下半身の悩みをオープンにできない日本人女性たち

筆者も産後尿もれの経験がある。特に赤ちゃんを前抱きにしていると膀胱を押され、出産で緩んだ尿道から尿がスーッと出てくるのだ。最悪の場合、自分で止めることができず、洋服を広範囲に濡らしてしまうことも。だが、これは多くの経産婦の“あるある”現象だ。

尿もれは産後の一時期に起こるが、そのうち再び尿もれが起こりうる。加齢で本格的に骨盤底筋が緩んで、子宮や膀胱が下がり膣外に出てしまう臓器脱や、膣が乾燥してかゆくなる膣カンジダ・性交痛などさまざまなトラブルが起こるのだ。

こうした悩みを抱えながら、日本の女性はそれをあまりオープンにしたがらない(できない)。当初は山口さん自身も、尿もれの悩みを誰にも言えなかった。

子宮などの内臓が膣外から出ればさすがに医師にかかるだろうが、尿もれ対策には専用パッドを下着につける、膣口がかゆくても我慢するか市販薬を塗る、性交痛に至ってはセックスを拒否するなどの消極的な方法をとる人が少なくない。そうやって対症療法的な処置をするだけで結局、膣をほったらかしにしてしまうことも多いのだ。

男女の生殖器のイラスト
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骨盤体操で産後の尿もれから脱却できた

深刻な尿もれ悩まされた山口さんを救ったのは、助産師から教えられた体操だ。

「産後に助産師さんの指導で骨盤底筋を鍛える体操をしたら、尿もれがかなり改善されたので、何か相関関係があるのかな? と思ったのです。そこで、凝り性の私は徹底的に調べました。すると海外の女性は顔と同じように膣もお手入れするし、小学生の頃から膣ケアを教わるとわかってとても驚きました。外性器は専用のソープで洗ったり、入浴後はオイルでマッサージしたり。また、呼吸法を取り入れた体操を継続することで、私の場合、まず体調が改善し、肌が格段にきれいになって、妊娠で20kg以上増えた体重もスルスルと減りました。その手法を体系化したものを今、皆さんに指導しています」

山口さんは現在47歳だが、しみ、しわが目立たないツルツル美肌。また、以前は激しい生理痛、子宮内膜症、子宮筋腫といった婦人科系病気のデパートのような体質だったというが、それも徐々に改善。エステティシャンには若い女性が多いので、山口さんが海外の手法なども参考にしながら作り上げたメソッドを伝授したところ、彼女たちの心身の不調も軽減したそうだ。

山口さんが次女を出産した当時の日本では、経産婦が教わるのは骨盤底筋を鍛えることが中心で、膣そのものをケアする慣習がなかった。だが、現在はだいぶ状況が変わっている。腸内細菌と一緒で膣内にも乳酸菌を筆頭にした善玉の細菌(フローラ)があり、膣内の環境を良い状態にキープしている。しかし、女性器周辺の衛生やケアを怠ることで膣内環境が乱れると健康に害を及ぼすこともあるという考え方は数年前から、産婦人科医などが発信するようになってきた。

※参照:腟の健康状態を左右する? 腟内の菌、腟内フローラとは