世界で最初に「イカ臭い」って表現した奴をシバく

コンビニのホットスナックが好きだ。肉まん、唐揚げ、ドーナッツ。おでん、焼鳥、フランクフルト。だいたいまあまあ美味い。めちゃくちゃ美味かった試しはないけど、不味かった試しもない。腹が減ってたらちょうどいい。たまに食べたくなるものが並んでいる。

こないだとあるコンビニに行ったら、ホットスナックの棚に、イカフライが並んでいた。

まずは「珍しいな」と思った。コンビニの店頭でイカフライなんて見たことがない。あれ、お前この並びにいたっけ?いつぞや、CD屋の「パンク」の棚でスピッツを見たときみたいな感覚。

でも次の瞬間、妙に納得した。よく考えたら、イカフライってコンビニのホットスナックに居そうじゃないか。もともとレギュラーだったみたいな馴染み方をしている。そういや、スピッツも元々はパンク出身だったっけか。なんだ、そういうことか。もともとそこに並んで良いものだったのか。なるほど、しっくり来るわな。

そういうわけで僕はイカフライを買った。気になってしまったものは買うしかない。もぐ、と一口食べる。最初にカリカリした衣の歯応えが、次に油の重みが来る。まあ、コンビニの味だ。すごく美味いわけじゃないけれど、全然食える。ここまで衣。

そしてイカをかじる。歯応えがいい。しかし次の瞬間、ウッ、となった。だいぶイカ臭いのだ。マジでイカ臭いのだ。空前絶後のイカ臭さだった。イカってこんなイカ臭かったっけか。

そこで久しぶりに自覚した。僕は港町出身だった。外であんまり魚介類を食べない方が良いのだった。なんてったって舌が幼少期から肥えてしまっている。外で食べる魚介類は高確率で外れだということを忘れていた。

そして中でもイカは地雷だった。イカこそが地雷だった。何を隠そう、特に僕の地元である青森県八戸市は、日本一新鮮なイカを食べられる街だったのだ。僕は幼い頃から国内トップクラスに美味しいイカを食べてきた。それゆえにイカのイカ臭さに出会ったことがなかったのだ。

僕はしみじみと郷里の風を思い起こしつつ、ぼんやり「イカ臭い」という表現について考えていた。中学生くらいの頃から、どこかしこで聞いたことはある表現だったが、身をもって実感するのは初めてだった。

「イカ臭い」という表現、主に男性器について言うんだったな。イカと男性器の匂いが近いことから、男性器についてそう言うらしい。それくらいは知っていた。

なるほど確かに、このイカフライからは、ほとんどちんこのような匂いがする。イカ臭いというより、ほとんどちんこ臭い。

そうか、これが「イカ臭い」なのか。これまでの人生においては、あんまりピンとこない表現だった。長年の謎について、納得させられたような気分になった。

この時点で、「あれ?」と思った。僕の認知の順序、逆転してないか?

そもそも、「イカ臭い」という言い回しは、「イカの臭さ」をみなが知っていることを前提として、ちんこの臭いを表現するためのものだろう。「確かにちんこってイカだ!絶妙な例え〜!」みたいな納得感があったために広まったのだろう。

しかし僕の場合、そもそも「イカの臭さ」を知らなかった。このとき「イカ臭い」という表現は、「ちんこ臭い」以外に何の意味も持たない表現となる。「イカ臭い」とは、少なくとも僕にとっては、ちんこを比喩するためのワードでしかない。

そして僕は、イカフライを食べながら「イカ臭いなぁ」=「ちんこ臭いなぁ」と感じた。すなわち、本来ならば「ちんこはイカだ」と認識すべき物事を、「イカはちんこだ」という順番で認識してしまっているのだ。

つまり、僕はイカを食べながらずっと「ちんこ臭いなぁ」と感じていたのだ。

自覚した瞬間、うわあああ、と変な声が出た。それはもうフェラじゃないか。フェラだろ。俺、いまイカをフェラしてるぞ。イカフェライじゃないか。俺は何を言ってるんだろう。

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