見出し画像

【教員発信】 安田女子高校のSTEAM教育の方針

安田女子高校STEAMコースは、2021年4月に新設されたコースです。
今回は、安田女子高校STEAMコースでは、どのような方針で、どのような教育をしているのかをご紹介します。


■STEAMって何?

本題の前に、そもそも「STEAM(スティーム)って何?」というお話を。

私がSTEAMコースの主任として外部の方とお会いして、「安田女子高校のSTEAMコースで主任をしております・・・」と自己紹介すると、「STEAMって何?」とよく質問されるんです。
そういうときに「うーん、まだ新しい教育の分野で、定義のようなものがいろいろありまして・・・」と苦しい言い訳をしつつ、いろいろなお話をさせてもらっています。

ちなみに、一般社団法人STEAM JAPANではこんな風に説明されています。

「ふんふん、なんとなく分かったぞ」という人は、以下を飛ばして「■安田女子高校のSTEAMは?」までお進みください。

話を戻して、STEAMの説明がなんでこんなに苦しいかというと・・・
・もともとは、アメリカから始まったSTEM教育。
2000年くらいのアメリカで、『理系分野が嫌いな人が多い。理系分野が好きな人を増やして理系の研究者を増やさないと、これからのビジネスや開発競争に負けてしまう。』という危機感から始まったらしい。
そのためには、『早い段階の教育から、理系科目の勉強を頑張らせたい。しかも嫌いにさせないために(好きにさせるために)、最新の科学技術をつかったり、総合的に勉強させたりして、楽しく勉強させよう』という試みが始まったのだそうです。
そして、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字を取って、総合的に理系について学ばせるSTEM/STEM教育が始まったというわけです。

ふう。もともとSTEMを知らないと、ここまででちょっと疲れちゃいますよね。

そして、STEMのことがなんとなく分かってもらったとして、それじゃあは何ということになるわけです。
・STEAMのは、いろいろ!
Art(芸術)とする場合もあれば、Liberal Arts(人間を自由にする技=教養)とする場合もあります。なかには、Agriculture(農業)としているところも。
どうして、Aが入ったのかというと、「理系の知識だけじゃ偏ってしまって、だめなんじゃないか。」という指摘があるみたいです。まあ、確かに科学技術の発達で便利な社会にはなったけど、原発事故とかの負の側面もあります。また、社会の課題を解決するにしても、もっと人に寄り添った、人にやさしいものである必要があるんじゃないかという指摘もあります。そうして、芸術やデザインなどの知識やスキルを活用して、想像的で創造的な発想を生み出しましょうということなんですって。

とまあ、このような経緯や、いろんな解釈やアプローチがあるとかで説明がやっかいなのですね。


■安田女子高校のSTEAM教育は?

じゃあ、安田女子高校STEAMコースではSTEAMをどんな風に捉えているのか。
本校のSTEAMコースでは、以下の2つを主な方針にしています。

ワクワクが中心
やっぱりワクワクするような取組で、自分のこととして主体的に活動してほしい。そうすれば、本当の意味での学びにつながるに違いない。

ホンモノ志向
社会の第一線で活動している人の関わったり、実際の社会課題や正解のない問いに取り組んだり、ホンモノに触れることで、理想像や目標を高く持ってもらい、モチベーションをあげていく。

ここで「あれっ」と思った人も多いのではないでしょうか。
そうなんです。実はもともとのSTEMで育成しようとしている「理系」とか「理系人材の育成」などという言葉は出てきません。(もちろん、理系分野の学習をしていないわけではありません。他の高校生と同じように普通の授業で勉強しています。)
安田のSTEAMコースでは、文系・理系に関わらず生徒を募集していて、実際の割合もだいたい半々くらいなんです。


■実際の取組は?

じゃあ、その柱を実現するために主にどんな取組をしているかというと・・・

● 週4時間のPBL(Project Based Learning)
企業や大学などと連携して、ワクワクするようなホンモノの課題解決などに取り組みます。グループで協働し、多様な個性で補い合うチームワークも養います。
(詳しくは<PBL第一期><PBL第二期①>などをごらんください。)

IBL(Interest Based Learning/高1:週3時間、高2~高3前半:週4時間、高3後半:8時間)
興味関心がある分野をみずから学習し、得意分野を伸ばしたり、苦手分野を克服したりします。そのために、ICTを活用したアダプティブラーニング(個別最適学習)の環境を整えています。(安田女子中高では生徒全員に一人1台のiPadを貸与し、WiFi環境も整備しています)
また、たんぽぽの遺伝子解析やプログラミングなどの特別講座を実施したり外部講師による特別講演を実施したりして、興味関心を伸ばす工夫もしています。

成長マインドセットの育成
学校生活のさまざまな場面で、「型にとらわれない」「まずやってみる」「失敗を恐れず挑戦し続ける」という成長マインドセットを身につけます。さまざまなコンテストなどを紹介し、教員が伴走することで安心して挑戦する環境を整えています。生徒がイベントなどを自分たちで企画・運営する機会を少しずつ増やしています(<生徒の参画>をごらんください)。

注:PBLやIBLの授業時間を確保するために、カリキュラム編成を工夫しています。本校の他コース(総合コース・特進コース)と比べると、国語や社会の授業時間がやや少なめで、数学・理科の選択が必須になっています。授業時間が少ない科目などが大学受験で必要な場合は、IBLの時間や家庭学習で補っていくことを想定しています。


■最後に

安田女子高校のSTEAMコースについて、なんとなく分かっていただけたでしょうか。
安田のSTEAMコースにご興味をお持ちの受験生・保護者の方は、オープンスクールなどで詳しい説明やSTEAM体験などをしておりますので、ぜひ一度お越しください。
教育関係者や企業の方など、安田のSTEAMコースをもう少し知りたいという方は、学校までご連絡ください。


■ 執筆者:安田女子高校STEAMコース主任(2年目)
教員歴23年(理科と情報、専門は物理)。
趣味は読書、好きなことは謎解き、好きな食べ物は粒あんです。
大学・大学院時代は、赤外線天文学を専攻、できたてほやほやのすばる望遠鏡を使わせてもらいながら褐色矮星について研究していました。
未知の人と関わるときは尻込みするタイプですが、STEAMと関わり始めた2年前から一念発起して、いろいろな人と関わろうと努力しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?