奥平大兼、俳優としてより高みへ 20歳の節目に“大人になった”歩みを振り返る

奥平大兼、20歳を迎えて振り返る歩み

 第15回TAMA映画賞で最優秀新進男優賞を受賞した奥平大兼。

 2023年は『あつい胸さわぎ』、『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』、『ヴィレッジ』、『君は放課後インソムニア』と出演した映画が続々と公開され、ドラマでは『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)の演技でも話題を集めた。2020年のデビュー以来、走り続ける奥平はいま何を感じ、自身をどう見ているのだろうか。

2023年は成長の機会に溢れた1年に

奥平大兼
ーーまずは第15回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞した気持ちから聞かせてください。

奥平大兼(以下、奥平):新人賞は最初に知っていただけるきっかけとなる賞だと思うので、嬉しいし、とても光栄です。それだけたくさんの方々に観ていただけたんだな、という実感がありますね。

ーー2023年は映画が4作品公開され、ドラマにもご出演されましたが、ご自身が成長できたと感じる瞬間はありましたか?

奥平:「成長」という意味で言うと、中身が成長したかなとは思います。もちろんお芝居も成長していればいいなとは思うんですけど、個人的には中身の方で少し大人になれたのかなと。2023年は、デビューして3年、20歳になった年でもありますし、ありがたいことに、たくさんの作品に出させていただきました。こうして賞をいただいたり、あまり出演する機会のないドラマに出させていただいたりする中で、自分が映像作品に出演する意味や、お芝居をするモチベーションなど、いろんなことを考える年になりました。

ーー奥平さんにとっても非常に意味のある年だったんですね。

奥平:そうですね。映画やドラマで自分がやった役を見ていただいて、1人でも生きる上での糧になったり考え方が変わったりする方がいたら、その作品は「十分に意味があるもの」と思えるようになりました。もちろん、今までそう思えなかったわけではないのですが、より色濃く思えるようになったのが2023年でしたね。

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ーーそうして考える中で、新たな発見や気づきはありましたか?

奥平:『最高の教師』では、他人には理解されにくい「星崎透」役をやらせていただいたので、オンエアが少し怖かったです。これは、どの作品においてもそうなんですけど、自分の役の弱いところを出すとき、世の中の人に観られることが怖くて。生半可な気持ちで表現してはいけないことだし、それなりの覚悟と準備が必要だと思うんです。それが足りていたのか、どんな反応が来るのか……とか、いろんなことを考えていた中で、実際に反響を見ると、思っていた以上にすごくいい反応でした。皆さんが星崎のことを分かってくれたというのが、すごく嬉しかったです。『君は放課後インソムニア』で言うと、僕が演じた中見丸太は、不眠症に悩まされていて、言葉では表せられないモヤモヤを抱えているんですけど、僕という人間が、丸太として生きることによって「彼のことが好きになった」「彼のおかげで考え方が変わった」という方がいらっしゃると思うので、丸太を“そういった存在”にさせてあげられてよかったなと。僕自身、今までやってきた役の子たちは、少し友達みたいな感覚があるので、友達が自由に羽ばたけて、安心しました。

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ーー『君は放課後インソムニア』は高校が舞台です。同世代との共演は、やはり刺激になりますか?

奥平:凄くなりますね。(ダブル主演の)森七菜さんとは初共演でしたが、やはり一緒にお芝居するとなると、よりすごさが分かりました。先輩ですけど「この人はすごいな」と思ったんです。役の関係性もあるんですけど「森さんのお芝居について行こう!」「甘えよう」と思いましたし、「素直に反応すればいいんだな」と感じました。共演者のことを100パーセント信じたいと思わせられるってすごいし、大きな刺激をもらいましたね。思い出に残る同世代の役者さんの一人です。

奥平大兼

ーーそんな同世代との共演がご自身の成長につながっているんですね。

奥平:今まで大人の方々と共演する機会が多かったのですが、そのお芝居とは全然違う角度からアプローチしてくるので、新鮮で楽しいです。「若いからできるお芝居がある」というのが面白いなと思っていて、それが同世代の子と共演するときの魅力です。

ーー2023年は『君は放課後インソムニア』以外にも多くの映画に出演されました。「若年性乳がん」と「恋愛」をテーマにした『あつい胸さわぎ』で印象的な出来事を教えてください。

奥平:撮影したのが公開される約2年前。自分としては、映画3作目の出演で、今よりもさらに映画のことを分かっていないときでした。『あつい胸さわぎ』はものすごく温かい組で、スタッフさんの人数も少なく、一人ひとりとの距離が近かったんです。「みんなで映画を作っている」と感じられました。あんなに温かい現場で映画を作れたというのが、僕的には大きな出来事でしたね。監督のまつむらしんごさんとは、撮影後も相談したり、ワークショップに行ったりと交流はあるので、その出会いも大きかったです。

ーー『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』は、2021年放送の大人気連続ドラマからの映画化でした。

奥平:ものすごいキャストの方々がたくさんいらっしゃったのもあって、ドラマのときは緊張していました。「デビューして1年目の人間がこの中にいていいのか」というプレッシャーが凄い中、皆さん本当に優しくしてくださったんです。映画の撮影はその約1年後だったんですけど、皆さんから「大人になったね」と言われて、それがすごく嬉しくて……役者さんの温かさを感じた現場でした。もちろん映画の撮影もすごく楽しかったですし、1年前から知ってくださっているからこその言葉もたくさん聞けて、いい経験になりました。

奥平大兼

ーー横浜流星さん主演の『ヴィレッジ』は、いかがですか?

奥平:役者として成長する機会になった作品です。すごくありがたいことなんですけど、それまでは「自由にお芝居をやっていいよ」と言われることが多かったんです。でも、それが正解なのかどうなのか、分からなくて悩んでいるときに、藤井道人監督が、初めて「こういうことをした方がいい」「こういうことはできていないのかもね」と言ってくださったんです。普通だったら落ち込むのかもしれないけど、そのときの僕はものすごく嬉しくて……。初めて自分のお芝居について意見を言ってくださった方だな、と思いました。クランクアップのとき「こういうふうにできたらめっちゃ良くなると思うよ」と言ってもらえたんですけど、それから1年は、藤井さんの言葉が頭から離れなかったです。現場で不自然にならない程度に(アドバイス通り)やっていた中、久しぶりに藤井さんにお会いしたら「芝居上手くなったよね」と言ってくださって嬉しかったです。

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ーー2023年の出演作品は、振り幅があるように感じますが、そこで素敵な出会いがたくさんあったわけですね。

奥平:そうですね。振り返ってみると、テイストが違う作品が多くて、すごく面白いなと思います。目に見えて成長できたというか、自分の役者人生の中でどれも抜くことができない作品ばかりなので、すごく恵まれているなと思いますね。

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