【MLB】2022年 ニューヨーク・ヤンキースのチェックポイント
ヤンキースは、今季の開幕を迎える前にどうもMLBでの存在感が薄くなった印象がある。
昨季はローラーコースターと例えられたように浮き沈みの激しいレギュラーシーズンであったが、後半戦の怒涛の追い上げでア・リーグ東地区を2位でポストシーズンに進出。ただし、ワイルドカードで同じく東地区2位のレッドソックスに一発攻勢であっさりと敗れてしまった。
この試合については、偉大なるOB・ゴジラ松井でさえ「つまらない試合だった」と、後に上原とのインタビューで語っていたのも印象に残っている。
また、シーズン終了後の補強もトレードで内野手2人(ドナルドソン、カイナーファレファ)の獲得とリゾーとの再契約にとどまり、他の球団の景気の良い大補強と比べるとかなり地味な動きであった。
補強面以外でも、近年は他球団で大谷、タティスJr.、ゲレーロJr.、フランコといったカリスマ性のある若手のスター選手が急激に台頭し、彼らがMLBファンの関心を集めている。
そんな事もあり、かつて元祖ビックボス・スタインブレーナーオーナーのもと、毎年のようにFA市場でトップランクの選手と契約し、「悪の帝国」とも呼ばれた頃と比べると丸くなっているのである。
ただ、ヤンキースはヤンキースである。
今季も例によって、世界一奪還は国民の皆様にお約束する公約である。
今回は、そんなヤンキースが2022年シーズンを戦う上でのチェックポイントを整理した。
ゲリット・コールを今年も信じていいのか
ゲリット・コールは2019年オフにヤンキースに加入。
CC・サバシアが引退し、戦力的にも精神的にも先発ローテーションの先頭を任せられるビッグブラザーを求めていたヤンキースにとって待ちに待った補強であり、年平均3,600万ドルの9年契約という天文学的な契約であった。
ヤンキース入団後も2019年のモンスターイヤーに劣らず、期待に沿った活躍であった。
昨季は無四球での連続奪三振のMLB記録を樹立するなど実力は相変わらずMLB屈指のままであり、特に7月10日のヒューストンでのアストロズ戦は、まるで2006年のハイスクールチャンピオンシップでユーキ・サイテョが魅せたような全米が涙する投球であった。
ただ、そんなコールであったが、満を持して望んだワイルドカードでレッドソックスのボガーツ、シュワバーに一発を喰らい、3回KO。
ヤンキースファンとしては、ニューヨークのビックブラザーが早々にベンチを引き下がった光景は、シーズン終了以上に精神的なダメージが大きかったのである。
昨年に続き、ヤンキースの先発ローテーションにはコールの次に続くような2番手がいないのが現状である。
ゲリット・コール、今年もどうか1年間心中させてください。
グリーン、ロアイシアガの昨年の反動
さて、そんなコール以外に決め手のいなかった昨季の先発ローテーションのサポートしていたのがリリーフ陣であり、特に活躍していたのがグリーン、ロアイシアガの両右腕である。
ともに100mphの4シームで勝負できるパワーピッチャーであり、加えてグリーンはカーブ、ロアイシアガはシンカーを武器に、それぞれ昨年は67試合、57試合とフル回転した。
また、常に登板するのは「お願い、なんとかして!」という絶体絶命のピンチであり、登板試合数以上に献身的な投球をしてくれた。
今季の先発ローテーションも、昨季と同じくコール以降の2番手を欠けている。
モンゴメリー、タイオンはローテーションは守れるが、基本的に5イニングで交代する。セベリーノはケガ明けで不透明である。コルテスは終盤いい投球をしていたが、まだ10数試合程度のサンプルだ。
チャップマンに繋ぐ2人への負担は今季も大きく、昨季の過労の影響がないことがヤンキース投手陣のアキレス腱である。
内野手ローテーション
今季のヤンキースの内野はビッグネームが揃っている。
ラメイヒュー、トーレス、リゾー、ドナルドソンのオールスター出場回数は合わせて11回。加えてカイナーファレファは2年前にゴールドグラブを獲得している名手である。
そう、4ポジションに5 人のレギュラークラスの内野手がいるのである。
おそらく疲労や球場・相手投手との相性を鑑みて、うまくローテーションしながら1年を戦うのであろう。
なお、ヤンキースには終身名誉指名打者のスタントンがいるため、このローテーションの選択肢としてDHは使いにくいところがある。
内野4ポジションをレギュラークラスの力を持つ5人で回すという試みは個人的には記憶になく、チームがどのような起用をするのか非常に楽しみな点である。
また、他の4選手に比べるとカイナーファレファは打撃が弱いが、ヤンキースでの開花にも着目している。
ヤンキースは過去にグレゴリウス、タッチマン、ヒックス、ボイトといった他球団で埋もれかけていた選手を獲得後、打撃力を向上させてきた例がある。
カイナーファレファも同様に強打者に変貌するのか期待したいところである。
ヒガシオカのスラッガー化
カイル・ヒガシオカはもともとヤンキースの3番手キャッチャーであったが、コールを中心に投手陣から徐々に信頼され、昨季は2番手に。むしろ、昨季終盤やプレイオフではレギュラーキャッチャーとして出場していた。
ヒガシオカはもともとフレーミングが良く、守備に特化した小林的キャッチャーであったが、昨季は一試合3HRを記録するなどバッティングが向上。シーズンでも二桁(10本)のホームランを放った。
そして、今季のオープン戦ではなんと23打数で7HR、OPSは1.891である。ついにボンズと化した。
正捕手サンチェスが抜け、ヤンキースにとってキャッチャーは元々補強ポイントであり、実際にツインズからロートベットをトレードで獲得。
ただし、今季のレギュラーキャッチャーはヒガシオカが務めることになりそうだ。
オープン戦ほどではないにせよ、レギュラーシーズンでどこまで長打力を発揮できるか注目している。
ボルペ、ペラーザ、ドミンゲス
この3人はヤンキースの若手有望株トップ3。MLB全体でもそれぞれ8、60、61番目の評価を受けている。
ボルペ、ペラーザはともに右打ちで打撃力のあるショートで、ボルペはリーダーシップを、ペラーザは守備を特に評価されている。
オフシーズンにヤンキースがコレアをはじめ大物ショートとの契約を進めなかったのもこの2人の存在が大きい。
また、ドミンゲスはドミニカ共和国出身で2019年に$5.1Mで契約し、打撃に特化している印象があるが、ミッキー・マントルやマイク・トラウトとも比較される19歳のセンターである。
ちなみに彼の野球カードが5,000万円以上で取引されたことも話題となった。
3人ともまだ20歳前後で、今季のヤンキースの戦力になるとは考えていない。
ただ、今回名前を挙げたのは、夏のトレードでの話題の中心になる可能性があるためである。
既に334回記載したように、今季のヤンキースの先発は薄い。特にプレイオフを勝ち進む上では、ゲームチェンジャーになりうる、要は昨季のシャーザーのような投手が必要になる。
コールをサポートできるエース格の獲得にはそれ相応の対価が必要であり、相手チームからはこの3選手の名前は間違いなく挙がってくると考えられる。
基本的にはアンタッチャブルな存在で、ヤンキースがこの3選手をトレードに出すとは考えられない。ただし、もしそうなるとしたら、ヤンキースが今季にかける本気度は相当である。
ジャッジとの契約延長
ニューヨークの貴公子ことデレク・ジーターが2014年に引退してから、ヤンキースファンの心の穴を埋めていたのがヤンキース生え抜き野手のジャッジである。
メジャーデビューした2016年には84打席で42 三振するなどアダム・ダンも驚愕する扇風機ぶりを発揮し、当初はそこまで大きな期待はなかったものの、翌2017年にバッティングが開花。マグワイアのルーキー本塁打記録を更新する52HRを記録し、新人王に輝いた。
なお、その年のMVPはホセ・アルトゥーべである。後にサイン盗みが発覚し、ジャッジは自身のインスタグラムでアルトゥーべとの写真を削除するなど、根に持っているようである。
さて、そんなジャッジは高橋由伸的に怪我が多く、多くのヤンキースファンの心を悩まる存在でもある。
出場すれば必ず結果は残すものの、2018年以降はシーズン開幕早々の故障報告は恒例行事で、規定打席に達することができていなかった。
一時は、怪我耐性に懸念があるため同時期にデビューしたトーレスとの契約延長がチームの中で優先度が高かった時期もある。
それが、昨年は1年間健康に過ごすことができ、148試合に出場し39HR、OPSは.916。ヤンキースのポストシーズン進出に大きく貢献したのとともに、今、ヤンキースファンは胸を張ってジャッジを本気で愛している。
そこで一気に熱を帯びてきたのがジャッジとの契約延長である。
今季終了後にFAとなるが、200cmを超える巨体から、一振りで試合を決することのできるジャッジはもはやニューヨークのシンボルであり、チームにとって欠かすことのできない存在である。
ただし、ジャッジとしては試合に集中するため、シーズンが開幕したら契約延長交渉はしないと表明。
比較的年齢が高く、やはり怪我の可能性があるため、リスクの大きいものとなりそうだが、ヤンキースとしては開幕までになんとか契約延長しジャッジが生涯ヤンキースでプレーすることを確実にしておきたいところである。
以上が2022年シーズンのヤンキースのチェックポイントである。
今季は開幕戦で早速レッドソックスと当たり、おそらく先発はコールであろう。
ブルージェイズは大型の戦力補強あり、レイズは相変わらず低予算ながら総合力の高さを維持しており、ア・リーグ東地区で勝ち進むのはなかなかタフである。
そんな中で、今回挙げたような観点でヤンキースを観戦していくのは面白いのではないかと思っている。
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