NHKがネット配信に本腰…一方で海外の現状は? 公共放送のネット配信どうあるべき?

2023.09.07(木)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。8月30日(水)放送の「New global」のコーナーでは、公共放送のネット配信について取り上げました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。8月30日(水)放送の「New global」のコーナーでは、公共放送のネット配信について取り上げました。

◆NHKがネット配信を「必須業務」に

NHKのインターネット業務の在り方を検討する総務省の有識者会議は、NHKによる地上波番組のネット配信について、放送を補完する「任意業務」からテレビ放送と同様に実施する「必須業務」にすることを柱とした報告書案を示しました。

テレビを持たずスマートフォンなどから視聴する人には費用負担を求めることが適当だと結論づけましたが、スマホを持っているだけでは負担を求めず、「アプリをダウンロードしIDを取得する」といった視聴する積極的な行為を要件としました。今後は一般からの意見公募などを経て、総務省が具体的な制度を検討し、早ければ2024年の通常国会にも放送法改正案を提出します。

堀によると、NHKのネットコンテンツは映像主体のものだけでなく、最近では写真やテキスト、いわゆるWebマガジン形式のものも注目を集めているものの、それは民業圧迫、既存のテキストメディアからすると「なぜWebマガジン形式のものを公共放送がやるのか?」という意見があり、今回の会議ではそうしたことも議題に上がったそうです。では、世界の公共放送事業者はオンライン放送とどう折り合いをつけているのか、堀が解説します。

まず、日本の公共放送は主体が「NHK」で“受信料”の名目で、個人で受信機を設置する世帯からお金を徴収しています。しかし、イギリスの公共放送「BBC」は「受信許可料」、ドイツの公共放送「ARD」や「ZDF」は「放送負担金」としています。

そして、オンライン放送についてヨーロッパはいち早く「必須業務化」としており、イギリスは2007年、フランスは2009年、ドイツに至っては2000年。また、利用者も多く、2021年度の平均ではイギリスが人口の約20%。フランスは約36%。ドイツは21%。

日本はといえばひと桁台で、堀は「(お金を)徴収するわりにはまだまだネット放送が活用しきれていないのではということ」と指摘します。

◆公共放送は国民全員が少しずつ負担すべき?

一方、アメリカの場合は国土が広いので欧州とは若干状況が違います。「非商業教育局」として免許を付与された放送局が公共放送で、非営利団体「PBS(公共放送サービス)」というグループに加盟する必要があり、財源は政府交付金や企業協賛金、自治体交付金などになります。

また、ヨーロッパのなかでもオーストリアは勝手が異なり、受信料制度を撤廃し新たな負担金を設置。というのも、過去に受信料支払いを巡る裁判で「インターネットの番組視聴は放送の受信に当たらない」と支払い逃れを容認してしまったため、制度そのものを変えようとなったとか。

総じて、堀は「公共放送のネット配信の在り方について議論するのが重要だと思っているのは、認知戦の真っ只中でさまざまな思惑が発信されていくなか、それを精査、もはや防衛ラインとしてきっちり持っていくということで公共放送の役割が問われている」と公共放送の意義を懸念。

哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんは「まず背景に、放送と通信の境界線がなくなったということがあると思う」と私見を述べ、今回の放送法改正案については「すごく不満」と否定的。

続けて「なぜまだ受信機があることにこだわるのか。あらゆるデバイスで(視聴が)可能になるということなので、もはやアプリをダウンロードした・しないではなく、放送通信の情報も含めたインフラを提供するという部分で再定義していく必要があるのに、そこまで踏み込んでいない」と物足りなさを訴えます。

ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは「ドイツは(費用を国民)全員負担しているが、(日本も)それがいいんじゃないかと思う。みんな負担しているからネットもみんな見ていいし、ログインとかもいらない」とドイツを引き合いに言及。

microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは「特に報道のインフラというところにおいては、(現行よりも)安い金額で国民全員負担すればいい」との意見を述べていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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