究極のツンデレキャラ・ドロンパ登場『アメリカオバケ』/広がる!オバケの世界③
本日3月27日は・・そう、アメリカオバケこと、ドロンパの誕生日なのである!(ちなみにQ太郎は2月28日)
そういうことで本日は、「広がる!オバケの世界」の第三弾として、ドロンパが初登場したエピソードをご紹介していく。
まずはドロンパが登場するまでの流れを解説しておきたい。
人間世界唯一のオバケかと思われていたQ太郎だったが、連載が続いていくうちに親戚と家族がいることがわかり、普段は雲の上のオバケの国に住んでいることが明らかとなる。登場順で、おじさんのY助、パパのX蔵、ママのおZ、妹のP子である。
これまでの記事は以下。
Q太郎を媒介に、人間とオバケの世界が橋渡され、「オバQ」の世界観は一気に拡張を遂げる。その流れの先にQ太郎のライバルとなるオバケが登場することになる。それが、アメリカ出身のオバケ、ドロンパである。
Q太郎の仲間のオバケは全てアルファベットを使った名前だが、英語を母国語とするアメリカのオバケが、日本的なドロンパ(ドロン・パッ)という名前なのはちょっと面白い。
ドロンパは、大原家の隣人である神成さんの家に居候することになるのだが、本稿ではそこに至るまでのお話を整理していきたい。
まず、そもそも隣人である神成さんだが、初登場は意外に遅く、連載開始から1年半以上たった、1965年10月号である。
『となりのおじさん』「小学二年生」1965年10月号別冊/大全集7巻
初登場ということで、造形が少し異なっているが、禿げ頭で頑固者というキャラクターは最初から変わらない。神成さんは最初から隣に住んでいたわけではなく、本作において隣家に引っ越してきた設定となっている。
Qちゃんたちが神成さんと親しくなろうとするが、行動が悉く裏目に出てしまい、気まずい関係になってしまう・・といったお話であった。
『Qちゃんロードショー』「週刊少年サンデー」1965年48号/大全集3巻
続けてドロンパ登場のお話を見ていきたいところだが、その前にドロンパのプロトタイプとなったキャラクターを発見したので軽くご紹介。
『Qちゃんロードショー』というお話の中で、藤子先生も中学時代に作って遊んでいたという反射幻灯機を作って、色々な映像を流す上映会が開かれる。
この中で正ちゃんが指を使った人形劇を見せるというシーンがあるのだが、この時にQ太郎とドロンパそっくりのキャラクターを指に描いている。本作をきっかけに、Q太郎の対となるキャラが考案されたのではないかと想像している。
ドロンパは、オバQのメイン掲載誌である「週刊少年サンデー」に先駆けて、「小学五年生」にて初登場を果たす。
『アメリカオバケ』「小学五年生」1965年12月号/大全集10巻
ドロンパの登場は唐突だ。ネコに化けたドロンパがQちゃんを尋ねてくる。日本にオマケのQ太郎というのがいると聞いてやってきたという。ドロンパは体に星と二本の線が描かれている。アメリカ国旗である星条旗を意識したデザインだろう。
Qちゃんはさっそくドロンパを大原家へと案内するが、毒舌家のドロンパは次々と暴言を吐いたり、問題を起こしていく。
・家に入るとアメリカの物置より貧弱だとコメント
・床に直に座りたくないので、姿を消してパパの頭に座る
・出されたお茶を吐き出し、アメリカにはコーヒーがあると言い出す
・アメリカでは自家用車があると自慢する
自慢ばかりのドロンパに腹を立てるQ太郎。ドロンパは「だったら日本しかないものを見せろ」と言い出す。そこで小池さんの食べているインスタントラーメンを横取りして渡したり、バキュームカーの臭いを嗅がせたりする。
ドロンパは日本の街並みを空から見て、家が低くてゴミゴミしていると感想を述べ、自分が住んでいたのはエンパイアビルだと述べる。
ドロンパは「日本のオバケは化けられない意気地なしだ」と言って挑発。いくつか変身した姿を見せると、Qちゃんは「自分にも化け方を教えて欲しい」とドロンパに頼む。
すると自分の言う通りにやって見ろと言いだす。右手を挙げて、左手をお腹の前で横にする。歯を出して「これがシェーの形」とイヤミのポーズをする。おちょくられて怒るQ太郎。
「それでは簡単なのを教えてやる」といって、靴の化け方を教授する。やり方は、まず大きく口を開ける。そのまま平べったく体を縮める。これで靴に早変わり。
毛が三本出ている不完全な靴だが、Qちゃんが初めて変身した瞬間である。(これが唯一のレパートリーとなる)
その後、ドロンパは大原家に住みつくと宣言。次々と変身していたずらを仕掛けていくが、ついに堪忍袋の緒が切れたQ太郎が、「ジュードー」でドロンパを投げ飛ばし、「わりかし強いや」とドロンパはそのまま逃げて行ってしまう。
本作はドロンパ初登場と同時に、Qちゃんの初変身も見られる非常に貴重な回なのであった。
さて、強烈な個性を見せつけたドロンパは、次の号でさっそく再登場を果たす。ここで神成さんと出会い、互いに気難しい二人はぶつかってしまう・・。
『カミナリ対ドロンパ』「小学五年生」1966年1月号/大全集10巻
典型的な頑固ジジイの神成さん。Q太郎が現れて次々と悪戯をするので、神成さんは激怒する。正ちゃんはQ太郎を連れて謝りに行くのだが、Qちゃんは何で謝らなくてはならないのかわからない。
すると神成さんがもう一人現れて、家の壁にいたずら書きをするので、Q太郎が追いかけると、それは前回登場して、逃げていったドロンパが再度姿を現わす。
ドロンパは、
「あれからあちこち見物したら、日本もまんざら悪くないとわかったんだ。我慢して住んでやることにした」
と相変わらず言葉が汚い。しかも神成さんの家が気に入ったらしく、住みつくと一方的に宣言して、「邪魔できるものならやってみな」と言って姿を消す。
Qちゃんは、神成さんに「アメリカオバケのドロンパが住みつこうとしている」と教えると、「わしが退治する。歳を取っても剣道五段!」と言って木刀を取り出すが、神経痛で体が思うように動かせない。
そこにドロンパが登場。神成さんは木刀を振り回し、Qちゃん正ちゃんもバットを持って加勢するが、ドロンパは逃げ回って、家がボロボロになるだけ。
次なる対策として、Qちゃんが犬が苦手なように、ドロンパにも苦手なものがないかと探すことに。しかし、落語の「饅頭怖い」のような展開でホットドッグを食べられてしまったりして、ドロンパの方が一枚上手のようである。
ところが、ドロンパは台所に置いてあった糠味噌(ぬかみそ)の臭いに驚き、たまらず家から飛び出していく。そこで、家の外かべに糠味噌を塗りたくって、ドロンパを近づけないようにする。
するとドロンパは火事だという嘘の電話で消防車を呼んで家に放水させて、糠味噌を洗い流させる。そして、あっさり家の中へと入り込む。
ドロンパのあまりのしつこさに神成さんは呆れ果てる。Qちゃんは応援を呼んでくると言って、大原家へ戻っていく。するとドロンパも神成さんに対して、「じいさんだってなかなかやるぜ」と一目置くような発言をする。
居間で座り込むドロンパと神成さん。すると、神成さんはドロンパの顔を見つめて、「良く見ると面白い顔じゃ」と言って笑い出す。
ねじり鉢巻きをした大原一家を連れてQ太郎が戻ってくると、ドロンパが神成さんの肩を叩いている。
「どうじゃ、うちの子にならんか」
と、神成さん。対してドロンパは
「なってやってもいいや」
とにこやかに肩たたきを続けるのであった。
頑固者同士、やり合った挙句、気脈を通じてしまったようである。
こうして神成さんの家の居候となったドロンパは、「週刊少年サンデー」でもこの設定を前提として登場を果たす。基本ツンデレタイプのドロンパは、相手を怒らせてトラブル続き。
『ひとりぼっちのドロンパ』(「週刊少年サンデー」1965年52号/大全集4巻)では、サンデー初登場ということで、Qちゃんがゴジラやよっちゃんに紹介するのだが、いきなり悪口全開で孤立してしまう。(最後は和解するが)
『助け合い運動』(「週刊少年サンデー」1966年2号/大全集4巻)では、すったもんだの挙句、Qちゃんがドロンパを雲の上のオバケの国へと連れていく。P子やパパのX蔵との初対面を果たすのだが、この時「日本のオバケはあんな所に住んでいるのか」と感想を漏らしており、オバケの住む場所はお国柄があることが示されている。
なお、アメリカ出身のドロンパだけではなく、世界各国にも特徴的なオバケがいることが判明する。それが『国際オバケ連合』(「月刊少年サンデー」1966年2月号)である。こちらのエピソードは既に記事化しているので、是非ご一読下さい。
そして、本日3月27日がドロンパの誕生日であることが明示されるお話が、『ドロンパのたんじょう日』(「週刊少年サンデー」1966年14号/大全集4巻)である。
神成さんの家で誕生パーティーを開くことになるのだが、素直に皆を呼ぶことのできないドロンパのひねくれ具合がたっぷりと堪能できる一本となっている。
ドロンパについては、神成さんとの泣けるエピソードが連発したり、P子のことを好きになったり、「新オバQ」では個性溢れるオバケたちのまとめ役にキャラ変したりと、語るべきことは盛りだくさん。また別途ドロンパ傑作選を特集しなくてはならないだろう。
最後に補足情報。実は神成さんの家にドロンパが居候する少し前に、青山みどりさんという美人OLが下宿するお話が存在する。
Qちゃんがみどりさんを好きになって、恋するQ太郎のお話が展開される。およそ初耳と言う方が多いだろうが、そのあたりも記事にしているので、是非気になる方はこちらもどうぞ。
「オバQ」考察たくさんやっています。
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