カルチャー

走り出したくなる漫画がある!

『GT ROMAN』の作者・西風先生の助手席でインタビュー!

2022年5月22日

車があれば!


photo: Shu Yamamoto (book)
text: Keisuke Kagiwada
special thanks: Kosuke Ide
2022年6月 902号初出

これが『GTロマン』の中心的な舞台となるカフェ『roman』。下のコマに登場しているサングラスの沢木がマスターだ。愛車は日産GT-R。

 車は便利な移動手段だと高をくくっているうちは、その楽しみを半分も味わえてないのかも?そんな疑念を抱いたのは、沼津のカフェを舞台に車愛好家たちの交流を描く、走り屋漫画の金字塔『GTロマン』を読んだから。作者は車やバイクにまつわる作品を多数発表し、自身も猛スピード狂の西風先生だ。

ジャガーXJ-S、ホンダS800、日産GT-R……。1巻から錚々たる名車が劇中を疾走するのだが、すべての〝乗り味〟の違いが、ダイナミックな描写や英語も駆使した擬音で表現されているのがすごい。乗ったことがなくても手に取るように伝わってくる。

上はマスターが愛車GT-Rで、馬力的な差があるGT-Sをテクニックで抜くシーン。下は新入社員の青年が、仕事をサボってアルファ・ロメオ ジュリアスーパーでドライブするシーン。いずれも、乗り手たちが車と対話しながら走っているのが印象的だ。そして、その逐一が、まるでアメコミのごとき個性的な擬音とともに描かれる。西風先生の車への愛がなければ、こうはならなかったんじゃないか。

「ほぼ取材で乗ってから描いているからね。そうするといろんなことがわかるんですよ。例えば、ポルシェのバリオカムなんてギヤーッて怒ったような音がする(笑)。逆に、ホンダのSシリーズなんかは高級時計みたいに精密にできているから、まったく違う音で。車には、そういうことを体感する楽しみもあるんだよって伝えたくて、いろいろ工夫しているんです」

 劇中では峠道で自然発生する車同士のレースが毎回のように描かれるのだが、車のポテンシャルの差をものともせず、テクニックで勝敗が決まるのも痛快でたまらない。「実際、車の腕前はコーナリングでわかるんですよ。例えば、コーナーでブレーキをかけないなんてのは、よく知らない奴で信じちゃいけない(笑)。そういう技術は乗りながら研究するうちに身につくと思うけどね」。そんな先生に、シティボーイへのおすすめの車を聞いてみた。

「『スズキのカプチーノとか小さい車から始めてみれば?』と言いたいところだけど、今そのへんは値段は上がっているんだよね(笑)。まぁ、大事なのは欲しい車があったら誰の意見も聞かずに買うことかな。特に中古車は出合いだから」

これが西風先生の 華麗なガレージ!
箱根の山間にある『バイカーズパラダイス南箱根』では、西風先生の特製ガレージが見学できる。男の夢を詰め込んだかのようなゴージャスさだ。

 実はこの取材、先生の運転によるディーゼルターボ車で峠道の疾走中に行われた。高等テクで2車線を使い分けながら、前の車をどんどん追い抜いていくその爽快さたるや! 帰り道で疑念は確信に変わった。やっぱ車は速さでしょ。

GT ROMAN

1986年から断続的に続く『GTロマン』シリーズの最新章が、自動車雑誌『Tipo』で連載中の『GT roman ~LIFE~』。第1巻にはポルシェ911やアルファ・ロメオ ミト クアドリフォリオ ヴェルデ、日産GT-R、ロータスヨーロッパなどが登場する。¥1,100/ネコ・パブリッシング

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