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モルカー監督の短編作品が想像以上に凄い!『マイリトルゴート』

今、世間を大いに賑わせておる『PUI PUI モルカー』を知っているだろうか。テレビ東京系の『きんだーてれび』という番組内で放送中のアニメ作品のことだ。タイトルのモルカーとは、モルモットが車(カー)になった不思議な生き物たちのことを指す。

この作品、3分という短い作品ながら、モルカーの可愛らしさと不思議な世界観がSNSを中心にバズっており、新しい話が放送されるたび、Twitterでも必ずトレンドに入っている。面白いのは、なぜか既に台湾でも大人気らしく週に32回も放送しているというから驚きだ。

『PUI PUI モルカー』の監督は、映像作家の見里朝希。今作で初のTVアニメシリーズをつとめるという若き新人監督だ。『PUI PUI モルカー』が気になる方は、バンダイチャンネルTELASAなどで配信を行っているし、YoutubeのBANDAI NAMCO Arts Channelでは、最新作の見逃し配信を期間限定で配信しているので、こちらをチェックするのもありかもしれない。(基本、1話ごとにエピソードが独立してるみたいなので、途中からみても問題ないと思う)

そして、今回紹介したいのは見里朝希監督2018年に製作した『マイリトルゴート』という短編アニメーション作品だ。

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筆者も『PUI PUI モルカー』を毎話チェックするくらいにはハマっているので、本作をチェックしてみようかなくらいの気持ちで観たのだが、これが想像以上に面白く深い作品だったので、是非この面白さを皆に伝えたいと思う。

【童話『狼と七匹の子山羊』から着想を得た物語】

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物語は、狼のお腹を母ヤギが切り裂いて子供ヤギたちを救い出すところから始まる…そう本作は誰もが一度は聞いたことのあるグリム童話『狼と七匹の子山羊』をモチーフにした作品である。本作は、見里朝希監督の東京藝術大学大学院の修了制作作品で、PUI PUI モルカー』同様、フェルトで製作された短編アニメーション作品だ。

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本作を最初に観た時は『ダークファンタジー』という印象を抱いた。本作は見里監督が「もしオオカミの胃袋の中で子ヤギたちの消化活動が始まっていたら…」ということを想像したことが着想のキッカケらしいが、(この発想が凄い!)まず、このアイデアが面白い。劇中に登場するあるキャラクターを「狼」に置き換えてるのも風刺が効いているし、(『赤ずきんちゃん』でこのアイデアが使われてる作品はあるが『狼と七匹の子山羊』は初めて)可愛らしさとグロさが共存した世界観が印象深い。

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見里監督のインタビューによると、本作のテーマは『親の愛情の狂気』。劇中には2人の親が登場するが、どちらも『歪んた愛情』をもった人物である。(この2人がもっている愛情も含め、対照的な関係になっているのも面白い)こうしたテーマを理解したうえで見返すと、1度鑑賞しただけでは分からない本作の奥深さが見えてくるだろう。11分という短い時間の中に、これだけのアイデアとテーマを含んだ見里監督の手腕にはただただ感心してしまう。事実、本作は、ショートショートフィルムフェスティバル & アジア2019」において、ジャパン部門優秀賞を受賞。他にも「メクネス国際アニメーション映画祭 2019」で最優秀学生映画賞、「学生CGコンテスト 2019」でアート部門最優秀賞・エンターテイメント部門最優秀賞など、国内問わず多数の賞を受賞している。

本作は、世界の短編作品を配信しているブリリア・ショートショートシアターにて2月28日まで無料配信されているので、(鑑賞には同サイトの登録が必要)興味ある方はぜひチェックして見て欲しい。『PUI PUI モルカー』が好きな方、この記事を読んで本作に興味を持った方も11分という手短な時間でサクッと見れるのでお薦めだ!

最後に本編を何度がみて気になった点を。冒頭、母ヤギが狼のお腹を切り裂いた際に溶け切ったトルクの残骸らしきものが見える気がする。。映画のラスト、森田監督の『家族ゲーム』のごとく、ヘリコプター音が響きわたるところで終るが、これは、実際に人間の男の子とお父さんを探しているヘリを描いており、見里監督の童話の世界から現実世界を意識させることで、本作のメッセージを童話の世界の中だけに収めたくないというメッセージが込められてるとのこと。知れば知れるほど深い作品…!

ちなみに↓のサイトで、見里監督本人が作品についてこと細かく解説しているので、興味ある方はこちらも是非チェックして見て欲しい。

ちなみに見里朝希監督の『あたしだけをみて』も面白いので、気になる方はこちらも見てみて欲しい。モルモット(?)も出てきます。





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