コラム・観戦記

FACES - “選手の素顔に迫る” 最高位戦インタビュー企画

【FACES / Vol.60】村井諒 ~いくつもの頂点を目指す生粋の麻雀オタクは今日もマウスを握る~

(インタビュー・執筆:立花裕

夏の強い日差しと海風、横浜のシンボルの一つである山下公園に彼は現れた。

Classic決勝は手材料的に勝つのが難しかったですね。

太陽のような晴々とした笑顔には、どこか夏休みが終わる少年のような切なさが入り交じっていた。

村井 諒(むらい りょう)

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今年8月に行われた『第17期飯田正人杯最高位戦Classic決勝』で3位を獲得したのは記憶に新しい。リーグ戦では今期通年リーグのB2リーグへ昇級し、ネット麻雀『天鳳』では頂点の天鳳位まであと一歩の十段という実力者だ。

日常のルーティーンとしては、仕事終わりの夕方から夜にかけての間が1番天鳳をしている時間が多いです。天鳳の鳳凰卓のポイント配分は1着から90.45.0.-180という分布なので、トップを取りにいくというよりはリスクを普段の麻雀より減らして2着取りをかなり意識しています。退くことが多いのとダマテンは増えますね。10年で5000半荘くらい打ってます。

ここ2年半で2000半荘以上打ち込んでいるといい、十段維持が730半荘、十段ポイントは現在3305Pで天鳳位まで後695Pだという。(9/18現在)

こうして普段から天鳳にのめりこむ村井。タイトル戦のトーナメントも安定して勝ち上がるその確固たる雀力は、最高位戦内でも評価が高い。

麻雀には様々なルールがある。

・オカ無しの最高位戦ルール

・4着のポイント配分が大きい天鳳ルール

・ドラの枚数が多い赤アリルール

・一発や裏ドラの無いClassicルールなど。

村井をよく知る筆者からすれば、どのルールも安定した強さを発揮している印象である。そんな彼を見ると麻雀への理解力が高いことが伺える。

果たしてその強さはどこから来るのだろうか。村井の過去とこれからに迫る。

麻雀にハマるまではサッカーと英語が好きだった

村井は1987年6月4日生まれの岐阜県多治見市出身。小学校から高校までは岐阜県内で通い、昔から何をやってもそこそこできる(自慢ではない)が、トップには中々立てないという大学までの道程であった。

(幼少期の村井)

すごく好きだったのはサッカーだったが、これもどちらかというとエンジョイ勢。中学はサッカー部に入るものの、高校は天皇杯にもたまに出場するほどの強豪校だったため、部活には入らずクラスの友達と放課後サッカーをしたり、地元のおじさん達と草サッカーを週1で楽しんでいたそうだ。

(左から2番目で腕を組んでいるのが村井)

大学は愛知県の名古屋学院大学へ進学。当時英語にハマっており、外国語学部英米語学科に入学した。

授業は8割くらい英語オンリー。書く方はまだマシだったんですけど、話す、聞きとることにかなり苦労しました。高校から大学の途中までは読書と英語が好きだったので翻訳者になりたかったんです。ある時、公費でオーストラリアに行けるTOEFLという試験があったんですが、そこが自分の一つの分岐でした。周りの英語に対する熱量が違い、試験の結果も下から数えた方が早い順位でして。翻訳者の夢は諦めました。

このようにサッカーと英語に熱心だった村井だったが、現在趣味などはあるのだろうか?

ポタリというガールズバンドが好きです。たまたま横浜のTSUTAYAでCDを見つけたのですが、大学時代を過ごした名古屋のガールズバンドと言うことで興味を持ちました。横浜から名古屋まで深夜バスでライブに行ったり、頻繁にライブに行ってたおかげでメンバーに顔を覚えられるくらいにはなりましたね(笑)。バンドは解散してしまいましたが、ボーカルの子がソロ活動しているので今もその子のライブに行ったりしています。

サッカー・英語・バンド。一度ハマったことに熱中するその姿には、『オタク』気質が垣間見える。

麻雀オタク誕生の道のり

村井が麻雀と出会ったのはよくある理由だった。友達が麻雀サークルに入っており人数が足りないからやらない?という誘いが始まりである。負けず嫌いだったため、すぐにルールを覚え、符計算表をプリントアウトして講義中ににらめっこし1日で覚えて実践を繰り返す日々。19歳で麻雀と出会い、当時は数少なかった映像媒体の『モンド21』やニコニコ動画、生放送などを見続けプロの麻雀を目に焼き付けていった。

大学生時代はMJにはまり、週5.6で通いお金を注ぎ込んでいた。東風、半荘、サンマの全てでS1というプロリーグの1番上のリーグに滞在しているほどのめり込んでいたそう。

よく通っていたゲームセンターでは顔を覚えられるほどでしたね(笑)。

と当時を振り返った村井。今でも携帯のアプリでMJをプレイしており、地元の友達とオンラインで打つようだ。

もしここにプロとして出られたら何よりも嬉しいし、友達に自慢出来るので1つの夢でもあります!

と目を輝かせる。結局色々なネット麻雀を打った結果、現在の主戦上の『MJ』と『天鳳』に落ち着いた。

ここまではよくありがちである。そしてここから麻雀にドップリ嵌まっていくのが典型的なパターンで村井もその一人であるが、彼の場合は少し違った。

プロになるまで最高位戦、連盟、協会、この三団体の観戦記を全部読んでました。憧れは金子さん(金子正輝)で、藤崎さん(藤崎智:日本プロ麻雀連盟)も好きでした。

当時は放送対局が少なかったとはいえ、三団体全ての観戦記を読むほど村井は麻雀にのめり込んでいた。こうした部分にも村井の『オタク』な部分がよく表れている。

麻雀プロ生活で1度だけ涙した日

大学を卒業すると、就職をせず名古屋の麻雀店『麻雀りある』(現在は閉店)へ働き出した村井。最高位戦に入ろうと考えていたので、松本浩司プロ(元最高位戦)のお店で働くことを選んだそうだ。

そして試験を受け無事合格。1年間名古屋から東京へ通うも、時間と金銭的にも大変だったため、上京することに。その間に紆余曲折あり一度最高位戦を退会、上京したタイミングで再入会となる。上京後は『マーチャオ北千住店』で働き始めた。

一年半くらいが経過し仕事にも慣れた頃、赤羽店がオープンするということで北千住店から一人異動することになり村井に白羽の矢が立つ。

赤羽店の店長には当時最高位戦Aリーグで活躍していた佐藤聖誠(協会)さんが就任するということもあり、楽しみでしたね。

そこで佐藤聖誠ともう一人谷井茂文(RMU)エリアマネージャーに出会う。

この二人には大変お世話になり、麻雀プロの自宅に遊びにいったのもこの二人だけです。

村井は控えめでおとなしく、人見知りな性格もあってか多くの人と交流を持つタイプではない。「狭く深く」といった印象だ。特に谷井へ惹かれるものが大きく、赤羽店で一年半勤務したのち谷井が横浜店へ異動の際に一緒に横浜店へ異動した。その後マーチャオを退職するまでの五年半を横浜店で過ごすことになる。

麻雀で負けて涙を流したのは1度だけ。43期B1リーグ最終節を降級したときでした。その時、谷井さんが観戦に来てくれたんです。終わってから一緒にごはんを食べにいって色々話したんですけど、嬉しさと悔しさと色々な感情が入り交じって、泣いたのを覚えてます。

降級するかもしれない最終節を尊敬する谷井が観戦に来てくれたことが何より嬉しかったようだ。村井の谷井への想いと、谷井という人間性がこの一日に詰まっていたのがよく分かる。

このようにリーグ戦では思うような結果がついてきていなかったものの、タイトル戦では定期的にトーナメント上位に進んでいた。

2015年 第9期RMUクラウンB8(準決勝)

2017年 第1期新輝戦B16(準々決勝)

2019年 第13期最高位戦ClassicB16(準決勝)

2020年 第14期最高位戦ClassicB16(準決勝)

2022年 第16期最高位戦ClassicB28(準々決勝)

2023年 第31期麻雀マスターズB8(準決勝)

(2023年マスターズで戦う村井。ベスト8で同卓し、優勝した浅井裕介も村井の実力を称賛していた)

特に今年2023年のマスターズは決勝まで後一歩で敗れ、「タイトル戦決勝」がまたも夢で終わったかに思えたがその時は訪れた。

初の決勝の舞台、熱戦を振り返る!

村井は『飯田正人杯・最高位戦Classic』で順調に昇級を重ね、現在は上から2番目の二組に在籍している。その二組では本戦へ進出することが出来なかったが、『リバイバルマッチ』にて本戦の切符を勝ち取る快挙があった。それがどれだけ凄いのかというと、参加者131人中4人のみ勝ち上がることが出来るという超難関だからである。その通過確率は3%。当然「運』が味方したわけだが、そこからいつものように勝ち進み、つい数ヶ月前に夢で終わった決勝の舞台の切符を手に入れた。

それは村井が一番好きなルールであるClassicルールであったのが村井の気持ちをより高まらせた。なぜこのルールが一番好きなのだろうか?

手作り、押し引きのほかに、ヤミテン看破など相手の手を読むのが好きだからですね。後はよく勝ってるからかもしれません(笑)。

と、少し恥ずかしそうに話す。選手人生初めての決勝。中々思うように手が入らなかったが、自身で幾つかの局をピックアップしてもらい解説してもらった。

  • 1回戦東1局、東家ドラ

チートイツをやりなさいという配牌が配られる。ドラがということで、チートイツ一本で進行することに。

道中で字牌2枚とドラになり、普段はこのイーシャンテンをキープするのが自然かなと思いますが、この時の沖中さん(沖中祐也)の河が派手で恐らくマンズの染め手。字牌が普段よりは打ち出されにくいので持ってきた場況の良い、続いて自身で切ってはいるが相当良さそうなを残し、生牌の字牌を2枚切っていきます。

そして1番嬉しいドラのを重ね9600の単騎。これは全部山にいるのでは?と思っていました。伊藤さん(伊藤高志)の河は普通だったので1枚は保持しているかなー?くらいの感覚です。リーチしたいくらいの良い待ちでした。

結果は入り目のドラを新津(新津潔)に打たれ、を掴み3900点の放銃に。まだ2回戦目だが、決勝という舞台にも関わらず場が見えており村井自身も通常どおり打てているなと実感している1局であった。

  • 5回戦東1局、北家 ドラ

ここで一人が脱落する初日の最終戦。

ポイントマイナスの守屋さん(守屋大輝)、沖中さんと初日生き残りをかけた最終戦。私が落ちる場合はどちらかに素点プラス2着順以上つけられたら危ないなという状況だったので自分からは突っ込まず、2日目に残れる選択肢を重視していました。なので、守屋さんの親リーチを受けこの四暗刻イーシャンテンでポンテンをかけられるポンをせず、選択はそういった意図がありました。これが初日一人脱落がなければポンテンを取り一旦を押す選択になります。その後は持ってくる牌の危険度により押すか退くかの見極めになっていくと思います。

大きなビハインドを負っているような局面ではこの様な手牌でポンテンを取らない事が多いが、村井は戦略的スルーを選択した。

  • 8回戦東4局、東家 ドラ

トータルも追い込まれて3連勝+素点も必要な状況になり、3巡目にカンの聴牌を外しツモ

・一盃口を確定させるか?

・ドラを切るか?

・123を見切りか?

既にベースはツモったら満貫クラスの手組みをしていかなくてはならない状況でした。が場に2枚切れ、伊藤さんが手出しだったので受けor周りを持ってる可能性も考慮はしましたがそれでも123の方があがれそうな気がして打

そしてツモからもう3900点をヤミテンにしていられる状況ではないのでリーチを選択しました。今回の決勝はすんなり満足のいくテンパイがなかなか入らなく、この局もカンの即リーチしかあがれる手順がなく見返してモヤっとしましたし、打っている時も苦しいなぁ…と感じていました。

村井自身的にも内容は決して悪くはなく、寧ろしっかり打ていたそう。

しかし満足いくような牌に中々恵まれなかった。

  • 8回戦南3局、南家 ドラ

とにかくアガリを拾いたい。ダブ南を鳴いている状況で少しでもソウズのホンイツに見えないようにを先に切りをギリギリまで引っ張ったりとしてみました。そこまで目立たず聴牌はするもののこの局は守屋さんにアガりきられてしまい、うっ…ってなりました。

その後も苦しい展開が続き、初の決勝は3位で終わることに。

決勝は手材料的に厳しかったですね。

いつものように淡々と冷静に自身の選択を振り返っていた。自分を出し切れたことにより後悔は無かったようだが、筆者には、心の奥底の悔しさが僅かに垣間見えた気がした。

進化を続ける欲張りな麻雀オタク、目指す先は…

現在は麻雀店を辞め医療事務の仕事に従事しながら、麻雀の研鑽に励む村井。

天鳳位、リーグ戦、タイトル戦など様々な目標があるが、目指すものはどこにあるのだろうか。

難易度が高い順に云えば、タイトル戦>リーグ戦>天鳳位かなと思ってます。タイトル戦は短期間での勝負なので運の要素も強いですからね。天鳳位が簡単とは思わないですが、今までのようにずっと続けていけばいつか天鳳位にはなれると思ってます。目指してるものはA1リーグですね。A1リーグ>G1タイトル>天鳳位。所属団体の一番上のリーグには行きたいですね。

いくつもの頂点を虎視眈々と狙っている。やはり最上位リーグで戦いたい気持ちが強いようだ。

上位で戦い続けるために意識していることや練習法はどういったものがあるのだろうか。

麻雀店勤務を辞めてから打数は格段に減りました。そのぶん天鳳での打数や、最高位戦の人達とのセットの回数が少し増えました。量より質を意識した感じです。

最高位戦の放送もけっこう観ている方だと思います。今は放送が多くすべては追えないので自分の中で抜粋して観ています。特に最近は対局者ではなく解説者で選ぶ事を意識しています。というのは、上位リーグの人達の思考を聞いて取り入れたいからです。B2かB1リーグを醍醐さん(醍醐大)が解説していた回があったんですが、対局者が選んだ牌と醍醐さんの思考の相違がけっこうありました。雀風もあると思いますが、そうした勝っている人の思考は取り入れたいなと思い、最近はそちらに重きを置いています。

麻雀を打つだけでなく、強者の解説を聞きながら麻雀を観る練習方法も取り入れ、思考を学ぶ努力を惜しまない。

スタイルは大志さん(坂本大志)と水巻さん(水巻渉)が好きですね。雀風で言うと水巻さんモデルが自分の理想です。大志さんにはお世話になってるので好きな人って感じです。

水巻さんは守備よりのバランスで先切りが多い選手だと思いますが、先手をとられたときに1牌でも押仕返す種類を減らすための先切りが好みなのが1番自分の理想と近いです。守備であり攻撃のための先切り。そうした技術をうまく使い分けられるように、これからも磨いていきたいです。

進化を続ける麻雀オタクは、あの日観戦記を読み漁ったように麻雀研究に没入し、頂を目指して今日もマウスを握る。

最後に、ライバルは誰か?を聞いてみた。

もちろん、マスター(立花裕)です!

~筆者あと書き~

村井と交流を持つようになったのは7年ほど前。私設リーグ『Evolutionリーグ』で一緒に勉強会をするようになってからだった。今も『江戸リーグ』という私設リーグで一緒に切磋琢磨している。控え目でおとなしい性格は私と真逆だが、同じ横浜に住んでいることもあって帰り道によく話すようになり仲が深まっていった。

(江戸リーグに出場する村井)

ある日村井から連絡が来た。

FACESで取り上げてもらうことになったのですが、マスター書いてくれませんか?忙しいと思いますので無理強いはしません。

この連絡を聞いてとても驚いた。というのも、自分が日の目を浴びるチャンスの1つを私に託すことに。知っている人も多いが、私はとにかく馬鹿である。SNSでもよく誤字をしてしまうし、語彙力や言語化する能力もかなり低く、文才も皆無だ。

だが、村井から指名してもらったこと、新しいことへのチャレンジ精神で引き受けた。慣れないことであったが何とか村井の期待に応えることが出来たかなと思う。意外だったのは村井のライバルに自分の名前を挙げられたことだ。村井の強さをよく知っている私にとって、名前を挙げられるとは少し鼻が高い。

次は村井が僕の期待に応える番だ。リーグ戦の放送対局で村井と対戦出来るのを上で楽しみに待っている!

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