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【翻訳】Slavic Saturday:コシュチェイ

この記事は「グウェントで学ぶスラヴ文化」をテーマに2021年8月29日に Notion 上で公開されたものの移転記事です。原則として当時のまま転載していますが、ほとんどの画像は転載していません。

著者:DrDenuz 翻訳:nippongwent
この記事は「Team Bandit Gang」の記事「Slavic Saturday: Koshchey (EP2)」の日本語訳です。元記事のURLは既にリンク切れとなっています。
URL:https://teambanditgang.com/slavic-saturday-koshchey-ep2/

導入

昔のスラヴ人たちにとって、森とその中にある沼はどこにでもあるものでした。農場や村の周り、山でさえ、森に囲まれていました。それらの森には精霊が棲んでいました。スラヴの神話に登場する精霊は、ほとんどが友好的な存在ではありません。夜の影に潜む悪魔の話は、スラヴの部族や国中に広まっていましたが、その中でも最も恐ろしい話の一つがコシュチェイです。

スラヴ伝承が語るコシュチェイ

しばしば「不滅のもの」「不死のもの」とも呼ばれる「コシュチェイ」または「コスチェイ」はスラヴ神話においては超自然的な悪役です。醜く骨張った老いた男で、主に若い女性にとって危険な存在です。
通常、彼は悪意のある敵対する父親のような役割で、男性ヒーローの恋に対し、競い合ったり、陥れたりします。
彼の名前の由来は古代スラヴ語で「とても痩せた」または「しなびた」という意味を持つ単語「Kosh」です。現代の言葉では、彼の名はスラヴァキア語で「骨」が最も近い意味になる「kost」に似ています。

コシュチェイの王国

コシュチェイは強力な魔法使いであり、変身呪文を極めています。彼は空飛ぶ蛇や黒い鴉になれます。骸骨の馬に跨り、自身の陰鬱な王国を巡るのを好みます。彼の王国には木がなく、鳥は歌わず、土地では何も育たず、分厚い雲によって太陽が輝くことはありません。それが常に薄暗い理由であり、厳しい霜を引き起こしています。

コシュチェイの伝説

伝説によれば、コシュチェイを殺すことは非常に難しいとされています。というのも、彼は自分の魂を針の中に隠しており、その針は卵の中に隠されており、卵はアヒルの中に、アヒルはウサギの中に、ウサギは鉄箱の中に、そして鉄箱は大洋の真ん中にある「バジャン」と呼ばれる遠い島に鎖で繋がれ埋められているからです。針が安全に隠されている限り、コシュチェイを殺すことはできません。しかし、鉄箱が開けば、ウサギがすぐに逃げ出します。ウサギを殺せば、アヒルが飛び出すので、アヒルを殺して卵を奪い取ることができれば、コシュチェイを支配できます。これが起こると、コシュチェイは魔法の力を失います。針が壊されると、コシュチェイは死にます。

訳注:日本神話や伝承では、このように不死の怪物がなぜ不死であるのかを説明するものを耳にしたことがありません。逆に最近のエンターテインメント作品の「ロマンシング・サガ2」では、本体が別にある「七英雄」の設定があります。この手の「死を隠す」というやり方は、ゲームや冒険譚に向いた設定なのでファンタジー作品ではよく使われているのだと思います。他にも小説「ハリー・ポッター」のヴォルデモートの魂を隠した「分霊箱」や、ゲーム「Destiny」の死を隠すハイヴ魔術「玉座世界」などがあり、こうした設定は西洋では過去から連綿と受け継がれていたのかもしれません。

他の物語でのコシュチェイ

他の物語では、コシュチェイは眠りの魔法が使えて、それを破るために魔法が掛けられたグースリ(*1)を演奏します。物語によって、彼は異なる描かれ方をされています。3本または7本の足を持つ馬に跨ったり、牙や鋭い歯を持っていたり、魔法のアイテム(マントや指輪のようなもの)を所有していて物語のヒーローが取りに行かされたり、別の魔法の力を持っていたりもします。ある物語では、瞼がとても重いので従者に持ち上げさせる必要があるとされています。

*1:グースリは東スラヴの最も古い複弦の撥弦楽器(弾くタイプの弦楽器)

結語

これは「Slavic Saturday」の2番目の記事です。ファンのみなさん、このほかにも多くの生き物たちについて語る予定です。最初の記事を読み忘れた場合はこちらで読めます。来週の土曜日に皆さんにお会いできることを楽しみにしています。
DrDenuz は Bandit Gang のゲストライターです。 彼についての情報はこちら:TwitterTwitchYouTube

前回の記事のネタ動画もご確認ください

:前回の「マムーナ」記事を読んでおく必要があります。ジョーク動画ですがスラヴの沼や森の雰囲気を写真で確認できます。また、親が不出来な子を虐待する言い訳としてマムーナの話が使われていたことも仄めかされています。

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※「日本グウェン党」の記事は「CDPRファンコンテンツガイドライン」に従って作成された非公式のファン作品であり、CD PROJEKT REDによって承認されたものではありません

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