『君嘘』『ここさけ』の舞台裏 アニプレックスの宣伝担当者が変人だった

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こんにちは、ライターのカツセマサヒコです。 皆さんは変人を見たことがありますか? 露出狂や下着泥棒は犯罪なので別にして、ここで言う変人は「考え方がイっちゃってる人」とか「普通はやらないだろってことを平気でやっちゃう人」とか、そういう人です。 僕はこれまで変人に出会ったことがあまりなかったのですが、この度「ソニーミュージックグループでアニメビジネスを展開する株式会社アニプレックスにかなりガチな変人がいるから取材に来てくれ」という依頼を受けたので、晴れて変人との面会チャンスを得ることができました。出会い頭にパイ投げとかされたらどうしよう。

変人が勤めているソニーミュージックグループのビルは市ヶ谷駅にあります。ビルの前に200日くらい立っていたら、有名アーティストを見ることができるかもしれませんね。 (でも迷惑行為になるので絶対にしないでください) 会議室に通されて、待つこと5分 ガチャ……

カツセマサヒコ「あっ、きた!」

「こんにちは~」

今回紹介してもらった、ソニーミュージックグループ 株式会社アニプレックス所属 あいちゃんさんです!

大好きなアニメの仕事ができる、若手にもチャンスがある企業へ

カツセマサヒコ「あいちゃんさんは今年の4月で入社5年目なんですよね。まだ若手の部類に入ると思うんですが、ソニーミュージックグループに入社した動機って覚えていますか?」

あいちゃん「大前提は、アニメが好きだったからですね。学生のころから絶対にアニメの仕事がしたいと思っていて、企業研究を進めるうちに作品の魅力を届ける『宣伝』という仕事に興味を持ちました」

あいちゃん「アニメメーカーは何社かあるのですが、アニプレックスでは若いときから宣伝プロデューサーを任せられるなど、早くから活躍できる土台があるところに魅力を感じて。それでソニーミュージックグループを受けようと思ったんです」

カツセマサヒコ「じゃあ第1志望がソニーミュージックグループだったんですね」

あいちゃん「そうですね。僕、この会社の面接は2年連続で受けてるんですよ。1年目は最終面接で落ちちゃって、そこから留年して、2年目で受かりました」

カツセマサヒコ「え、わざわざ就職留年してでも、入りたかったんですか!?」

あいちゃん「いえ、朝起きれなくて大学の単位落としたからです」

カツセマサヒコ(それって変人っていうかバカなのでは……?)

あいちゃん「でも入社してから気付いたんですけど、うちの会社は『2年連続で面接受けたら入社した』っていう人が結構いるんですよ。わざわざ2度受けるってすごい労力かかるのに、それでもここで働きたいと思う熱意を持った人が多いんでしょうね。朝起きるのが苦手な人が多いだけかもしれませんが」

カツセマサヒコ「そうなんだ! たしかにオフィスを見てると、楽しそうに働いてる人は多いですね」

思ったよりカタい営業時代

カツセマサヒコ「初期配属はどんな部署だったんですか?」

あいちゃん「最初は営業部です。アニプレックスが取り扱うアニメやバラエティのレンタルDVDの販売営業でした。TSUTAYAさんやGEOさんといった大型店以外の、卸し業者や法人に商品を売りに行く、典型的な営業マンでしたね。そこで9カ月働いてから、今度は今いる宣伝部に異動。TVアニメや劇場アニメ、アプリなどの宣伝に関わっています」

カツセマサヒコ「入社前後のギャップとか、なかったんですか?」

あいちゃん「エンタメ業界って服装とかいろいろと自由なイメージだったんですが、初期配属が営業部門だったので、スーツまでいかないまでもそれなりにきちんとした格好をしていました。あと、夜が遅いイメージがあったんですけど、思ったより早くあがれていたんで、そこはギャップといえばギャップでした」

あいちゃん「どちらかというと宣伝部になってからは、入社前のイメージに近かったです。アニメファンだとアニメメーカーの中の人たちのことも徐々に詳しくなるんですよ。だから働くイメージみたいのは入社前から自然と沸いていましたね」

好きなアニメ作品のラジオに出演してピアノ演奏までしてしまう

カツセマサヒコ「あいちゃんさんがどうして変人だと言われているのか掘り下げたいんですけど、特異な経験ってされたことありますか? 仕事でこんなんやったよ! みたいな」

あいちゃん「いちばん大きな経験は、『四月は君の嘘』というアニメで、初めて宣伝プロデューサーを担当したことです。宣伝プロデューサーは、その作品の宣伝における責任者のポジション。原作のコミックスを大学時代から好きで読んでいた作品だったので、宣伝プロデューサーとして携われたのは本当にうれしかったですね」

アニメの台本にしっかりと名前が載っている。自分の好きな作品に関われるのは、夢がある。

カツセマサヒコ「お、その中で変人エピソードありますか? 全裸でスクリーンに突撃したとか」

あいちゃん「普通に捕まりますよそれ……。そうですね、『四月は君の嘘』の主人公は、ピアノを弾くんですんですけど、僕もこの作品の宣伝プロデューサーにさせていただいたからには、ピアノをやってみようと思ったんですよ」

カツセマサヒコ「……どゆこと?」

あいちゃん「同番組のラジオがあるんですけど、そこの告知コーナーのBGM、自分のピアノの生演奏にしてもらって、毎回ピアノ弾いてました

カツセマサヒコ「それ許されるの? ピアノどのくらい弾けるんですか?」

あいちゃん未経験でした

カツセマサヒコ番組的に事故すぎるでしょそれ

あいちゃん「曲は作品中でも使われたドビュッシーの『月の光』なんですけど、すごい良い曲なんですよ。あと、この作品の名シーンのひとつに、主人公が演奏を途中で止めてしまったけども、ヒロインが『アゲイン』って言ってまた演奏を始めるシーンがあるんです。だから僕もその告知コーナーの間、パーソナリティを務めるキャスト陣から間違える度に『アゲイン』って言われ続ける、そしてまた弾き直すっていう展開にしてみました。それを半年以上、隔週で配信してたんですけど、『アゲイン』の回数は、もう数えたくもありません」

カツセマサヒコ「公私混同しすぎてるけど、確かにプロモーションとしておもしろいからすごい」

あいちゃん「ちなみにこれがその番組のラジオCDなんですけど、普段、告知コーナーはCD化するときにカットするんですよ。でも今回はピアノ演奏があったので、CDを作ったメーカーさんが告知コーナーも入れちゃいました

カツセマサヒコさすがに自由すぎるでしょ……

『のだめカンタービレ』とのコラボが海の向こうで話題に

カツセマサヒコ「ほかにもぶっとんだ企画ってあったんですか?」

あいちゃん「変化球の告知はほかにもありましたね。『四月は君の嘘』のホームページで『のだめカンタービレ』の二宮先生と講談社さんにご協力いただいて『のだめカンタービレ』の作中に出てくるマングースをHPに設置したんです」

あいちゃん「それで『#君嘘応援』のハッシュタグがツイートされると、マングースがどんどん大きくなるという仕組みを作ったんですけど、『最終的に何かが起きる!?』 といったニュアンスの煽りを入れて、ユーザーにツイートを促したんです」

カツセマサヒコ「それおもしろい! 何ツイートぐらいいったんですか?」

あいちゃん「今の時点で1万6,000ツイートですね。想定では1万ツイートぐらいかなと思っていたのですが、それを大きく超えてしまって。マングースがもう、画面におさまらないんですよ」

カツセマサヒコすごくシュールなことになってる

あいちゃん「ちなみに、1万ツイートまでいけたのは、海外のファンの方たちの協力があったからなんです。予期しなかったことなんですけど、アメリカと欧州、アジアを中心に、『ツイートされると、シナリオが変わる』っていう都市伝説みたいのが生まれたようで」

あいちゃん「英語版HPに記載された『奇跡が起こるかも?」という表現が、ヒロインに起きる残酷な未来をハッピーなものに変えられる、という風に思われて広まったようです。それを受けて最終回に向けてツイート数はどんどん増えていって、それまで4,000ツイートぐらいだったのが、最終回の直前には一気に1万ツイートまでいっていました

カツセマサヒコ「伸び幅はんぱない! 『四月は君の嘘』は海外でもそれだけ需要があったんですね」

あいちゃん「そうですね。うちの海外チームからも、『現地でも本当に人気!』という話を度々聞けていたので、うれしかったです」

宣伝施策の作り方

カツセマサヒコ「宣伝プロデューサーって、その作品の宣伝になるなら本当になんでもやれちゃうってことなんですか?」

あいちゃん「なんでもではないですけど、それが作品にとってプラスに広がるなら、どんどんやろうっていう姿勢ではありますね。宣伝はイベントのグッズも制作していて、これは『四月は君の嘘 フィナーレイベント』のパンフレットなんですけど、台割からカメラマンを誰にするか、どこで撮るか、いつ撮るか、というところまでぜんぶ宣伝の僕が調整しています。今回は『背景が主役』というコンセプトで、作中の場所に声優さんに行ってもらって、その写真を載せるっていうパンフレットにしました」

カツセマサヒコファンならたまらなすぎる。作品愛を感じるし、好きなものを全力でPRできるのは確かに楽しそう」

あいちゃん「そうですね、これはぜひ経験してもらいたいですね」

カツセマサヒコ「でもそんなに企画って、ポンポン出てこないものじゃないですか? どうやって考えてるんです?」

あいちゃん「僕も企画とか、学生時代は全然考えてこなかったし、考え方もわかってなかったですね。だから思いついたらどんどん紙に書くか、口に出して、周りに伝えるってことから始めて」

あいちゃん「それでも思いつかなければ、外を歩く。前に何も浮かばなかったから、実家から自宅の高円寺まで20キロ近く歩いて。歩いたはいいんですけど、疲れただけで何も浮かばなかったです(笑)」

カツセマサヒコ歩き損すぎる

宣伝施策の作り方

カツセマサヒコ「あいちゃんさんは、どんな新人が入ってきてほしいとかありますか?」

あいちゃん「アニメの世界で、『アナ雪のDVD売り上げ超えたい』とか、自分が担当する作品で『映画の興行収入100億円突破したい』とか、大きなビジョン持ってる人と仕事できたら楽しいなって思います」

カツセマサヒコ「急に意識高いこと言った」

あいちゃん「あと、台本づくりがうまい人。僕が台本づくり苦手なので、任せたい(笑)」

カツセマサヒコ「台本作りってどんなことやるんですか?」

あいちゃん「たとえば昨年公開された映画『心が叫びたがってるんだ。』の宣伝も担当させていただいたんですけど、劇場舞台挨拶を全国で50回以上やったんですよ。各地の舞台挨拶の台本を書くのも宣伝の役割なので。ご当地ネタとか、あとは50回以上あるので、ネタ被りとかも気にしながら書いていました。」

カツセマサヒコ「そんなことまでやるのか!」

あいちゃん「そのうち30回近く司会やったのに、うまくなったかどうか自分では全然わからないですね」

カツセマサヒコ「ほんとなんでもやらなきゃいけないんですね」

あいちゃん「そうですね。宣伝部は15人くらいなんですけど、作品数が多いからどんどん大役が回ってくるんです。責任感もやりがいも、めちゃくちゃ大きいですよ」

カツセマサヒコ「確かに4年目にしてはいろいろ経験しすぎてる

好きな作品に携わり、成果をあげることがやりがい

カツセマサヒコ「これまで仕事をしていて一番うれしかったことって、なんですか?」

あいちゃん「一番うれしかった瞬間は、担当作品のDVD、ブルーレイの販売枚数がしっかりと目標値を超えたこと。自分がプランニングしてきた作品で成果が出るのって、やっぱりうれしいものです。あと、『四月は君の嘘』最終話あとにフィナーレイベントもやって、応募者数も参加者数も本当に多くて。イベントが終わったあと、参加者から『楽しかったー!』とか生の声もいただけて。そういった瞬間は本当に幸せです」

カツセマサヒコ「好きなことに関われて、それが広がっていく魅力ってやっぱりすごそうですね」

あいちゃん「そうですね、学生時代にいちばん憧れていたことをそのまんまやれてる気がしています。つらいことも多いんですけどね。台本書くとか(笑)」

カツセマサヒコ「台本どんだけ書きたくないんですか」

あいちゃん「あははは。あ、僕のピアノ演奏が入ったラジオCD、いります?」

カツセマサヒコ「いらないな!!????」

こうして取材は終わりました。帰り際にソニーミュージック社内にある試写室も(ドヤ顔で)案内してくれたあいちゃんさん。作品愛もさることながら、圧倒的な企画力と「それ、普通は通らなくない?」という企画も実現できちゃう行動力が、彼が変人と呼ばれるゆえんでした。 これから就職活動を考えている学生の皆さん、変人と仕事したかったらアニプレックスに行きましょう!!

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ソニーミュージックグループの
世界に拡がるアニメをつくる仕事

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