numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

日本プロ野球(NPB)のリプレイ検証「リクエスト」のルールとは?


日本プロ野球(NPB)では、2018年から、審判員の判定に対してチームが疑義を抱いたとき、審判員にビデオ判定を求める「リクエスト」制度が導入されています。

どんなプレイでも、何回でもリクエストを要求できるわけではなく、「リクエスト」にもルールが定められています。

そのルールはセ・パ両リーグの「アグリーメント」で規定*1されているのですが、内容をインターネット上で確認することはできません。

今回は、新聞などで報道された内容をもとに、「リクエスト」制度のルールについてまとめてみました。

リクエストのルールの概要

以下は、2018年当初から運用されているルールです。*2

  • リプレイ検証を求めることの名称は「リクエスト」
    名称は「(MLBの)チャレンジは挑発的な表現だが、あえてやわらかい表現にした」
  • 1試合で利用できるのは2回まで。判定が覆れば回数にはカウントされない
  • 「リクエスト」の回数は、9回終了時点でリセットされ、延長戦に入ると新たに1回付与される。延長でも、リプレイ検証によって判定が覆ったときは、回数にはカウントされない
  • リクエストを要求できるのは監督のみで、要求する際は、監督が速やかにモニターを意味する「四角」を手で表現して伝える

  • ベンチ内で別の者が映像を確認してからリクエストした場合、リクエストは受け付けず、監督は退場処分
  • 検証後の判定に抗議した場合、抗議した選手と監督は退場処分
  • 審判員がリプレイ検証に用いる映像は、当該試合のテレビ中継映像
  • リプレイ映像の検証時間は5分以内
  • 確証のある映像がない場合は審判団の判断

サッカーのVARプロトコルにおいても、VARがリプレイ映像をチェックして主審の判定に「はっきりとした、明白な間違い」や「見過ごされた重大な事象」があるときが介入基準となっていて、これが確認できないときは、主審が下した判定を「コンファーム(認証)する」こととしています。

 

以下は2022年から追記されたルールです。*3

  • リプレイ検証中、判定を下した当該審判員以外の1名の審判員がグラウンド上に残り、この間、選手はベンチに戻ってはならない
  • リプレイ検証は、当該審判員を除く審判員2名、控え審判員の計3名が行い、支持の多い意見を優先する

 

リクエストの対象となるプレイ

2018年の導入当初から対象となっているもの

  • アウトかセーフか
  • フェアかファウルか

2019年から対象に追加となったもの

  • 本塁での衝突プレイ*4
  • 併殺崩しの危険なスライディング
  • 頭部への死球
  • フェンス際の打球(本塁打判定以外)
  • 併殺を試みる守備側を妨害する走塁*5

2020年から対象に追加となったもの

  • 捕球から送球に移る際の「完全捕球」の確認*6

ここで捕球とは「捕球を試みたグラブまたは手を閉じる行為」とし、送球する手の側にグラブの内側が向いていれば完全捕球と判定することが確認されました。

リクエストの対象とならないプレイ

  • ストライク、ボールの判定
  • 打者のハーフスイング
  • 自打球
  • 走塁妨害
  • 守備妨害
  • ボーク
  • インフィールドフライ
  • 塁審より前の打球

「塁審より前」とは、一塁・三塁の塁審と球審の間のファウルライン周辺のことと言い換えることもできます。例えばゴロでベースを超えていく打球や、ベース手前のファウルライン際で野手が打球に触れたかどうかなどは審判員の判断となり、リクエストの対象とはなりません。

▼フェアかファウルかの判定基準はこちら

num-11235.hateblo.jp

リプレイ検証を行えないケース

  • 機械が故障している場合
  • 確証のある映像がない場合

2022年追記 「確証がない映像」とは *7

リクエスト制度が導入されたときから記載されていた「確証がない映像」とはどのようなものか、具体的に示されました。

〈1〉グラウンドの土などでタッグやベースへの走者の足の入りが確認出来ない。
〈2〉プレイがその他のプレーヤー、または審判員でブラインドになっている。
〈3〉映像自体がぶれている。

2023年追記 *8

  • 映像そのものがない場合

2023年5月28日の楽天vs日本ハム戦で、日本ハムの新庄監督が「タッグアップした走者の離塁が早かったのではないか」とリクエストを求めましたが、そのことを確認できる映像がなく、判定は変わりませんでした。6月5日の実行委員会で、「検証の映像自体がない場合は審判員の判定を維持してリクエスト回数に含まない」ことが確認されました。

参考文献