイミングも悩みました。結局、発表することにしたんですけど。

そういった中で、私の場合はかなり早くに仕事復帰しました。体調管理も頭の切り替えも大変でしたね。そこまで長く現場を離れていたわけではないのですが、身体の変化なのか、頭が全然働かないんです。早々に仕事に復帰をして、バリバリ働いている方たちが私のまわりにはたくさんいますが、みなさん本当にすごいなぁと思います。

私は人前に出るお仕事なので、体型も戻さないといけないなと思っていて、いま絶賛がんばっているところです。最近、パーソナルトレーニングにも復帰しましたので、少しずつですが、自分のペースでやれることをがんばろうと思っています。

ーーそういった状況の変化で大変な中、どのように乗り越えているのでしょうか?

正直に、自分の状態をシェアするようにしています。

私、わりと自分で自分のことはできてしまうんです。「助けを求めるなら自分でやってしまうほうが早い」と思ってしまうタイプだったのですが、そんな私でも「ヘルプが必要だな」と感じるようになりました。

たとえば、事務所の社長やマネージャーに、「いま私はこういう状態で、こういうことならできそうで、こういうことができなさそう。どうしたらいいですか」という感じで、一緒に考えながらスケジュールを組んだりして乗り越えていますね。

私にとっては、いまこのタイミングで事務所に所属していたのはありがたかったです。フリーランスでもやれなくはなかったかもしれないけど、かなりきつかったと思います。

いかに短時間で最大限の成果を出すか

インタビューを受ける福原香織さんの写真

ーー子育てをしながらのお仕事をしていると、時間をつくることがそもそも大変ですよね。

時間がない、ギリギリの中での時間のやりくりをする毎日です。

仕事は迫ってくるので、どのタイミングで台本をチェックするか、どのタイミングで声を出して練習するか、かなり細かいスケジューリングをしていますね。

いままでの私だったら、「『時間がない』は言い訳で、時間はつくるものだ」と思ってきたし、後輩たちにもそう言ってきたのですが……いまの私は、気づいたら一週間経っている、みたいな感じです(笑)。

ーー「時間がない」ことについて、なにか工夫していることはありますか?

「時間がない」状態は、もうずっと続くことでしょうし、完全に乗り越えるのは難しいと思います。それでも、なんとかやりくりできているのは、間違いなく、これまでの経験のおかげだと思います。

たとえば、新人のときは、台本1枚読むのにも、何度も何度も読み込んで練習を繰り返します。もちろん、いまもきちんと台本の読み込みも練習もしますが、過去の引き出しをできる限り開けることで、短時間でも自分なりに成果を出すことはできます。限られた時間の中でいかに最大限の成果を出すか、効率よくやれるように考えています。

あと、もともと翌日の持ち物をメモしたり、ToDoリストを作ったりしていたんですが、それがさらに細かくなりました。

持ち物なら、たとえば飲み物、ペンとかもメモしています。「ペンぐらいかばんに入ってるでしょ」と思うかもしれないけど、そういうことすら、バタバタして頭から抜けちゃうんですよね。小学生の連絡帳レベルで細かく書いて、先ほどお話した「頭が働かない」のを補っています。

あとは、先ほどヘルプを求めたお話と繋がりますが、きちんとできること・できないことを事前に伝えるのも大事ですね。

「できない」と言うだけだと、相手もいい気がしないと思うんです。いつまでに、どんなことが可能か、もし難しい場合は却下ではなくプラスに働きそうな代案をできる限り伝えるようにしています。相手も人間なので、自分の事情ばかり押し付けるのではなく、お互いに気持ち良く仕事ができるよう心がけています。

 

成長し続けるには、変化を続けること

ーーいま、1日のタイムスケジュールはどのように動いているのでしょうか?

日によりますね。でも、総合的に言うととても早寝・早起きになりました。

芸能のお仕事をしていると、どうしても生活リズムが不規則になりがちです。同業ではそういう方が多いと思いますが、以前は昼も夜もない感じでした。仕事が忙しいと、夜遅くに帰宅して、食事と台本チェックをしていたら明け方になっていたり……翌日の仕事が午後からなら、それまで寝ていようということもありました。いまは、日の出とともに起きていますね。これはかなり大きな変化です。コロナの影響もあって仕事の仕方もずいぶん変わりましたね。

ーーコロナの影響というと、ほかにどういったことがありますか?

困っているのは、横のつながりがつくりにくいことです。ここ1年半ぐらいは、現場に行って収録だけしてすぐに帰るという感じです。

なので、これまでしてきたような「種まき」があまりできていません。もちろん、メールや電話でも、スタッフさんと連絡をとることはいくらでも可能だけど、対面で話すときの温度感ってあるじゃないですか。たとえば、食事中のちょっとした雑談からなにかおもしろい企画が生まれることもありますよね。

そういった「種まき」ができなさすぎて、先々の「種」がないんです。フリーランスのときは1か月後、2か月後、半年後、と先々の仕事のことを考えて動いていましたが、いまは「やりたいことができない」に直面しつつありますね。

ただ、コロナ禍でも成長し続けている会社はあります。そういった会社を見ていると、やはり変化し続けていると思います。さくらインターネットも、早めにリモートワークをとりいれたりしていますよね。コロナ禍だからと言い訳せず、コロナ禍だからこれをやろう、あれをやろうと新しいことをしている会社は伸びているのではないかと思いますね。

私もそういう思考に切り替えたいんです。なかなか、いいアイデアが出てこなかったり、いまはまだ子育てや、目の前の仕事に精一杯ですが。変化を恐れず進化し続けた人たちは、きっと強いですよね。

 

「福原香織」でいられるのが楽しい

笑顔の福原香織さんの写真

ーー出産を経験したいま、以前と比べて働く女性としての仕事観の違いはありますか?

仕事観は変わるんだろうなと思っていたのですが、案外変わりませんでした。

というのも、私はずっと「福原香織」をやってきて、自分の軸として確立していたから。それがいい意味で揺るがなかったんだと思いますね。

「福原香織」でいられるのがただ楽しくて、環境が変わったからといって、仕事に対する気持ちは変わりません。

声優の仕事を人生をかけて何十年もやってきたことで、私にしかできない仕事、たとえばこれまで続いている役とかありますよね。私がやらないことになったら、代理のキャストが演じることになって、場合によってはもう一度そのキャラクターを演じることはできなくなるかもしれない……。そう思ったら、簡単には手放せない、手放したくない、という気持ちが強くなりました。

変わらない部分もありつつ、新しい価値観が生まれた部分ももちろんたくさんあります。子育ても全力で、仕事も全力で、欲張りですが、メリハリをつけながら私なりにどちらも頑張っていきたいです。

ーー人によって仕事観は変わるかもしれませんが、「変わらない」というのもひとつの答えですよね。では最後に、今後、福原さんが「やりたいこと」を教えてください。

いままでととくに変わらないですね。

コロナ禍でできることは限られていますが、これからもオンラインでファンの方とつながれるようなことは続けていきたいです。

ファンクラブに入会されている方向けのブログがあるのですが、そこでファンの方とできる限りコミュニケーションをとったり、少しでも多くの方と関わりを持てたらいいなと思っています。またいつかイベントなどでお会いできるように、いまできる楽しいことを続けていくという感じですね。

ファンの方々には、あたたかく見守っていただいています。本当にありがたいです。

ーー福原さん、連載お疲れさまでした。今後も応援しています。ありがとうございました!

 

 

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