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メサイアコンプレックスとは?原因、特徴、恋愛、克服法について解説

「誰かの助けになりたい」。この気持ちに問題はなくても自分を犠牲にしてまで過剰に人に尽くす場合は、メサイアコンプレックスという心理が働いている可能性があります。

本記事ではメサイアコンプレックスの特徴や原因、対処について解説します。

1.メサイアコンプレックスとは

三人の若い女性

メサイアコンプレックスとは、「自分には価値がない」「不幸な人間だ」といった劣等感を抱えている人が他者を救うことで自らの劣等感を補おうとする心理を指します。「メサイア」とは英語の「メシア(Messiah)」をヘブライ語読みしたもので、救世主やキリストという意味です。狭義には、個人があたかも「世界を救う救世主である」「人を救うのが使命である」といった誇大妄想を持つ心理を指し、救世主妄想やキリストコンプレックスとも呼ばれます。

人を助けるという動機や行為は一見好ましい態度ですが、メサイアコンプレックスの場合は自分が助かりたいという気持ちや自信の低さという劣等感が無意識に抑圧されており、人を救うことで自己満足を得ようとする背景があります。つまり、自分の劣等感を埋めるために人を救っている場合が多く、心の底から人のことを思いやっているとは言い難い状態でしょう

このような背景心理があると、自己犠牲的な関わりや過剰に尽くしすぎてしまう関わりになってしまいます。救う側は良いことをしているつもりであっても、周囲にとってはありがた迷惑で困ってしまう場合が多いため、良いことをしているはずなのに人間関係がうまくいかないと感じる人もいるでしょう。メサイアコンプレックスを抱える人は、実は自分自身が生きづらさを感じているということになかなか気づけない特徴があります

また、自分の劣等感に突き動かされた人助け行為になるので、相手が援助を断ったり自分の思い描く結果にならなかったりすると、機嫌を損ねて相手を責めてしまうといった対人トラブルも生じやすいです。

2.メサイアコンプレックスの原因

似ている6人の女性

メサイアコンプレックスに陥りやすい原因として、自尊心の低さや他者より優れていたい欲求、アイデンティティの未確立などが挙げられます

もともと人は価値ある存在ですが、たとえば幼少期にいじめや虐待に遭うなどで自尊心が傷ついてしまうと、「ありのままの自分で良いんだ」とはなかなか思えないでしょう。そこで、人に奉仕することで自分を認めてもらい価値があるのだと思いこむことがあり得ます。

また、自尊心が低く「自分はダメだ」と劣等感を感じる人の中には、「人を救える自分には価値がある」と救える立場に優位性を見出して自尊心を保つ人もいます。その他、青年期までにアイデンティティの確立ができないことで、人を救うことにアイデンティティを見出そうとしてしまうこともあります。自尊心の保ち方やアイデンティティの確立を他者に見出してしまうと、常に人を救い続けないと自分の価値を保てないため、非常に不安定な状態です。

そして、常に困っている人を探して「私が助けてあげないと」と救うことに躍起になって、自分自身を見失ってしまいます。自らと向き合えず、自分の弱さを認められないこともメサイアコンプレックスの原因と考えられます。

3.メサイアコンプレックスの特徴

男女のカップル

恋愛関係や対人関係、仕事の選択などメサイアコンプレックスの人は自分のために人助けをする心理状態です。本人は自覚しづらく、相手によっては助けてくれる良い人に映るかもしれませんが、無自覚の関わりを続けることで人間関係や仕事において以下のような特徴が見られます。

(1)恋愛での関わりの特徴

  • 「この人は私がいないとダメなんだから」と世話を焼きすぎる
  • 相手が喜ぶだろうと思って頻繁にプレゼントをする
  • パートナーから多少無理な要求をされても断れずに応えてしまう など

恋愛では、パートナーの救世主という価値を見出し、相手に尽くすことで自分が幸せ者であるという感覚を得ようと他者依存的な関わりが目立ちます。パートナーに尽くす自分に価値があると思い込んでしまうため、相手から良く思われようと良い人を演じすぎてしまったり、恩着せがましい態度になったりしやすいでしょう。

自分の好意を受け取ってくれる受け身なパートナーを選ぶこともあれば、世話焼きな特徴を利用されて共依存の関係に陥ってしまう場合もあります。

(2)対人での関わりの特徴

  • 「ありがとう」など感謝の言動を催促する
  • 良かれと思って先回りの行動をする
  • 助言を求められていなくてもつい口をはさんでしまう など

対人関係では、相手の立場や気持ちを想像するよりも「人の助けになりたい!」という気持ちの強さが前面に出てしまうことで、過干渉な関わりが特徴的です。実際は人助けよりも自分が満たされることが目的になってしまうため、見返りを求めやすい特徴もあります。

また、常に人の困り感を探し出してはお節介な態度をとってしまうこともあります。非主張的でおとなしい人や何でも肯定してくれるイエスマンに近づいて、自分の劣等感を満たそうとする人もいます。

(3)仕事での関わりの特徴

  • 思うように支援を受けてもらえないと不機嫌になる
  • 「あなたのため」と言って支援を強要してしまう
  • 支援することで自分が優位な立場にあると快感を得る
  • 理不尽な職場環境でも身を犠牲にして貢献する など

仕事面では、介護、看護、教職、心理職など人を支援する職業に就いている人はメサイアコンプレックスを抱えている可能性があります。もちろんすべての人がメサイアコンプレックスを抱えている訳ではありませんが、対人援助職の人は自分本位な支援になっていないか常に我が身を振り返る視点が必要でしょう。

常に誰かの役に立ちたい思いが先行してしまうと、対人援助職を選んで相手を自分に依存させてしまうケースもあり得ますが、それでは相手の自立を妨げてしまいます。また、人助けで自分を満たす傾向があるため、ブラック企業でも心身を削って貢献してしまうこともあり得ます。対人関係でも言えますが、メサイアコンプレックスの人は自己犠牲的になってでも人助けの欲求に駆られてしまうため、自分で思う以上に疲弊しやすい特徴もあります。

4.メサイアコンプレックスを改善するための克服法や対処法

カウンセリングをする男女

メサイアコンプレックスを克服するには、まずメサイアコンプレックスについて知ることが大切です。理解を深めたうえで、自分が人のために行う言動が誰のためになっているかを改めて考えてみましょう

人助けをすれば誰でも気分の良さは感じるものですが、支援に酔ったり絶対に相手のために違いないと思い込んだりしている場合は、メサイアコンプレックスの可能性があります。自身について振り返る中で「自分も助けられたい」「自分には価値がないんだ…」と気付いたら、人助けの前に自分の心を大事にしてあげましょう。友人やカウンセラーに思いを聴いてもらうだけでも十分です。自分の気持ちを無視せず、受け止めることが改善の一歩になります。

また、身近にメサイアコンプレックスの人がいて実は困っている場合、まずは会う頻度や喋る回数を減らすなどその人と距離をとるようにしましょう。そして、不要なお節介であれば断り、意見ははっきり伝えてあげる対処が有効です

「あなたのためを思って言っているのに」と押しつけられたり相手が拗ねたりすることもありますが、相手の機嫌を取るために支援を受け取る必要はありません。ありがた迷惑を受け取り続けると相手の行為もヒートアップしてしまいます。鵜呑みにせず聞き流す対処も大切です。

5.まとめ

医者と相談

コンプレックスと聞くと悪いイメージを持つ人が多いかもしれませんが、人は誰でも劣等感や弱さも抱えているため決して悪いことではありません。他者を巻き込んでメサイアコンプレックスを埋めようとすると、かえってトラブルの元になってしまいます。「良かれと思って」人助けをするときは、今一度自分の気持ちに耳を傾けてみましょう。

(株)心理オフィスKではこのメサイアコンプレックスについてのカウンセリングを行っています。メサイアコンプレックスについて困っている方は是非ご連絡を頂けたらと思います。


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