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H2の受傷シーンを紐解く。

野球漫画といえばタッチ。
タッチといえば野球以外にも恋愛模様にもドキドキ。
そして作者はご存知・あだち充先生!

だけど僕ら世代は確実にH2世代である、という謎の自負があります。

そもそも H2とは?(Wikipediaより)


高校野球をテーマとした長編野球漫画。

2人の野球少年であるヒーローと2人のヒロインの、野球にかける青春と恋を描く。

タイトル『H2』とは、「ヒーローふたり、ヒロインふたり」を意味する。そのうちのヒーローふたり(比呂→ヒロ→HERO、英雄→「えいゆう」→HERO)に関しては、作中でも英雄が語っている。


名前の由来となった比呂と英雄の誕生日も116(ひいろ)で比呂が1月16日、英雄が11月6日だったはず。

もう!これはもう!子供が男だったら絶対こういう含みを持たせて命名しているところです。(嫁さんには断固たる反対を受けました)


そして雨宮ひかりと古賀春華との四角関係ともとれる甘酸っぱすぎる展開に杉本少年はどハマりしていくんですが、今回はそこは割愛していきます。笑


ジンクスは人を縛る


比呂は暑さに強く、ひかりの誕生日である8月16日には一度も負けたことがなかったが、2年生時の夏の甲子園2回戦(伊羽商戦)で足関節を負傷して初めて敗北を喫した


(比呂は毎年誕生日プレゼントにその日のウイニングボールを送っていた。負けたら欲しいもの何でも買ってあげる!っていう約束だったんですね)


気負いがある試合ほど、冷静に自分の状態が把握できなくなってしまう・ムキになってしまう選手って多くないでしょうか?


では本題です!


夏の甲子園2回戦:伊羽商業戦
国見比呂選手(当時は高校2年生・16歳)

身長・体重:不明
性格:意地っ張りで他人から気を遣われることを避ける性格。ガサツだが他人に
   気を遣うところもある。大したことがない時は大騒ぎするが、本当に辛い時
   は誰にも言わない。 
 受傷シーン:相手ピッチャーがベースタッチをしようと手をベースに伸ばした際に、手を踏まないようにしようと足の接地のタイミングがズレ負傷


左足関節の捻挫 を受傷(あとで明確に診断名が出てきます。)

※ただ国見選手は負傷が疑われるシーンで走り抜けたため、負傷したことに周囲の人間は気付いていません。


性格面での把握も必要


前述した通りですが、性格は

「意地っ張りで他人から気を遣われることを避ける性格。ガサツだが他人に気を遣うところもある。

大したことがない時は大騒ぎするが、本当に辛い時は誰にも言わない。」

こういった選手は要注意だと考えています。


ラグビーなど他の競技でも共通していることだと思いますが、ボールだけ注目して追っていてもダメですし、試合・プレー全体を見渡すことや選手の動作の違和感(かばう・ひきずる・スムーズではない等)に気づくことは救護などを担当する人間には大切な能力かもしれません。


選手自身の状態を伝えて貰えるように日々の信頼関係の構築も大切でしょう。
選手のピンチにまずはじめに寄り添い、支えとなる存在がトレーナーだと考えています。


また、大ごとにせず「そっと」声かけをしてあげれる気配りも持ち合わせるべきでしょう。


トレーナーがベンチにいたとしたら


これは勿論たらればの話になってしまいますが、

①明確な受傷シーン(転倒する、痛がるなど)がない
②本人からの訴えがない
③事後、ピッチャーというポジション上、大きな変化がみられない

(口から血が出る描写がありますが、口の中を切ったり、最後の踏ん張りで歯を食いしばって投げているからでは?というやりとりもあり、違和感を掴む決定打になりません。)

ことから受傷に気付けていたか本当に難しいところだと思います。


僕らトレーナーも万能ではありません。


見逃すことだってあります。

プロの試合ではマッチドクターたちは映像分析をしているスタッフから受傷が疑わしいシーンをその場で再生してスローにしたり拡大したりして原因を探ることだってあります。

ともかくできることは試合中は選手全員の動向にひたすら集中することと、怪我が起きやすいシチュエーションを常に予測し、選手の動き一つ一つに疑いを持つべきだと思います。


その場で気付き、テーピングなどの応急処置をしてプレーをしていれば違う結果になったかもしれませんが、それは神のみぞ知るってやつですね。


それこそエースの怪我というのは判明した時点で、チーム内には不安が、相手チームは勢い付いてしまうし、選手は交代を恐れている可能性もあり非常にセンシティブなところですね。


だからこそ、選手に気配りを忘れず声かけをする重要性があると思っています。


怪我の影響と試合の結果は?

足の痛みにより、ピッチャー正面のバントの処理を暴投してしまい1−2で敗れてしまいます。
(相手監督は国見選手の怪我に気付き、あえて足を使わせる作戦に出たんですね。綺麗汚いとかの話ではなく勝負の世界では相手の弱みを責めるのは当たり前のことです。)


野球という競技は、ピッチャーに対しての責任が圧倒的に重いように感じています。

当然、女房役のキャッチャーだって、他の選手の役割が軽いというわけではありませんので悪しからず。


一球のミスが勝負を分けてしまいますが、その一球を誰よりも多くなげるのがピッチャーです。


このプレッシャーからボールが投げられなくなってしまうのがイップスですよね。


イップスとは


元々ゴルフで使われる用語だそうですが、精神的なことが原因で筋肉が硬直してしまい思うようなところに投げられない・体が動かせなくなる状態のことです。

Wikipediaによると
「イップスという用語は、1930年前後に活躍したプロゴルファーのトミー・アーマー(英語版)が、この症状によってトーナメントからの引退を余儀なくされたことで知られるようになった。


アーマーは1967年に出版された自著『ABCゴルフ』の中で、今までスムーズにパッティングをしていたゴルファーがある日突然緊張のあまり、カップのはるか手前のところで止まるようなパットしか打てなかったりカップをはるかにオーバーするようなパットを打ったりするようになる病気にイップス(yips, うめき病、yipeは感嘆詞で「ひゃあ」「きゃあ」「うわっ」といった意味)と名づけた。


この症状を説明するために、ゴルファーの間では「ショートパット恐怖症 (twitches)」「よろけ (staggers)」「イライラ (jitters)」「ひきつり (jerks)」などの表現がされてきた。

イップスの影響はすべての熟達したゴルファーの半数から4分の1くらいに及ぶという。アメリカ・ミネソタ州の大病院メイヨー・クリニックの研究者によれば、すべての競技ゴルファーのうち33 - 48%にイップスの経験がある。25年以上プレーしているゴルファーにそうなりやすい傾向があるようである。


しかし、イップスの正確な原因というのは未だ決め手がない。一つの可能性として、あるタイプのゴルファーに関して言えばそういった現象は加齢に伴う脳の生化学的変化の結果ではないかと考えられている。プレーに関係する筋肉を使いすぎたり、協調や精神集中に迫られることで、問題が悪化する場合もある。


また別に、イップスの本当の原因として局所性ジストニア (focal dystonia) がその可能性の一つとして言及されることもある。」となっています。


診断と予後


さて話を元に戻します。

何事もそうですが、判断が遅れると反応が遅れます。


本人も「反応が遅れて空足なった」といっていますね。
(からあし:高さの見当をまちがえて踏みそこなうこと)

急性期(炎症期)は冷却。(外傷完成までには72時間を要する、という話もありますね)

急性期が過ぎれば、腫れを散らすイメージで温熱や手技を行うんだと思います。


僕も上記の作用を意識して鍼治療など行います。

固定というか装具はだいぶ時代を感じますが(1992−1999年の連載)装具や固定も日々進化しています。


捻挫の初期であっても重症度が高ければ、ギプス固定も有効ですし、松葉杖や車椅子などで免荷して患部への負担を減らすことは非常に大事ですね。
(逆にテーピング固定は不適切なケースもあります)

おそらくこんな感じのものでしょうか?

僕はザムストとかをつけてた記憶があります。ちなみに昔はRICEって習ったと思いますが、今はPOLICEやPRIMEという考え方が主流になっています。

僕が所属するSpolinkJAPANで作成した四肢外傷マニュアルか

よせやん先生のブログが非常にわかりやすく載っていますのでご一読ください。


最後に


現場で遭遇する事が多い怪我は捻挫や打撲です。

そして接触ばかりが受傷のすべてではありません。


今後もこういった漫画における怪我やトレーニングなどを取り上げていこうと思います。

あだち充先生の漫画は野球が好きじゃなくてものめり込んでしまう魔力がありますので読んだ事がない方は是非ご一読ください。

















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