亡き母思い挑んだ試合 中部農林主将の古謝 家族や仲間の支えに感謝<高校野球2021>


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豊見城―中部農林 劣勢の中で粘り強くプレーする中部農林の古謝真大=5日、沖縄市のコザしんきんスタジアム(ジャン松元撮影)

 第103回全国高校野球選手権沖縄大会は4、5の両日、沖縄市のコザしんきんスタジアムなどで第2、第3日の1回戦14試合が行われた。5日は2会場で5試合が行われた。豊見城は9―1の七回コールドで中部農林を下した。

 中部農林の古謝真大(まなと)主将は試合後、涙が止まらなかった。3月31日に母・真紀さんが急逝。突然の悲しみが家族を襲った。

 野球をする兄たちの姿を見て、3歳ごろから自然と野球小僧に。小中高とプレーを続け、集大成の大会に並々ならぬ決意で臨んだ。チームの救護要員として球場を訪れた父・嘉之さん(56)は「春の大会は妻も一緒に応援した。夏の応援も楽しみにしていたが」と振り返る。

 試合は中盤の大量失点で劣勢に。しかし、七回に大きなチャンスが巡る。一死満塁で、古謝に打順が回った。思い切りのいいスイングで挑んだが結果は三振だった。嘉之さんは「精神的に参っているようで元気がない状態が続いていた。同級生が支えてくれたと思う。結果は残念だが、楽しくプレーしていたようだ」とねぎらった。

 試合後、古謝は母に「野球をさせてくれてありがとう。見守ってくれてありがとうと言いたい」とつぶやき、メンバーには「主将をやってつらいこともあったが、野球に出合えてよかった。この仲間とプレーできたことに感謝したい」と声を絞り出した。
 (大城三太)