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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (104)「孟宗の蔭」の時代

 真如院に滞在していた時期の消息は「孟宗の蔭」という作品に記録されています。岩波書店の雑誌『思想』に何回にも分けて書き継がれた作品で、単行本の『沼のほとり』(大正14年7月5日、第一刷発行。岩波書店)と『母の死』(昭和10年4月5日、第一刷発行。岩波書店)に分載されましたが、角川書店から出た全集の第四巻(昭和36年4月15日、初版発行)に収録された際に加筆が行われました。角川版全集、第四巻に見られる「孟宗の蔭」を見ると、冒頭に「大正元年11月1日以後 真如院」と記されていて、大正5年1月14日まで、断片的な記事が続きますが、この3年ほどの間には中先生の身にも実にさまざまなことが起りました。

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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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