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ニューイヤー駅伝2位のSUBARUは新戦力を試す駅伝。そして「3位」を目標とする遠大な理由【東日本実業団駅伝プレビュー②】

東日本実業団駅伝は11月3日、埼玉県庁をスタートし熊谷スポーツ文化公園陸上競技場にフィニッシュする7区間76.9kmで行われ、上位12チームが来年元旦のニューイヤー駅伝出場権を得る。各区間の距離は以下の通りだ。
1区・11.6km
2区・ 8.0km
3区・16.5km
4区・ 9.5km
5区・ 7.8km
6区・10.6km
7区・12.9km
 Hondaと富士通が2強と言われている駅伝だが、SUBARUも2強に迫る力がある。22年元旦のニューイヤー駅伝で優勝したHondaに次いで2位と、サプライズを起こした快走を再現できれば、可能性はある。
 だがSUBARUの奥谷亘監督は目標順位を、堅実に「3位」と設定した。その意図と、今季のSUBARUの戦力を同監督に取材した。

●3位を目標とした理由と3区候補の多さ

ニューイヤー駅伝のSUBARUは日本中の駅伝ファンを驚かせた。2区のキプランガット・ベンソン(19)でトップに立つと、3区で6位に後退するも4区のエース清水歓太(26)で3位に浮上。その後は息切れすると思われたが5区の照井明人(28)が区間3位で2位に上がり、6区の小山司(30)が区間2位、7区の口町亮(28)も区間3位で2位をキープし続けた。チーム関係者も予想しなかった好走が続いたのだ。
 そのメンバーが今シーズンも順調に駅伝シーズンを迎えようとしている。詳しくは後述するが川田裕也(24)と森田佳祐(27)という新戦力も加わる。それでも東日本大会の目標を3位とする理由は何か。
「ニューイヤー駅伝がサプライズだったのは事実です。優勝候補チームが上手くいかなかったのに対し、ウチは全てが上手くいった。2位という結果がひとり歩きしないように、地に足をつけて(ニューイヤー駅伝の)入賞を重ねていきたいと思っています。東日本大会で3位争いに絡めば、ニューイヤー駅伝でも確実に入賞争いができます」
 ではどんな展開で、3位争いをしようとしているのか。
「駅伝は前半で流れに乗ることが重要です。ベンソンがうちの核ですから、インターナショナル区間の2区を起点に考えます。1、2区を上位で流して、最長区間の3区で他チームのエースとどう戦うか。3区まででしっかり上位につけていれば、4区以降も(ニューイヤー駅伝5区以降のように)力を出せる」
 2区以外の選手起用は11月2日の区間エントリーを待たないとわからないが、3区は清水以外の選手を試す可能性が大きい。つまり2区のベンソンがトップ争いに加われば、清水以外の選手でも上位争いをキープできる。そのくらいの戦力はある、という奥谷監督の判断だ。
 ニューイヤー駅伝で準エース区間の3区を走った梶谷瑠哉(26)か、7月に5000mで13分37秒55の自己新を出した鈴木勝彦(25)か、あるいは7月に10000mで28分15秒37と自己記録に7秒と迫った照井明人(28)か。
 候補の多さは、チームとしての戦力がアップしていることを意味している。

●新戦力や後半区間候補選手のテストも

新戦力としてテストしたい選手として、奥谷監督は川田と森田の名前を挙げた。川田はニューイヤー駅伝には出場しなかったが、昨年11月に10000mで27分59秒66と、長距離ランナーの勲章の1つである27分台で走った。移籍加入した森田は日本トップレベルの中距離ランナーで、今年7月に1500mで3分37秒36の日本歴代7位をマークした。
「川田は東農大出身で箱根駅伝は4年間出ていません。予選で試さないとニューイヤー駅伝で走る区間をイメージできないんです。今季は足首の状態が良くなくて、日本選手権10000mも34位に終わりました。しかし復帰レースの日体大(10月2日)5000mを13分50秒台で走りました。少し不安要素も残りますが、試合で力を発揮する能力は高いと期待しています」
 森田が出場するとすれば、距離の一番短い5区になりそうだ。
「森田は駅伝の距離に対応できるかを見たいと思っています。毛色の違う選手が走れば、チームも活性化する」
 ニューイヤー駅伝6区で想定以上の走りをした小山は、7月に5000mで14分04秒64の自己新。7区でやはり想定以上の区間順位で走った口町は、1月にハーフマラソンで1時間01分46秒、7月に5000mで13分53秒51と2種目で自己新。
「2人とも(スピード化が激しい)時代の流れに乗り切れていませんが、自己記録を更新しています。東日本大会で活躍してくれたら、ニューイヤー駅伝で今シーズンも戦力になる」
 もちろんエースの清水は、ニューイヤー駅伝本番で「4区を当然走ってもらう」という前提で準備を進めている。
 SUBARUはニューイヤー駅伝が行われている群馬県に拠点を置くチーム。過去にも一度、13年大会で6位に入賞して沿道を沸かせたが、翌年は9位と入賞を逃した。今シーズンの目標を東日本3位、ニューイヤー駅伝8位としているのは、つねに入賞できるチームに成長し、地元を盛り上げ続けたい思いがあるからだ。
「東日本大会で意図的に踏み込んだオーダーを組み、その結果をニューイヤー駅伝につなげる。そこをやらないと連続入賞はできません。入賞常連チームに定着できれば、いつか優勝を狙えるときが来ます」
 東日本大会の3位は、壮大な計画の一部でもある。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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