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この事件の真相は何だったのか?映画『裏窓』考察【ネタバレ有】

※ネタバレが含まれています。まだご覧になったことがない方はご注意ください。

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画像出典:映画『裏窓』公式Facebook

1954年に公開されたアルフレッド・ヒッチコック監督によるサスペンス映画『裏窓』。主人公ジェフが殺人と思わしき現場を目撃したことから、証拠をおさえようと試行錯誤するストーリーです。
ジェフは怪我をしていて、自分の部屋から出ることができません。私たち観客と同じように、裏窓から登場人物が行動しているのを見る事しかできないのです。その特性もあり、最後まで事件の真相が明かされません。本当に殺人事件だったのか?実際は何が起こったのか?
観たらいろいろと考え込んでしまいます。他の人と考察を話し合った方も多いのではないでしょうか。私も自分の頭を整理させるために考察を残しておきます。

事実3点

本作の推理は、ほとんどジェフの主観と憶測。それらが事実なのかどうかは疑わしいです。その中でも警察や協力者たち第三者によって、「確実な事実」として明かされているのは以下の3点。

① あの部屋に妻はいない
② 宝石などのアクセサリーが置きっぱなし
③ 庭に何かを埋めたが犬に嗅ぎ付けられたので、掘り返した

実は確実に事実だと言えるのはこれだけです。他にも
・怪しい荷物が運ばれた
・妻らしき女性が列車に乗った
等ありますが、ジェフ自身が調査したものではありません。
警察が何かを掴んでおり、何かを隠しているような雰囲気があるので、これらは確実な「事実」とは言いにくいです。

考察①事件は犬より価値があるが、宝石ほど価値はない

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画像出典:アルフレッド・ヒッチコック公式Facebook

本作で一番の矛盾はこの点です。犯人は「何か」を庭の花の下に埋めました。しかし、犬が異変に気付きます。そこで犯人は犬を殺したうえで「何か」を掘り返しました。「何か」はこの事件のキーとなるものでしょう。この事件は、犬の命よりも重要なものだと言えます。ちなみに、犯人は「何か」を埋めることを(または埋める準備を)映画のオープニングの時点でしていました。どうやら事件は計画的なもののようです。
その一方で、事件が明るみになる可能性があるのに、犯人はそんな危険も顧みず宝石を取り返そうと躍起になりました。この事件の真相よりも宝石が重要だというのです。

考察②殺人事件だったのか?

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画像出典:アルフレッド・ヒッチコック公式Facebook

・事件当夜「やめて!」という悲鳴が上がっていたこと。
・犯人の部屋から宝石類が消えたこと。
・最後に警察が箱の中身を見るか?と聞いたこと。

などから、本当に犯人は妻を殺したように思えます。
箱の中身は「宝石」で、事件の前に宝石類を箱に入れておいた。だが結婚指輪などは殺した後に回収しなければならないから、部屋に指輪だけが残っていた。死体の一部ではなく「宝石」だから警察が「見るか?」などと声をかけた。
と、説明ができます。
しかし、矛盾も出てきます。

・死体はどこに行ったのか?
・犬が「宝石」に対してなぜそこまで反応したのか?
・なぜ犯人が指輪にこだわったのか?

これらのことがどうしても説明できません。
宝石にそこまで犬が反応するとは思えないのです。それに、なぜ指輪を取り返すために再び人を殺そうとしたのでしょうか?
本当に殺人だったのなら、指輪の1つや2つ捨てて逃げても良かったように思えます。

考察③本当はマフィアだったのでは?

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画像出典:映画『裏窓』公式Facebook

犯人はマフィアの人間だったのではないでしょうか。
そして、箱の中身は「麻薬」だとしたら、納得できる部分も多いです。犬が嗅ぎ付ける危険もありますし、そうなれば犬を殺すこともためらわないでしょう。もしかすると定期的に住居も変えているのかもしれません。素人とは思えない手際の良さや落ち着きも、それなら納得できます。
マフィア関係の事件だったなら、警察が何か掴んでいそうなのに情報を隠していたり、「何もない」と言いながら警察たちの行動が早かったり、というのも納得できます。

殺人などはなく、ただ純粋に喧嘩していたのかもしれません。「一般人のフリをするため、貴金属は組織から借りていた」と考えると、指輪への異常な執着にも納得できます。
犯罪がばれても警察に捕まるだけです。逮捕よりも恐ろしいのは、組織に不始末がバレて罰や制裁を受けることではないでしょうか。

つまり、
犯人はマフィアの人間で、「麻薬」の管理をしていた(セールスマンと言っていたので売買もしていた可能性も)。警察の目から逃れるため、一般人のフリをしていた。
と考えます。

まとめ

ここまで考察を書いてきましたが、これらが事実とは限りません。私たちは主人公ジェフと同じように干渉もできず、この「裏窓」から事件を見ることしかできないのです。
そのもどかしさ、憶測ができる余白が本作の魅力でもあります。
やはりアルフレッド・ヒッチコック監督の演出の素晴らしさを改めて感じる名サスペンスです!
あなたもまた「裏窓」を覗きに行きませんか?

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