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永遠においしく絡み合った ~トリニダード・トバゴの「食」と歴史~

 毎年、世界中でも有名なカーニバル2日間の祝日をきっかけに、トリニダード・トバゴ共和国の美しい2島に、数万人が訪れています。いろいろな人権・信仰を持つ人々は、現地の街並みや砂浜を楽しんでいる中、この島国で見つけた「食」の多様性に驚いています。全体的に「トリニー食」と呼ばれても、そこには互いに極めて異なったものが含まれています。


 トリニダード・トバゴは本当に文化が混ざり合っています。


 去年、水若酢神社を訪れた時に、一緒に行ってくれた友達から隠岐のことについていろいろと聞き勉強になりました。その中で、隠岐と日本の他地域の文化の異なっているところも教えてくれました。分かって来たのは、隠岐にある豊かな文化の由来は、今までに隠岐へやってきて定住した島外の人々にあるということです。トリニダード・トバゴ料理は似ているケースだと思います。「トリニー食」の多様性は、変化に富んだ国の歴史から誕生しました。


 これから、トリニダード・トバゴの文化に影響を与えた人たちについて紹介します。


 アメリカインディアン族

写真1:キャッサバパン

 私の国の原住民である、カリブ族とアラワク族(総合的に「アメリカインディアン族」)は、昔に南米や他のカリブ諸島からトリニダード・トバゴに移住し、野生の動植物の狩猟や農業、生存のための努力を生活にしました。今も親しまれているキャッサバ紛で作ったパンとコーン・パステルは、この原住民の代表的な料理です。

写真2:コーン・パステル

 一年中収穫できるので、キャッサバはアメリカインディアン族の主食であり、数多い料理や飲み物の材料でした。キャッサバパンを作るには、まず皮を剥いたキャッサバをおろして、メタピーという特別な木造の道具に汁が無くなるまで置きます。こうするとキャッサバは粉のような状態になります。そのキャッサバ紛を篩って、少しずつ大皿に移し、火で炊きますが、途中で裏返しをします。調理したものを日光で乾かします。キャッサバ紛を様々なスープやソースと一緒に出すことがよくあります。



 アフリカ人

写真3:カラル―

 アメリカインディアン族がトリニダード・トバゴに移住し始めてから数年後、西アフリカで住んでいた人たちは、他人の支配を受けてしまい、自由などの権利を制限されて、トリニダード・トバゴへ強制的に移住させられました。その時に、暴行事件やその他の虐待または免疫のない病の影響で、アメリカインディアン族の人口は減少しました。そのようなひどい状況下でアフリカ人も苦しんでいましたが、トリニダード・トバゴに持って来た文化、特に食文化の影響は現在にも見られます。毎週日曜日、トリニダード・トバゴでは平日とは違う特別な食事が調理されており、その中で西アフリカ由来のクークーとカラル―という料理が必ず出ます。その2つの料理がなければ、日曜日のお昼に満足がいきません。


 トリニダードらしいカラル―の材料は、タロイモ、カボチャとオクラであり、唐辛子、タマネギ、ニンニク、チャイブ、セロリ、ピメント、タイム、パセリと塩は調味料として使用されています。多くの場合、塩漬け肉という豚の尻尾、塩漬け魚、カニの脚などを入れて味付けをします。個人的にカニの脚が入ったカラル―が一番好きです。


 カラル―を作る時には、唐辛子以外の材料を鍋に入れて、柔らかくなるまで煮ます。次に、マドラーで適切に材料を混合して、唐辛子を入れて、またしばらく煮ます。これでカラル―は完成です。



 東インド系の人

写真4:ロティ

 奴隷制に対した蜂起と反乱の結果、自由などの権利が制限された人々が解放され、ついに国も独立しました。その状況下で、新しい労働者に需要がありましたので、インドからの労働者(年季契約奉公人)は誘致され、自国の豊かな文化や料理もトリニダード・トバゴに持ってきました。特にインド由来のダブルズとロティは、私の国の文化になりました。


 ダブルズはトリニダード・トバゴの代表的なB級グルメであり、その屋台が各交差点や街角など、どこにでもあります。朝昼晩、どの食事にも合うダブルズは、多くの人たちが飲み会の後にも食べたい料理です。また、帰国したばかりの人は久しぶりに母国料理を食べることができるように、トリニダード・トバゴ空港の国際線到着ロビーを出たらダブルズの屋台はすぐあります。


写真5:ダブルズ

 2020年3~4月、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、ダブルズなどの屋台すべては営業中止でした。そのようなことは国の歴史には前例がありませんでした。トリニダード・トバゴ人の日常生活にはダブルズは欠かせないため、屋台の営業中止時期に多くの人たちが自分で作ってみたダブルズの写真をどんどんSNSで投稿していました。私も、隠岐に滞在中なのに、ダブルズの材料を探しました。トリニダード・トバゴ人の好きな料理と言えば、ダブルズですね。


写真6:トリニダード・トバゴ風の中華料理

 中国人

 1806年10月12日、中国からの移民が初めてトリニダード・トバゴに来ました。最初に労働者(年季契約奉公人)として働いて、その後商人として生活をしました。この人たちが作ったトリニダード・トバゴ風の中華料理を、現在どこにでもあるレストランなどで食べることができます。そこでは、チキンと麺やチャーメンの組み合わせが最も人気なのだと思います。




 トリニダード・トバゴ料理は色彩に富んで、多様な味があり、おいしいです。多くのものは、トリニダード・トバゴの国民になった人たちによって様々な遠いところから持ち込まれましたが、そのおいしさはトリニダード・トバゴならではのものです。


 トリニダード・トバゴの「食」は、国民の歴史を教えてくれます。


筆者:アリエル(外国語指導助手、トリニダード・トバゴ出身)

翻訳:イザベラ

写真1~5:Wikimedia Commons

写真6:Foodie Nation Limited

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