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業界団体について説明することは日本の社会構造と音楽界の歴史を語ることだった 【ニューミドルマンコミュ・イベントレポート】

 デジタル化への取り組みが遅れていることに危機感を持って、2014年から始めたニューミドルマン養成講座を経て、2019年からコミュニティとして活動をしているニューミドルマン。コロナ禍の中は、月に2回、旬のゲストをお呼びしてお話を伺うMusicTech Radarと、コミュメンバーによる勉強会を継続しています。

 2022年最初となった1月の勉強会は、コミュメンバーからの要望に答えて、日本の音楽関連の「業界団体」について僕が説明するという企画になりました。
  当日僕が作った資料をベースによりわかりやすくまとめてくれたレポートがありますので、是非、ご覧ください。

 資料を作り、そして、当日話しながら改めて思ったのは、音楽業界って、先輩たちの努力の上で成り立っているものだなということです。
 僕が酒席でよく言う、「大規模コンサートにマフィアが関与しないというのは世界で珍しいのではないか?」というのも、フォーク・ニューミュージック全盛期にできたコンサートプロモーター第1世代が、「反社会的勢力」が出自であるだろう興行主と身体を張って戦って勝ち取ってくれたもので、数十億円の著作隣接権が実演家(音楽家)に、どのくらい聞かれたかという再生データに基づいて分配されるのも、先輩たちの行動の蓄積がなければありません。「権利は獲得するもの」というのは、音制連の理事時代に先輩方からよく聞きました。

 音楽業界の団体理事は原則として無休です。フルタイムて働く団体職員としてのスタッフはいますが、意思決定をして、外部と交渉する理事は業界のためのボランティアなのです。僕自身、3期6年間の音制連理事時代には、委員会への出席を始めとする理事としての活動を無償で行っていました。社会経験としては得難いもので、日本の社会構造への理解を深め、人間的にも成長できた気がします。
 中でも、芸団協CPRAの貸レコード委員会の交渉責任者としての数年間は思い出深いです。交渉相手は、CDVJというレンタルCD店の組合です。専務理事の若松さんは、若い頃の菅直人(元首相)の秘書だったというタフネゴシエーターです。レンタルCD業は、著作権(JASRAC)、レコード製作者の著作隣接権(レコード協会)、実演家の著作隣接権(芸団協CPRA)に使用料を払う(貸与権)という条件で行うということは決まっているのですが、金額は団体間の交渉です。信頼関係を築いていかなければ合理的な交渉もできませんが、金額が少ないほうが良い側と、少しでも多く取りたい側の交渉ですから、簡単にまとまるものでもありません。僕が交渉責任者時代に歴代最高の30億円以上の使用料額になったのは、当時の音制連理事長だった大石さんの卓見と政治力の賜物で、僕は現場で汗をかいていただけですが、昼間の会議室での交渉は5分で決裂して席を立ち、夜に酒を飲みながらサシで話して落とし所を探すみたいな「ザ・オトナ」な体験は、貴重でした。
 歴史的使命を終えつつあったレンタル店は、コロナ禍でダメ押しされて、終わろうとしていますが、若者に安価で音楽を伝えるという文化的な役割を担った側面も有りましたね。エイベックス松浦さんのキャリアがレンタルレコード店のバイトがスタートだったいうの話も有名ですね。

 業界団体という縦糸で音楽ビジネスの歴史を見ていくのも面白いなと、残すべき日本の美風と改めるべき旧い慣習について考える機会にもなるなと、ニューミドルマンコミュニティのメンバーと話しながら思いました。月2回のオンラインイベント(そろそろリアルも再開します)とFBグループを基本にした音楽ビジネスについて実践的に学べるコミュニティ、興味のある方は、是非、ご参加ください!


モチベーションあがります(^_-)