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シュペルターと歩む15年記 #18

神話と民話による創作のすゝめ


プロローグ(古事記今昔)

故於是 天照大御神見畏。
閇天石屋戶而。刺許母理坐也。
(原文)

そこで 天照らす大神もこれを嫌つて、
天あめの岩屋戸(いわやと)をあけて中にお隱れになりました。
(対訳)

神々しいオープニングです。

(ここから現代版古事記)
『別にスサノヲの命に腹を立ててはいないけど、
ほら、書類にハンコを押せだの、今日は高天原の開拓工事の視察だの
毎日毎日、八百万の神々のうるさいこと!
ちょっとここで一休みしよう』

天照大御神はもたれかかるのにちょうど良い滑らかな岩の上で、
寝そべって休んでおられましたが、
そのうち、うとうととお眠りになられたのです。ざっと三万年くらい。


『大おじさま、アマテラス大おじさま、出来てくださいな。』
岩戸の外から声がします。

『いつの間にか眠ってしまっていたのか』
岩の扉を開けて見ると、そこには、一人の女子高生が立っていました。

天岩戸、それはnote迷宮への入口!

(はて、”じょしこうせい”とは、なんだったか?)
アマテラスははっきりしない頭の中から記憶を呼び出しながら尋ねました。『アメノウズメではない君は、いったいどこの誰だっけ?』

『アマテラス大おじさまったら、すっかり寝ぼけて。ちゃあですよ。
ちゃあ・ティです。』

(あぁ、ちゃあか、本名は確かワスチャ・コーダンテ
天照王朝帝位継承第四位
たしか今はメサ・ルミナス学園2年生だったか。)
なんで、会った事のない女の子のことを知っているのだろうか?
いや会ったことあるんだったっけ?別の宇宙で、はるか未来に

『ところで、どうしてここにいるとわかったんだい』
『だって大おじさまはいつも仕事が忙しくなるとここに逃げ込んで
いらっしゃるでしょ』

『あぁ、そうだったかな?
ところで起こしてくれたお礼に、何か欲しいものがあれば行ってごらん?』

『それでは、アシュラ・テンプルの討伐に使う
ピンク色のモーターヘッドを作ってくださいな。』

次の日アマテラスが持ってきたのは、真っ赤機関部パールピンク装甲が映えるモーターヘッド、ルミナス・ミラージュでした。

『まぁ大おじさま、ありがとう。お花の模様までついて
とってもかわいいです。』

それからちゃあは毎日ルミナス・ミラージュと楽しく遊んでいましたが、
ルミナス・ミラージュはいつアシュラテンプルの征伐
連れて行ってくれるのか気が気ではありません。

ある日、ルミナス・ミラージュは
(ちゃあさまは本当にアシュラテンプル征伐のことを
すっかり忘れているに違いない。)
と思い一人で旅に出たのです。

 

ルミの恩返し

ある日トトムおじさんが歩いていると、
一騎のルミナス・ミラージュ倒れていました

『おお、これはかわいそうに』とトトムおじさんは
ルミナスを助けました。
アシュラ・テンプルと闘っている時に、
足をすべらせてこけちゃったのです。この御恩は忘れません』
とルミナスは去っていきました

まさかのスッコケネタが許されるのは100年に1回デス!

その晩、トトムが遅くまでガレージキットを作っていると
『こんばんは、道に迷った者ですが一晩宿をお借りできないでしょうか?』と外から声がします。ドアを開けて見ると、
昼間のルミナスが立っていたのでした。

『これは難儀なこと、何のお構いもできませんが
遠慮せず休んでいきなさい。』

『ありがとうございます。私はルミといいます。』
それからトトムは再びガレージキット製作に取り掛かりましたが、
溜息をついて考え込んでいます。

『おじさん、どうしたのですか?』
『それがね、シュペルターの肩の関節がどうにも設定画と違い過ぎて
困っているんだよ。
とはいっても脚の関節を作るのに時間と労力を使い過ぎてしまったので、
腕の関節もまた一から作るべきかどうか考えているのさ』

『それなら私に任せてもらえないでしょうか。
隣の部屋をお借りしますが、私が良いというまでは
絶対に中を見ないでくださいね』
と言い残しルミナス、いやルミは奥の部屋にこもったのです。

3日の後、隣の部屋からルミが姿を見せました。
手には見事なルミナス・ミラージュ肩関節複製品を持っていました。

『この複製品を売って、シリコンを買ってきてください。』

(いや、複製品を売るのって版権の問題があるんじゃ)とは言えず、
トトムは街に行って複製品を売ったフリをして、
手持ちのシリコンをルミに渡しました。

その晩、再びルミは『絶対に覗かないでくださいね!
ぜ・っ・た・い・ですよ!』
強烈な”フリ”を送ってよこしてから、奥の部屋にこもりました。

トトムは仕方なく部屋を覗くと、
ルミナス・ミラージュは自分の関節を取り外して、
シリコンで型取りしていたのです。

『私はあなたに助けていただいたルミナス・ミラージュです。
正体を見れれてしまったからには、ここを去らなくてはいけません。
これが最後に複製した腕の関節です。』
とルミナスは腕の関節を置き、行ってしまいました。

いや最初から助けたルミナスだと分かってたし…

(解説:通常シリコン複製は 
1日目、粘土埋め、シリコン流し、硬化待ち
2日目、粘土外し、シリコンバリア塗布、シリコン流し、硬化待ち
3日目 レジンの通り道、空気抜きの切り欠き、レジン複製
の3日間を1セットで行います。)


胴掘れワンワン

トトムおじさんはルミナス・ミラージュからもらった肩の関節
シロ』と名付けて、たいそう可愛がっていました。

ある日『シロや、お前シュペルターに組み込まれてみるかい?』
と尋ねると、シロは一目散にシュペルター胸部品のところへ行き、
ここ掘れワンワン』と鳴きました。

『確かにいかにもポリキャップを差し込んでくださいと言わんばかりの、
ボールジョイントのある胴体にはくっつけることはできないなぁ。
ここを”掘って”平らにしてやらなければな』
とトトムは肩関節の取り付け面を削り、
『これでいいかい?』とシロに聞きました。

しかしシロは再び『胴掘れワンワン』と
平らになった胴体の肩取り付け面を指して言います。

トトムが更に胴体を掘ってみると、内部部品を取り付ける空間が出来、
そこから一枚の紙きれが出てきました。
  “胴内部の部品は別売です。”

それを見たトトムおじさんは、別に腹は立てませんでしたが、
『設定画にあるパワーシリンダーを内蔵するのであれば、
肩関節にシリンダーを繋げる必要があるなぁ』と言い、
シロをつかむと、たちまちルーターでシロのどてっぱら
削ってしまいました。

内部ががらんどうになってしまったシロの亡き骸
見事に胴体とくっつきました。

そのうち胴体内部の空間からは、パワーシリンダーの他に、
ファンクションタービン鎖骨トーションバーなどが
ザックザックと現われたそうじゃ。

(解説:『花咲爺さん』は室町末期の民話ですが、
当時の犬の名前はシロでした。
裏の畑でポチが鳴く♪の歌が明治34年に作られたときに
犬の名前がリニューアルされたようです。
なおガレージキットの部品は成型色がベージュのものが多いですが、
市販のレジンで複製すると色は白色です。

左はルミナス・ミラージュ肩関節。右がシロです。


またお話では”内部部品は別売”という紙切れが出てきましたが、
ボークスのプラモデルIMSを買ってもファンクションタービンは
含まれていません(のはず)ので、結局自作することになります。)


エピローグ(でも、ここからが始まり)

中国赴任から帰任し、納屋の片づけをしていましたら、
古い巻物が三巻きほど出て来まして、
さっそく巻物をほどいて中を見ますと、
不思議な神話とガレージキット(我励児吉渡)製作にまつわる
二つの民話が書かれていたのです。

ということで、古来より日本に伝承される神話民話に従って
ガレージキットを製作した過程を今回は書いてみました。

嘘です

そんな民話がないことはすぐにお判りでしょうが、
まずもって、そもそもうちはマンションで当然納屋などは無いのでした。

兎に角!
肩をどうするか?大変な袋小路に入り込んでしまい
神話にでも、民話にでも縋りたいということです。


そんなこんなではじまり、はじまり!

肩をたずねて三千里

ルミナス・ミラージュの肩関節前腕フレーム複製をしたのが
中国赴任前の2009年1月31日
(正確には赴任直後春節休暇になり、一時帰国している間の
複製作業という荒業)

中国赴任からの帰任後おもむろに、腕の工作を開始。

このキットの一番の問題であった脚の短さに対する処置について
ようやく目途が付き、いよいよ腕部分に目を向けますと、
内部構造図と比較をするまでもなく、MM シュペルターの肩関節
うっわ!どうしよう』なのです。

脚の関節膝関節にしろ、足首関節にしろ
あきらかに“可動用のポリキャップを仕込むためのもの
と割り切った部品であり、
それらが、足首太腿などの脚部品の間に挟まれた構造です。

関節が可動軸と割り切ったおもちゃっぽいものであるだけに、
逆にこの関節部品をちゃんと造形された関節に交換する。
という明確な方針を立てました。

掘られる前の胴体と使いようがなく今も残る肩部品

しかし肩関節の場合には“”として造形された部品の内部
ポリキャップが仕込まれており、脚部構造との違い
改めて『肩関節ってなんだろう?』という疑問が起こります。

その疑問を追求するため、”そもそも肩とは何なのか?
模型誌などで、ロボットの””または”肩アーマー”と言われている部分は
”どのような歴史を辿りに行きついたのか?”
を知る必要があります。(…ないかもしれません)

そこで、ジャガ、ジャン
ロボットの肩の歴史を調べて見ました。

もちろん原点鉄人28号
初アニメ化は1963年原作漫画はなんと1956年の連載開始です。
なるほどなるほど、樽型の胴体や首がないところは別として、
腕の付き方は人間とさほど差はないのですね。
これを”人体型”と呼ぶことに致します。

これ試験に出ます!

続いて”陣羽織型”が現れ、肩関節の構造は
おそらく人体型と変わりませんが、
肩周りのデザインバリエーションが広がります。

そして”上腕肥大型”。
上腕の存在感はありますが、形状的には比較的シンプル。
しかし上腕が肥大することで、もやは腕は胴から生えたものではなく
独立して存在していることがポイントです。
アニメ作品には描かれていないでしょうが、これによって
肩関節は全く別のものになっているはずです。

続いて”肩ブロック型
上腕肥大型に対して、上腕の上に”ここが肩”だと分かるような
独立したブロックが付いていますが、
形状的には肩とも腕ともいえるもので
腕全体のシルエットとしてはむしろ人体型に先祖返りした感があります。

肩ブロック型とほぼ同じ部品構成でありながら、
デザインバリエーションが一気に広がったのが”肩当て型”です。
このタイプの始祖は我らがガンダムですが、
続くのはバルディオスゴーショーグン
リアルロボット系でないのが意外。

そして最後に”究極型”です。
人型からかけ離れたシルエットを持つ、
決戦兵器のような異形のスタイルです。

モーターヘッドは派手な飾りがついた大型の肩装甲を持つことから
外観上は究極型に近いように思えますが、
胴体へ繋がる関節は、上腕の上にある肩ブロックに内蔵されていることから
肩当て型に分類されると思われます。

分類が出来たところで、それぞれの型の”肩”を考えます。

『肩』をWikipediaで調べると、
なかなか複雑且つ解釈の幅が広い言葉のようですが、端的に言うと
人の腕が胴体に接続する部分の上部
および、そこから首の付け根にかけての部分”
と言う事らしいので、ここではその前半の部分を論じます。

言い換えると”腕から肩への繋がりでカックンしたところ”ということです。

カックンしたところを””と判定して、
そこにある部品が”肩部品”であり、
腕を前に出したり、横に振ったりという
可動をさせるために必要な関節が”肩関節”である
と考えれば良いわけです。


人体型では胴から腕へ繋がる部分がすなわち肩で、
   肩関節はその接続部にあるおそらく球体状関節です。

陣羽織型では、胴の延長である袖の部分が肩。肩関節は人体型と同じ。

上腕肥大型では上腕そのものが肩といって良いでしょう。
 肩関節は腕を前後にスイングする軸左右に広げる軸が
 別々にあると思われますが、腕を左右に大きく広げるのは難しそう。

肩ブロック型では、肩とは上腕の上部にある肩ブロックに他ならない。
 肩関節は上腕肥大型に腕を捻る関節を加えた3軸可動

肩当て型では、肩ブロックと肩当てのうち、より存在感のある方
肩といって良いのではないかと思います。、
最近の模型誌をみると、呼び方はなかなか慎重で”肩関節”とは表記しても、
特定の部品を”肩部品”とは呼ばず、
あくまで肩アーマーとか表記しているようです。
ただし、存在感のある肩アーマーを持つタイプでは肩アーマー自体に
関節機構組み込まれている可能性もあります。

究極型はいわずもがな。ですね。

まぁ、そもそも人間の肩の定義自体、解釈の幅が広いので、
人間ではないロボットであればなおの事
どこをどう呼ぶかは、どうしても主観が入ってしまいます。
これまでの考察もあくまでトトムビジョンです。

ロボット肩のまとめ表

ただ関節に関しては機能の面から、
”関節とは可動軸である”と考えることは、疑問の余地はありません。

とすると、少なくともロボットが”肩ブロック型”以降、
肩ブロックという部品を有することで、
肩ブロックと胴体、肩ブロックと上腕の二重関節となり
人型ロボットといいながら、人体骨格からは外れた構造
になってしまったことは間違いありません。
(まさかロボットにおける近代肩構造の元祖が闘将ダイモスだったとは!)

まさに肩ブロックロボットアニメ界における大発明にして、
プラモデル化されたロボットの大きな腕の可動範囲と、デザイン的な見栄(特に肩ブロックに大型の肩アーマーを取り付けた場合)
という恩恵をもたらすと同時に
骨格構造上解釈をどうするか?という肩関節問題をもたらしたのです。

その”肩関節をどうしようか?”という悶々とした気持ちは、
人体とは異なる関節構造を創造し、
さらにそれをいわゆる”肩部品”として立体で見栄え良く再現する
という難しさに他ならないのだと思います。

これに正面から挑み続けているガンプラの関節が
アプローチの一つの方向性ですね。

私はガンプラといえば最後につくったのが、1/144 RG ガンダムですが、
これは比較的最近のプラモデルではありますが小スケール故、
肩関節は”可動範囲を広げるため”という割り切りがあり、
造形を語れるものではありませんでした。

大スケールでは職場品質管理研修の合宿課題作品として
提供された1/60V2ガンダムです。(いい会社でしょ?)

ちなみにこの謎の合宿では、お昼間は普通の品質教育受講。
夕方から取り組む課題が、”グループで協力してプラモデルを作る”
なのですが、事前にプラモデルの組立説明書を見て
製作手順の計画書作業の分担表スケジュール表を作成。

そして実際に深夜まで製作し、計画通りに行かなかったことや、
失敗してしまった所の原因分析結果を資料にまとめ、
次の日の午前中に、『お客様に報告』というシチュエーションで
発表するという革新的(いやプラモデルを作りたいという確信犯的)な
ものでした。
(元祖はジグソーパズルで始まり、立体パズルになった後、
プラモデルに以降、戦艦大和、タイガーⅠ型戦車なども製作)

閑話休題
肩ブロック型肩当て型で書いた関節の構造は
すべてこの時代のプラモデルを作った経験に基づくものなのですが、
模型誌で見る現代ガンプラのMG,PGはずいぶんと進化を遂げており、
隔世の感があります。

特に1/60 PG UNLEASHED RX-78-2 ガンダム 
これはプラモデル界の到達した一つの頂点ですね。

買っても作らないかもしれないけれど是非手に入れたい!
でも売っているのを見たことないんですよね。
どこに行けば買えるのだろうか?

肩の関節も、設計者の執念が感じられるもので、
もはや2重関節とか3軸可動という言葉が陳腐に思えるような機構であり、
外装を装着した状態で、破綻することなくアニメのような動きを
可能にしています。

ただし…ガンプラはプラモデルとして激烈広範囲の可動をするのですが、
では実際にその構造でロボットを作ったら?と言われると…
動かなそう。なのです
”可動はするけど稼働しない”構造とでも言いましょうか。

モーターヘッドとしてはガンプラとは真逆の方向で、
いかにも稼働しそうだけど、
可動はしない(少なくともプラモデルレベルでは)
関節造形を目指す。というのがここでの結論です。

モーターヘッドの肩関節を考える

まずは内部構造図および解説を徹底検証

Aより、肩胛骨は人間同様に動くということがわかる
Bより、肩胛骨の先に付いているパーツの全体が複合関節として機能する。
Cより、肩カバー腕と連動して動く

わかったような、わからないような検証結果ですが、少なくとも
人体のように肩胛骨の端部にある球体関節が肩関節
というわけではなさそうです。

また肩カバー駆動するような動きも肩関節の役目となっており、
人体の肩関節とは別物と考える必要があります。


ここまでくれば、”肩関節”という言葉へ
こだわる意味すらないのかもしれませんが、
1993年のヤクトミラージュの画稿に参考となるキーワードがありました。

永野先生は、人型のシルエットとはかけ離れたヤクトミラージュ
複雑な肩関節でも、腕の上部肩関節の中心であると
考えられていることがわかります。(少なくとも当時は)

ではキットの上腕部品が取り付けられるポリキャップ
上腕フレームアクチュエータらしい部品に取り換えれば
肩関節は完成なのか?


その答えは、ここまでの考察からNOですね。

肩として造形された部品全体を、広い意味での肩関節と考えて、
胴取付部(=肩胛骨端部)と上腕上端(=肩関節中心点)との
さらには肩カバーにまで繋がる駆動機構を造形する必要がある
ということになるのですが、
言い換えると、”ポリキャップが仕込まれた肩部品は全て作り直しましょう
ということに他ならない。

やっぱりか?
母を訪ねてジェノバからブエノスアイレスに向かったマルコ少年が、
お母さんと再開できるまで、バイアブランカロサリオコルドバ
最終地トゥクマンまでアルゼンチン各地
転々としなければならないという試練に遭ったどころか、
”なんと母親は、マルコと入れ違いにジェノバに帰っていた
という感じのオチですが、
それが簡単に出来れば、最初から肩の研究などには手を出さないのです。

母さん、かあさん、かあたん、かぁたん、肩ん?

困りました

そこで『ルミの恩返し』の民話から学び、
一から作るのが無理ならば、真似をすればよい。

もっと直接的に言っちゃうと、
使えそうなものを複製して使ってしまおうということになるのです。

ルミナス・ミラージュのSAV(Solid Art Version)は
モーターヘッド内部構造図が画集スモークウォール
発表された後のキットであり、
肩の関節もそれらしい雰囲気をもった造形になっています。


取り付けられる?られない?

ルミナス肩関節の胴体との接合面はシンブルな平面ですので、
胴体側も平面に削れば良いのですが、
胴体の袖口嵌り込む形もうまく合わせる必要があります。

幸いにもともとの形がかなり似ていますので、
あまり無理な加工は必要はなさそうなのですが、
やはり別のキットから持ってきた関節ですので、
接合面の形を合わせただけでは、
必ずしも機能的に胴体と繋がっているようには見えません。

例えば肩関節の胴付け側根前面の形状ですが、
これが肩の回転軸を支える構造材であれば、
胴との境目で唐突に切れるのは不自然ですが、
カバーであれば、ここで途切れているのが正解です。

内部構造図再現度



実は内部構造図にもこんな形状の一次装甲が付いています。

ただし、万事、胴体とどのように繋がっているかを
このように考証するのはなかなか大変です。

一番確実説得力有る方法は実際に胴体と繋げてしまえば良いのです。

複製品をくっつけてオッケー!
で済まそうか
とも思っていたのですが、
シロの胴掘れワンワンの一声で、胴と肩を機能的につなげる
という方向性が決まりました。

単に形が合うからといって、くっつけるのではなく、
ちゃんと胴体とつながりたい!例え自分も削られるとしても!
胴掘れワンワン』の民話にはそのような肩関節の願い
込められているのでした。(そんな話だったかな?)

機能的につなげるということは、単に胴体に掘り込んだ空間に
ファンクションタービン鎖骨トーションバーを仕込めば良い
という話ではなく、胴から、肩を通しで腕につながる構造を考える
ということなので、
結局、解決すべき命題逆戻りではありますが、
ただ内部構造図ばかり見ていても浮かばなかったアイデアが、
実際にルミナスの肩関節を胴体に合わせてみて、
内部に何があるのだろうか?と考えることで
なんとなく想像できるようになりました。

この想像に基づくスケッチ図を参考にして、
noteにまとめるため、改めて肩関節を再構築してみます。

製作当時のスケッチ。ナントナク感MAXであるが、肩装甲の連動機構が考えられている。
コンセプトはそのままに今回再設計した肩関節
腕関節稼働の概念図

前回の腰編で述べたように、
主にフレームアクチュエータで構成されるロボットの内部構造を、
人体の骨格筋肉に基づいて再現するだけでは、
実はロボットには重要な要素が欠けています。

それだけでは外部装甲を支えることができないからです。
ロボットの装甲には人体では皮膚にあたる通常の装甲に加えて、
スカート装甲肩部の装甲のような、
人がをつけたような部分もありますが、いずれもが外部装甲です。

人体の場合は筋肉を覆うように皮膚がついていますし、
その上に鎧を着用すれば鎧も人の動きにあわせて自然に動くのですが、
ロボットでは外部装甲もきちんと構造として支え
四肢に干渉しないように動かす必要があります。

この本来ロボットが持つべきフレーム構造の条件は、
脚部ではスケッチのみで再現は(見えない部分であることもあり)断念
腰部では、スカート装甲基部に対して、
取り付け強度を優先して簡易的な構造で再現したのですが、
肩関節で念願叶い、実現することができました。

いや、まだアイデアスケッチを描いただけですので、
どれだけ造形で再現できるか、ここからが挑戦となるわけです。

2015年4月~2017年12月にかけて
胴と肩関節を合わせ、肩の基本パーツ製作塗装を行っています。


胴部の加工

胴体の肩関節取り付け部を彫っていきます。

まずは取り付け部を平面に削るところから。
形状は単純ですが、周囲を疵付けないように注意しつつ、
平面に加工する必要あり。

またこの平面の深さや角度次第で、肩や腕の位置が決まりますので
左右対象になるように注意しながら、少しづつ削ります。

次にファンクションタービン鎖骨トーションバーなど
内部部品を納める空間を彫り込んでいきます。

さすがに、左と右の穴が開通することはありませんが、
少なくとも体の中心線までの半分の深さくらいまでかなり深く掘り下げて、袖口よりも内部の方が空間が広くなっています

内部には肩胛骨の一部も再現。
大きな肩胛骨を後から組み込むのは難しそうなので、
肩胛骨とその端部の肩関節を取り付ける部分
残すように空間部を削り込み、形状を仕上げます。

写真はサフェイサーを塗り、フラッシュを焚いて撮影していますので、
肩胛骨のディティールがはっきり見えますが、
実際は、袖口の装甲もあって見えにくいし、手も届きにくい

肩胛骨のディティールの長穴を彫り込んで、
表面仕上げするのはかなり難しいので、発想を変え
長穴を切り抜いた0.2㎜厚さプラペーパーを貼り付けています。


肩関節を取り付ける部分が、袖口全体の後ろ側上部のみとなりましたので
仮組みのために一旦袖口の中心に開けた真鍮線の穴をプラ棒で塞いで、
穴位置を変更します。

さて、ここに肩関節を取り付けるためには、
肩関節側の取り付け面はどのように加工するべきだろうか?
後で考えていきましょう。

袖口の前面装甲も、元のものは一旦削り落として、
エポキシパテで作り直しています。
微妙な曲面を持つ、スタイリッシュなものになりました。
上面部分にはポイントとなるようなディティールを追加しました。

胴体内部に取り付ける部品も自作します。
鎖骨トーションバーはキットのランナーから削り出し
鎖骨端部との連結部上下非対称の形状やら、
ねじり剛性をコントロールするための分割線やらが
結構気に入っているのですが、
肩関節を取り付けるとほどんど見えないのが残念

ファンクションタービンエポキシパテで製作しています。
内部構造図では特別画稿として詳細な解説がありますので
10㎜程度の小さな部品ですが、いやでも造形に力が入ります。

同じものを二つ作る気力はさすがにないので、
肩関節の自作部品といっしょに複製しました。

塗装後のみ撮影してます
ファンクションタービンとはイレーザーファンクションシステムの一部品


肩関節の加工

続いてルミナス・ミラージュの肩関節を削っていきます。

リニューアルした設計では内側回転軸が直接肩胛骨に繋がり
外側回転軸上腕フレーム及び肩装甲基部と接続するという
2重関節となっており、
内側回転軸と外側回転軸とは一定角度までの角度差を許容する
トーションバー及びクラッチ機構付き連結ロッドで接続されています。

外側回転軸の部分には回転軸クラッチ機構付きの軸カバーをはめ込む
丸い凹みを作ります。

内側回転軸周辺およびその下部は、一度大きく削り込んで、
その上にエポパテで自作した内側回転軸ケース連結ロッドカバー
などの部品を被せることで、形状を作り込みます。

内側回転軸は胴体からのパワーシリンダーで駆動するため、
パワーシリンダーの接続部を設ける必要もあります。

また肩関節の付け根前面一次装甲は前述のように形状を修正した
ルミナス・ミラージュからの複製品とは別の複製品から削り出して
別パーツ化しています。

肩関節の付け根下面はというと、カバー類はなく
内部が開放された状態です。

これは胴部からのパワーシリンダーパワーケーブル
肩関節につながっているため、”全面をカバーするのが難しい”
という理由もありますが
前面カバーを取り外し式にするとはいえ、通常の展示状態で
折角つくった内部メカが見えないのは寂しい
という気持ちにも後押しされています。

とはいえ、パワーシリンダーやファンクションシステムが丸見えなのは
大丈夫なの?とご心配される方もいると思いますので、
後で何か良い防御装置(屁理屈)を考えることにいたします。


肩関節の形状修正と肩関節に取り付ける部品の仕上げが完了したら
別々に塗装して、いよいよ接着

各部パワーシリンダーの取り付け前ですが、まずまずリニューアル設計の
イメージを再現できたのではないかと、
自分としては満足の仕上がりです。

上面の装甲は幾つもの部品に分かれたような形状をしていますが、
内側回転軸外側回転軸の位相変化に合わせて、
上面装甲もスライドすると考えれば、
機能が現れた造形であるという解釈が可能です。

一から自作するよりは楽であったと信じています。



さよならは別れの言葉じゃなくて、再び遭うまでの遠い約束

腕部品は上腕から指先まで、そして肩装甲とまだまだ続きますが、
今回はここまでです。

腕や手に関する言葉はたくさんあり、
腕が鳴る腕前を発揮する腕利き、という
まさに”腕自慢”な言葉がある一方で
手抜き、という消極的な言葉もあります。

シュペルターの肩の製作では最初、
複製パーツを使って手抜きできると思っていたのですが、
思わぬ深みにはまり、
かなり手の掛かる改造をすることになりました。

また今回のnoteでは製作途中段階(特に塗装前)の写真が
あまりないことに気が付かれたかと思います。

最初は、”写真もあまりないので民話にかこつけたお話でも作り
あとは、写真で『はいこの通り出来ました!』という手抜き記事
になってしまうかとも危惧されたのですが、
これまた深みにはまり
ロボットの肩の歴史の調査や肩関節の再設計などで
2週間以上かかりましたが、
製作当時に出来なかった事を満足いくまで追求することが出来ました。

すでにシュペルターが完成してから久しいのですが、
note記事まとめは、当時に戻って第二の製作を行っているかのような、
満足感をもたらしてくれるのです。

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