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ワタクシ流☆絵解き館その38 青木繁「海の幸」④ イエスを思わせるモチーフと、行進する人の数

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青木繁「海の幸」1904年 重要文化財 アーティゾン美術館蔵

「海の幸」には、イエスの受難やキリスト教を思わせるモチーフがいくつも見て取れることを、「海の幸」の絵解き①~③で述べて来た。「ワタクシ流絵解き館 青木繁『海の幸』① 同②」では、中央の白面の人物こそが、イエスをはっきりと意識させ、そして画家青木自身をそこに重ねていると簡単に示したが、今回はその論の補完をしてみたい。

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絡み合う銛の中で、切っ先を見せているのは、中央の白面の人物が持つ一本だけ。その銛の切っ先は、上へと、つまり天上世界へと向かう矢印の働きも担っているのではないか。そして、白面の人物の、まるで折れているような左脚の描き方と、体の随所に傷と見えるような線。そこには、処刑の場のイエスの人体を思わせる意図がこめられているのではないか。
では、次にこの絵の群像が示すのは何かと考えたとき、イエスの初めの弟子たち、つまり十二使徒のことが浮かんで来た。十二という数字を意識して、描く人数を青木は構想していたのではないか、という推理が下に掲げた「海の幸」のアレンジ図である。さすがに、小さな画面にそれだけ描きこむと、画面の窮屈な感じが勝ってしまうので描くのはやめたと思われるが、描線を部分的に残すことで、暗示させようとしているのではないだろうか。
(※十二使徒については、ここでは説明は省きます)

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描線がよりわかるように、モノトーンでコントラストを強めてみる。

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上の図では、描線がかすかに残る人体の線を掘り起こしてみた。(黄色の線)
そこから見えてくる幻の人を加えて人物を数えると、中心の白面の人物の前後に、12人いるのが見えてくる。
その群像の、まさにど真ん中にこの白面の主役は位置している。それは例えばレオナルド・ダヴィンチの「最後の晩餐」と同じ構成である。
青木繁が、他の人物にはない、この人物だけが伝えるメッセージを、そのフォルム、陰影、視線、ポーズにこめていることだけは確かなことであろう。

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