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なぜ現代人は生きづらいのか?現代型の精神疾患と3つの対処法

現代の人々は、これまでの日本社会と比べると生きづらさを感じる人々が増えた印象があります。

ではどうしてこれほどまでに生きづらさを感じる人々が多いのでしょうか?

今回は、文献を用いて現代人が生きづらい理由や、現代の精神疾患、3つのメンタルヘルス対策についてご紹介いたします。

■ 現代人が生きづらい理由

平成29年患者調査を行った厚生労働省によると、平成14年には258.4万人だった外来患者数が、平成29年には389.1万人と100万人以上増えていると公表しました。

入院患者数は30〜34万人と横ばいだが、外来患者数は右肩上がりに急増しており、多くの方がさまざまな精神的な疾患を抱えていることがわかります。

このように生きづらさを抱えている人が現代には多い理由として、三重大学大学院医学系研究科精神病態学分野助教授の小森照久氏は以下のように述べています。

日本社会は古くから「和」の考えで成り立っていて、個人は属するものに固着して仕事などに励んできた。戦後は固着の対象が会社であり、企業戦士や猛烈サラリーマンがたくさんいた。

高度経済成長によって皆が豊かになると、それほど頑張らなくても生きていけるので、会社に固着しなくなり、「個」の時代になった。
しかし、何かに固着しないで生きることは、ある意味では難しい。自分の立ち位置が不安定になりやすく、状況にその都度対応する必要がある。多様性が尊重されるのであれば、ありのままに生きれば良いのであるが、拠り所にするものがなく個で生きることに困惑する人も多い。

以前の日本では固着できる対象が明確に存在していたので、承認欲求を満たすことができており、アイデンティティーを確立しやすい環境であったと言えます。

しかし現代では多様性が認められるようになり、以前のように頑張らなくても生きていくことができるようになりましたが、これは困惑する人も多く、ありのままに生きることが難しい人たちが一定数存在しています。

そのような人々が、「自分にはどうしてできないんだろう」といういらだちなどが重なり、生きづらさになっていくのではないでしょうか。

■ 具体的な現代の精神疾患

これまでの時代と現代では、人の心のよりどころの対象が異なるので、人によってはありのままに生きることが難しくて戸惑いを感じる方がいます。

生きづらさを感じている方のなかでも精神疾患まで発展するケースは珍しくありませんが、患う精神疾患についても時代と共に変化していると小森照久氏は言います。

生涯に約15人に1人が患うと言われているうつ病にスポットライトを当てると、これまでのうつ病と症状が大きく異なるようになり、「新型うつ病」がみられるようになってきました。

新型うつ病の特徴として、
 ①会社へ行くと調子が悪く休日は元気
 ②いら立ちの対象は他者
 ③気分の浮き沈みが激しい
 ④夕方に悪化する
 ⑤過食・過眠傾向、といった特徴があるとされる。

これに対し、従来型の内因性うつ病の特徴は、
 ①悪化する場所は会社も家も関係ない
 ②自分を責める
 ③気分は継続して悪い
 ④夕方の方が状態が良い
 ⑤食欲不振・不眠、ということになる。

「うつ病とはこのような症状だ」というひな形がある程度存在していますが、時代の変化とともに人々が抱える悩みも変化していくので、新型うつ病のように異なる症状が現れるケースがあります。

悩みを抱える方に対する支援がこれまでより重要になってくるということですが、具体的にはどのような対策がなされているのでしょうか?

■ 3つのメンタルヘルス対策

小森照久氏は、メンタルヘルス対策は三次予防まであるとしています。

一次予防:メンタルヘルス不調の未然防止と健康増進
二次予防:メンタルヘルス不調の早期発見と対処
三次予防:メンタルヘルス不調の治療・職場復活・再発予防

インターネット上で少し調べれば、さまざまなストレス解消法が紹介されるようになり、ストレス対策のなかで最も手軽に対策を講じることができます。

しかし二次予防「メンタルの不調の早期発見と対処」と、三次予防「メンタルヘルス不調の治療・職場復活」の情報が少なく、支援を利用するまでの手続きが複雑なので、症状が悪化するまで医療機関を受診できないひとたちがまだまだいます。

■ 必要なときにすぐ利用できる支援を

時代が変化したことで、多様性が認められるようになり私たちはそこまで頑張らなくても生きていけるようになりました。

しかしそれでは生きづらいと感じる方が一定数存在しており、生きづらさを感じている人のなかでこれまでの精神疾患とは異なる症状があらわれる場合があります。

小森照久氏は以下のように話しており、現代の精神疾患の変化を感じていると言います。

うつ病に限らず、総合失調症なども軽症化している。
現代は多様性の世界なので、精神疾患の異質性が弱まっているのかもしれない。

現状では一次予防は自分でたどり着くことが容易ですが、二次予防や三次予防にたどり着くのは非常に複雑で困難なことから、だれしもがたどり着けるとは限りません。

この状態を小森照久氏は以下のように述べています。

自分にも他社にもストレスフルなのである。
自分軸を持てない人には、大変生きづらい世の中なのかもしれない。

少しでも多くの人たちが生きづらさを感じにくくなるように、メンタルヘルス対策として簡単にさまざまな情報を手に入れることができて、支援につながる仕組みが構築されるようになれば、より多くの人たちの悩みを解消することができるのではないでしょうか。

参考引用
小森照久(2021/06/25)『メンタルヘルスの最新情報と植物療法に期待されること』aromatopia No.166
うつ病を知っていますか?(国民向けパンフレット 案)|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/s0126-5d.html#:~:text=%E6%AC%A7%E7%B1%B3%E3%82%88%E3%82%8A%E3%81%AF%E4%BD%8E%E3%81%84%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AE,%E3%82%92%E7%B5%8C%E9%A8%93%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%9

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