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【いろとりどりのセカイ考察】霧島時雨とは何者なのか?

FAVORITE制作のPCゲーム『いろとりどりのセカイ』。
この物語は主人公の鹿上悠馬とメインヒロイン二階堂真紅を中心に広がっていくものですが、この記事はこの二人のセカイの舞台裏に無数に存在するいくつもの物語のひとつ、謎多き人物・霧島時雨にスポットを当ててみました。
彼と彼にまつわる人々の情報を、知り得る限りの裏設定も含めて洗い出し、行動を整理して浮かび上がってくる彼の物語。彼の過去に何があり、そして何をしているのか……。不明な部分は辻褄が合うように非公式設定を肉付けして私なりに彼の物語を仮説としてショートストーリー(以下SSと略称)に組み立て、このたび二次創作の同人誌として形にしました。
この記事は、霧島時雨の物語をどのようにして組み立てたのかをまとめたものです。私の同人誌の購入予定がなくても、いろセカファンであれば興味深く読める内容だと思います。解釈間違い等はご容赦下さい。

<CAUTION>
この記事は『いろとりどりのセカイ』及び『いろとりどりのヒカリ』のネタバレを含みます。



◆目次
・人物相関
・人物設定
・用語
・時系列のできごと
・状況からの仮説
・同人誌の非公式設定


◆人物相関

以前私はなんとなく思い立っていろセカ全体の人物相関図を作ったことがあります。完成したものは以下の通り。

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いくつものセカイと時間の流れまで網羅したかなりの自信作です。
中心にはもちろん悠馬と真紅がいますが、右サイドに時雨と彼に関係の深い人達が第2のコロニーを形成しています。
霧島時雨の足跡を追うには彼の関係者である人達、すなわち白、蓮、鏡、鈴、蓮也、苺、そして名前の設定がない妖狐の娘……彼ら彼女らの行動を研究する必要があります。


◆人物設定

ここに登場人物のプロフィールや細やかな設定をまとめます。

★霧島時雨

画像2

・公式登場人物紹介
身長:180cm
血液型:B
好きなもの:仕事、物探し
苦手なもの:眠ることを邪魔されること、不健康な食べ物、タバコ
好きな食べ物:出されたものが手作りなら何でも好んで口にする
嫌いな食べ物:ヤモリの姿焼き、インスタント
心優しい、学生寮の管理人。お節介好き。無頓着な性格で、細かいことにはあまり拘らないが、食事に関しては健康志向で少々煩い。
鏡と同じ特別な力を持っている。(いろセカ)
異界の儀式"御霊送り"で失った白を取り戻す方法を探っている。(いろヒカ)
・その他の設定
かつて妖狐の娘と関係と持ち、白という子供を授かるが、その妖狐の娘は死んでおり、白にも父親と名乗らずに距離を保って暮らしている。
仕事は学生寮の管理人の他に、式を使った物探しや、商人の町の相談役や祭事・儀式の取り仕切り、逃がし屋の手伝い等、手広く行っている。
霧島家やその親戚のみが使える"胡蝶の式"の術式が使える。
親戚の鏡を学生寮に住まわせて世話をしている。だだ甘で、鏡にゲームやコミック等を好きなだけ買い与えている。
「彼女の家族に僕と親しくしてくれている奴がいてね、そいつの願いである期間だけ、あそこの部屋に匿っているような形になっているんだ。とは言っても、僕はあいつとわけあって仲たがいをしてしまっていてね。そのせいでいまは中々話し合いもできない状況だ」(いろセカ共通ルート、悠馬に鏡のことを聞かれた時雨の発言)。
鏡の教育係でもあり、式の使い方を教えている。家のしきたりに無頓着なのか、霧島家独自の門外不出の"式の異世界渡り"まで鏡に伝授している。
異世界の宝物を収集し、学生寮に保管している。
悠馬に「仕事が忙しくなった」というぼやけた理由で寮の管理人の仕事を任せて出ずっぱりになる。
ソデとかから色々出す(ボツ設定。創作ノヲト)。

オリジナルの時雨:真紅たちが生きていた『なんでも願いの叶う国』のセカイにいた。生まれつき特別な力を有しており、その適正を買われて『保護監察官』という国の仕事に従事している。保護した孤児を薬で心を失わせ、引き取りたいと願う大人に適性が無くても引き渡している。「今度生まれてくるときは、出会う子供たちを無条件に甘やかせるような環境に生まれたい」と発言していることから、この仕事にやるせなさを募らせていると思われる。月の破壊という願いの監査を認可したのも彼。月の破壊に際し家族を失ってしまい、その罪悪感から薬物を服用して心を殺している(いろヒカ藍ルート)。小説『異セカイ迷子の半透明とやさしい死神』に破壊された月のデブリが地球に降り注ぐ描写があることから、家族の死因はこれによるものと推測される。
カノウエユウマや夏目鈴を保護していた。
最果ての古書店に連れ去られてセカイから消える。

★白

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・公式登場人物紹介
身長:155cm
スリーサイズ:88・56・85
血液型:O
好きなもの:人間、晴天、蓮
苦手なもの:雨
好きな食べ物:緑茶
嫌いな食べ物:コーヒー
異界"商人の町"に住まう、狐の妖怪。学生寮の地下室から通じる、人でないモノ達が生きる"異界"――商人の町で、"占い師"として生活している。性格は温厚で、一人娘を愛しており、占術の中では天気占を得意とする。人間を忌み嫌い恐怖する人外の隠れ里出身だが、白当人は人間のことを嫌いだという訳ではなくて……。(いろセカ)
"御霊送り"という儀式の果てに、溺愛していた娘の蓮と離れなければならなくなった、のだが……。(いろヒカ)
・その他設定
妖狐と人間のハーフで忌み子として生まれ、両親の顔も知らず、家族から蔑まれながら幼少期を生きた。
占術の才能は母親に劣る。
御霊送りの際に「聴力が人並みに落ちた」という発言があったことから、聴力は非常に高かったものと思われる。
蓮也と恋に落ち妊娠するが、そのことが村中に露見し村を追放される。その後は商人の町に居つき、蓮と慎ましやかに暮らす。
加奈シナリオでは御霊送りの人柱に選ばれて最果ての古書店に連れ去られる。その後、魔法の本になってセカイにこぼれ落ちてくる。

★蓮

画像4

・公式登場人物紹介
身長:112cm
スリーサイズ:62・42・59
血液型:B
好きなもの:花火、キラキラ光るもの、お母さん
苦手なもの:留守番
好きな食べ物:油揚げ、お菓子
嫌いな食べ物:特になし
異界"商人の町"に住む、子狐の妖怪。町の占い師、白の一人娘。酷い人見知りをする性格で、いつも母親の背中に隠れ、ビクビクしている印象。お母さんのことが大好き。(いろセカ)
嵐山壮の地下室の柱時計から行ける異セカイの一つ"商人の町"に住む、妖狐。大好きだったお母さんを、意地悪な神さまから取り戻したいと願っている。(いろヒカ)
・その他設定
白と蓮也の娘。占術の才能は全くない。
白の本を探すシーンで、人には真似できないほどの運動能力を発揮している描写がある。
猫を見て美味しそうと言う。
年齢不明。

★夏目鈴

画像5

・公式登場人物紹介
身長:164cm
スリーサイズ:89・58・86
血液型:B
好きなもの:インターネットショッピング、読書、昼寝、ゴロゴロする事
苦手なもの:スケジュール管理、神経質なヤツ
好きな食べ物:ラーメン、甘口カレー、主に一人暮らしに最適なインスタント食品
嫌いな食べ物:辛いもの
学生寮に住み着いている、勝手気ままな年上のお姉さん。そして悠馬の師匠でもある。かなりの濫読家であり、性格は無軌道、自堕落、悪戯好き。(いろセカ)
管理人との間柄は――現在未知数。(いろヒカ)
・その他設定
"魔女"と呼ばれ、逃がし屋として活動している。
"こちら側"の逃がし屋としての収入でお金に不自由していない。
なぜか先天的に人間離れした身体の頑丈さや腕力、運動神経をもつ。メスも肌を通らない。腕相撲は無敵。
その体質のせいで両親から恐れられ、時雨に発見されるまで虐待・監禁されて少女時代を過ごす。
妹と弟がいる。
時雨(オリジナル)のことを慕っていたが、言い寄った翌日に彼は最果てに消えてしまいショックを受け、神様を恨んでいたこともあった。
悠馬とセカイの秘密を共有している。
裏設定として、魔術書(仮)を使って攻撃的な魔術が使える。中でも強力なのは紙飛行機を投擲する風の魔術(いろとりどりのセカイCOMPLETE ARTWORKS FIRST VOLUME)。

★敷島鏡

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・公式登場人物紹介
身長:152cm
スリーサイズ:88・56・87
血液型:AB
好きなもの:ゲーム、アニメ、寝ること
苦手なもの:面倒なこと
好きな食べ物:悠馬の作った食事なら何でも
嫌いな食べ物:野菜
学生寮"嵐山壮"の一室に引きこもる、妄想爆裂な電波少女。性格はのんびり屋。天然であるがゆえ、ちょっぴり辛辣なところも。俗世から離れ、日がな一日ゲームやアニメで惰性に過ごすあまり、お日様知らずの肌は色白。昼夜逆転生活のためか、いつでも眠そうにしている。悠馬と出会った事で、引きこもり先の自室から出ることが多くなるも、彼女は不思議な"力"を持っており……。(いろセカ)
元引きこもりのお兄ちゃんっ子、ブラコンである。そんなお兄ちゃん大好きな性格を卒業したいと思っていたけれど。何だかやっぱり、難しそう。(いろヒカ)
現在。都会のゲーム会社でヒットメーカーとして活躍中。だが合宿の知らせを受け、わざわざ忙しい中、仕事を放棄し帰ってきた。そんな鏡は何だか少し様子が変なように思えるが……。(紅セカ)
・その他設定
苺が遊び半分で行っている蓮也の暗殺修行の獲物役に意図せず使われていた。式を操る才能が無いとされ、暗殺家業と距離を置いてほしいと願う蓮也により長らく式を寄生させられずにいたが、ある日の修行で鏡の目の前で悪漢の惨殺を行ってしまったため、記憶を消すためにやむをえず式の繭の寄生が施される。その為記憶力などに障害を患う(いろヒカ鏡ルート回想)。
鏡シナリオでは徐々に式の制御が上達していく。
開発初期原案では桐島鏡という名前で、呪詛を使役し対象を喰らう暗殺者だった(創作ノヲト)。

★敷島蓮也

画像7

・公式登場人物紹介
なし
・その他設定
白の旦那で鏡の兄。シスコン。
両親は早くに他界している。
敷島苺に隷属させられており、暗殺の仕事や苺の夜の相手などをさせられている。
生まれてすぐに苺に目をつぶされ視力を失っている。両眼に式の死骸を埋め込まれ、蓮也の視界や音声などは全て苺に筒抜けである。
殺しの腕前は一流。もちろん式も扱える。
商人の町に移り住んだ白を式で探知できず、死んでしまったと思い込んでいる。
いろヒカ鏡ルートでは悠馬と真紅の魔法で視力を快復し苺の術式も解除されて自由の身になる。

★敷島苺

画像8

・公式登場人物紹介
身長:139cm
スリーサイズ:74・51・76
血液型:O
好きなもの:男、特にいけめん。いけめんとえっちすること
苦手なもの:女
好きな食べ物:味の強いもの、精力が付くもの全般
嫌いな食べ物:味が薄いもの、薬膳料理
敷島鏡の祖母。年齢不詳。外見は年端もいかない童女だが、自他ともに認める肉食系。隙あらば悠馬とえっちなことをしようと狙っている。悠馬たちが合宿中、彼女も学生寮で寝起きすることとなった。鏡に勧められたえっちなゲームにハマり中。(紅セカ)
・その他設定
敷島家現当主。
年齢不詳だが蓮也曰く「齢百を超えている」(いろヒカ鏡ルート蓮也の発言)。しかし敷島の女は長寿であり、おそらく200歳ぐらいまで生きられる。
式を植え込む際のトラブルで外見の成長が止まっている。
酷い淫乱で、孫である蓮也を性奴隷にしている。
身辺警護している凄腕の近衛が常時いる。

★妖狐の娘
・公式登場人物紹介
なし
・その他設定
時雨の伴侶で白の母。妖狐の一族の娘で、占術が扱える。
名前や容姿など一切設定なし。
病弱で白を出産した後に死亡している。

◆用語

★ME
青色の錠剤。弛緩剤の一種と説明されている。架空のダウン系薬物と思われる。記憶力を後退させ感情を奪う効能がある。時雨はこれを保護してきた孤児に投薬することも仕事のうちであるようだ(いろヒカ藍ルート)。

★白の村の一族
妖怪が暮らす隠れ里。「同属の命を奪うことは躊躇うことなく良しとして、異族である人間に対してはそれをよしとしない。汚れが移ってしまうからという理由でね」(いろセカ加奈ルート白の回想中時雨の発言)。白の家庭は占いを生業とする妖狐の一族(いろセカ加奈ルート白の回想)。妖狐の住まう村:「ここのモノたちは異族嫌悪が強く、人間を汚らわしいものと嫌悪し、ハーフの白を殺すこともしない。逆に仲間意識が希薄で白の家族はあっさりと粛清」(いろセカ加奈ルートの御霊送り中、眠り草の回想にて時雨の発言)「その後も村全体が崩壊寸前に陥るほど混乱。最終的に苺の命令で村ごと焼き討ちに」(いろヒカ鏡ルート、回想中の苺の発言)。その際、蓮也は白が死んだと疑い、安否確認のために飛ばした式は、白が異世界にいるために探知できなかった(いろヒカ鏡ルート回想)。

★胡蝶の式
霧島家やその親戚が操る術式。実体があるのかは不明だが光る胡蝶のような見た目。術式によって術者の探し物を探り当てることができる。人間の脳内(記憶領域?)に寄生している。操縦技能が未熟だと記憶力に障害を患う。
繭の形態があるようなので、完全変態する昆虫生物と思われるが、実体があるのか概念的な存在なのかは不明。加奈に寄生していた蝶も胡蝶の式の一種であるが、霧島家などが飼い慣らして家畜化している胡蝶の式と違い、野生のそれは凶暴な害虫である。

★霧島の式
『失くしたものを探し出す』式。帳簿に対象の情報を書き、煙管の紫煙を吹きかけることで胡蝶が顕現する。戻ってきた胡蝶は持ち帰ってきた情報を帳簿に写す。霧島の式は命あるものや特定の場所を探すのには不向き(いろセカ共通ルート時雨の発言)。世界の境界を越えて異世界まで飛ばすことが可能。「この(異世界を渡る)"式"の技術は門外不出で、これまでは霧島の家が独占し囲っていたものだった」(いろヒカ鏡ルート、鏡の発言)。

★敷島の式
索敵専用。どのような複雑な方法で対象が姿を消したとしても、必ずその居場所を見つけ出す、暗殺に適した能力。(いろヒカ鏡ルート、悠馬が蓮也に襲われるシーン)。極めれば「自分に殺意を向ける何者かの存在と意図を探り出せる」(いろヒカ鏡ルート、蓮也)。
ため息によって胡蝶が顕現する。

★蓮也の目
特別な術式を練りこんだ苺の式の死骸が埋め込まれている。蓮也の失った視覚は苺に転送されている(いろヒカ鏡ルート回想)。

★嵐山壮
「学生寮は霧島家の所有物」(いろヒカ鏡ルート、蓮也の発言)。
地下室には任意の異界へ渡れる柱時計がある。
最果ての古書店からの干渉を受けないという、セカイの特異点である。
『なんでも願いの叶う国』にも似たような建物があり、公営の孤児院のような施設になっている。

★霧島家
「異世界を渡る技術を持つのは霧島の家だけのはずだ。人でないものであろうとそうじゃなかろうと、例外は殆どありえない。どこかの異世界に住む猫の姿をしたもののけは、そういった力を微量なり持ってはいる」「霧島家以外のものが異世界を渡るのは、霧島の家の者が開通を施した道で、開通者の許可を得られている道のみ」(いろヒカ鏡ルート、蓮也が鏡に向かって発言)。

画像9


「最初、時雨が敷島のわたしに教育できるのは、"式"の基本的な操縦法だけだって言ってた。時雨のお家は昔から、わたしみたいな不出来な子の面倒を見る役回りだったんだって」(いろヒカ鏡ルート、鏡の発言)。
敷島家とは親戚関係である。

★敷島家
暗殺を生業にする家。霧島家とは親戚関係である。
暗殺には異世界の秘宝を用いることもある。

★呪いの一族、斬原
裏設定。斬原を本家とし、分家に霧島、敷島、鬼咲、乙姫塚、十六夜ヶ原、汰々羅文、逆神、仄、哭之宮の九家を連ねている(いろとりどりのセカイCOMPLETE ARTWORKS FIRST VOLUME)。

★商人の町
嵐山壮の地下室の柱時計を2時45分に合わせることで訪れることができるセカイ。人でないモノ達が住んでいる。
お祭り好きで愉快なモノ達が多い。

★御霊送り
商人の町にある、年に一度ある行事。最果ての古書店に選ばれたモノを人柱として捧げ、約束の場所まで旅をする儀式。
例年は時雨が先達人を務めていたが、白のときは悠馬が担った。
選ばれたモノは日に日に魂が身体から抜け、五感が薄くなる。
儀式には規則があり、手を引くモノ(白の場合は蓮)は選ばれたモノと口を利いてはいけないし目も合わせてはいけない等といったものがある。それを破ると町に災厄が起こると信じられている。

★最果ての古書店
セカイを統べ、果てに存在すると言われている巨大な図書館。死んだ命が一冊の本になって集まり、本棚の中で次の人生を待っている。輪廻転生のターミナルのような機能を有し、長らくレンが管理人として制御していた。
いろとりどりのセカイでは、レンが鹿上悠馬となって外に出て、魔除けのドアベルも外してしまったために何者かに制御を奪われて暴走状態にあった。

★魔法の本
死んだ人間の人生が記述されたタイトルのない一冊の本。最果ての古書店に蔵書され、次に生まれ変わる人生を待って眠っている。
稀に強い未練などから元のセカイにこぼれ落ちてくることがある。
その本を最初に開いた人には、その本の中の人が半透明な状態で顕現し、その人の願いを叶えるための魔法をひとつ与える。
半透明の本の人は、最初に本を開いた人以外には見えない。


◆時系列のできごと

時雨の過去から加奈シナリオの白との再会まで、本編で明らかになっているできごとを時系列順に直して整理しました。

~なんでも願いの叶う国~
時雨のオリジナル
 月破壊を承認。
 月破壊で家族を亡くす。
 薬漬けになりつつ保護監察官の公務を務める。
 カノウエユウマを保護する。
 カノウエユウマに逃げられる。
 鈴を保護する。
 鈴に言い寄られるも拒む。翌日最果てに呼ばれセカイから消滅する。
~いろとりどりのセカイ~
時雨、妖狐の娘と子を成す。
白誕生。間もなく白の母死亡。
(時雨、鈴と出会う。時期不明)
(時雨、嵐山壮の管理人になる。時期不明)
白と蓮也が出会う。
白妊娠。
白の家庭崩壊。時雨に救助される。
苺、白の村を焼き討ちにする。
苺、蓮也を嵌めて鏡に繭を植え付けさせる。
蓮也、白の探知に失敗し死んだと勘違いする。
鏡、時雨の元に預けられる。
白、蓮を出産。
鈴、悠馬を弟子に取る。
時雨、悠馬に管理人の仕事を任せる。
~いろとりどりのセカイの筋書き部分終了~
~加奈シナリオ~
白、御霊送りに選ばれて消滅。
時雨、蓮也の居場所を突き止めて、本人に会ってほしいと伝える。
時雨、白の消滅を知る。
時雨、白の本を探知する。一人で回収に向かおうとするも大所帯になる。
加奈、白の本を開く。
一行、異世界で白と再会し最後のお別れをする。


◆状況からの仮説

登場人物の設定と時系列を整理したことで時雨の足跡がある程度見えてくるが、不可解な部分も見えてきます。

①時雨は自分が父親だと白に伝えていない。(言えない理由は?)
②白が、自分には父親はいないと思っている。白が窮地に陥るまで姿を見せなかった。(白の居場所や状況は把握していたと思われる。それまで会わなかった、あるいは会えなかったのはなぜ?)
③そもそも霧島家は何なのか?
④家の秘伝を簡単に鏡に漏洩している。(家庭の事情に縛られていない?)
⑤鏡を匿ってほしいと預けた人と仲たがいしている。(誰と?仲たがいした理由は?)
⑥管理人としての業務を、忙しいからというあやふやな理由で悠馬に任せた。(言えない理由がある?蓮也の居場所の捜索がそこまで大変?)
⑦蓮也の居場所を探し出し白に会ってほしいと頼んだ。(時雨でも居場所を探すのに手こずるのはなぜ?)
⑧作中での活躍以上に悠馬からの評価が高い。(かなり優秀?)

この闇に隠された箇所を埋めるべく、状況証拠や物語の流れに沿って勝手に非公式設定を盛っていきます。
すでにある公式設定はできるだけ曲げず、史実と辻褄が合うように注意します。

まずは『①時雨は自分が父親だと白に伝えていない』『②白が、自分には父親はいないと思っている。白が窮地に陥るまで姿を見せなかった』から考えてみましょう。
時雨は白に存在が認知されていませんでしたが、時雨は白が娘であると認知しており、拒絶している様子もありません。
このことから、時雨は白に会いたくても会えない理由があった可能性が挙げられます。
しかし、時雨は白の窮地に駆けつけることができているので完全な禁忌というわけではなさそうです。
すると考えられるのは『会うわけにいかなかった、あるいは別のことを優先していた』という可能性です。
以上から私は『時雨は亡き妻の本を探していた』という理由が自然ではないかと考えました。オリジナルの時雨も妻を亡くした喪失が原因で最果てに消えています。それほどまでに愛していたというのなら白よりも優先してしまうということも充分あり得るのではないかと思います。

次に『③そもそも霧島家は何なのか』を考えてみます。
まず確実な情報は『異世界を渡ることができる技術を独占している』、『遺失物探査に特化し、異世界にも飛ばせる胡蝶の式を扱う』、『敷島家等と親戚関係にある』、『教育係を務めることもある』ということぐらいです。
暗殺を家業とする敷島家と親戚関係にあるのですから、後ろ暗いことをしているのではないかと思います。裏設定では『呪いの一族、斬原』の分家でもあるわけで、これはもう確実に闇が深いはずです。
ここで思い出してほしいのが、いろヒカ鏡ルートで蓮也が使ったアイテムです。人を帳簿に封じて運ぶ異界の秘宝を使っています。
異界の秘宝です。異界に行けるのは霧島家のみ。敷島の人間が異界の秘宝を拾ってこれるはずがありません。ということは、霧島家が手に入れたものを敷島家が利用しているということになります。
以上のことから推察すると、霧島家は『異世界から暗器になるものを収集して、他家に供給する仕事』をしているのではないかと私は考えます。これならば霧島の物探しの式という特性も合点がいきます。
これに続いて『④家の秘伝を簡単に鏡に漏洩している』真意を考えなければなりません。
時雨がしきたりに縛られない緩い性格だからと言ってしまえばそれまでですが、霧島の暗いお家事情を考えるとそれは無理があるのではないかと思います。
そこで私は『時雨は霧島家を勘当されている』という仮説を立てました。作中の彼はしきたりに無頓着どころか、不自然なほど家のことを感じさせません。彼は家のしがらみから解放された立場であるとすれば説明が付きます。
ただ、この仮説にはひとつ問題があります。それは敷島蓮也曰く、嵐山壮は霧島家の所有物であるという発言です。
家を追放された人間が、その家の所有物を管理しているというのはおかしいです。この仮説を通すのであれば、その理由を考える必要があります。それについては同人誌のSSでむりやりこじつけました。読んでのお楽しみにしておきます。

続いて『⑤鏡を匿ってほしいと預けた人と仲たがいしている』です。
"預けた人"とは誰のことでしょう。このセリフで時雨は"鏡の家族"だと言っており、鏡の家族は兄と祖母以外は故人のはずなので、安直に考えると蓮也であると思えます。…が、この仮説にはひとつ矛盾があります。蓮也は苺の傀儡であり隠し事ができないので、「匿ってほしい」などと謀反的な発言ができるはずがありません。もちろん苺もそんなことを言って頼ることは考えられないです。よって考えられるのは、他にも敷島の人間がいるか、あるいは時雨の言った"鏡の家族"というセリフが嘘かのどちらかです。
さらに謎なのは「仲たがいした」というところです。時雨の性格的に喧嘩すること自体が信じられませんが、その誰かは鏡を匿ってくれと時雨を頼りながらにして喧嘩もしているという不自然な状況です。時雨は本当にその人と仲たがいしているのでしょうか?仲たがいは時雨の主観的な印象なだけで、実は別に喧嘩しているわけではないのかもしれませんし、このセリフ自体が嘘なのかもしれません。
以上から真実を導き出すにはあまりにも情報が不足していますが、それでもあえてひとつの仮説を立てると、まず"鏡を匿ってほしいと頼んだ人"は敷島家の親戚であり、時雨はその人と仲たがいしたと思い込んでいると考えます。

『⑥管理人としての業務を、忙しいからというあやふやな理由で悠馬に任せた』について考察します。タイミングとしてはシナリオ分岐の直前。つまりいろとりどりのセカイの筋書き部分が終わる直前でのイベントです。このとき時雨は「仕事が忙しくなった」とだけで多くは語らず、しかし悠馬は二つ返事でこれを了承しています。その後の時雨は一気に出番がなくなってしまいますが、加奈シナリオでは加奈の窮地を知った悠馬の前に現れて『⑦蓮也の居場所を探し出し、蓮也に白に会ってほしいと頼んだ』と告白します。

画像10

よって⑥の理由は蓮也の捜索であると断言してもいいかと思います。時雨の胡蝶の式をもってしても蓮也の居場所を探すのに苦戦する理由はわかりませんが、敷島家の暗殺という家業を考慮すると無理もないのかもしれません。
それよりも気になるのは「白に会ってほしいと頼んだ」というセリフです。白の村を焼き討ちした苺と、白を探知できなかった蓮也は二人とも白が死んだものと思い込んでいます。そんな状態で蓮也に白が生きていると知らせれば、それは瞬時に苺にも伝わって一波乱起きるに違いありません。しかし現実にはそのようなことにはなっていません。つまりこれは、時雨が蓮也を縛るしがらみを排除することに成功したのかもしれません。
そうであれば『⑧作中での活躍以上に悠馬からの評価が高い』というのも頷けます。時雨は実はかなり優秀なのでしょう。御霊送りのときも悠馬は「時雨さんならもっとうまくやるはず」といった発言をしています。『創作ノヲト』の初期原案でもソデから色々取り出すという、なんか忍者っぽい技能をもつ設定があったりしますので、そういう裏もあるのかもしれません。


◆同人誌の非公式設定

それでは仮説をもとにSSを形作ります。
私の同人誌のあらすじなので、事前情報なしのまま同人誌を読みたい方は本を読み終わってからこちらを読むのをお勧めします。

時系列の整合性を取るため、そしてSSとして物語のドラマ性を持たせるために以下の設定を盛りました。

★霧島家における時雨
・暗器を収集する家業に従事(推測)
・時には暗殺もする(勝手に設定)
・技能は優秀(推測)
・ある時から霧島家から追放される(推測)
(筆者コメント)
オリジナルの時雨は薬におぼれて何か闇を抱えているような人物でした。悠馬と鈴が設定した写本であるこの時雨は、オリジナルのように後ろ暗い過去を持ちつつもそれを乗り越えて、オリジナルの頃に胸に抱いた「今度生まれてくるときは、出会う子供たちを無条件に甘やかせるような環境に生まれたい」という夢を叶えられている姿となっているのではないかと思います。SSではこの過去を乗り越える過程と、そして最愛の人の忘れ形見である白に陰ながら尽くす姿を書こうと思いました。

★妖狐の娘
・家宝が霧島家から狙われる(勝手に設定)
(筆者コメント)
情報が非常に少なく正体不明の時雨の奥さんです。どのようにして出会い、恋に落ち、そして別れることになったのかは全部妄想しなければなりません。今回は出会いのきっかけとして、妖狐の娘の家の家宝を時雨が奪取しに向かったことをきっかけとするようにフラグを立てることにしました。

★斬原当主
・霧島や敷島などを連ねる一族の本家斬原、その当主(裏設定)
・主に胡蝶の式の研究をしている(勝手に設定)
・霧島を追放された時雨を拾う(勝手に設定)
・嵐山壮の本当の所有者(勝手に設定)
・敷島家から鏡を預かり、時雨に鏡を匿うように言い渡す(勝手に設定)
(筆者コメント)
裏設定にも名前しか存在せず、いるのかどうかもわからないキャラを勝手に作りました。裏設定を生かしたかったのと、いろいろな辻褄を強引に合わせるために都合のいい存在です。全てがSS限定の非公式設定です。

★夏目鈴
・時雨に寮の管理人になることを要求する(勝手に設定)
(筆者コメント)
元のセカイでは失恋した相手がこのセカイでは同僚のような存在になっている鈴と時雨です。二人の関係は悠馬と鈴の筋書き通りに設定されているはずなので、鈴は全てわかりきったような態度をとる謎の魔女としてラスボス感を出してもらいます。時雨は嵐山壮に住み着いている魔女に、そこの管理人権限をもらいに訪ね知り合うという筋書きを用意しました。

時系列をSSに準じて整理し直し、物語性も加えて時雨の足跡を推測すると以下のようになりました。太字は勝手に設定した事象です。

~なんでも願いの叶う国~
時雨のオリジナル
 月破壊を承認。
 月破壊で家族を亡くす。
 薬漬けになりつつ保護監察官の公務を務める。
 カノウエユウマを保護する。
 カノウエユウマに逃げられる。
 鈴を保護する。
 鈴に言い寄られるも拒む。翌日最果てに呼ばれセカイから消滅する。
~いろとりどりのセカイ~
時雨、暗器の収集の過程で妖狐の娘と出会い恋に落ちる。
時雨、妖狐の娘とのできごとに際して何か禁忌を犯し軟禁される。
時雨、妖狐の娘の妊娠を知る。
時雨、霧島家を追放される。斬原家の下僕になる。

白誕生。間もなく白の母死亡。
時雨、斬原の命により嵐山壮の確保に動き、鈴と出会う。
時雨、嵐山壮の管理人になる。
時雨、亡くなった妖狐の娘の本を探すのに没頭する。

白と蓮也が出会う。
白妊娠。
白の家庭崩壊。
時雨、斬原から白の窮地を知らされ救助に向かう。
苺、白の村を焼き討ちにする。
苺、蓮也を嵌めて鏡に繭を植え付けさせる。
蓮也、白の探知に失敗し死んだと勘違いする。
鏡、斬原家を介して時雨の元に預けられる。
白、蓮を出産。
鈴、悠馬を弟子に取る。
時雨、悠馬に管理人の仕事を任せる。
~いろとりどりのセカイの筋書き部分終了~
~加奈シナリオ~
白、御霊送りに選ばれて消滅。
時雨、蓮也の居場所を突き止めて、本人に会ってほしいと伝える。
時雨、白の消滅を知る。
時雨、白の本を探知する。一人で回収に向かおうとするも大所帯になる。
加奈、白の本を開く。
一行、異世界で白と再会し最後のお別れをする。

以上、SSのあらすじはこんな感じです。実際にどうなったかは、本を読んでのお楽しみです!


……と、ここまで偉そうに書いておいてアレですが、公式設定に則するのに失敗したものがいくらかあります。確認できているものだけで2点。調査漏れもきっとあるでしょう。難しいです。
ちなみにその2点のうちひとつ目は、商人の町とこちら側のセカイとの時間の流れの差です。作中の悠馬の発言からするとこちら側のセカイよりも商人の町は倍速ぐらいのスピードで流れているようですが、これを考慮に入れるのは難しすぎなので等速で流れる前提にしました。
もうひとつは鈴との出会いのシチュエーションです。特にそういう描写や設定は無かったよなーと思いながら執筆して、70%ぐらい書き上げたところで細かい設定を見るために本編をプレイしていたところで、こんなシーンを見つけてしまいました。

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あれれ~?なにこの設定?

原稿執筆終盤にして重大な設定発覚です。
勝手に決めた設定と全然違うし時雨の行動も過去にさかのぼって修正しなければこれの辻褄が合いません。
ということでこの設定は見なかったことにしました。許せ。

おわり

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