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Mr. Cats' Gardenのブログ あるいはニャンスケの生活と意見

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2018.07.30
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あの蜷川幸雄がハムレットを演出する。主役に抜擢したのは、全盛の男性アイドル:真田広之だ!どういうことになるのか,見に行こう。時は1995年10月29日。場所は、今は無き銀座セゾン劇場。寄生猫であるニャンスケにとっては、我が宿主が彼の両親に連れられて小学校高学年ぐらいまで度々訪れた日本を代表する映画新作封切館:テアトル東京の跡地に建った劇場。あのとき、劇場近くにきた宿主と相方の会話が記憶に残る。
宿主「あれ、このあたりにテアトル東京があるはずだよ」
相方「西武が買って劇場にしたっていう話だよ」

20年以上たった今、細かいことは洗い流され、骨太の記憶のみが残り、その輪郭がより鮮明になってきている。真田広之は、まるでRSC(ロイヤルシェークスピアカンパニー)の俳優のように振る舞い、オフィーリアに愛の告白をする。不思議なことに、翻訳劇に付きものである不自然な言い回しが全く記憶にない。好演、そして好訳・好演出だったに違いない。
しかるに、ここで最も強烈で感動的だったのがオフィーリアなのだ。圧倒的で、思わず胸が熱くなるグッと来た感じ。言葉にならない。それはたぶん原著にしろ、翻訳にしろ、シナリオを読んだだけでは誰も想像できない、作家の意図をも超えた、一人歩きし始めたオフィーリア。つまり、名人が画いた雀が、屏風を飛び出して外に飛んでいき、囀り回った後、また元の屏風に戻ってくる、あの抜け雀の雀を見た感動みたいな。そう、抜け雀の雀になったオフィーリア。台詞は全てシナリオ通り、多くの女優が同じ台詞を、原著の輝点英語だけで無く、様々な言語、様々な翻訳により世界中で演じてきた。何が違って差が出てくるのか。
たぶん飛び抜けた姿勢と理性と感性を天賦され、瞬時に衆目の視線を集めてしまう天賦の可憐な美貌を備えたオフィーリア。全ての台詞が、その圧倒的に確立されたオフィーリアの語る自然な言葉として発されている。それは劇場全体の心を揺すぶる。誰もここで起こることを予期していなかった真実のオフィーリアとの遭遇。

中休憩に入ったとき、宿主が無言でロビーに立とうとすると、相方も黙って立ち上がり、二人で黙ってロビーに向かう。若い女性の話になると、ほんの一寸でも宿主がほめ言葉を言おうものなら、あることないこと、妄想に任せて、次々と引っ掻き始める相方である。オフィーリアは誰がやっているのか、どう話を切り出したらスムーズに議論できるか?宿主、迷いながらロビーに出ると、隅のボードに本日の出演者が、配役抜きで名前だけが木戸札のように掛けてある。「オフィーリアになっているのは誰だ?」と心でつぶやきながら ボードを見ると、先頭が「真田広之」。次が「松たか子」。あと、出ている女優さんは「三田和代」。。。。
珍しく、相方が、宿主の考えていたことを、言い始めた。
相方「三田和代は知ってるから、オフィーリアは松たか子っていう人じゃないの?」
宿主「松たか子?知ってる?」
相方「聞いたことない。名前の感じから、松竹歌劇か宝塚じゃない?トップだったらあのくらいやれてもおかしくない?女優は化けるから、若い子みたいな演技も出来るのかもしれない?」
言外に、相方もオフィーリアに圧倒されていることがハッキリと窺える。相方が自ら感銘を受けたことを表にすることは極めて希なことである。怒りと笑いは常に全開だけれども。

オフィーリアに圧倒され「「松たか子」って何?」という疑問符に頭脳の過半を支配されながら帰宅した宿主と相方、置き忘れていたパンフを見直して、
宿主「判った。松たか子って、幸四郎の次女だってさ。脚本は松岡和子の新訳だって。」
相方「血かあ!凄いね。参った。出来ちゃうんだ。翻訳、小田島先生じゃないのか。なんか違うと思った。」

「松たか子」という名前を皆が知るようになったのは、翌1996年4-6月に出演したフジテレビ「ロングバケーション」が大ヒットし、主演で1995年6月に既にBSでは放映されていたNHKドラマ「蔵」が,翌1996年5-6月、地上波で放映され高い視聴率を取ったことなどで、俗にいう大ブレークが起きたことである。週刊誌とワイドショーはニューアイドル松たか子で大騒ぎ。
あのオフィーリア女優、希代のシェイクスピア女優がアイドル扱いされている。そこには英国のRSC俳優や日本の歌舞伎俳優に対するような、「尊敬」のニュアンスがない。ニャンスケはもの凄い違和感と情けなさに苛まれた。しかるに、松たか子ご本人は、その周りのワイワイをスンナリ・サラリと受けまた適当に流し、ご自分の芸域を詩作、作曲、執筆、ダンス、ヴォーカルへと大胆に発展されていったようである。

ニャンスケの今までに体験した舞台芸術のなかで、最も印象的で、完璧で,感激的なもの、それが1995年、蜷川ハムレットの舞台での松たか子のオフィーリアであった。

1995/10/29  ハムレット 銀座セゾン劇場 シェイクスピア作 蜷川幸雄演出 真田広之 松たか子 三田和代 辻萬長


    図:1995年、蜷川ハムレットのパンフレット





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最終更新日  2018.07.30 14:26:06
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