2022/08/25 18:56

前回は「出会い編」ということでしたが、今回は苦悩しながらも活動していたバンドが解散し、次なる展開までのお話「変革編」です。また前号配信後に、多数のコメントをいただきありがとうございました。励みになりました(笑)!今回も記憶を呼び起こしながら書き上げていきます。

ブラックホールは1979年暮れにドラムのスティーヴがバンドを離れ、新たに迎えたドラマーは寺本コージという自分の隣町の先輩でした。スティーヴはコージー・パウエルのようなドラマーでしたが、コージはGRAND FUNKのドン・ブリューワーのようなドラマーでした。私の住んでいる福生の隣町に住んでおり、プライベートでも人にあまり言えないところによく遊びに行ったものです(苦笑)。また、コージは車(サニーのバン)を所有していたので、行動範囲が非常に広がったのもこのころからでした。


1980年の春、私は大手楽器店へ就職が決まりました。そもそも楽器店に就職を決めた理由の一つに直人っさんの存在がありました。少しは音楽(バンド)で飯を食っていけたらいいなと思っていた私ですが、近くにいる音楽的力量を持った直人っさん達がこれだけ頑張ってもプロへの道がすぐには開けない事を痛感していたから、ミュージシャンとしてではなく少しでも音楽に関連した仕事に就きたいと思い、選んだのが楽器店だったのです。

実は入社が決まったものの、私は一度もこの楽器店に足を踏み入れたことがありませんでした(笑)そこで初の店舗訪問にブラックホールの直人っさんとギターのリオについて来てもらい、御茶ノ水店を見に行きました。これもナメられてはいけないという現れでしょうか、ド派手な彼らと一緒にいることに何故か安心したのです。そしてこの頃私はブラックホールの音源をスタジオで収録しています。友達からステレオで録音できる小型カセットデッキを借り、国立のクリエートイン・スタジオで録音しました。8曲録音したうち6曲が新曲で、その中のB面の1曲目に収録されている「ディスティニー」という曲はなんと直人っさんが歌ってます(笑)いつか許可と機会がありましたらお聞かせしたいな~。多分、ダメですがね(爆笑)



「柴田直人・自伝」にも書いてありますが、この時期ブラックホールはいくつかのライブオーディションに出場していました。しかし時代はテクノポップやパンクロックが全盛になりつつある時代の中で、ジプシーアイ()で買ったグラムっぽい衣装を着て、SAシューズ()のロンドンブーツを履き、ハードロックを演奏するバンドはやや敬遠され気味であることは10代の私にも少し感じ取れるものでした。80年4月1日に行われた「STEADY ROCK FUNCTION Vol.1」が正にそれで、結果優勝したバンドはあのTHE MODSでした。とても時代を感じましたね!


80年5月にはRAINBOWのライブを武道館に一緒に見に行っています。新ヴォーカリストのグラハム・ボネットお披露目公演で、この日私は小型カセットテープレコーダーをカバンに忍び込ませておりました。どうしても演奏を手元に残したく、悪いこととは知りつつ録音しておりました、その際、直人っさんに録音してるから大声を近くで出さないよう言っておりましたが、リッチーが予想通りのアクションをしたことで、初っ端から直人っさんは大声で笑っております。この笑い声がそのテープに録音されているのは言うまでもありません(苦笑)この話、もう時効だからいいですよね。しかし、この20年後に自身のバンドでグラハム・ボネットが歌うなんて....。とても運命を感じますネ!

この辺りを境にブラックホールのライブは急激に少なくなります。そして80年終わりころにブラックホールは直人っさんの住む中野の喫茶店で解散を決めたのです。しかし、相変わらず直人っさんとはよく遊んでおり、私も仕事帰りに中野の洋館のようなアパートに寄っていました。よく覚えているのは薄暗い部屋にはコーラの空き瓶が転がっていて、押し入れの中にある冷蔵庫の製氷室にはイチゴが1パックそのままカチカチに凍っていたのです(笑)また、なんか食う?と聞かれたときは決まって「マルシン・ハンバーグ」を焼いてくれたものです。

ある夜、直人さんのアパートで遊んでいると、扉をたたく音がしました。扉が開くとそこには女性のような可愛いなりをした革ジャン姿の方が立っていました。顔から想像しこれは女性が来たと焦っていたところ、男の声で「直人っさん!」と言って入ってきました。これが初代ANTHEMのギタリスト、小柳さんとの出会いだったのです・・・・。

次回はアマチュアバンド・ANTHEM結成、マッド大内との出会い等を中心とした「野望編」をお話ししたいと思います。気長に待っていてください(苦笑)


【注釈】
*ジプシーアイ:東京原宿の原宿プラザ(現閉館)内にあったグラム系ロック衣装店。
*SAシューズ:東京四谷にあるロンドンブーツやハイヒールブーツを扱う専門店。