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自分自身を知る方法

相手の特徴や考え方がもっとわかっていれば,また,自分のことを相手がもっと知っていれば,相手との関係が上手くのに...という経験をしたことはないですか?

自分と他人がお互いに関する情報をやりとりすることによって,お互いを知り,建設的な人間関係を築くための糸口を示したのが「ジョハリの窓」である。



ジョハリの窓

ジョハリの窓は,Luft & Ingham(1955)によって考案された人間関係のモデルである。

ジョハリの窓では,「自分」について,「自分が知っているのか知らないのか」,「他人に知られているのかいないのか」という2軸に基づいて,「4つの窓」を想定している。


図1


開放の窓

開放の窓は,自分も他人も知っている領域である。
つまり,自分の考えや気持ち,行動の傾向について,自分も他人も知っている部分を意味する。
開放の窓では,「自分」について,自分も他人も共通の理解があるので,コミュニケーションが円滑に行われる。

盲目の窓

盲目の窓は,自分は知らないが,他人は知っている領域である。
つまり,自分では気づいていない自分のくせや行動傾向が,他人にはよく見えているということを意味する。
自分が,この領域を知れば知るほど,自分自身について深く理解することができる。

秘密の窓

秘密の窓は,自分は知っているが,他人には知らされていない領域である。
他人に知られたくなくて意図的に隠している場合もあるが,他人に知らせる必要がない,あるいは知らせる機会がないなどの場合もある。

未知の窓

未知の窓は,自分も他人も未だ気づいていない領域である。
この領域に気づくことが,新たな自分を発見したり,自分の可能性を開いたりすることにつながる。

ジョハリの窓では,「盲目の窓」と「秘密の窓」を狭めることによって,「開放の窓」が拡がる状態になれば,人間関係を効果的に展開することができる。

そのために,「自己開示」を適切に行う必要がある。


自己開示

自己開示とは,特定の他者に対して,自分自身に関する本当の情報を言語的に伝達する行動である(深田,1998)。

つまり,自分自身をあらわにすることである。

以下には,自己開示についてさらに詳しく説明する。


社会的浸透理論

自己開示に関する理論として,社会的浸透理論(Altman & Taylor, 1973)は,二者関係が初対面同士から次第に親密になるにつれて,互いに交換される自己開示の「幅(量)」と「深さ(質)」が増えることを次のように説明している。

自己開示する人(以下,開示者と表記する)は,自己開示された人(以下,被開示者と表記する)に対して自己開示を適切に行うと,開示者の重要な個人情報を被開示者に伝えることになり,被開示者は信用されていると思う。その結果,被開示者も,開示者に対して自己開示を行うようになるという説明である。

社会的浸透理論(Altman & Taylor, 1973)に基づくと,深い自己開示が人間関係を表面的なレベルから,親密なレベルに発展させる。
つまり,互いの自己開示のやりとりを通して,人は,他者と親密になり,信頼関係を形成していく。

図1


自己開示の次元

自己開示には,5つの次元がある。

1. 自己開示の「量」(amount)
 開示の頻度(回数)や,程度(時間の長さ)を意味する。

2. 自己開示の「内面性」(intimacy)
 表面的から内面的までの深さ(質)を意味する。

3. 自己開示の「内容評価」(valence)
 開示者にとってポジティブかネガティブかを意味する。

4. 自己開示の「正確さ」(accuracy)と「正直さ」(honesty)
 本当の情報か否かを意味する。

5. 自己開示の「意図」(intention)
 開示しようとする意識の強さを意味する。


自己開示の機能

安藤(1986)によれば,自己開示には,以下の6つの機能がある。

1. 感情表出

2. 情報伝達

3. 社会的妥当化

4. 報酬

5. 社会的コントロール

6. 親密化の調整



結論

自分自身をあらわにすることが,人間関係を建設的にするコツなのである。



引用文献

Altman, I., & Taylor, D. A. (1973). Social penetration: The development of interpersonal relationships. New York; Holt, Rinehart & Winston.

安藤 清志 (1986). 対人関係における自己開示の機能 東京女子大学紀要論集, 36, 167-199.

榎本 博明 (1997). 自己開示の心理学研究 北大路書房

深田 博己 (1998). インターパーソナル・コミュニケーション−対人コミュニケーションの心理学− 北大路書房

Luft, J., & Ingham, H. (1955). The Johari Window, A Graphic Model of Interpersonal Awareness, Proceedings of the Western Training Laboratory in Group Development. UCLA.

丹羽 空・丸野 俊一 (2010). 自己開示の深さを測定する尺度の開発 パーソナリティ研究, 18, 196-209.

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