【母として・異国で生きる県系人】末子・ディールさん 本部町出身


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末子・ディールさん(中央手前)の家族

裏切り、病も克服
 末子・ディールさん(69)=旧姓・仲地、本部町崎本部出身=は1968年に結婚し、2男1女に恵まれた。軍属の夫の転勤で各地に移動となるが85年に米ノースカロライナ州のジャクソンビルに落ち着いた。
 一家5人、穏やかな日々を送っていたが、ある日、夫が末子さんの親友と駆け落ちするという青天のへきれきの事態が起こった。

 「寝耳に水だった。いつもニコニコ笑っていた自分だったが、裏切られたショックとストレスで激痩せしてしまった」と末子さん。心機一転とホテルのウエートレスなど二つの仕事を掛け持ちした。
 大学生だった長男は大学を辞める事になった。次男、長女は10代の多感な年ごろ。県人の友人に生活面や子どもたちの心のケアなどを助けてもらいながら無我夢中で暮らす毎日だった。
 92年に離婚が成立。その後、夫と共に駆け落ちした女性から会いたいと言われた。末子さんは悩んだ末、会うことにした。彼女に向かい「謝られても今更もう遅い。常識のない事をされても自分はクリスチャンだから恨む事はしないし苦情も言わない。だが会うのは最後にしたい」と伝えた。
 長男ラーバンさん(43)は高校生のとき、成績優秀の生徒に贈られるナンシー・レーガン賞を受賞した。学費は全額奨学金をもらい大学で教育学を学ぶが、両親の離婚のため退学した。しかしその後、警察学校に通い警察官となる。薬剤師の夫人と結婚後、大学に復学し優秀な成績で卒業し歴史の先生となった。現在は薬剤師の助手の免許を取り、夫人と共に薬局に勤めている。副業でラクロスのディレクターをしている。1男1女に恵まれた。
 次男ロナルドさん(40)も学費全額奨学金で大学に通い、化学を専攻し、薬品会社に勤めている。大学で知り合った小学校の先生をしている夫人との間に1女1男がいる。
 長女マリサさん(38)は海軍兵と結婚し、子育て真っ最中。末子さんは常々、子どもたちには「悪い事をしてもうそはつくな。正直に言った場合は母が全面的に守る」と言ってきた。
 乳がんを克服し、県人会の縁の下の力持ち的存在の末子さんは昨年縁あって再婚した。「コンピューターが大好きな夫は県人会のために一役買い、また県人の仲間たちと旅行するときにホテルなどの予約をしてくれる」と笑顔で話す。
 末子さん一家は毎年6月に家族が勢ぞろいし、楽しいひとときを過ごすのが恒例だ。孫たちを沖縄に連れて行き、沖縄を大好きになってくれることがうれしいと話した。(鈴木多美子通信員)