ドニ―が『天龍八部』を選んだ理由は、主役の喬峯という人物に対して特別な思いを抱いており、彼こそが真の武芸者だと感じているためだという。「誰をキャスティングしても観客が満足するとは限らない。胡軍(フー・ジュン)主演のドラマ(03)や黃日華(フェリックス・ウォン)主演のドラマ(97)も古典的な上、ドラマと映画とではスタイルが全く異なる。ドニーは当初、プレッシャーが大きかった」と、エグゼクティブ・プロデューサーの朱瑋傑(チュー・ウェイジェ)は当時を振り返った。
「小説を再読し、喬峯が英雄とされる理由は、比類なき武術の達人であるがゆえだけではなく、現代の我々の心に響く人物像だからだった。今、改めて探求する価値があると感じた」とドニーは言う。
「喬峯の人柄はとても魅力的だと思う。優れた武芸者であることに加え、自分自身に対して誇り高く、同時に率直で正直な凛々しさを持っている。濡れ衣を着せられ、侮辱されても、それらすべてに耐えられるだけの強靭な精神、そして忍耐力が彼には備わっている」
「違う時代に制作された作品は、それぞれの時代の社会情勢、雰囲気や文化を反映する。私の喬峯は2023年の感覚で撮影している。自分に対するすべての批判に向き合い、言いたいことはあれど何も言うことができない。それでも喬峯は自分が正しいと思うことをし続けるんだ」
「愛、仁義、友情、家族愛という信念を持ち続けることで、誰もが喬峯になれる。周囲にもそのことを期待する。他人に理解されず、信じてもらえない喬峯の境遇は、現代の人々も共感する面があるのではと思う。常に愛情と正義を持ち続けた喬峯は真の英雄だと思う」と語る。
「“ヒーローにもかかわらず、誰にも理解されない喬峯”という矛盾したキャラクター性がドラマティックであり、現代人の共感を呼ぶ」と、ドニーは自信をみせる。