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お蔵入り小説 供養(2)

小説を1から書きたいが、なかなか形にする事が出来ない。

今ではこんな有様だが、15年~20年くらい前はたくさんの小説を投稿サイトに上げていた。

そして、ただのウッカリと怠慢でその時の小説データは全て消滅 (投稿サイトも閉鎖) 

ここでは思い出したら、備忘録のようにあらすじを載せてしまおうという誰得でもなく自分の為の記事である。

今回は20年前くらいに書いたタイムトラベル話のあらすじ(実際はあらすじと小説の中間くらい)を書こうと思う。

同じタイムトラベル話の「不適切にもほどがある」の記事を書いているタイミングなのでちょうどいい。

因みにタイトルは長くて思い出せないので省略(オイ)


当麻は中学1年生。ある時、交通事故に遭い近所の大病院に入院した。

そこで難病で療養中のミハルという名の19才の少女に出会う。ミハルの病気は治験の最中でミハルの余命はあと1年がいいところだという。当麻はミハルと話していくうちにその儚げな様子に同情しているうちに強く惹かれていく。

しかし、ミハルはたまに病院の片隅で熱く切なげな視線で、遠くにいる誰かを見つめている事があった。その視線の先には決まって白衣の医者がいた。年の頃は40代の男性で、当麻はあんな中年男に負けるかと嫉妬心を燃やした。

当麻はその医者に対する嫉妬心で、何とかしてミハルを自分の手で救いたいと思った。彼は神童と呼ばれるほどの天才だが、まだ中学1年生。あとたった1年で医療の研究に携わる事は出来ない。

そこで当麻はある事を思いつく。彼は生まれて直ぐに両親を事故で亡くして、唯一の身内であった伯父である行彦に引き取られて育てられている。行彦は大学教授で物理科学者であり、タイムマシンを密かに開発していた。

行彦がタイムマシンの試乗をしようとしていたところ、当麻が自分を乗せて欲しいと行彦に頼み込む。行彦は思うところがありそうな表情で、あっさりとその願いを快諾する。ただし、片道で決して戻って来れないと当麻に告げる。当麻はミハルを助ける為に行くので、元より戻るつもりは無いと覚悟を決める。

当麻が目指したのは30年前。30年前に中学1年生なら、今の時代になる頃には医療研究に充分携われると思った。

行彦は過去の自分に宛てた手紙を当麻に持たせた。

当麻はタイムトラベルに成功し、30年前の家に降り立つ。行彦は25才で一人暮らしをしていた。当麻は未来の行彦からの手紙を過去の行彦に渡す。そこには、正にその時行彦がタイムマシンの研究に行き詰まっている事を書き、タイムマシン作成に必要な物がまだ手に入らない事などを精細に記してあった。行彦自身しか知りえない事や過去の写真も同封してあった。

当麻が乗ってきたタイムマシンは壊れてしまい、修理もその当時の技術では不可能だった。しかし、未来の行彦からの手紙で再び一から作る事は可能だが、外装の金属がまだ開発されていないので、タイムマシン完成は30年後になるという。

行彦は当麻が未来から行彦自身が作ったタイムマシンに乗って来た事を信じて、家に住まわせる事にした。

(書いた当時、戸籍等の問題をどう設定したのかは記憶にないが、「不適切にもほどがある」も昭和に戸籍がないはずのキヨシも普通に学校に転校生として入学している) 

当麻は未来と同じ中学校に改めて通い、そこでミハルの母親である美冬と同級生として出会う。ミハルの母親がかつて同じ中学校に通っていた事もミハルから聞いて知っていた。ミハルの顔にも良く似ていたので、すぐにそれがミハルの母親と分かった。

美冬はどこか悟ったような大人びた当麻に惹かれていき、猛烈にアタックするようになる。しかし、当麻はミハルの父親が自分ではない事を知っていて、もし美冬と結ばれてしまればミハルが生まれてこないのも知っているので、やんわりとだが恋愛として付き合う事は固く拒絶する。

中学を卒業して、高校と進んでも美冬は当麻の事を諦め切れずに友達として健気に尽くしてくる。そんなずっと健気でいる美冬を当麻も自然と好きになっていくが、それでも未来で待っているミハルを思うと受け入れる事は出来なかった。

当麻と美冬の共通の友人達は、仲は良いのに美冬を拒絶し続ける当麻を非難するが、当麻は「他にどうしても好きな人がいるんだ。(まだ)この世にはいないけど」と嘘ではないが、わざと真意を勘違いさせるように答えた。案の定、友人達は当麻には過去に亡くなった恋人がいると勘違いして、それからは2人をそっとしておく事にした。

当麻は美冬の傍にいるのがいたたまれなくなり、大学はドイツに医学留学をする事にした。留学に出発する日、見送りに来た美冬はようやく貴方を諦める事にした、拒絶されていたのに長年嫌な思いをさせてごめんなさいと謝った。そして、別れ際に美冬は告ってきた他の男性と付き合う事にしたから安心してと言った。

当麻は衝撃を受けたが、付き合うと言った男が、ミハルの父親だったので複雑な気持ちを美冬には隠して、その男と幸せになればいいとだけ伝えて留学するドイツへと旅立った。

それから、ドイツでミハルの為に必死に医学を学んだが、頭の中は美冬の事でいっぱいだった。自分がタイムトラベルまでして助けたかったミハルは、美冬とその旦那の子供だ。もちろん、ミハルを救いたい気持ちに嘘はなかったが、やり切れない気持ちは日々募っていく。気晴らしに当麻は絵を描く事を始めた。しかし、描くのは美冬の絵ばかりだった。美冬は18才で、娘のミハルと瓜二つになっていた。

4年ドイツで過ごしていて、日本に帰国するという時、美冬から婚約したという手紙が届き、大学の卒業旅行でドイツに行くから遊びに行くと書いてあった(LINEのない時代にこれを書いた)

ドイツのホームステイ先で4年振りに美冬と再会した。友達と来ていたが、1日だけ抜けて当麻に会いに来たのだ。美冬は当麻の部屋で再会を喜び乾杯をした。既に美冬は婚約者であるミハルの父親にゾッコンの様子で、当麻の事は過去の事になっているのが話の節々で伝わってきた。

当麻はそんな幸せな様子な美冬を見て、酒の手が止まらなかった。泥酔した当麻は婚約者がありながら、無防備に男の部屋に来て酒を飲む美冬を責めた。

そんなつもりはなかった。当麻が自分の事を鬱陶しがっていたが、やっと自分が違う人と幸せになって、当麻も安心して今度は純粋な友達として改めて仲良くやれると思ったと当麻に謝った。手紙に返事がなかったら再び仲良くする事も諦めたが、返事が来たので嬉しくてつい来てしまったと言った。

当麻は美冬に対する隠して募っていた愛情が爆発して、美冬を固く抱きすくめた。更にその先にまで及ぼうとした当麻を美冬は突き飛ばして静止した。「ごめんなさい」とだけ言って、美冬は当麻の部屋から飛び出した。

当麻は近くにあった水を飲み干して、美冬を追いかけた。そして、散々拒絶していたのに酔った勢いで勝手な事をして申し訳なかったと詫びた。美冬はそれをあっさりと笑顔で許した。それを見て、当麻は改めてもう美冬の心に自分はいないんだと悟った。

この事で当麻は美冬への長年鬱積した想いにケリが付いた。改めて彼女の娘であるミハルを救う決意をした。今となっては、好きだった人のこれから生まれてくる大事な娘を救う為に。

日本に帰国してからの当麻はミハルの難病を救う為の研究に邁進した。2年後、美冬からミハルという名の娘が生まれたと知らせが届いた。彼女の病気は先天性なので今はどうする事も出来ない。このままではミハルの余命に間に合わないかもしれないと焦りを感じた。

研究に明け暮れる日が何年も続いた。少しづつだがそれらが実を結んで、やっと治験まで漕ぎ着けた。その頃、成長したミハルと例の大病院で治験の担当医として再会した。

母親である美冬とも再会した。まさか娘が難病で当麻に世話になる事になるとは思わなかったと驚いていたが、当麻に何度も頭を下げて、ミハルを助けてくれと懇願した。

10才のミハルは初めて会った時よりも弱々しくて泣いてばかりいた。当麻は優しくミハルを励まして支えた。しかし、改めて10才のミハルに対して、自分は34才。分かっていた事だが、いつの間にか年の差が逆転している現状に当麻は苦笑いを浮かべるしかなかった。

13才の当麻が19才のミハルと出会った時、タイムトラベルして大人になった当麻は引き続きミハルの担当医として病院にいた。9年にも及ぶ交流でミハルはすっかり当麻「先生」に心を開き、いつからか熱い視線を向けるまでになった。

13才の当麻が嫉妬心を抱いた白衣の医者は自分だった。長年の苦労で43才で既に白髪だらけの髪になって、13才の時の面影すらなかった。だからミハルから好意を向けられても、嬉しさよりも惨めさが勝ってしまった。

ミハルの余命と言われていた1年が過ぎて、何とか治療の目処が立った。ミハルも自分の為に尽力してくれた当麻の為に生きようとして、余命よりも長く命を自ら繋いでくれた。

ミハルの完治を見届けてから当麻はドイツに移住する事にした。何年も前からミハルの病気を研究した権威としてドイツの病院から呼ばれていたのを断っていたのだ。

当麻がドイツに向かう飛行機に乗る前、美冬が見送りに来た。驚く当麻に美冬は行彦から全ての話を聞いたと告げる。それは、タイムトラベル前の13 才の当麻がミハルと一緒にいる所を見て不審に思い、行彦に話を聞きに行ったというのだ。

子供の頃の当麻が自分に決して振り向かなかった理由も分かったという美冬に対して、当麻はそれなら自分を諦めた事を後悔してるか?と聞くと、美冬は旦那の方が自分にとっていい男だからそれは全然ないと。それよりも当麻を慕っているミハルの事をよろしく頼むと言い残して、美冬は笑顔で当麻に手を振った。

ドイツに着いて、当麻は美冬の言葉を考えていた。ミハルに好意を向けられるのは嬉しいが、ミハルの母親に一時は気持ちが揺れた挙句、気が付いたらこんな中年オヤジになってしまった。ドイツに移住したのは、美冬の時と同じく、今度は自分に対していたたまれなくなり、また逃げてしまった。

それから1年が過ぎて、当麻が家の近くの広場でまだ続けている絵を描いていた。美冬、いやミハル、19才の時の2人が似すぎていてどちらの絵を描いているか分からなくなった。

「それは私? それともお母さん?」 その声に驚いて振り返ると、すっかり元気になったミハルが立っていた。改めて自分が当麻先生が好きでドイツまで会いに来た事を伝えた。当麻は自分はオジサンだしもっと若くてミハルに似合う良い男がいるとどもっていると、急にミハルは「トーマ君!」とタイムトラベル前の呼び名で呼んで、当麻は飛び上がって驚いた。美冬から全てを聞いたというミハルは「トーマ君……当麻先生がお嫁さんにしてくれるまで日本には帰りませんからね!」と母親譲りの押しの強さで捲し立てた。

(了)


実際の小説の長さは、恐らくこの10倍はあると思う。中、高校生の時の当麻と美冬のエピソードも全カットしているし、当麻の両親の事故回避失敗とかタイムマシン開発者である伯父の行彦や美冬の旦那との絡み(実は婚約前に当麻と旦那は会っている)もカットしているし、ちゃんと覚えている場面だけ破綻しない程度にツギハギだけれど繋げてみた。

結果的にこのタイムトラベルは過去も未来は変わっていない。タイムトラベルありきの未来になっていて、美冬も本来の歴史通りの旦那と結婚しているし、ミハルの治験の進行状態もそのまま。当麻少年が見た中年男はタイムトラベルした自分だったっていうところとか、美冬がタイムトラベル前の当麻少年を見て、自分が関わった当麻だと察するところとか、パラドックスなのかどうなのか。

タイムトラベル物は矛盾が付き物なので、サラッと流して読んで頂けると嬉しいです (私もあまり分かっていない)

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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