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#23 Mr. Childrenのミックスとは田原健一の音量と位置のことだ。 1996–2000編。

24/03/14: 1,000 views達成!皆様ありがとうございます!
好評につき一部リニューアルしました。
当noteで3番目に見られている記事です。

田原さん(以下敬称略)のみに着目したミスチルシングル解説、1996–2000編です。ベスト盤でいうと所謂「骨盤」ですね。小貫さんのライナーノーツも素晴らしいCD版を手に取って頂きたいです。


名もなき詩 ★★★★☆

リリース:1996年2月5日
5thアルバム「深海」収録

イントロからAメロ、サビまで全てが自然に繋がり、王道なメロディで攻める「国民的名曲」の1つでありながら、「innocent world」(★★☆☆☆)とは比べ物にならない傑作。ふとしたタイミングで聞くと涙しそうなほどいい曲で、消費されて欲しくない。

左が田原によるエレキで、右はアコギ。サビのブラスがファンクな雰囲気を醸し出しつつ、田原はかなり硬派に弾いている。有名な「ジャガジャーン」から始まり、まさにずっとボーカルと対話し続けるような田原真骨頂のギター。

田原関係ないけど2番から入るアコーディオンの感じとか、「優しい歌」は「名もなき詩」を再現したかったのかもしれないですね。


花-Mement Mori- ★★★★★

リリース:1996年4月10日
5thアルバム「深海」収録

動と静のバランスがめちゃめちゃ良く、田原全盛期(=ミスチル全盛期)ともいうべき傑作だと思う。内省的な曲だと思って入ると、2番以降の衝撃的な展開に面食らうことになるだろう。アトラクション的要素も楽しい曲。

「AメロからBメロへ移るニュアンスの表現」はまさしく田原による名仕事。特にギターソロの後ろでのシンプルなバッキングが至極。桜井のギターのテンポ取りが少し前のめりなのに対して、田原は後ろで取る。これがミスチル独特のグルーヴを生み出す。


everything (it's you) ★★★★★
リリース:1997年2月5日
6thアルバム「BOLERO」収録

ギターソロが16小節あった上にそのあとのラスサビでも弾き続けるという、もし自分で弾けたら気持ちよさそうな曲。田原のバッキングはこのテンポ、このサウンドの曲で特に輝く。印象的なのは桜井のソロかもしれないが、この曲の雰囲気を決定づけているのは完全に田原のトレモロ。


ニシエヒガシエ ★★★☆☆

リリース:1998年2月11日
7thアルバム「DISCOVERY」収録

ツインギター期のミスチルが幕開けだ。アコギのリフでスタート(左耳)し、ユニゾンで右・左エレキのリフ。ハードな曲の印象があるが、曲の雰囲気を作っているのは意外にもアコギのカッティング(アウトロのキメもカッコいい)と、センターで挿入されるスライドギターだ。ライブではここは田原以外のサポートメンバーが弾いている様子。

間奏部分は、アルペジオ(右耳)が田原っぽい音色、ワウペダルのウニャウニャした音が桜井っぽい音色だが、真相は不明。逸れるが間奏はJENのハイハットの跳ねたリズムがめちゃめちゃカッコいい。


光の射す方へ ★★★★☆

リリース:1999年1月13日
7thアルバム「DISCOVERY」収録

これもツインギターだがユニゾンではなくオクターブ(左:歪んだ音で下、右:歪み弱めで上)。サビの田原による左耳のギターがかなり細かいニュアンスを表現し、突き抜けるようなこの曲の晴れやかさを支えている。

何といっても素晴らしいのはこの曲も間奏で、間違いなく田原にしか出せない「音色中心、ややぶっきらぼうなリズム」なギターのループ。実は「光の射す方へ」の印象ってここでほとんど決まっているんじゃないか、と思う。やはりオルタナティブバンドとしてのミスチルが、モラトリアムを歌うと本領発揮する大傑作。


終わりなき旅 ★★☆☆☆
リリース:1998年10月21日
7thアルバム「DISCOVERY」収録

安定の右桜井、左田原。全体のリズムがかなり制御されていて、ビートルズ的なストリングス(「Hello, Goodbye」+「Hey Jude」?)で引っ張る曲なので、田原的ニュアンスが感じられる部分は少なめ。メロディが素晴らしいので気づかないが、意外と単調な曲である。


口笛 ★★★★☆
リリース:2000年1月13日
8thアルバム「Q」収録

左が田原によるエレキ。Aメロから、珍しく歌よりもギターが先走るような展開が可愛らしい。田原はきっとこの曲が好きだと思う。
サビ終盤のコードとその音色が非常に印象的で、やはり「これが口笛の印象を作る」音だと思わざるをえない。コバタケのピアノと田原のギターのバランスが、"ありえんいい"名曲。


NOT FOUND ★★☆☆☆
リリース:2000年8月9日
8thアルバム「Q」収録

右が田原(多分)で、左がアコギの構成は、ここまでのシングル曲を見ると"異例"である。「ニシエヒガシエ」も左がアコギだが、あちらはエレキもツインであるため、そこまでの違和感はなかった。
サビから大サビに向かう、やや強引な部分の繋ぎをすっと飲み込みやすくする、まさに田原仕事。その他は割合普通で、この三連のリズムに田原ニュアンスはなかなか入れづらかったのではないかと推測する。


改めて振り返る田原仕事のミソ

様々な曲を改めて聴いてみて、田原の仕事は以下の部分で大きく発揮されるようだ。

・主にAメロで、ボーカルに呼応するようなバッキング

・曲が展開する場面で、スムーズに繋ぎつつニュアンスを作る

・長めの間奏で、曲の色を明確にする


次は「2001–2005編」です。この時期の、20代後半–30代前半のミスチルは至高。

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