声優・福原香織の仕事観「『福原香織』でいることが楽しい」

2019年よりさくマガにて連載を続けてきた声優・福原香織さん。これまで、福原さんにゆかりのある方との対談や、仕事観などについてご自身で執筆いただいた記事などをお届けしてきました。

連載最終回となる今回は、これまでの内容を振り返ってどう感じているか、また、出産を経たいま、どのような変化があったかなどについて語っていただきました。

福原香織プロフィール写真

福原 香織(ふくはら かおり)さん

8月11日生まれ、千葉県出身。ブライトイデア所属。幼いころから声優を目指し、15歳のときに単身上京。2005年声優デビュー。代表作『らき☆すた』柊つかさ役、『咲-Saki-』天江衣役、『Aチャンネル』るん役 他、アニメ・ゲーム・歌手活動など、さまざまなキャリアを積む。2016年から2019年の約3年間、フリーランスとして活動。

Twitter(@FukuharaKaori)ファンクラブ(福原香織オフィシャルファンクラブ

やったことがないことも、まずはやってみること

ーー連載を振り返ってみて、いまどのように感じていますか?

文章が主体の連載はさくマガが初めてで、対談などの記事もありましたが、自分でも文章を書きました。学生のころの読書感想文すらしんどいタイプだったのに、ついに数千文字という未知の世界に足を踏み入れてしまいました(笑)。

何日もかけて記事を書くんですけど、自分で読み返してみると、「読みにくいな」と感じたり、句読点をどこに入れるか、段落をどこで区切るのか……いろいろ悩みました。文章を書くことの難しさを実感しましたね。

自分の曲の作詞などで文を書いたりもしますが、やはり記事を書くのとは違いますね。5000文字もある歌なんてないじゃないですか(笑)。さくマガの読者はビジネスパーソンが多いとお聞きしていましたし、いつもよりビジネスライクな文章のほうがいいのかなって考えたり……最初は手探りでやっていた感じです。

でも、振り返るとすごく楽しかったです! パソコンを持ち歩いて、時間があればカフェで文章を書いたりして、いつもとは違う気分になれました。

ーーとくに印象に残った回はありますか?

仲のいい人やお世話になっている人など、いろいろな方とお話させていただいて、どの回も印象に残っていますが、田中さん(さくらインターネット代表)との対談はとくに印象深いです。

声優 福原香織 × 社長 田中邦裕 対談「やりたいこと、どうやってできるに変えてますか!?」

大きな会社の社長さんなのに、私がオファーしてからすぐにお返事いただいて、すぐにインタビューが実現したんですね。実際にお会いしたら、すごく話しやすくて、とても丁寧に接してくださいました。

いろいろなタイプの社長さんがいらっしゃると思いますが、「こんな大きな会社の社長さんが、こんなに親しみやすい方なんだ!」とびっくりしました! お話もとても上手で、私が聞き役なのに、話を引き出してくださいましたし、本当におだやかにお話されますよね。

ーーさくマガのコンセプトは「やりたいことをできるに変える」ですが、この連載を通じてやりたいことができるに変わったことはありますか?

これから「できるに変える」ための再確認ができたような気がしています。

連載を通じて、私がこれまでやってきたことを振り返ることも多かったんですね。どうやってデビューしたか、フリーランスのときにどう仕事に取り組んできたか。そういったことを改めて話すことで、自分ががんばってきたことや、いまの自分の課題などの整理ができたと思います。

あと、発信することの大切さは感じましたね。先ほども話した通り、こういった連載ははじめてだったのですが、はじめてのことって勇気がいるじゃないですか。なにか言われたらどうしよう、面白くなかったらどうしよう、みたいな怖さはあったんです。

そんななかで飛び込んでいったのですが、いざやってみると、ファンの方に「知らない話が聞けた」と言ってもらえたり、ほかにもポジティブな感想をいただけて、意外というか……シンプルにうれしかったです。

改めて、やったことがなくても、やってみることは大事だなと感じましたね。

 

正直に自分の状態をシェアすることが大事

インタビューを受ける福原香織さんの写真

ーー福原さんは、子育てしながらお仕事をされていますが、苦労したことはありますか?

体調を整えたり、頭を切り替えるのにとても苦労しました。

会社員の方は、産休・育休として定まっているものがあって、もちろん人にもよりますが、多くの方は1年ぐらいはお休みされるのかなと思います。でも、声優は個人事業主なので、明確に産休として設定されているものがありません。

どのタイミングでどうするかは、自分と所属事務所次第なんですね。出産を発表するかも正直悩みましたし、発表するタイミングも悩みました。結局、発表することにしたんですけど。

そういった中で、私の場合はかなり早くに仕事復帰しました。体調管理も頭の切り替えも大変でしたね。そこまで長く現場を離れていたわけではないのですが、身体の変化なのか、頭が全然働かないんです。早々に仕事に復帰をして、バリバリ働いている方たちが私のまわりにはたくさんいますが、みなさん本当にすごいなぁと思います。

私は人前に出るお仕事なので、体型も戻さないといけないなと思っていて、いま絶賛がんばっているところです。最近、パーソナルトレーニングにも復帰しましたので、少しずつですが、自分のペースでやれることをがんばろうと思っています。

ーーそういった状況の変化で大変な中、どのように乗り越えているのでしょうか?

正直に、自分の状態をシェアするようにしています。

私、わりと自分で自分のことはできてしまうんです。「助けを求めるなら自分でやってしまうほうが早い」と思ってしまうタイプだったのですが、そんな私でも「ヘルプが必要だな」と感じるようになりました。

たとえば、事務所の社長やマネージャーに、「いま私はこういう状態で、こういうことならできそうで、こういうことができなさそう。どうしたらいいですか」という感じで、一緒に考えながらスケジュールを組んだりして乗り越えていますね。

私にとっては、いまこのタイミングで事務所に所属していたのはありがたかったです。フリーランスでもやれなくはなかったかもしれないけど、かなりきつかったと思います。

いかに短時間で最大限の成果を出すか

インタビューを受ける福原香織さんの写真

ーー子育てをしながらのお仕事をしていると、時間をつくることがそもそも大変ですよね。

時間がない、ギリギリの中での時間のやりくりをする毎日です。

仕事は迫ってくるので、どのタイミングで台本をチェックするか、どのタイミングで声を出して練習するか、かなり細かいスケジューリングをしていますね。

いままでの私だったら、「『時間がない』は言い訳で、時間はつくるものだ」と思ってきたし、後輩たちにもそう言ってきたのですが……いまの私は、気づいたら一週間経っている、みたいな感じです(笑)。

ーー「時間がない」ことについて、なにか工夫していることはありますか?

「時間がない」状態は、もうずっと続くことでしょうし、完全に乗り越えるのは難しいと思います。それでも、なんとかやりくりできているのは、間違いなく、これまでの経験のおかげだと思います。

たとえば、新人のときは、台本1枚読むのにも、何度も何度も読み込んで練習を繰り返します。もちろん、いまもきちんと台本の読み込みも練習もしますが、過去の引き出しをできる限り開けることで、短時間でも自分なりに成果を出すことはできます。限られた時間の中でいかに最大限の成果を出すか、効率よくやれるように考えています。

あと、もともと翌日の持ち物をメモしたり、ToDoリストを作ったりしていたんですが、それがさらに細かくなりました。

持ち物なら、たとえば飲み物、ペンとかもメモしています。「ペンぐらいかばんに入ってるでしょ」と思うかもしれないけど、そういうことすら、バタバタして頭から抜けちゃうんですよね。小学生の連絡帳レベルで細かく書いて、先ほどお話した「頭が働かない」のを補っています。

あとは、先ほどヘルプを求めたお話と繋がりますが、きちんとできること・できないことを事前に伝えるのも大事ですね。

「できない」と言うだけだと、相手もいい気がしないと思うんです。いつまでに、どんなことが可能か、もし難しい場合は却下ではなくプラスに働きそうな代案をできる限り伝えるようにしています。相手も人間なので、自分の事情ばかり押し付けるのではなく、お互いに気持ち良く仕事ができるよう心がけています。

 

成長し続けるには、変化を続けること

ーーいま、1日のタイムスケジュールはどのように動いているのでしょうか?

日によりますね。でも、総合的に言うととても早寝・早起きになりました。

芸能のお仕事をしていると、どうしても生活リズムが不規則になりがちです。同業ではそういう方が多いと思いますが、以前は昼も夜もない感じでした。仕事が忙しいと、夜遅くに帰宅して、食事と台本チェックをしていたら明け方になっていたり……翌日の仕事が午後からなら、それまで寝ていようということもありました。いまは、日の出とともに起きていますね。これはかなり大きな変化です。コロナの影響もあって仕事の仕方もずいぶん変わりましたね。

ーーコロナの影響というと、ほかにどういったことがありますか?

困っているのは、横のつながりがつくりにくいことです。ここ1年半ぐらいは、現場に行って収録だけしてすぐに帰るという感じです。

なので、これまでしてきたような「種まき」があまりできていません。もちろん、メールや電話でも、スタッフさんと連絡をとることはいくらでも可能だけど、対面で話すときの温度感ってあるじゃないですか。たとえば、食事中のちょっとした雑談からなにかおもしろい企画が生まれることもありますよね。

そういった「種まき」ができなさすぎて、先々の「種」がないんです。フリーランスのときは1か月後、2か月後、半年後、と先々の仕事のことを考えて動いていましたが、いまは「やりたいことができない」に直面しつつありますね。

ただ、コロナ禍でも成長し続けている会社はあります。そういった会社を見ていると、やはり変化し続けていると思います。さくらインターネットも、早めにリモートワークをとりいれたりしていますよね。コロナ禍だからと言い訳せず、コロナ禍だからこれをやろう、あれをやろうと新しいことをしている会社は伸びているのではないかと思いますね。

私もそういう思考に切り替えたいんです。なかなか、いいアイデアが出てこなかったり、いまはまだ子育てや、目の前の仕事に精一杯ですが。変化を恐れず進化し続けた人たちは、きっと強いですよね。

 

「福原香織」でいられるのが楽しい

笑顔の福原香織さんの写真

ーー出産を経験したいま、以前と比べて働く女性としての仕事観の違いはありますか?

仕事観は変わるんだろうなと思っていたのですが、案外変わりませんでした。

というのも、私はずっと「福原香織」をやってきて、自分の軸として確立していたから。それがいい意味で揺るがなかったんだと思いますね。

「福原香織」でいられるのがただ楽しくて、環境が変わったからといって、仕事に対する気持ちは変わりません。

声優の仕事を人生をかけて何十年もやってきたことで、私にしかできない仕事、たとえばこれまで続いている役とかありますよね。私がやらないことになったら、代理のキャストが演じることになって、場合によってはもう一度そのキャラクターを演じることはできなくなるかもしれない……。そう思ったら、簡単には手放せない、手放したくない、という気持ちが強くなりました。

変わらない部分もありつつ、新しい価値観が生まれた部分ももちろんたくさんあります。子育ても全力で、仕事も全力で、欲張りですが、メリハリをつけながら私なりにどちらも頑張っていきたいです。

ーー人によって仕事観は変わるかもしれませんが、「変わらない」というのもひとつの答えですよね。では最後に、今後、福原さんが「やりたいこと」を教えてください。

いままでととくに変わらないですね。

コロナ禍でできることは限られていますが、これからもオンラインでファンの方とつながれるようなことは続けていきたいです。

ファンクラブに入会されている方向けのブログがあるのですが、そこでファンの方とできる限りコミュニケーションをとったり、少しでも多くの方と関わりを持てたらいいなと思っています。またいつかイベントなどでお会いできるように、いまできる楽しいことを続けていくという感じですね。

ファンの方々には、あたたかく見守っていただいています。本当にありがたいです。

ーー福原さん、連載お疲れさまでした。今後も応援しています。ありがとうございました!

 

 

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声優プロダクション代表「自分が”やりたいこと” ”できること” ”評価されること”は違う」

声優プロダクション代表「自分が”やりたいこと”、”できること”、”評価されること”は違う」

声優専門月刊誌『声優グランプリ』(主婦の友インフォス/発行)の付録「声優名鑑2021」によると、女性声優の数は955名、男性声優の数は600人超えと発表されました。

声優人口は男女ともに増加していて、史上最多の人数となっています。20年前と比べると4倍にも増えているそうです。こちらに掲載されている以外にも多くの声優がおり、人気の職業だとわかります。

そんな人気職業の声優ですが、多くの方は声優プロダクションに所属しています。今回の福原香織さんの連載では、福原さんが所属している声優プロダクション社長の松原勝彦さんとの対談をお届けします。

松原 勝彦(まつばら かつひこ)さん

松原 勝彦(まつばら かつひこ)さん プロフィール

株式会社ブライト イデア 代表取締役、株式会社ビットグルーヴプロモーション代表取締役。

ーー松原さんが代表をつとめる株式会社ブライトイデアですが、設立は2018年ですが、起業(株式会社ビットプロモーションから部門独立)しようと思ったきっかけを教えてください。

 

松原勝彦(以下、松原):20年以上前に、この業界に入りました。最初はプロダクションと映像制作をやっている会社に入社して、その後にゲームメーカーに移りました。そして、いま代表をつとめている株式会社ビットグルーヴプロモーション(旧:ビットプロモーション)を立ち上げたんです。そこではゲームの音響制作を中心に仕事をしていました。

 

その後、声優プロダクション事業をおこなうためにブライトイデアを2018年2月22日に立ち上げたのですが、ちょうどその日に足を骨折して3か月くらい入院しました(笑)。

 

福原香織(以下、福原):本当、大怪我でしたよね。波瀾万丈なスタート。

声優プロダクションのビジネスモデル

ーー声優プロダクションの収益構造について教えてください。

 

福原:話せる範囲でいいですからね(笑)。

 

松原:わりとシンプルです。所属声優のギャランティの中から数十パーセントを事務所のマージンとしていただきます。パーセンテージは事務所によって違いますが、業界のほとんどは同じ構造だと思います。いわゆる歩合制というやつです。 

でも、声優のマネージメントだけで食べていける事務所は少ないと思いますよ。マネージメント業だけではなく、養成所ビジネスだったり、製作に関わったりしないと厳しいです。

 

福原:養成所をやっているプロダクションは多いと思います。私たち声優は基本、完全歩合ですね。確定申告も自分でやります。

 

松原:声優の雇用形態としては業務委託になります。お笑い業界と近いですかね。個人事業主として声優がいて、マネジメント契約をプロダクションと結んでいます。お笑い業界や芸能業界と違うのは、マネージャーの付き方ですかね。

現場や案件によってマネージャーが変わるんです。声優業界の場合、マネージャーはタレントに付くわけではなくて、案件(作品)に付きます。これはメリット・デメリットあると思いますけどね。

案件ごとに違うマネージャーが付くのは

ーー同じマネージャーが付くのと、案件ごとに違うマネージャーが付くのは声優としてはどちらのほうがやりやすいんですかね?

 

福原:そのときの年齢やキャリアによると思います。私のいまの状況だったら、なんの不便もないですけど、新人の方だと大変かもしれないです。新人のころはわからないことが多いし、仕事を得るためにも、いろいろな人に顔を覚えてもらわないといけません。そこでマネージャーが毎回違うと大変ですよね。

食べていけるのは、ほんの一握りの世界

ーー新人だと声優の仕事だけで食べていくのも大変そうですね。

 

松原:新人に限らず、声優業だけで食べていける方はほんの一握りです。売れている声優でもアルバイトをしているケースもあります。最近テレビで話題になりましたが、アニメの場合は1本の出演料が1万5千円。そこからプロダクションへマージンを支払います。さらにそこから税金が引かれますから。そう考えると、食べていくのがどれほど難しいかわかりますよね。

 

福原:本番までに台本を読んだり、準備する時間もありますからね。

 

松原:そうそう。アニメだけでは厳しいけど、アニメに関連するイベントやキャラクターソング、ラジオなどがあって食べていけるようになります。あとはスマホアプリやゲームですね。アニメで名前を売って、アプリやゲームで収入を得るケースもあると思います。世間的には声優=アニメというイメージがありますが、それだけだと厳しいですよ。

 

福原:前回の野水伊織ちゃんとの対談でも同じような話が出ました。アニメに出ていないといろいろ言われることもあるけど、声優の仕事ってアニメだけではないんですよね。

 

松原:本当はゲームやナレーションのほうがお金になるからね。

本当はゲームやナレーションのほうがお金になる

 

ーーほんの一握りの方しか食べていけないということですが、業界全体の取り組みで改善しようとしていることはありますか?

 

松原:業界全体の話だと大きすぎてお話しできませんが、ブライトイデアとして取り組んでいることをお話しします。いままでは一つのプロダクションが、一つの養成所を作って運営することが基本でした。

以前はこのビジネスモデルでも通用していましたが、養成所が増えて、専門学校や4年制大学で声優学科ができてきました。さらに少子化が加速しています。そうなると競争が激しくなり、厳しくなってきます。プロダクションとしては、養成所を作ることがリスクになってしまうんです。

そこで複数のプロダクションが協力して、一つの養成機関に新人の発掘・育成を委託するビジネスをはじめました。

それが「東京ナレーション演技研究所」です。

 

これは別会社が運営しているのですが、さまざまな特色を持ったプロダクションが入ることで、新人声優の選択肢を広げたいと考えています。さらにレッスン料も安いので、挑戦しやすくなっています。ただし、誰でも挑戦はできるけど、誰でも声優になれるわけではありません。

自分が「やりたいこと」と「できること」と「評価されること」では違うことがあります。そこをうまく繋げていければと思っています。

 

福原:声優の立場から言うと、声優界は厳しい世界です。明日どうなるかもわからない世界です。華やかに見える部分も多いですが、誰でもなれる職業ではないということを肝に銘じて目指してほしいです。でもその分、本当にやりがいのある素敵な職業だと思います。

 

松原:そのとおりですね。声優業界で活躍し続けている人って「アスリート」なんですよ。100メートルを10.2秒で走れていたとして、いつか100メートルで10秒を切る人が出てきたら負けちゃうわけです。そうなったら仕事はなくなります。活躍し続けている人はその危険を常に感じているので、向上心があるしストイックです。

そうした人たちと戦っていくわけですから、実力と努力と工夫は絶対に必要になります。さらにその先に運とタイミングがあります。運とタイミングは自分ではどうしようもありませんが、実力と努力と工夫がない限り活かすことができません。

 

福原:アスリートっていう表現は面白いですね! 事務所に入るのも大変だけど、入ってからが大変ですから。

フリーランスから事務所に所属

フリーランスから事務所に所属

 

ーー福原さんがフリーランスからブライトイデアに所属することになった経緯について教えてください。

 

福原:松原さんとは、以前からお仕事を一緒にしていた経緯があります。私がフリーランスとして活動しているときも、何度かお会いする機会があったんです。そのときに「香織ちゃん、うちの会社来る?」って言ってくれていたんですよ。でも、そのときは事務所に所属することをまったく考えていなかったんです。

きっかけは昨年のデビュー15周年を迎えるにあたって、年間計画を考えたときです。フリーはやりがいもあって楽しくやっていたんですけど、記念すべき15周年イヤーのイベント関係を自分だけでやっていくことは難しいと思いました。どうしようかなと考え、松原さんに連絡をして、ご飯を食べながらお話をしたんです。2時間くらいお話をして、所属することが決まりましたね。

 

松原:確かに会うたびに誘っていました。なんとなく、何度か会ううちにフリーの大変さを感じているんじゃないかと思ったんですよね。そうしたらあるときに真面目なトーンで、「ご相談があります」という連絡が来ました。前触れなかったので驚きました。香織ちゃんがなにをやりたいのかをしっかり聞いたうえで、お互いすり合わせをして決まりましたね。

 

福原:すんなり話が進みましたね。コース料理を食べていたんですけど、メイン料理くらいで所属する話がまとまっていました(笑)。

 

ーー松原さんが思う福原さんの強みと、ブライトイデア側のメリットはどんなことがあったのでしょうか?

 

松原:強みは積極的なところです。チャレンジ精神が強いですね。これは僕も会社も同じなんですけど、やれるものはどんどんやっていこうと思っているんです。ここは共通点としてありますね。何事もやってみないとわからないですから。

 

福原:私も松原さんも、何事にもお互いプラスな捉え方をするようにしていますよね。

 

松原:役者さんを守る意味では仕事を選択することもありますが、積極的にやるようにしています。メリットで言うと、ブライトイデアのブランディングを高めてくれました。会社のネームバリューは一気に上がりましたね。

香織ちゃんが入ったことによって、これまでお付き合いのなかった会社から仕事の話が来るようになりました。そこで福原香織以外の所属タレントの紹介もできるので、営業的な効果もあります。 

声優プロダクション、コロナ禍での働き方

声優プロダクション、コロナ禍での働き方

 

ーーコロナ前とコロナ禍で、声優プロダクションの働き方はどう変わりましたか?

松原:アニメの収録は大きくやり方が変わりました。これまでは一箇所のスタジオに20人くらい入って3-4本のマイクを使いまわして収録していました。

いまは一つのスタジオに3人くらいで、マイクはひとり1本。50分に1回換気をしています。監修の人は現場には来ないで、Zoomで繋ぐこともあります。

声優は自分のパートだけスタジオに入ればよいので、拘束時間はかなり減りました。スタッフへの負担が増えた部分はありますが、いまのやり方でもできることがわかったので、コロナが収束したとしても、変わらずに継続する部分はあると思います。

 

福原:仕方ないことだけど、個人的には現場に人が少ないと、寂しいですけどね。

ーー声優プロダクションのワークライフバランスについてお聞かせください。

 

松原:役者とクライアントのスケジュールによって決まるので、僕たちで決められない部分もあります。でもフレックスタイムになったし、リモートワークが可能になったので昔に比べると働きやすくなっています。僕自身は経営者だから、土日関係なく働いていますけどね。社員に対しては、少しでも売上をあげてボーナスで還元したいと思っています。

やりたいことをできるに変えるために 

ーーメディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後やりたいと思っていることを教えてください。 また、やりたいことを実現するためにおこなっている努力があれば教えてください。

 

松原:一番やりたいと思っているのは、新しいプロダクションのビジネスモデルを作ることです。まさに先ほどお話した「東京ナレーション演技研究所」を盛り上げていきたいですね。

あとは、ほかのプロダクションやフリーで活動している声優が、困っていることや足りないと思っていることを補完していければと思います。そのために夜中飲み歩いて、みなさんと情報交換しています(笑)。

 

福原:ブライトイデアのことを考えてやりたいと思ったことは、イチ役者として新しい可能性を追求していきたいです。やっぱり、この仕事が好きなんですよね。

 

 

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声優の仕事を深堀り!福原香織さん×野水伊織さん対談:後編

声優の仕事を深堀り!福原香織さん×野水伊織さん対談:後編

声優の福原香織さんと野水伊織さん。本記事では、共演も多くプライベートでも仲の良いおふたりの対談をお送りします。

これまでに福原さんの連載で、さまざまな人と対談をしてもらいましたが、同業者(声優)の方との対談は初めてです。声優同士ならではのお話も聞けました。

前回に引き続き、今回は後編。声優のお仕事を深堀りして、アニメ・吹き替え・ゲームなどの演じ方の違い、今後おふたりがやりたいことなどについて語っていただきました。

前回の記事:声優同士で仕事論を語る! 福原香織さん×野水伊織さん対談(前編)

野水伊織さん

10月18日生まれ、北海道出身。プロダクション・エース所属。声優デビュー前からテレビやCM、ラジオなどに出演。2010年、TVアニメ『そらのおとしもの』のニンフ役で声優デビュー。翌年1月には自身がヒロインのハルナ役を演じるアニメ『これはゾンビですか?』主題歌を担当し、歌手活動を本格化。
Twitter(@nomizuiori)公式ブログ(野水・オブ・ザ・デッド

福原香織さん

8月11日生まれ、千葉県出身。ブライトイデア所属。幼いころから声優を目指し、15歳のときに単身上京。2005年声優デビュー。代表作『らき☆すた』柊つかさ役、『咲-Saki-』天江衣役、『Aチャンネル』るん役 他、アニメ・ゲーム・歌手活動など、さまざまなキャリアを積む。2016年から2019年の約3年間、フリーランスとして活動。Twitter(@FukuharaKaori)ファンクラブ (福原香織オフィシャルファンクラブ

声優の世界はキャリアがすべて 

ーー声優の世界では、自分よりも年下でも、キャリアは上ということがあると聞きました。そのあたり、はじめてこの業界でお仕事をしたときどう感じましたか。会社員だと、年功序列のところが多いので、気を使ってしまうこともありますが。

 

福原香織さん(以下、福原):そういう概念、あんまりないよね。

 

野水伊織さん(以下、野水):そうだね。声優は基本的にはキャリアが重視されるよね。同期でも年齢が5コ違いとかは全然ある世界だから、年齢は逆に意識しないよね。そんなに歳が離れていなくても、学生のときに流行ったものが違ったり。そのときに「そういえばこの人は世代が違うんだよな」って、初めて意識するくらいかも。

 

福原:たしかに、年齢をわざわざ気にすることってあんまりないね。キャリアに関して、あなたは何年デビュー?  みたいな明確な区切りはしないんだけど、大まかに感じ取ってはいるかな。

 

野水:そうだね。

 

福原:アフレコのときにスタジオの椅子に座る位置も、なんとなくキャリアで決まる感じはあるよね。もちろん役にもよるけど、マイクに入りやすい位置とか、出入口から遠い上座の位置には先輩が座る、みたいな。

 

野水:今は変わってきているかもしれないけど、私たちの時代はなんとなく暗黙の了解としてあったね。

 

福原:子役でデビューしていて、キャリアは長いけど年齢は若いという人もいるけど、やっぱり現場では先輩として接してるよね。共演を重ねて仲良くなれば、あだ名で呼んだりとか、ごはん行ったりとかはもちろんあるけど。

 

演じ方の違い

演じ方の違い

ーーおふたりとも、芸歴が長いですけれど、アニメ、吹き替え、ゲームなどについて、演じ方の違いとかがあれば教えてください。

 

野水:あらためて言われると難しいなぁ。私は吹き替えよりはアニメとか2次元のキャラクターに声をあてることが多いけど、単純にキャラクターにあてるか、実在の人物にあてるかでお芝居の観点は違うかな。

多分、声優経験のない方が見ても、なんとなくアニメと吹き替えではお芝居がちょっと違うな、というのはあると思う。

 

福原:呼吸感が違うよね。

 

野水:うん。実際の人間に声をあてる吹き替えだと例えば、「はぁ」ってため息をついて話し始めるとき、胸が動くのを見て話すもんね。そういった、お芝居をしている人の身体の動きに合わせる、というところがあるかな。

逆にキャラクターって、実際の人間にはないような動きをするんだよね。例えば何かに気づいて振り返るときに「ハッ!」と声を出すとか、普通の人が言わないようなリアクションが入る。そういうものを拾わなきゃいけなかったり、絵が切り替わった瞬間に話しはじめないといけないことがあるので、結構違うよね。

 

福原:確かに。アニメ特有のところで言うと、ぱくぱくとキャラクターの動いている口にブレス(息つぎ)を合わせていかないといけない。もちろん外画(外国映画)の吹き替えもそうなんですけど、アニメは……独特だね。

 

野水:わかる! 吹き替えだと、俳優さんが演じた映像があるから、翻訳をする人が外国語と日本語の意味も合わせつつ、息を吸うタイミングに句読点をつけてくれてる。

アニメの場合は何もないところからセリフを起こすから、シナリオの方やスタッフさんがなんとなくこんな感じかなっていうところにセリフをあてはめているので、いざやってみると、ちょっと早くしゃべらないと間に合わないことはアニメのほうが多いかもしれないね。

 

福原:アニメも吹き替えも現場の空気自体、全然違うよね。役者陣の顔ぶれとか。もちろん両方やってる方もいるけど、普段ゲームが多い方もいればアニメが多い方もいれば、外画が多い方もいれば……それぞれなので、フィールドが変わると緊張するよね。私はアニメやゲームの現場が多いから、外画の現場にいくともうガチガチに緊張しちゃう(笑)。

 

野水:私も緊張する(笑)!

 

福原:慣れてないからね。

 

野水:あと、吹き替えは、イヤホンをして、片耳で原語で話している海外の俳優さんの言葉を聞きながら映像を見てお芝居をするでしょ。アニメは音がないところに一から声を入れるから、そういう意味では、アニメのほうが融通がきくのかもしれないね。アニメは自分で流れがつかめるけど、外画は流れに乗っていかないといけない、みたいな。慣れてないと難しいよね。

 

福原:英語ができる人は、結構耳に気がとられちゃうって聞くよね。私、全然英語わからないんで、良かったって思う(笑)。

 

野水:確かに(笑)。 

ゲームの仕事で感じる時代の変化

福原:ゲームの収録は、アニメや外画とはまた全然違うよね。1人で狭いブースにこもって声を入れるから。掛け合いのセリフだったとしてもね。

 

野水:そうだね。まれに大きい作品だと、ムービーシーンだけは全員で録ることもあるみたいだけど、アプリゲームとかは基本的にひとりだよね。掛け合いがあっても、相手の方がどういうお芝居をされるのか、この人のこういうキャラクターだったらこうかなってなんとなく想像しながらやるしかなかったり。

 

福原:ゲームが完成するまでわからないこともある。狭いスタジオで、長時間ずっと自分のセリフだけを読み続けるので……もう職人の仕事だよね。

 

野水:新人の頃の話だけど、ゲームのアフレコで、これは私のクセだなと思っていたのは、早口でしゃべっちゃうこと。

 

福原:ひとりだから?

 

野水:そう。アニメだったら、自分のセリフの後に相手がセリフを言って、みたいな流れがあるけど、ゲームのアフレコはひとりだからいくらでも早くしゃべれちゃうんだよね。普段から早口だからそのクセで。出来上がったものを聞くと、相手の方は普通のペースでしゃべってるのに、自分だけやけに早口、みたいなことがあったよ。

 

野水伊織さん

 

ーー以前は、ゲームはいわゆる専用のハード機でやるものしかなかったですが、今はスマホ、PCなどいろんな手段でできるものがでてきましたよね。そういうもので違いはありますか?

 

福原:カロリーが違うかな。ハード機であるような恋愛シュミレーションソフト、いわゆる「ギャルゲー」って、ストーリーの選択肢、分岐がたくさんあって……。それらのセリフを全部収録したりする。

段ボール1箱分の台本がドーンと届いて、これを2週間後とかの収録までにすべて読んでチェックしなければいけない。どのように演じながら台詞を言うかのプランも考えながら読んでいくので、すごく大変。

だから、台本を入れたキャリーケースを引いて現場に行くって感じだったのが、今はスマホゲームが増えてきたから、紙数枚の台本で、1時間ぐらいで収録が終わることもある。時代の変化を感じるね。

 

野水:アプリゲームでガチャをまわすとキャラクターが出てくるものがあるけど、出てきたときのセリフ、レベルアップしたときのセリフ、戦ってるときのセリフ、勝ったときのセリフしかなかったりするもんね。「兼ね役」……ひとりで何役かを担当するってことも多いけど、それでも1時間くらいで終わることもあるからね。

 

福原:でも、ひとつのキャラクターに関わる期間が長くなったかも。アプリゲームだと、季節ごとのイベントとかでちょこちょこ収録があったり。そういった意味では、自分が担当するキャラクターを定期的に演じられて、長いお付き合いができて、役者としてはとてもうれしいな。

野水伊織さんの”やりたいこと”

ーーメディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後やりたいことや、それを実現するために努力していることを教えてください。

 

野水:今もやらせてもらっていることだけど、本格的に作詞をやりたいな。もともと文章を書くのが好きで、自分のソロの曲でも、詞を書かせてもらったりとかしてたんだけど。

ありがたいことに、仲のいい音楽家の先輩とか、何人かに褒めていただくことがあって……。 

自分の感覚で「いいものができた」って思っても、客観的に見てどうなのかはわからないし、やっぱり作曲家・作詞家の方がそう言ってくださるのはありがたい。

本当は今年、作詞をちゃんとやっていくぞ、と思っていたんだけど、新型コロナの影響もあって、話を進めたり、相談するような時間もなくて……。だけど、クリエイティブなことをお仕事にしていきたいなとは思ってる。

 

ただ、先駆者の方がたくさんいるし、自分はプロというわけではなく独学なので。そこに関しては、勉強する必要があるかなと。

好きでやってることだから、全然つらくないけどね。映画関係の仕事に関しても、どんどん新しい映画は公開されるし、子どもの頃から見てきた人にはかなわない本数しか見てきてないから、その差を詰めるには、時間を使うしかない。

やってることは本当に地道。例えば新作映画についてコラムを書く場合、その監督が今までどんなものを撮ってきたか、全部じゃないにしても前作は少なくとも確認してる。あとはその監督の特色を把握したりとか、インタビューを読んだりとか、そういう、ちょっとしたことを漏らさないように気をつけてる。

 

やるからには突き詰める、ということなのかな。本当に好きでやりたいことをやっていくための積み重ねを地道にしていけば、なにかひとつ、プロとして飛び出せる可能性はあるのかも。その間口は本当に広がっているから、やり続けることが結構大事だと思うな。

 

福原:確かに。

 

ーー作詞の勉強ってどういうことをされているんですか?

 

野水:私は専門的にやったわけじゃなくて、地元でスクールに通ってるときに、ちょっと作詞家の先生に教わったことくらい。

テクニック的な話をすると……例えば、売れてる曲って……全部当てはまるわけじゃないと思うけど、母音の中でも「あ」とか「お」っていう、口を大きく開けて発音する音がサビに来てる。

 

福原:私もそれ、レコードメーカーの人に言われたことある!

 

野水:「い」とか「え」だと、音が潰れるから、耳に入ってきにくい。そういうテクニックみたいなものを、学んだんだ。私自身も歌を歌うので、やっぱり音が高くなるところで「い」とか「え」があると歌いづらいのはわかるし。自分で作詞するときはちょっと気にしたり、この音はハマリ悪いなとか、考える。

私の場合は本当に独学だけど、作詞をする人は、音のあてはめ方とか、結構ロジカルに考えている方が多いんじゃないかな。

 

これからのキャリア

これからのキャリア

ーー福原さんはこれからのキャリアについてどう考えていますか?

 

福原:以前、この年にこれを達成する、みたいな10年計画表を作っていて、実際ほとんど達成したの。だから、それはやっててよかったとは思ってるけど、今は、もうちょっと考え方がまるくなった。

不思議と、そのときの自分に見合った試練が勝手に降りかかってくる。だから、さっき伊織ちゃんも言ってたように、なにかをやり続けることで、見えてくることがあるのかな。今後、ライフスタイルがどうなっていくかはわからないし、今あることを一生懸命やろうっていう感じかな。

 

個人的には、もっと大人になりたいな。大人って何って感じだし、役者って子どもの気持ちも大事だから今のままでもやれちゃうけど、このまま40歳、50歳を迎えると思うと不安がちょっとある。

声優の仕事って、年齢制限があるわけじゃないから、ずっと活躍していけるイメージがあるかもしれない。そういうレジェンドな方も確かにいらっしゃるけど。私がこのまま生きててそこまでいけるとは到底思えないし、イメージがわかない。

この際、自分探しの旅をもう少ししてもいいかもって思うな。声優をやめるということじゃなくて、もっと柔軟に生きてもいいのかなって。

 

野水:私もまさにかおりんみたいなことを考えてて、クリエイティブ方面のお仕事をしたいというのは、別に声優の仕事が減ったからそれをしよう、ということではないんだよね。いろいろなことに興味を持てるようになったからこそ。

コロナの影響でそれぞれの生き方とか、お金の使い方もみんな変わってくるから、そうなったときにより厳しくなる。例えば今までできていた、イベントとかができなくなったときに、みんなどうする? っていうのは、結構突きつけられた人が多いんじゃないかな。その中でやっぱり、自分の年齢も考えると、今後のあり方は考えるよね。

 

福原:そうなんだよね。30代ってもう結構大人じゃない? 私は10代の頃からこの仕事を始めて、事務所の期待、ファンのみなさんの期待、自分で自分への期待、それぞれに何とか応えたくて。時には失敗したりもしながらだけど、なんとかここまでやって来られた。

だけど、すべてが仕事、仕事だったなって。子どもの頃から声優になりたくて、その声優に運よくなれて、本当に仕事が大好きで。生き甲斐で。そのうちだんだん趣味も仕事みたいな感じになってて、ファッション、メイクを覚えるのも仕事のため、ダイエットして綺麗になりたいのも仕事のため、本を読んで勉強するのも仕事のため。

好きな仕事のためになんでも頑張れた。

でも、ふと我に返った時に、福原香織ってどんな人なんだっけ?私は何が好きで何が嫌いなんだっけ?ってわからなくなってしまった部分があって。

 

野水:それはわかるかも。

 

福原:人の目を気にするあまりに蓋をしてしまった自分が多分どこかにいるから、この年齢になった今だからこそ、自分のまわりの人も、そして自分自身の事ももっと大事にしていけたらいいな。

ーー年齢的にも将来のことを考える時期かもしれないですね。多分、会社員も同じだと思います。

 

野水:結婚する人もいるだろうしね。ライフスタイルが変わりそう。

 

福原:私たちと同じぐらいの年齢の人は、きっと、同じようなことを考えてる人は多いよね。ましてや、コロナの影響もあるし。

 

野水:不安だよね、きっと。お付き合いしている人がいても結婚してやっていけるんだろうかとか、この仕事を続けていていいんだろうかって考え始めたりとか。お仕事は違っても、きっと同じようなことを考えて、悩んでる人はいるよね。

 

 

前後編の2回にわたり、福原香織さんと野水伊織さんの対談をお届けしました。「声優」という、特殊で厳しいお仕事を長年続けてこられたおふたりのお話は、ビジネスパーソンにも参考になることがたくさんあると思います。

やりたいことをできるに変えるために、おふたりとも変化を恐れずに新しい取り組みにチャレンジしています。正解のないVUCAの時代だからこそ、変化をしていくことは大事なスキルなのではないでしょうか。

 

声優同士で仕事論を語る! 福原香織さん×野水伊織さん対談(前編)

声優同士で仕事論を語る! 福原香織さん×野水伊織さん対談(前編)

声優の福原香織さんと野水伊織さん。本記事では、共演も多くプライベートでも仲の良いおふたりの対談をお送りします。

これまでに福原さんの連載で、さまざまな人と対談をしてもらいましたが、同業者(声優)の方との対談は初めてです。声優同士ならではのお話も聞けました。

まずは前編として、お互いの印象や、新型コロナ流行による自粛期間中にどう過ごしていたか、お仕事をするうえで意識していることなど、さまざまなテーマで語っていただきました。

野水伊織さん

10月18日生まれ、北海道出身。プロダクション・エース所属。声優デビュー前からテレビやCM、ラジオなどに出演。2010年、TVアニメ『そらのおとしもの』のニンフ役で声優デビュー。翌年1月には自身がヒロインのハルナ役を演じるアニメ『これはゾンビですか?』主題歌を担当し、歌手活動を本格化。

Twitter(@nomizuiori)公式ブログ(野水・オブ・ザ・デッド

福原香織さん

8月11日生まれ、千葉県出身。ブライトイデア所属。幼いころから声優を目指し、15歳のときに単身上京。2005年声優デビュー。代表作『らき☆すた』柊つかさ役、『咲-Saki-』天江衣役、『Aチャンネル』るん役 他、アニメ・ゲーム・歌手活動など、さまざまなキャリアを積む。2016年から2019年の約3年間、フリーランスとして活動。

Twitter(@FukuharaKaori)ファンクラブ (福原香織オフィシャルファンクラブ

 

初共演はお互い緊張していた

初共演はお互い緊張していた 

福原香織さん(以下、福原):初共演は『そらのおとしものf(フォルテ)』(2010年)だったね。どんな感じだった?

 

野水伊織さん(以下、野水):お互い、最初は壁があったんだよね。もちろん今はそんなことないですよ! でも、当時かおりん(福原さん)は私にとっては先輩で、有名な作品にも出ていて……。私は『そらのおとしもの』が初めてのレギュラーだったから、やっぱり緊張してたね。

 

福原:私は2期からの参加だったからね。現場には伊織ちゃんも含め、新人の方が何人かいらっしゃったんだけど、みんな私より年上で、どういう立場で接したらいいかわからなくて、試行錯誤してたかな。今振り返ると、伊織ちゃんに対してというよりも、現場に対してすごく緊張感を持っていたなって思う。

そのあとも、ときどき共演する機会があったね。がっつりレギュラーで一緒だったのが『新妹魔王の契約者(しんまいまおうのテスタメント)(以下、新妹)』(2015年)だよね。そこでまた話しているうちに、お互いが大人になったっていうのもあって……。なんか文字に起こすと、本当に誤解を招きそう! 仲が悪かったわけじゃないんですよ!(笑)

 

野水:そうそう(笑)。ただ本当に、『そらのおとしもの』のときは、新人の私からすると、うかうか話しかけてはいけない気がしてたな。でも、かおりんも実はデビューしてから長いわけでもないし、周りをフォロー出来る立ち位置という感じでもなかったんだよね。

 

福原:うん。年齢的にもキャリア的にもね。

 

野水:『そらのおとしもの』は主人公を演じていた保志総一朗さんがベテラン。すごくやさしく現場をリードしてくれる座長で、かおりんも私もフォローしてもらう側だったから。私たちがお互いを気にする余裕がなかったんだよね。

 

福原:そうそう。

 

野水:その時はお互いに人見知りっていうのもあって、そんな感じだったけど、『新妹』で「濃厚に絡む(物理)」みたいなキャラクターをやって(笑)。より打ち解けたんだよね。

 

福原:そうだね。『新妹』のあとに私はフリーランスで活動していくことになって、自分で仕事を回していく中で、何回か伊織ちゃんに私から仕事をオファーしたこともあったよね。

役者の仕事だけじゃなく、マネージメントも自分でする立場で伊織ちゃんと接したときに、また視点が変わったな。初めて2人でごはんに行って話してみたら、意外と仕事に対する考え方が近いなと思ったの。大人になったからこその話ができて、すごく楽しくて、そのときにまたさらにぐっと仲が深まったような感じがするな。

 

野水:『そらのおとしもの』のときにも番組派生のユニットを一緒にやったりしていたし、一緒の現場は多かったはずなんだけど、距離が縮まったのは結構最近かもね。

 

野水伊織さん

外出自粛期間の過ごし方

福原:4月はずっと家にこもってたかな。仕事もなくなったし、イベントもできないし、新型コロナウイルスがどういうものなのかもよくわからないし、結構世の中がパニックだったじゃないですか。

だから、私はずっと家にいて「どうぶつの森」をしてた。15歳で上京してから、ゆっくりする期間がなかったから、自分のことを考えたり、「やらない」ことをやるっていう選択をして、私は勝手にプラスにとらえてたんです。4月、5月ぐらいは本当にのんびりしてたかな。

 

野水:私も、かおりんと一緒。自分だけ仕事がないと焦っちゃうけど、みんなでお休み期間という感じだったから(笑)。

結構、朝方まで「どうぶつの森」をしてたかな。あのときは、先が見えなくて半年くらい外に出られない、みたいなことになるかもしれなかったじゃない? 不安もないわけじゃなかったけど、友達と一緒に「どうぶつの森」の中で遊べたりしたから、ちょっと救われたな。映画を見るのが趣味なのに、あの2か月間は意外と見なかったんだよね。

 

福原:私もそう。インプットもアウトプットもしたくなかった。

 

野水:だから”なにもしない自分”から、ちょっとずつ復帰していくのが結構大変だった(笑)。

 

リモートの良さも感じたけど、寂しさもある

リモートの良さも感じたけど、寂しさもある

福原:コロナの影響で自分の番組とか、打ち合わせもリモートの環境を取り入れるようになったね。機械音痴だから、オンラインで打ち合わせとか絶対無理! って思っていたけど、やってみたら意外と簡単だったり、リモートの良さも感じたから、徐々に変化を楽しむことが少しできたかなって。伊織ちゃんはどうだった?

 

野水:私もアフレコの収録が6月くらいからポツポツあって、外に出るお仕事も少しずつやらせてもらいながら、リモートでの打ち合わせとかもあったよ。家でも仕事できるんだっていうのは感じたかな。

私はかおりんみたいに、もともと自分発信の配信をやっていたわけではなかったのね。でも、イベントも中止になってしまったので、みんなに顔を見せたり、何かしたいなと思って、とりあえずYouTubeのチャンネルを立ち上げたの。

 

福原:やってたね! そうだそうだ。見たよ。

 

野水:配信のためにいろいろ準備してみて、そういうものも以前は一切できなかったけど、やれば意外とできるんだなっていうのは発見だったかな。

 

福原:機械は難しいっていう思い込みというか、食わず嫌いみたいな感じだよね。

 

野水:本当はやりたくないけど、やればできる、みたいな。意外と楽しかったかも。

 

福原:私、その頃から今現在も、自分の番組配信はリモートにしちゃってる。スタッフさんも私も、みんな家でできる環境を整えていただいたので、スタジオに行かずにやれてる。

 

野水:ある種、これも”働き方改革”的な(笑)。

福原:ただ、リモートのデメリットもやっぱりあるなって思った。こうして顔を合わせると「最近どうですか」っていう雑談とか、近況報告ができたり、”生の温度感”があるじゃない?

例えば、イベントに来てくれた方の中にも、画面で見てるときは、かおりんそんなにって思ってたけど、生で見たらめっちゃよかった! って感じてくれる人もいるじゃないですか(笑)。 

今はファンの方と接する機会も、ほぼ画面越しだし、”生モノ”の感じがかなり減ってしまったかな。私は結構、そういう温度感も大事に仕事したいタイプなので、そこに関してはちょっと寂しさも感じるときがあるな。

 

野水:便利になった部分もあるけど、応援してくださる方が遠いところから会場に足を運んでくれることが、そうしなくてもいいじゃんってなったら、この業界も変わりそうだよね。配信でいつでも見られるし、わざわざ行かなくていいやってなって、そのうち「配信あったっけ」ってなって”ファン卒業”ってなりそう(笑)。そうなったら寂しいね。

 

福原:声優でも、YouTube配信などをするために宅録環境を整え始める人が多かったもんね。当初は、いまだにマスクをして、リモートを続けることになると思ってなかった。

いずれいらなくなるかもしれないものを買うのが嫌で、私は配信用の照明機材を買うのもずっと渋ってたの。でもついに買っちゃった、女優ライト(笑)。もう自分の顔の影に耐え切れなくて……(笑)。

 

野水:私も、パソコンをのせるテーブルを買ったよ。安いのでいいやと思って、折りたたみテーブルを買って、高いところにあるものをとるための踏み台みたいなものに座って配信やってたの。でも、腰が痛くなって、これはだめだと思った(笑)。 

まだこの状況が続くなと思って、イスを買ったんだけど、今度は角度が悪くて顔が丸く見えるからいやで、ノートパソコンを乗せる台も買ったね(笑)。

 

福原:声優が家で環境を整えて各々がYouTubeなどの番組を持つなんて、私達のデビュー当初からしたら考えられないよね。

 

野水:こんなに、SNSが流行るとも思わなかったもんね。

 

仕事をするうえで意識していること

おふたりが仕事をするうえで意識していること

福原:もちろんお芝居が上手にできるっていうことが前提。でも、この業界にはお芝居が上手な人というのはたくさんいるから、その中で生き残って、ましてや生活していくことって、本当に大変なこと。 

そう考えたときに”人間力”が試されるなって思った。フリーになったときに実感したね。私は多分、もともと「しっかりしてるね」と言われるようなタイプで、確かに、マネージャーに言われなくても時間は守るし、忘れ物もしないし、イベントのときも、基本自分のことは自分でやれる。

でも、そうじゃない、さらにプラスの部分をやっていかないと、人として未熟なままなんじゃないかと。私は社会人経験が声優の仕事以外にないので……。このまま40歳、50歳になっちゃうかもしれないって思ったときに、意識して変わろうと思ったな。 

実は、フリーランスのときに自分の成長のために、ビジネス系の勉強会にも行ったことがあるの。みんな頭が良すぎて圧倒されちゃったんだけど(笑)。社長さんとか、お医者さんとかそういう世界の人たちが同世代にいるんだって思うと、本当にすごいなあって。業種は違うけど、私はまだまだだなあって思う。

 

野水:私は、自分はずっと子どもみたいだなって思ってる。この業界の人たち、全員じゃないと思うんですけど。それこそがキャラクターになったり、個性として求められる部分でもあるんだけど。

そういう個性があれば、マネージャーさんをはじめ、事務所がフォローしてくれて、時間通りに現場に行って仕事さえできていれば生きていけちゃう。でもそれだけじゃ人間としてはだめだよね、みたいなことを考えるときがあるけどね。 

だから、かおりんが言ってることはすごくわかる。そういう、違う世界の人がいるところに行くと私もそう思うだろうな。だから、私はフリーランスには絶対なれないと思う。

 

福原:本当!? 伊織ちゃんは、絶対フリーランスでもできるタイプだと思うよ。

 

野水:かおりんがフリーランスになったときすごいと思ったし、「こういうことをやって勉強になったよ」とか「こういうことをしたんだ」って話を聞いて、「なんてすごいんだこの人……!」って本当に尊敬し直したんだよ。

 

福原:(笑)。

 

野水:私だったらまずやろうと思わないだろうし。でも、だからこそ、普段から「せめてちゃんとしよう」とは思ってる。タレントよりもマネージャーさんのほうが大変な仕事だと思うから。

 

福原:そうだよね。

 

野水:俳優さんだと多分、俳優のAさんにはマネージャーのBさんがつく、みたいな一括管理が多い。でも声優だと、現場によってマネージャーさんの担当が違ったりする。事務所によっても違うかもしれないけど。

この動画配信には誰々さんがつくけど、こっちのアフレコは誰々さんみたいな感じで、ひとりのスケジュールを共有してもらいながら、やりとりしてもらってるんだよね。

 

福原:事務所によっては、ひとりが何十人も見てたりするよね。

 

野水:圧倒的にタレントの数よりもマネージャーのほうが少ないもんね。私がその日の仕事を終えても、マネージャーさんはまた次の現場に行って、家に帰ってスケジュール調整して……っていうことをやってるんだろうなと考えたら「すごい仕事だなぁ、敬意を払おう」って思う。本当に最低限なんだけど、それがかおりんの言う”人間力”なのかな。 

あと、私もこの業界は生き残るのがすごく大変だと思う。だから、私も声優として生活できていて、気がついたら10年。それはすごいことだと思いつつも、この先続けていくにはどうしたらいいかな、というのは考えたりするな。 

そうなると”人間力”と、自分の持っているものをどれだけ出せるかっていうのは大事だよね。今は声優でもただアフレコをするだけじゃなくて、いろいろなことができる間口が広がったからこそ、もっとしっかりしなきゃな、もっとスキルを持たなきゃな、って考えるかな。

 

好きなことが仕事につながった 

福原:私と伊織ちゃんが、やっていて良かったことのひとつだと思うんだけど、私たちって、いろんな仕事をやるじゃない?

 

野水:そうだね。

 

福原:トーク番組もやれば、多分、ほかの事務所だったらNGかも、っていうことにもチャレンジしていて、事務所もとても協力的。そういう部分も、間口を広げることにつながっているのかな。アニメだけにこだわっていたら、多分、私はもうとっくにいなくなっていたと思う。

 

野水:やっぱり、アニメっていうのは、声優の仕事では華やかな部分ではあると思うんだよね。吹き替えにたくさん出演している先輩ですら「アニメに出てないと死んだと思われる」って冗談半分でおっしゃることがあるくらい。

 

福原:アニメ出てないと「消えた」って言われがちだもんね(笑)。

 

野水:そう(笑)。最初は気にしたけど、今はもうあまり気にしてない。もちろん、今もアニメの作品に出られたらありがたいし、出たいと思ってるけど、それだけじゃない。それだけが楽しいことでもないし、いろんな仕事があるよね。 

もともと好きだからやれるんだと思うし、大人になって、やれることが広がったのは嬉しい。

 

福原:だって、伊織ちゃん”ホラーや映画好き”が世に広まってからすごく生き生きしてるもんね(笑)。ホラーのコスプレ、ときどきTwitterにのせてるけど、そのガチ度がすごい(笑)。

 

 

 

そういうのも本人がすごく好きっていう気持ちが伝わってくるから、生き生きして見えるし、オファーする側も、「野水さんに映画評論をお願いしよう」ってなるんだと思う。”やらされてる”のと”好き”なものの発信って全然、熱量が違うから。

 

野水:それは本当に、SNSがあってありがたいなと思ってる。趣味で映画観て、映画の感想を書いてただけなのに、SNSからお仕事につながったからね。

 

福原:昔から好きなの? 映画。

 

野水:たくさん見始めたのはここ5年くらいかな。出演した舞台の主宰の方に、「あなたの芝居は、海外の女優さんの誰々に似てる」って言われたことがあったんだけど、女優さんの名前を言われても、顔しか見たことないから全然わからなくて。どんなお芝居をする人なんだろうと思って、まとめて何本か見たら、「映画、面白い!」ってなって、見始めたの。

それまでは明確な趣味ってなかったんだよね。それが「映画が趣味です」って言えるようになって、映画の感想をSNSで書いていたら、「コラムやりませんか」って声かけてもらえた。

コラムやりはじめたら、映画をよく観る方から、センスいいね! って言っていただける機会もあったり、やっぱりホラーが好きだったから、ホラー映画もめちゃくちゃ見るようになって、お仕事をもらえるようになったんだよね。 

だから、後輩とかに話す機会があるときは、好きなものは掘り下げようってアドバイスする。逆に好きなものをうわべだけで言っちゃうと、なんだ浅いじゃんってがっかりされちゃうから、好きなものがあるならとことん掘り下げていったほうがいいよって。

 

福原:意外と仕事に繋がるんだよね。

 

野水:今は、なんでも仕事になる時代だもんね。前よりは世に出て行ける可能性は広がっている気がするよね。

 

事務所にいて良かったと思うこと

事務所にいて良かったと思うこと

 

野水:他の事務所に行ったことがないから体感だけど、とにかくアットホームだと思う。相談しやすいし、何かあったら怒ってくださいっていう話もできる。昔からマネージャーさんとは、話しやすいかな。

 

福原:今の事務所に入って1年が経ったの。もちろん、フリーの良さもあるんだけど、どうしてもフリーでやるには限界もあるのね。例えば、今年デビュー15周年で、イベントだったりライブだったりをしたいと思っていたのね。結局、コロナの影響で延期になっちゃったんだけど。

そういう、何か年間を通して自分をプランニングしたり、節目のイベントを自分ひとりでやるのは、ちょっと限界があるなって思った。それで、もともと仕事で付き合いのあった今の事務所の社長に相談して、「香織ちゃんだったら、ぜひうちに来てほしい!」って言っていただいて、事務所と契約したんだよね。

事務所に所属するメリットはもちろんたくさんあって、ひとつの組織がチームで動くっていうのが一番大きいんじゃないですかね。

 

野水:今は、VTuberさんとかもでてきていて、声を使った仕事ができちゃう人が、声優っていう枠組み以外でもすごく多くなってきたよね。

そういった間口も広がったからこそ、やっぱり声優じゃないとできないものは絶対にあるし、それは声優事務所じゃないとできないっていうことも多くあると思うんだよね。そこがその界隈のプロの仕事なんだろうなって。

 

福原:事務所がちゃんとしていたり、キャリアがあると質が違う、というのはあるね。でも、やっぱりフリーの良さだって絶対にある。結局、活動する本人、それとクライアント側がなにを重視するかだよね。私は今の時代だからこそ、いろいろな選択肢があってもいいと思う。



 

声優の職業に限らず、多くの人が新型コロナの影響で外出自粛を経験しました。この期間に自分のキャリアや人生についてあらためて考え直した方も多いのではないでしょうか。「好きなことを仕事にする」というのは難しいことだと思われがちですが、おふたりがおっしゃっていたように、今は好きなことを仕事にしやすい時代です。

 

自らできないと決めつけず、やりたいことをできるに変える努力をしていくことが大切ではないでしょうか。

 

 

元モーニング娘。小川麻琴さん ✕ 声優 福原香織さん対談 「これからの働き方」

福原さんと小川さん対談

 2019年までフリーランスとして活動していた福原香織さんと、現在もフリーランスとして活動をしている小川麻琴さんが仕事について語り合いました。小川さんは「やりたいことをできるに変える」ためにフリーランスという道を選び、フリーランス歴は5年を迎えています。同世代のお二人がコロナ禍に感じた「これからの働き方」とは? 

小川麻琴さん

1987年生まれ、新潟県出身。2001年、アイドルグループ「モーニング娘。」に第5期メンバーとして加入。2015年からはフリーランスとして活動。Twitter(@1029makoto)Instagram(@1029_makoto)

福原香織さん

1986年生まれ、千葉県出身。幼いころから声優を目指し、15歳のときに単身上京。2005年声優デビュー。2016年から2019年の約3年間、フリーランスとして活動。現在はブライトイデア所属。Twitter(@FukuharaKaori)ファンクラブ (福原香織オフィシャルファンクラブ

 

ふたりが知り合ったきっかけ

ふたりが知り合ったきっかけ

小川麻琴さん(以下、小川):きっかけは声のお仕事で一緒になったんだよね。かおりんの第一印象は、自分の芯がしっかりある大人な女性って感じだったなぁ。

 

福原香織さん(以下、福原):その収録の時にスタッフの方から、「声の現場は小川さんあまり経験ないからお願いね」って言われてたんだけど、芸能界としてはまこっちゃんのほうが全然先輩なのに、お願いねって言われても、みたいな感じだった(笑)。

でも同世代なのは知ってたから、そこはうれしいなと思いつつ、あのモーニング娘。の小川麻琴さんにどう接したらいいんだろうって思ってたかな。そうしたら、めちゃめちゃフレンドリーでびっくりしたし、すごくうれしかった。

 

小川:そんな風に思ってもらえて嬉しい。 私は収録が一緒だった時に、やっぱりプロの声優さんってすごいなぁって思ったよ。 私には出せない声色を一瞬で作れるんだもん。 収録の時は、声優としてマイク前でする芝居に私が苦戦していたから、かおりんが声の作り方を私に寄せてきてくれたんだよね。

 

福原:逆に私が舞台の現場に行くと舞台のお芝居や動きに慣れていなくて難しかったりするから、それぞれのフィールドがあるよね。

 

小川:確かに、それはそうなのかもね。 ただ、何度も言うけど(笑)、 あの日は「さすが声優さん!」って本当に感動したもん。今まで積み上げてきた経験の全てが今のかおりんに反映されてるんだなぁって。

声優さんってさ、喉のケアとか日頃どんなことに気をつけてるの?

 

福原:人それぞれだね。人によってはずっとマスクしてたり、加湿器を何台もつけてる人もいるけど、私はあんまり過保護にしないで過ごしてるかな。もちろん最低限のケアはしているけど、例えば地方で泊まりの仕事とか何かイレギュラーな時にいつものケアができないと逆に不安になっちゃったりするから、ガチガチにルーティンみたいなものは決めないようにしてるよ。

 

小川:そうなんだね。かおりんは家で何かトレーニングってしたりするの?

 

福原:私はひたすら自分の声を録音して聴くことをしてる。やっぱりマイクに乗った時にどう聞こえるのかが大事だから。トークも3分って決めたら3分時間を計って、決めたトークテーマにそって話をしたり。あとは初見の本を声に出して読んだり。

 

小川:やっぱり日頃の一つひとつの積み重ねが大事なんだね。

 

福原:ジャンルが違うと知らないこと多いよね。まこっちゃんはどうして芸能の世界に入ろうと思ったの? あと、芸能界に入ってみてどうだった?

 

モーニング娘。になるきっかけ

モーニング娘。になるきっかけ

小川:私が小学生のころに「SPEED」さんにどハマりして、私もこういう歌手になりたい! って思ったのがきっかけだよ。 でも、なりたいとは思ったものの新潟の田舎にいて実際どうやったらなれるのかなんて分からなくて。

その頃は、私と同じように歌とダンスが好きな友達と一緒になって、学校の昼休みとかにカラオケ大会を勝手にひらいて歌ったり踊ったりしてたなぁ。 あとは地域のお祭りの時に友達と練習して、それこそ「LOVEマシーン」を踊ったりしてたよ(笑)。

そんな風に漠然と歌手になりたいなぁと思いながら過ごしてたんだけど、私が小学校5年生くらいの時に新潟市に歌とダンスとお芝居を教えてくれるスクールができたんだよね。

早速そのスクールのオーディションを受けて、受かってからは毎週日曜日に片道2時間かけて通ってたの。

 

福原:そんなに遠いんだ!?

 

小川:同じ新潟なんだけど、地元の柏崎市から新潟市までは高速バスで2時間くらいかかるのよ。 そこで地元のちょっとした芸能活動みたいなことをやらせてもらってたんだ。

数年そんな風に過ごしてたんだけど、私が中学2年生になった時にお母さんから「来年から高校受験だし、そろそろ気持ち切り替えて学業に専念しなきゃね」みたいなことを言われて、私もそれには納得してて。

でも、そしたらまさかのモーニング娘。5期メンバーオーディションの新聞の切り抜きをお母さんが持ってきたの。

 

福原:辞めさせようとしてたのに、オーディションはお母さん提案なんだ?

 

小川:そうそう。 お母さんは受かるなんて思ってないから「これを最後にチャレンジして芸能界は諦めなね」的な事だったのだけど。そしたらまさかの受かるっていう(笑)。

 

福原:受かるまでの間が、すごく飛んだね(笑) 。

 

小川:オーディションを受けてるのは周りに一切言ってなかったのね。私自身も受かるなんて思っていなかったから、いちいち言わなくていいやって。

家族と仲良しの従姉妹ぐらいしか知らなくて、友達周りには本当に一切言ってなかったから受かったあとが大変だった(笑)。

受かってから2日間で荷物を全部まとめて東京に上京しないといけなくて、その2日間の中で仲良かった友達には会ったんだけど、放送日まで受かったことは内緒にしないといけなかったから「今日でもう会えないんだ」と伝えたいけど伝えられないし、なんとも複雑な気持ちだった。

でも、従姉妹は東京に行くことを知ってるから1人泣きそうになってるし、他の友達は「もうすぐ学校始まるね。また学校でね」みたいな感じでバイバイして、2日後にテレビや新聞で知ってビックリするみたいな流れ。

受かってからは本当に怒涛の日々だったな。 あと、知らない親戚も友達も急に増えた(笑)。

 

福原:やっぱり親戚増えるよね! 私もデビューした後に知らない親戚や友人が急に増えたよ(笑)。

 

華やかな世界の裏側ではすごく努力していることを知った

華やかな世界の裏側ではすごく努力していることを知った

小川:モーニング娘。に受かってからは、やる事や覚えなきゃいけない事がいっぱいありすぎて、ただただ一生懸命に与えられた事をこなしていくって感じだった。 だから、ホームシックになってる時間もなければ、弱音を吐く時間もなかったの。

 

福原:そういうことを考える暇もないって感じなんだね。

 

小川:うん。テレビで見てるとやっぱり芸能界って華やかな世界じゃない? みんな笑顔でキラキラしてて。

でも実際にグループに入って、世間には見えてないところでたくさん練習をして努力してるんだって知れたよね。

1曲テレビで披露するにも、事前にこんなにリハーサルをやってたんだって驚いたし。 人に感動を与えるパフォーマンスをするって、やっぱり並大抵の事ではないんだなって実感した。

モーニング娘。に入ってからは思うように出来ない自分に落ち込むことも多かったな。 普通では経験出来ないようなことを沢山やらせていただけたのは本当に有り難かったけど、 その時の私は楽しむって感覚より、失敗しないようにちゃんとしなきゃって気持ちの方が強かったかな。

 

福原:それを中学生で経験してるっていうのがすごいよね。

 

小川:合宿オーディションの時も「絶対にカメラの前で涙をみせるものか!」って思って挑んだから、久しぶりに見返すと私すごい怖い顔してるなって思う。

実際は布団の中でひっそりと泣いたり、心の中では「早く家に帰りたいー」って思ってたんだけどね(笑) 。

 

福原:とっても貴重な話が聞けた! 当時、すごく忙しかったと思うんだけど、忙しいときの乗り越え方って何かあった?

 

小川:乗り超え方かぁ。とにかく毎日が必死で、気がついたら時間が経ってたって感じかも。特に最初の1年なんて先輩についていく事だけで精一杯だったし。

でも、そんな中でも楽しみにしてたのが夏休みと冬休み!! 1年に2回、5日間くらいの休みがあったんだけど、 私は毎回必ず新潟に帰ってたな。家族や地元の友達に会えるのがすごく楽しみだったの。 

 

やりたいことをできるようになった

やりたいことをできるようになった

福原:そうやってずっと忙しく働いてきたなかで、モーニング娘。を卒業してフリーランスという道を決めたわけだけど、実際フリーランスで働いてみてどう?

 

小川:んー、スケジュール管理から何から全て自分でしないといけないって部分は大変ではあるかな。先方とのやり取りの時も、自分の身は自分で守らないといけないから、初めましての方からのオファーがきた時とかはかなり慎重にならないといけないし。

でも、フリーランスで活動してる仲間に相談したりしながらなんとかやれてる。 かおりんにも何度か相談してるよね。

もちろん大変な事はあるけど、フリーランスだと自分がやりたいと思ったことには何でも挑戦できるからやり甲斐もすごくある!!

そもそも、小川麻琴としてどんな人生を切り開けるのか挑戦してみたいって思ったのがフリーになるきっかけのひとつでもあったから。

 

福原:フリーランスは大変だけどやりがいはあるよね。自分の人間力が試されると思うし、まわりとの人間関係も深くなる気がするんだよね。さくらインターネットで思い出したけど、フリーランスのエンジニアさんも最近増えてますよね。そういう働き方もメジャーになってきたのかな。

まこっちゃんの働き方でモットーにしてるとか、これだけは譲れないこだわりってある?

 

小川:基本的に「私はこれしかやりません」っていうスタンスではなくて。いただいたお仕事で、自分にもできそう! 面白そう! って思ったものはやるようにしてるかな。

アプリのプロデュースをしたり。東洋大学の先生と一緒に講師として登壇したり。

違ったジャンルのお仕事をやらせていただくと、それがまた別のお仕事にも繋がっていったりするし。 「やったことないからできないです」とは言わないようにしていて、私にこの仕事をって思ってくれる人がいるんだったらトライしてみようってスタンスで結構やってるかも。

あとは、モーニング娘。というグループに感謝の気持ちを忘れずにお仕事したいって思ってる。

 

福原:それは前からよく言ってるよね。えらいなと思う。ちなみに、最近のまこっちゃんはお仕事が休みの日ってなにしてるの? めっちゃトレーニングしてる印象なんだけど(笑)。

 

小川:毎日トレーニングしてるよ(笑)。 日によってメニューは違うけどヨガしたり、筋トレしたり、ウォーキングしたり。 あとは読書したり、動画配信サービスで映画とかドラマを見たりもしてるよ。

 

福原:私はどうぶつの森とか、ゲームをやったりしてるな。コロナ禍はみんな休んでるから、自分も休んで良いんだってちょっと安心しちゃってたかも。まこっちゃんがこれからチャレンジしてみたいことってなに?

 

小川:子供の頃からパンが大好きでね、毎日必ずパンかベーグルを食べてるんだけど(笑)。 いつか自分のオリジナルのベーグルとか商品化して皆さんにお届けできる日がきたらいいなぁって。そういう事にも挑戦してみたいなって思ってるよ。

 

新型コロナの影響で感じたこと

新型コロナの影響で感じたこと

福原:私は逆にもっとゆっくりしようって思った。15歳で上京してこれまでずっと走ってきたなって思ったの。だから、”やらない”ってことをやることかな。自分としっかり向き合う時間を取るようにしたい。

その中で、今自分ができることをじっくり考えていきたいな。コロナ禍はどうしても働き方について考える時期だよね。いつまで続くかわからないし。

 

小川:私は、これを機にパソコンをきちんと使えるようになったほうがいいのかなってすごく感じた。 Zoom会議って何? って状態だったからね。

周りが結構やってたんだけど、そもそもZoomって何? って状態だったし。舞台の稽古もZoomでやってる人が多かったのよ。使い方とか全くわからなかったんだけど、教えてもらって使ってみたら案外簡単だった。知らないことは避けがちだけど、飛び込んでみたらできることもあるよね。

 

福原:オンラインで打ち合わせや稽古ができれば、移動時間が必要ないから良いよね。数カ月でこんなに変わっちゃうって、なんかすごいよね。

 

小川:こういう状況だからこそ前を向くことって大切だと思うし、気持ちの部分でみんなで支え合って頑張っていきたいよね。 

小川麻琴さんからのお知らせ

私、パンとベーグルが大好き過ぎてインスタもパンとベーグルばかり載せていたのですが、 なんとそれを見てくれた鯖バーガー屋さんから連絡が来てコラボさせていただく事になったんです!

8月8日から「MAKOTOかぼちゃサラダ入り鯖バーガー」がMKCAFE とUberEatsで販売開始になり、8月24日にはエクスポジション原宿にてキッチンカーでも出店させていただきますので、是非食べに来ていただけたら嬉しいです!!その日は私もキッチンカーにいますので。

 

あとは、インターネット放送局「WALLOP (ワロップ)」さんで始まった『煌めけ!ワロップ放送局』という番組に毎月レギュラーで出演しています。そちらの方は無料で配信も見ていただけますので、良かったら是非チェックして欲しいです。

詳細等は随時SNSで発信していこうと思っているので、良かったらチェックしてもらえたらと思います。

小川麻琴さんのTwitter:@1029makoto

小川麻琴さんのInstagram:@1029_makoto

 

 

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「Aチャンネル」黒田bb先生×福原香織 漫画家と声優がアニメ現場で出会った

漫画家と声優がアニメを通して仲良くなった! 福原香織×「Aチャンネル」黒田bb先生

福原香織さんの連載第5回目は、漫画家の黒田bb先生との対談です!

Aチャンネルのアニメをきっかけに知り合ったというお二人。プライベートでも二人で旅行するほど仲が良いそうです。そんなお二人にお互いの思い出やお仕事のことを語っていただきました。

黒田bb(くろだびーびー)先生

漫画家。まんがタイムきららキャラットにて「Aチャンネル」連載中。画集「beautiful box」発売中。Twitter:@bbkuroda

黒田bb先生と福原香織 お互いの第一印象

福原:先生、お忙しい中来ていただいてありがとうございます。てよくあるじゃん?

インタビューの最初に(笑)。先生とはもう長いお付き合いでプライベートでも仲良しなので、今回はお互いリラックスしてラフに話そう! 早速だけど、初めて会ったときの第一印象ってどう?

 

黒田bb先生(以下、黒田bb):初めて会ったとき一目見て、かわいい! って興奮しちゃって。かおりんが面と向かって「初めまして! よろしくお願いします」と話しかけてくれてるのに「かわいい…」と心の声が漏れ出て、会話が成り立ってない状態でした(笑)。遠くにいるアイドルを見てるみたいな感覚だったね。

 

福原:かわいい、なんて言っていただいて恐れ入ります。私のbb先生への第一印象は「黒田bb」っていう名前なので、最初は女性か男性かもわからなかったの。どんな人なんだろうと思ってスタジオに入ったんだけど、綺麗な女性の方がいるなと思って。

「この方が原作の黒田bb先生ですよ」ってその当時のbb先生の担当さんに教えてもらって、こんなキレイでスラッとした方があの漫画を描いているんだ! ってすごく驚いた。

 

それで「るん役の福原香織です」って挨拶をしたときに急に先生がパニックになって(笑)。

「どこから声でてるんですか、かわいい!!」 って。何か会話がちょっとかみ合ってないなっていう(笑)。そんな第一印象かな。

 

黒田bb:可愛いとかは外見や声の話ですけど、内面の話をするとすごく真面目でしっかりしてるなって思った。

演技への姿勢もそうだけど、やりとりとかも。みんなでご飯に行ったときも気遣いができる人なんだなと。その印象は今も変わってないかな。

 

福原香織さんと黒田bb先生

黒田bb先生が漫画家になったきっかけ

福原:そんな先生にどんどん突っ込んで聞いていきたいんですけど、そもそもどうして漫画家になろうと思ったの?

 

黒田bb:最初は漫画家になろうとは思ってなくて、ともかく絵が描ける仕事に就きたくてイラストレーターを目指してました。その後、漫画を描きませんかと声をかけられた流れで漫画にも挑戦して。

絵の仕事がしたかったのは、絵以外の仕事だとそれを言い訳にしてしまいそうで。

 

「自分は別の仕事をしてるから」「時間がないから」ということを言い訳にしたくなくて。仕事だったら絵が下手だろうと全部自分のせいじゃないですか。ずっと絵と向き合ってるんだから。そういう状況にしたかった。

 

福原:カッコいい! 確かに言い訳って探そうと思ったらいくらでもでてきちゃうし。なんかこう、ずるい場面で切り札として出せちゃうしね。でも、あえて厳しい環境に身を置くって勇気がいるけれど、思い切ったね。

 

黒田bb:絵を描くこと以外で、できることが少ないから…(笑)

 

福原:そうかな!?

 

黒田bb:そうなんだよね。今までバイトや他の仕事もやってきたけど、本当に向いてなくて。人より少しできることが絵しかないっていうのもあったから、それで頑張っていきたいなって。

 

福原:最初はストーリーがある漫画というよりは1枚絵を描くことが多かったの?

 

黒田bb:漫画も描いてたけど、1枚絵のほうが圧倒的に多かったかな。

 

福原:へえー。なんで、Aチャンネルの連載がはじまって、アニメ化になっていったの?

 

黒田bb:ブログに4コマを載せてもらっていたときに「まんがタイムきらら」の編集の方に描いてみませんかと声をかけていただいて、単行本を出して。それからありがたいことにアニメ化が決まって…

雑誌によるけど、編集さんがネットで描いている方に声をかけてスカウトすることも最近は多いから。

 

福原:イマドキって感じ!

 

黒田bb:もちろん原稿を持ち込んで掲載されることもあるし、いろんなパターンがあるみたいだよ。

 

福原香織さんと黒田bb先生の対談

黒田bb先生が漫画家をやっていて大変だなと思ったこと

福原:連載が始まって12年。12年って本当にすごいことだけど、連載をやっていて大変だったことはある?

 

黒田bb:同じ作品を10年以上描くって自分的には大変で。同じネタをなるべく使わないようにするって縛りをしてるせいもあるんだけど。

担当さんと打ち合わせをしていても、「あのネタも使ったし、これもやったし…」ってネームを作るのにどんどん時間がかかるようになってきているかな。そこを頑張ってひねり出してますね。

 

福原:常にアンテナを張り巡らせてるんだなと思うのが、bb先生と2人で会話してて、本当に何気ない雑談をしていても、「それネタに使えるかも」って携帯にメモってたりとか。

ちょっとでもネタがあったらメモしてストックして。連載が続くってことはアウトプットし続けなきゃいけないんだなって思って。

 

黒田bb:たしかにそう言われるとなんだかすごいことに聞こえるんだけど、この会話面白い!って思うと、ここだけの話にしておくのが勿体なくて。それをもっといろんな人に知ってほしいから、ネタに使わせてもらってます。

 

福原:だからAチャンネルを読み返すと、私がなにげなく言ったネタ(?)がいくつかあったりするよね(笑)。

 

黒田bb:(笑)。かおりん面白いこと言ってくれるからね。

Aチャンネルのアニメ化が決まったときの気持ち

福原:タイトルのアニメ化が決まったときって、どんな気持ちだったの?

 

黒田bb:素直にうれしかった!もともとアニメが好きだったので。自分の作ったキャラクターが動いて、声をあててもらえることへの期待でいっぱいでした。

 

福原:キャストオーディションのときは先生もスタジオにいましたか?

 

黒田bb:いました。

 

福原:そういうときってどんな感じなの? 自分で想像しながらこのキャラクターはこういう声なのかなとか思いながら聞いてたの?

 

黒田bb:大体こんな声がいい、というイメージはあったから、それを踏まえて聞いてたね。でも声優さんってみんな上手くて見ているだけで楽しくて…感動しっぱなしでそっちに気を取られたりもしてた(笑)。

 

福原:制作サイドに意見も出したりしたの?

 

黒田bb:会議にはなるべく出席して、積極的に意見を出してたよ。

 

福原:そうだったんだ! やっぱり私も、るん役が決まったときはすごくうれしくて。アニメのエンディングテロップで一番目に自分の名前が載るってそうそうないので、貴重な経験をさせていただきました。

 

2人の思い出について

黒田bb先生 × 福原香織2人の思い出

福原:原作の先生とこんなに仲良くなったのは初めてで。同世代だし、私がキレイなお姉さんを好きというもあるし(笑)、いろいろ話してみたいっていうのもあって。 やっぱり主役って座長なわけじゃないですか。現場の空気も良くしたいとか色々な思いがあって、先生にご飯行きませんか? って声かけたんですけど、すごく喜んでくれて。

その後、ちょいちょいご飯に行ったり、一緒にお酒を一晩中飲んだり、カラオケオールとかしちゃって。これ、今だから言える話だけど(笑)。あと、二人で京都へ旅行もしたよね。

 

黒田bb:お互いお酒が好きというのもあって、とにかく飲んでたよね(笑)。あと、カラオケに行ったときに、かおりんに歌ってもらうのがすごくうれしかった。

 

福原:カラオケに行ってAチャンネルの歌をうたうと、先生がとても喜んでくれて(笑)。 私も楽しくなっちゃう。もう10年くらいの付き合いになるね。

Aチャンネルがアニメ化したときの思い出

黒田bb:かおりんはAチャンネルがアニメ化した当時の思い出はある?

 

福原:るんみたいな役って私のファンの方は好きな人が多いと思うんですよ。私の天然の声とか、かわいい感じのキャラクター。なので、ファンのみなさんも楽しんで作品を見てくれました。

日常感のあるまったりとした作品ということで私自身もすごく楽しくて。現場が穏やかでみんなが楽しく仕事をする人たちでした。自分の仕事をプロとしてこなすっていうか。

 

これ嫌だったなんて思い出が全然なくて。劇中歌が毎話ある作品だったから、レコーディングもすごく多くてやりがいがあった。 でも、今だからこそ言えるけど、オンエア時期が2011年4月。震災があった直後の大変な時期で。

 

アニメがオンエアできるかどうかっていう感じにもなってたじゃない? 私もみんなも気持ちがざわざわしてどうしようって中、なんとか必死に作って世に出たので、自分の中でも乗り越えた感がある、すごく思い出深い作品。

 

黒田bb:私もあの時期は精神的に落ち込んで手が止まりそうになってたんだけど、そんなときに「Start(Aチャンネル第2話劇中歌)」の完成品が事前に届いてたので、それをずっと聴きながら気持ちを上げて仕事をしてたな。

息抜きの方法

福原:漫画家さんの息抜きってどんなことをしてるの?

 

黒田bb:仕事とは別のらくがきを描く。多分そういう方多いと思います。かおりんは?

 

福原:なにもしないこと。仕事柄、インプットやアウトプットをすることが多いから、なにも情報を入れない。水族館とかも好きなんだけど、本当の意味での息抜きはもうなにもしない。

 

水族館も私の中ではインプット。ペンギン今日元気かな?とか色々考えちゃう(笑)。癒されるんだけどね。 

福原香織の得意な役とやってみたい役

黒田bb:かおりんは得意な役とやってみたい役はある?

 

福原:得意な役は天然ぽい感じとか、かわいい感じの女の子。あと、ちょっとおとなしい子とかかな。やってみたい役は王道の魔法少女。セーラームーンの世代だから。そういうのを見て育ってるからアニメといえば魔法少女! みたいなイメージがあるので、一度ぐらいはやってみたいと思ってる。

 

黒田bb:へえー意外! 視聴者として見るならどんなアニメが好き?

 

福原:え、逆にどんなのが好き?(笑)。

 

黒田bb:現在と小さい頃で好きな傾向が違うかも。今だと昔はほとんど見なかった癒し系アニメが好き。

 

福原:そうだね。私も穏やかなアニメがいいかな。いい意味でなにも考えなくていいから。でも、昔はセーラームーンが本当に好きだったな。

 

黒田bb:セーラームーンは、ほとんどの女の子が通る道だよね。

仕事のやりがい、頑張っていること

福原:先生はどんなときに仕事のやりがいを感じる?

 

黒田bb:「ここを見て欲しい!」と描いたものを読者さんが感じ取ってくれて、その感想をブログなどに書いてくださってるのを読んで、ちゃんと伝えたいことが伝わったんだなって実感できたときにやりがいを感じるかな。

 

福原:素敵。読者の方の声が励みなんだね。

 

黒田bb:やっぱり、うれしいよね。励まされます。

 

福原:仕事をするうえで、頑張っていることは?

 

黒田bb:最近はアンテナを張ること。年齢が上がると感覚が鈍ってくるような気がしていて、時代とともに変化していきたいという気持ちがこの仕事を始めたときからずっとあって。その時代に沿った絵柄や、漫画のノリだったり処理の仕方とか。

 

そういうものを取り入れていきたくて。そのために新人さんが描いたものや、流行ってる作品を見て勉強してます。今、こういうものが受け入れられてるんだなって。まぁ、ちゃんとできてるかはわかりませんが。

 

福原:すごい。だからこそAチャンネルは今でも進化し続けているんだね。これからも応援しています。bb先生、今日はありがとうございました。

 

黒田bb:ありがとうございました!

 

サイン色紙をプレゼント!

ご協力いただいた黒田bbさんから告知

まんがタイムきららキャラットで連載している女子高生の日常4コマ「Aチャンネル」が10巻まで発売中です。

それと「きららファンタジア」というアプリゲームにAチャンネルも参戦してます。 かおりんも、るん役で出演してますので、ぜひプレイしてみて下さい!

 

 

福原香織さんの連載記事はこちら

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声優とアニメプロデューサーのお仕事 福原香織さん ✕ 田中宏幸さん対談

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今回の記事では、株式会社サイバーエージェント アニメ&ゲーム事業戦略室副室長の田中宏幸さんと声優 福原香織さんとの対談の様子をお届けします。「かと*ふく」のプロデュースをきっかけに知り合ったお二人。普段なかなか聞くことのできない「アニメプロデューサー」のお仕事についてもお聞きしました。

 

サイバーエージェントでアニメのプロデュース

ーー本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、田中さんは現在どのようなお仕事をされているのか教えてください。

田中 宏幸さん(以下、田中):2年前にエイベックスピクチャーズからサイバーエージェントに転職をして、主にアニメのプロデューサーとして活動をしていますね。サイバーエージェントにはアプリゲームやAbemaTVといった事業もあるので、そこをうまく活用しながらアニメをプロデュースをしています。

 

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田中 宏幸さん
株式会社Digital Double(デジタル ダブル) 取締役 株式会社サイバーエージェント アニメ&ゲーム事業戦略室副室長 「這いよれ! ニャル子さん」「Wake Up, Girls!」「ユーリ!!! on ICE」などのアニメをプロデューサーを担当

 

ーー福原さんと田中さんはいつ頃からお仕事を一緒にされてるんですか?

福原 香織さん(以下、福原):もう8年くらいですかね?

 

田中:2011年10月からBSフジさんで放送していた「アドリブアニメ研究所」という声優バラエティ番組で一緒に仕事をしましたね。その時が初めて会ったというわけではないんですけど、ちゃんと仕事をしたのはそれが初めてです。

 

福原:その番組からかと*ふく(加藤英美里&福原香織)という声優ユニットを組んで、歌の活動にも派生したんです。そこのプロデュースを田中さんがやってくださっていました。5年くらい活動しましたね。

 

シングルやアルバムCDをリリースしたり、アニメタイアップとか、ライブとか、色々やらせていただきました。穏やかな人たちの集まりだったので、みんなで楽しくやってました。他にも、田中さんが関わっているアニメ作品に声優として何作品か出演させていただいたりもしました。

 

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ーーお二人が初めて会った時の印象はいかがでしたか?

福原:初めて会ったときは、まだ私がコミュニケーション術を身につけていない時期だったので、一回りぐらい年上の方とどう喋ったらいいかわからなかったです。

深い話やプライベートの話をできるようになったのは一緒にお仕事を始めるようになって少し時間が経ってからですね。今でこそ超フランクに話せる関係だけど、最初は”プロデューサー”ということもあり、粗相のないように気を使っていました。

 

田中:福原さんは真面目な感じでしたね。僕と福原さんが初めて一緒に仕事した当時、声優のバラエティ番組って、ほとんどなかったんですよ。今でこそそういう番組も増えてますけど、当時は僕も模索しながらやっていたんです。

番組制作にあたっていろいろと福原さんからも意見をもらったり、番組スタッフとも直接会話してもらったりしてました。 意見交換しながら番組をやった覚えがあるので、真面目な方なんだなあという印象です。

いまは真面目にプラスしてちょっとやわらかさが出てきてるけど、昔はもう少し張りつめた感じでしたね。

 

福原:確かに良く言われる(笑)。年を重ねて丸くなったのかもしれません(笑)。

 

田中:ひと現場、ひと現場に真面目に取り組んでいましたね。いまが真剣じゃないってわけじゃないですよ(笑)。

 

フリーになっても変わらぬ付き合い

ーー他に初めて会った時の福原さんと現在の福原さんで変わったなと思うことはありますか?

田中:チャレンジマインドがすごくあるから、常に新しいことにチャレンジしてるような感じがしますね。昔もいまも全力投球だと思うんだけど、少し肩の力を抜いて何のためにやってるのかを考えてやっているな、って傍から見てると思います。

フリーランスの時期を経てるから、コミュニケーションが苦手なんですっていうのは済まされない状況を自ら作ったのが大きいんじゃないですかね。

 

福原:修行でしたね。フリーランスの3年で一皮むけたと思います!

 

ーーフリーランス時代の福原さんと田中さんはお仕事を一緒にしたことはあるんですか?

福原:フリーになったばかりのときに、イベントの運営を手伝っていただきました。フリーになって一人ではやりきれないこともありました。そんなときに田中さんをはじめ、今までお世話になったスタッフさんたちが助けてくださって本当にありがたかったです。

あとは飲み友達のような感じで定期的に会って、積もる話があればお互い言いあったりって感じの3年間でしたね。

 

田中さんって表向きはいい意味でいつもニコニコしてて、結構ヘラヘラしてるんです。…ほめてますよ!!(笑)。でも、それは田中さんなりの仕事術のひとつだと思っています。近寄りがたさが出ないのは田中さんのすごいところですね。

いまも偉い方ですからね。昔からそういうスタンスなので、一緒にものづくりをしながらこうやって仲良くなっていけたのかなって思います。

 

ーー一緒に仕事をしていて、お互いのここがすごいと思ったことを教えてください。

田中:プロデューサーの仕事って枠組みを作る仕事が多いんですね。枠組みを作るところ以降ってクリエイターさんや役者さんに委ねる部分が大きいです。

ひと現場、ひと現場を限りある時間の中で100%の力を出してもらうことがすごく大事だと思うんですね。そんな中で福原さんは率先して他の役者さんを束ねてモチベーションを上げることをしてくれるのでありがたいです。

 

福原:皆さん「プロデューサー」っていろいろなイメージをお持ちだと思います。ただ、なんとなくプロデューサーっていうとやっぱりガツガツギラギラ風なイメージがあると思うんです。でも、田中さんって役者目線で見ると縁の下の力持ちなんです。

 

役者がスタッフさんとコミュニケーションをしたいけど、ちょっと言いづらいなってことが出てきた時に先回ってサポートしていてくれる。それも、やっておいたよって感じではなく、さりげなくケアをしてくれるんです。役者が気持ち良くお仕事できる場を整えてくれる。楽しく、そして集中して仕事をできる現場作りをナチュラルに整えてくれるのがすごくありがたいなと思ってます。

 

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インターネットにより業界に変化

ーーAbemaTV もそうですけどインターネットが発達してネットでアニメも見られる時代になりました。以前と比べて業界に変化はありましたか?

田中:まさにビジネス的に言うとアニメも視聴習慣が大きく変わりました。ビジネスチャンスは海外にも広がっているし、キャラクタービジネスとしてもアプリゲームの存在感もすごく大きくなってます。

アニメのプロデューサーとしてコンテンツ開発をすること自体は変わらないですけど、どういう環境でやるのかっていうことがシフトしてます。お客さんの動向がシフトしてる結果、自分も転職を決断してますしね。

いまはひとつの会社にずっと居る時代ではないかも知れないし、サラリーマンである必要すらないのかも知れない。特にプロデュサーの場合は自分自身のスキルが大事ですね。

 

福原:もちろん基本はお芝居が出来ることは前提の話ですが、近年は声優がよりタレント化したと思いますね。私がデビューした当時はお芝居にプラスアルファで歌とかダンスができたらすごいと言われていました。でも、いまそれができるのが当たり前で、できないと選択肢が狭まるようになってきてますね。だからこれからデビューする人は正直大変な部分も多いと思います。

 

あと、アニメのアフレコ現場なんかだと、昔は先輩がたくさんいる中で新人が数人居るような現場が多かったけど、いまは新人さんがいっぱいいる中でキャリアのある人が1人、2人のような現場も結構多くなっていて。そこで私たちができる事ってなんだろう?っていうのは最近すごく考えるようになりましたね。

先輩が少ないからスタジオでのマナーや作法を教えられる機会も減ってきてるし、私自身もどう教えてあげるのがベストなんだろうって。そもそも私なんかが力になれるのかわからないけど、でもその辺は少しでも新人の子にも貢献できたらいいなと思っています。 

オリジナルアニメの企画開発

ーー現在、お二人がお仕事で特に熱量を持っておこなっていることを教えてください。

田中:いまはオリジナルアニメの企画開発をおこなっています。アニメとアプリゲームのメディアミックスのプロジェクトを制作プロデューサーとしてやってますね。

あとはDigital Doubleという会社で役員をやってるんですけど、そちらは音楽制作であったり、マネージメント事業をやる会社です。アニソン歌手の鈴木このみさんに今年から所属していただいたり、現在は、新人の声優さんをオーディションで一般募集をしています。

 

自分の中で音楽とアニメはすごく密接にやってきているので、ようやく音楽をやる場所とアニメをやる場所両方の足場ができたので、それを頑張ります。「這いよれ! ニャル子さん」「Wake Up, Girls!」「ユーリ!!! on ICE」という作品は音楽と切っても切れない関係でしたね。

 

福原:私は松岡修造さんみたいなタイプなので割と全部に熱量があるタイプではありますが(笑)。昨年11月にフリーランスから声優事務所に所属したので、環境や周りの人も変わってゼロから構築しなければならない部分も出てきました。

あと、いま過去を振り返るともっとこうできたなって事がいくつかあるんです。後悔とかそういうのじゃなくてね。それを沢山経験を重ねて30代になったいまだからこそ、実践出来るんじゃないかと思ってます。

 

例えば、チームでどう士気を上げていくかとか。昔はそんな余裕はなかったんですけど、どうしたら働きやすい環境づくりができるかな、私が今の事務所に入ったことでどうしたら事務所やマネージャーさん、後輩たちに良い影響を与えることができるかなという事を考えながら、日々の仕事と向き合っています。

みんなが気持ち良い場で、気持ち良く仕事が出来れば、結果はおのずとついてくるような気がするんですよね。

 

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アニメプロデューサー 田中宏幸さんの「やりたいこと」

ーーさくマガのコンセプトである「やりたいことをできるに変える」に関連して、いま「やりたいこと」とそれを実現するためにどうしようと考えているかをお二人に語っていただきたいです。

田中:僕は意外とネガティブ思考もあって、やってみてダメだった時にどういう価値が残るんだろうというのは常に考えてます。「この作品をやる」っていうのはただ面白いからやりたいとかそういうことじゃなくて、この作品に会社のお金を投資をしてやる事はどういう意義があって、万が一いい成績が残せなかったとしてもどういう価値が残るのかを考えています。

仮に今回がダメだったとしても、良いクリエイターと向き合えるのであれば苦労する価値があるな。といったことを考えたうえでやった結果、当たったらまた次のステップに入るみたいな感じです。

 

なので、やりたいことを考える時の判断基準としてはそういうところを考えます。 それともう一つあるのが、DigitalDoubleというアーティストや声優のマネージメント会社作り、現在はジャストプロさんと合同で、声優のオーディションも募集中なので、総合的にアニメコンテンツビジネスの広いところリーチできる環境を作っています。移籍してくれたアニソンアーティストの鈴木このみさんのライブツアーも6月から始まります。

 

福原:私は今年の11月で声優デビューして15年になります。いまは自分が何がしたいかももちろん大事ですけど、誰と何がしたいかってこともすごく考えるんです。田中さんもおっしゃるように結果が出る時もあれば、思うように結果が出ない時とか、エンタメなので当然出てくるんですよ。

万が一思うように結果が出なかったなって時にも、自分の考えや軸がしっかりあって、そこへ向けてしっかりやれていれば悔いはないっていうか、ちゃんとその先の扉も見えてくるんじゃないかなって気がしてます。

あと、やりたい!って思ってたはずなのに、いつの間にか後回しになっていたり、いつかやろう…!ってなってしまっていることが、案外ポツポツと落ちているので。それを拾っていく一年にしたいです。ファンの方にも喜んでいただける一年にしたいですね。