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株式会社杏林堂薬局 青田代表取締役

医療、食、スポーツで地域の健康をサポート

地域医療への貢献こそお客さまへの恩返し――。
静岡で成長し、静岡に貢献してきた「杏林堂」がめざす企業成長の姿

全事業の根底に流れるのは「地域住民の健康づくりに寄与する」という想い

――御社はドラッグストアを経営の柱としながら、医療だけでなく食や介護、スポーツに至るまで実に幅広い事業を展開されています。どのようなビジョンのもと、このような事業展開をされているのでしょうか。

弊社が掲げるビジョンは「地域医療への貢献」。地域の人々が美しく、健康で、幸せな人生を送るための手伝いをするという考えのもと、業績よりも社会的使命を重視した経営をモットーとしています。1900年(明治33年)の創業以来、100年以上に渡って静岡エリアで商いを続けてこられたのも、地域の方々の支えがあったからこそ。地域医療への貢献こそが、お客さまへの恩返しだと考えているのです。

青田英行(あおた ひでゆき)
株式会社杏林堂薬局
代表取締役 COO 薬剤師

ドラッグストアはビジョン実現のためのツールの一つと捉えており、お客さまの健康に寄与できるなら業態にこだわりはありません。言ってしまえば「地域の方々の健康づくりに役立つ会社」が杏林堂です。ですから、地域の方々の健康づくりをトータルでサポートするべく事業を展開しています。そのなかでも主力となるのが、「医療」「食」「スポーツ」の3事業。これらを会社の柱としています。
まず、「医療」(メディカル事業)は、処方せん調剤とOTC医薬品の販売で、おもに薬剤師がその役割を担っています。
次に「食」(ニュートリション事業)は、管理栄養士が中心となってメニュー提案や自治体でのセミナーを行ない、食の大切さを伝えています。
最後に「スポーツ」(スポーツ事業)は、市民ランニングクラブの運営で、現在は浜松、島田、静岡の3拠点に会員が計400人所属しています。最近は、新たにグラウンドゴルフやスローエアロビクスなども取り組みはじめました。

私は杏林堂に入社した30年前から、「これからのドラッグストアは、モノを売るだけではいけない。健康づくりに役立つ会社であるべきだ」と考え、「医療」に限らず、「食」や「スポーツ」など多方向からお客さまの健康に寄与することが必要だと思っていました。また、弊社のような地域密着型のドラッグストアにとって大切なのは、杏林堂のファンを増やすこと。そのためには、お客さまと多くの接点を持つことが成功のカギです。この観点から「食」と「スポーツ」はお客さまと杏林堂との接点を増やすことで親近感を高め、ファン化するためにも重要な事業と認識しています。
特にスポーツ事業は、私自身がランニング好きということもあり、思い入れの強い取組み。正直、収益を上げるビジネスモデルとしてはまだ課題が山積していますが、杏林堂のオリジナリティを打ち出せる事業としてじっくり育んでいきたいと考えています。

――ドラッグストア企業として地域医療に貢献するために、「医療」「食」「スポーツ」の3事業を展開されているのですね。では今後、ドラッグストア業界はどのように変化していくとお考えですか。

ドラッグストア業界の変化として注目しているのは、「業態の相似化」と「ネット販売の拡大」の二つです。
一つめの「業態の相似化」は、小売業界全体での業態の特性が弱まり、差がなくなっていくだろうと考えています。20年前にアメリカ視察に行った際、現地のドラッグストアとスーパーマーケットの店づくりや品揃えがそっくりで見分けがつきませんでしたが、近い将来の日本も同じような状況になるのではと。すでに今も、ドラッグストアは商品の取り扱いジャンル、品目数ともにスーパーマーケットに近づいており、スーパーマーケットもまた、OTC医薬品の販売や調剤薬局の併設など、ドラッグストア機能を備えつつあります。こうした現象は他業態間でも起こり、ドラッグストア、スーパーマーケット、ホームセンターそしてコンビニエンスストアの境界線はますますあいまいになっていくでしょう。つまり、業態の垣根を越えてライバルになるため、シェア争いが激化すると予想しています。
二つめの、「ネット販売の拡大」も、ドラッグストア業界に限らず小売業全体で言えることです。利便性、価格の両面からもネット販売の需要はますます高まっていくはず。それに伴い、実店舗の集客力が弱まっていくと考えています。ですから、実店舗では利便性や価格以外のメリットをお客さまに提供していく必要があるのです。

杏林堂が考える真の「かかりつけ薬局・薬剤師」のかたちとは

――そうした市場予測をふまえ、御社はどのような戦略を立てているのでしょうか。

「業態の相似化」については、他社との差別化が必須と考えています。目下、「調剤部門の拡大」と「小売以外のサービスの提供」で差別化を図っています。
「調剤部門の拡大」については、現在、売上げ構成比の12%を占めている調剤部門を20~25%に伸ばしたいと考えています。とはいえ、調剤事業は2年ごとに変わる調剤報酬の影響を受けるため、調剤事業の割合が大きくなりすぎると安定的な収益の確保という点で厳しい。ですから、高くても25%を想定しています。

――2016年度調剤報酬改定では、かかりつけ薬局・薬剤師への評価が高くなりましたが、それについてはどのように取り組んでいく考えですか。

調剤事業を伸ばしていくためには、かかりつけ化への取り組みは避けられないでしょう。なかでも「在宅医療」は必須の要件ですが、現段階ではまだ薬剤師の人材確保や体制整備が不十分のため、積極的に打ち出す方針ではありません。しかしそうは言っても、今いる患者さまが在宅になった場合に、「対応できません」では地域密着型の企業として無責任すぎる。あくまで「患者さまからのニーズに応える」というスタンスで、じっくりとノウハウを蓄積していく考えです。
反面、「かかりつけ」という言葉の意味を考えた時、厚生労働省の定義には正直疑問も感じるのです。例えば、在宅医療や24時間対応をしていれば「かかりつけ」なのか、単に点数を取るための「かかりつけ」にならないかという不安があります。
そもそも、「かかりつけ」とは、お客さまが頻繁に来店し、「何か困ったことがあれば杏林堂に行こう」と思える状態ではないでしょうか。とすると、お客さまの来店頻度を高めることも、かかりつけ化への一歩だと思うのです。

――かかりつけ化のために来店頻度を高めるお考えですが、その施策を教えてください。

杏林堂でも「ネットスーパー」を運営していますが、実店舗は、調剤や生鮮食品など「ネットで販売できない、もしくは販売しづらい商品」のボリュームを増やしていく計画です。さらに、実店舗でしか得られないプラスアルファの価値を提供するつもり。イートインコーナーを作ったり、キッチンコーナーでデモンストレーションをしたり、買い物以外の「楽しみ、魅力」を提供したいと考えています。

――ネット販売の拡大によって実店舗の集客力が落ちるとの見解ですが、それに対してどのような戦略を立てていらっしゃいますか。

来店頻度を上げるには、先ほどお伝えした「小売以外のサービスの提供」がキーになると考えています。現在、お客さまの平均来店頻度は月4回。一般的なドラッグストアでは月1~2回と言われていますから、倍以上です。これは杏林堂がドラッグストアとしてだけでなく、スーパーマーケットとしても利用されていることが要因。アイテム数の拡大により、ここまで来店頻度を高めたわけですが、さらに頻度を高めるには次のステップとして「小売以外のサービス」が必要です。そこで検討しているのが、イートインコーナーやエステ、ネイルなど「体験型サービス」や、管理栄養士によるサービスです。

特に力を入れる予定なのが、管理栄養士によるサービス。昨今、飲食業界は「おいしさ」から「健康」へ移行しています。それはメーカーの売れ筋を見ても明らか。「ビール」を例にとると、以前は「いかにおいしいビールをつくるか」「第3のビールをいかにビールの味に近づかせるか」が課題でしたが、近年は「おいしさをキープしたままカロリーをいかに下げるか、糖質をいかに削減するか」に関心が集まっています。現在、管理栄養士は約100人を抱えていますが、彼女らによる「健康」をテーマにした商品構成や食生活の提案など、杏林堂ならではの強みを積極的に打ち出していくつもりです。

――現在、杏林堂は静岡県内に75店を展開しています。チェーンストアにとっての企業成長とは店舗拡大だと思いますが、今後の出店計画について教えてください。

今後は年間4~5店のペースで出店を計画しています。これまで静岡県の中でも西部と中部を中心に展開してきましたが、これからは東部にも積極的に出店してシェアを広げていく考えです。また、店舗フォーマットは(1)ドラッグストア、(2)調剤薬局、(3)調剤併設ドラッグストアの3タイプがありますが、その中でも③調剤併設ドラッグストア、特に600坪以上の超大型店を出店していきます。
ただし、誤解してほしくないのですが、店舗拡大による企業成長は弊社がめざすところではありません。従業員3000人を抱える企業として、確実に成長していきたいと考えていますが、冒頭にお伝えした通り、われわれがめざすのは地域貢献。規模を追求するあまり地域貢献がおろそかになるのは本末転倒なのです。お客さまのメリットを第一に考えた経営戦略、その軸は決してぶらしてはいけないと信じています。

求めるのは健康への高い意識とチャレンジ精神を備えた薬剤師

――「地域医療への貢献」というビジョン実現のために薬剤師に求める資質とは何でしょうか。

「健康づくりへの高い意識」と「新しいことへのチャレンジ精神」です。
一つめの「健康づくりへの高い意識」は、地域医療に貢献するためには、薬剤師自身が健康に関心を持つことが大前提という理由から。自分の体験をもとに健康づくりのアドバイスをできる人ならばなおよいですね。お客さまの健康づくりを真にサポートするには、医薬品の知識だけがあっても十分とは言えません。例えば、腰痛のお客さまにAとBの2種の湿布薬の違いを説明するだけでは不合格。お客さまの症状を聞いて、AとBどちらの湿布薬が適当かアドバイスして平均点。さらに、腰痛予防のストレッチを伝えれば満点です。そして、杏林堂の薬剤師には満点のレベルを求めています。
私自身もドラッグストアの経営者として、従業員を健康にすることが使命だと認識しています。昨今、CHO(Chief Health Officer・健康管理最高責任者)やCWO(Chief Wellness Officer・最高健康責任者)などを導入し、従業員の健康意識を高める企業が増えていますが、弊社でも全社で喫煙率やBMI値を下げる取組みを検討しているところ。従業員が自身の健康づくりに積極的になることで、お客さまの健康に寄与できるシーンが広がると確信しています。

もう一つの「新しいことへのチャレンジ精神」は、企業成長のためには常に挑戦する姿勢が必要だと考えているからです。杏林堂には「一勝九敗」という方針があり、とにかくチャレンジすることを善しとしています。その成果は、順調な売上げ推移と売上構成比の変化からも明らかです。10年前に比べて売上げは約2.5倍。一方、売上構成比については、10年前はOTC医薬品や化粧品が大部分を占めていましたが、今は調剤と食品が売上げの半分以上です。この大きな変化は事業や戦略を大胆に変化させてきたから。企業が成長するには、時代のニーズに合わせて事業を見直しつつ、新しいことにチャレンジする勇気が必要です。だからこそ、社員にも常にチャレンジする姿勢を求めているのです。

――薬剤師が長期的にキャリアを形成できる体制は整っているのでしょうか。


ランニングが趣味の青田氏。2016年1月には社員やお客とともにハワイ・ホノルルマラソンに参加し、見事完走を果たした

社員一人ひとりが、長期的なキャリアプランのもとに目標をもって長く働けるよう、3種のコースを用意しています。
一つは「総合管理職」コース。これは薬剤師以外も応募できるコースで、調剤やOTCだけでなく食品や化粧品も含めて店全体をマネジメントし、人材や売上げも管理します。店長、支社長(ドラッグストアのエリアマネジャー)、本部長、取締役とキャリアを進め、最終的には社長をめざします。
二つめは「薬局管理職」コース。これは調剤とOTC部門の在庫管理や人材管理を担います。管理薬剤師、薬局の店長、エリアマネジャー、総括エリア長、副本部長、薬剤部本部長へのキャリアアップをめざします。
三つめは「薬剤師業務専任」コース。これは、調剤とOTC販売の業務に専念します。

これまでお話した通り、地域の人々への健康づくりをサポートすることが、企業の存在意義だと考えています。そのためには、絶え間ない進化が必要ですし、みずから働きかける薬剤師の存在が不可欠です。
杏林堂はボトムアップ文化の企業。従業員の意見は役職や入社年数に関わらず積極的に採用していますから、主体的にチャレンジする方にぜひご活躍いただきたいと考えています。

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