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おおたか静流さんを偲ぶ

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2022年9月6日の朝。
何気ないいつもの朝が一変した。
寝起きにスマホを手に取り、Twitterを開くと「おおたか静流」の文字がトレンドに上がっていた。
わあ、大好きな静流さんがトレンドに上がってる!何か話題になっているのかな!?とワクワクしながら開くと、そこにあったのは「逝去」の文字だった。
あまりのショックにしばらく呆然とした・・・。
まさかこんなに早く、こんなに急に逝ってしまうなんて想像すらしていなかった。
そこから数日間、無力感に暮れていたのですが
いつまでもこうしては居られない、自分の想いをnoteに書こうと思いました。
私がファンになったキッカケから、おおたかさんとのエピソードを書いてみようと思います。

好きになったキッカケ

私が最初におおたか静流さんの名前を知ったキッカケは、AXIAのCMだった。
Sizzle Ohtaka (おおたか静流) - Hana (花) [Remaster] - YouTube
喜納昌吉の「花」のカバー。
あのCMは非常にインパクトがあって、覚えている人も多いと思うのですが
私の心にも鮮やかに焼き付きました。
まるで楽器を奏でるかのような声に、一緒にTVを観ていた父に「この歌いいよね」と言った。
父も珍しく「歌が上手い人だなぁ」と褒めた。

父と私は、あまり折り合いの良い親子ではありませんでした。
ちょいちょい喧嘩をしては、暴力をふるわれた。
そんな父と「歌の上手い人だね」と盛り上がった歌手は、たった2人だけだ。

1人目はキャスリーン・バトル。
ウイスキーのCMで歌っていた「オンブラ・マイ・フ」の美声に釘付けになり
私はお小遣いからキャスリーン・バトルのカセットテープを買い、父と共有したのでした。
スーパーニッカCM キャスリーン・バトル - YouTube

そんな我が家で話題になった2人目の静流さん。
私は静流さんの「花」のCDも探してきて、家で聴くようになりました。
いがみ合っていた父と少しだけ調和が取れた時間でした。

そして映画「シコふんじゃった」の挿入歌。
これも本当に痺れた。
私はそもそも本木雅弘さんのファンで
「シコふんじゃった」の映画自体も邦画ではナンバーワンと言っても過言では無い位気に入っているのですが、
コミカルな雰囲気の漂う「りんごの木の下で」はこの映画に非常に似合っているし
劇中で土手で無力感に打ちひしがれている本木さんのバックで流れるフォーククルセイダーズのカバー「悲しくてやりきれない」は
とても印象的で、心に残るものだった。

同時期、CM等でよく「おおたか静流」の名前を目にするようになった。
特徴的な声なのですぐわかった。
私の中ではちょっとしたゲームというか、
「あ、この声は!」と思ってテレビ画面に目をやり
「おおたか静流」の文字があると、「当たった!」と喜んでいたものです。

こうして引き込まれるようにファンになっていった私は、もっとCDを買いたいと思ってショップへ出掛けた。
今のようにインターネットが普及しておらず、情報を簡単に手に入れられない時代の話だ。
売ってるかなぁ?くらいの感覚で見に行ったのは、忘れもしない。
今は無い木更津のEPOというファッションビルだ。
(簡単に説明するとPARCOのような感じのビルで、地下にゲーセン、上の階にはカラオケ店が入っているという、当時は若者が集まるお洒落なスポットだった。)
最初に手に入れたのはREPEAT PERFORMANCE。
どこか異国の雰囲気も漂う不思議な感覚になるCDで、父もドライブ中に喜んで聴いていたっけ。
懐かしい思い出のひとつです。

どんどんファンに!

やがて私は社会人となったのですが、当時の日本はバブル崩壊直後。
明るい未来があると信じていたのに低賃金でコキ使われ、転職を余儀なくされ・・・とても暗い毎日でした。

そんな日々の苦しみから逃れたい時いつも聴いていたのは
おおたか静流さんと、上々颱風のCDでした。
どちらのアーティストも遠いどこかに引っ張って連れてってくれるような楽しさと驚きと喜びがあって、辛い日常を忘れさせてくれる存在でした。

古歌~ヴォイス・オブ・タイム~(大英博物館OP曲)は悠久の時を感じる壮大さで、想像の中で旅をすることが出来たし・・・
https://www.youtube.com/watch?v=D9GOdODF8Uw

Across the Viewの美しいメロディは、どこまでも空を飛んでいくような、不思議な気持ちになったものです。
https://www.youtube.com/watch?v=8JQk1EQIxlI

そうかと思えば、おもいとげねばのように和を感じる作品も。心中?駆け落ち?を思わせる危うい・妖しい曲なのですが、私はこの曲がとても気に入っています。
https://www.youtube.com/watch?v=RrP3zu42mVY


名盤!NOSTALGIA

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このCDを手に取った時、雷に撃たれたような衝撃を受けましたね。
おおたか静流さんとは、なんて綺麗な人なんだろうと。
鮮やかな着物や、水面を泳ぐ金魚も私の中でツボでした。
このセンスは現代でも十分通用すると思うのですが、なんと・・・28年も前のものです。すごいですよね。

ジャケ写だけでなく、実際とんでもなく濃い、凄いCDでした。
近くて遠い未来を見せてくれるような、人の一生、そのもののような・・・私は特に「まつり」が好きです。
日本の夏祭り、夏の終わりの切なさみたいなのを感じる一曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=c026-7Wd61k

リアルが多忙に・・・

ど田舎で、不況に苦しみながらも
音楽に救われてきた私に、大きな転機が訪れました。
父が旅先で急死したのです。
それから引っ越して、独り暮らしを始めたものの
不景気を理由に勤め先でリストラ宣告。
バイト生活を始めるがそこも契約条件に偽りがあるなど、貧困生活を経験。
毎日必死で、音楽と距離が出来てしまった期間がありました。

生・おおたか静流さんに会える

インターネットでMixiが流行り始めた頃、上々颱風のファン仲間として知り合ったお友達におおたかさんファンの方が居て
その方にライブに連れて行っていただけることに。
これがご本人にお会いする最初のきっかけとなりました。

場所は金沢文庫、海の公園。
表現しきれない程憧れていた人が目の前に・・・。
ドキドキし過ぎて直視できなかった。
前から綺麗な人だなぁと思っていたけど、実際に見たら想像より華奢で美しい人で
用意していったプレゼント(お手製のかんざし)を渡すのが精いっぱいでした。
そんな私をギュッと抱きしめてくれた静流さん。
その後のステージで、私が贈ったかんざしを髪に挿して歌ってくれたことは一生大事にしたい思い出です

それが、この薔薇のかんざしです。
樹脂粘土を使って作りました。
古い携帯で撮ったものなのでわかりづらいかもしれませんが、ラインストーンを埋め込んであります。

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私はこの日を境に、ちょこちょこライブに行くようになりました。

神戸へ追っかけに

2日間行われるAsian wingsのライブを鑑賞するために、関西入りを決めました。

Asian wingsというのは、
馬頭琴、シタール、テルミン、パンディーロといったアジアの楽器の編成のバンド。ヴォーカルを静流さんがつとめていました。
エキゾチックなサウンドが魅力です。

ところが・・・
その当時、工場で遅番で働いていた私。
当日の朝に大寝坊をやらかしてしまい、新幹線が出発する時間に目が覚めたっていうね・・・。
猛スピードで支度をして、初日の会場である同志社大学に駆け付けましたが、到着時間=ステージが終わった時間。

でも、その日打ち上げにお邪魔させてもらって
嬉しいことに静流さんの隣の席で、栗ご飯&芋のてんぷら&ひじきの煮物&豚汁をご馳走になりました。

更には・・・
「NOSTALGIA袋」なる激レア品も見せてもらっちゃいました。
先述した神アルバム・NOSTALGIAの生楽譜です。
静流さんは味わい深い文字を書く方で、とても独創的で、、、
夢のような時間でした。

この時のライブ映像は、Asian wingsの佐伯さんがYouTubeに残してくださっています。
https://www.youtube.com/watch?v=l_HA04pYVpo

翌年の7月には、自宅から3時間くらいかかる渓谷でのライブに。
この頃は「こまったか」としてのライブが多かった。
(「こまったか」とは、こまっちゃクレズマという梅津和時さん率いるブラスバンドと、おおたか静流さんのユニットです)
この写真は物販とかサインに応じる様子。

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この日私はまた、かんざしをプレゼントしました。

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このかんざしは、翌日に小田原の大乗院で付けて歌ってくださったそうです!
これは、後日YouTubeでたまたま発見した写真なのですが、多分その時の写真と思われます(^^♪

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また、このライブの一週間後には葉山の一色海岸でのライブ。
ここにはUMIGOYAという、海の家のライブハウスがあって
なかなか雰囲気が良い所でした。
たまたま偶然、逗子駅のロータリーを歩いていたら
おおたか静流さん&多田葉子さんのコンビに遭遇。
ここで誕生日プレゼントに扇子をいただきました。(この日は偶然ですが私の誕生日だったのです)

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本番前にサウンドチェックを兼ねたリハーサルで、バースデーソングも。
嬉しいやら恥ずかしいやら。
凄く素敵なバースデーになったのですよ。
もう15年も前になるなんて、信じられません・・・。

この年は、年間で10回くらいライブにお邪魔したのですが
その当時の私ははっきり言って貧困生活モード。
よって費用を捻出するために、休日にバイトばかりしていました。
でもちっとも苦しくなかった。
それでもお会いしたくてたまらなかったのです!

大好き過ぎてついに沖縄にまで追っかけ・・・!

2009年の7月。
越路姉妹というバンドと、こまったかの沖縄ツアーがあると知り貯金をおろして参加することに。今考えると無茶苦茶でしたね(笑)
生活費も貯金もギリッギリだったけど、どうしても行きたくて勢いで参加を決めました。お金は生きてれば稼げるサ、と。
実際この旅行でかけがえの無い思い出が出来たので、その選択は間違っていなかったと思っています。
それにしても、沖縄はまあまあ遠い。
ツアーに付き合ってくれるようなお友達は居なくて、単独での参加となりました。
参加者の殆どは越路姉妹のファンの人達で、単独での参加者は3人くらいだったと記憶しています。


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1日目のライブの様子

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2日目には辺野古で日食鑑賞体験。
中央あたりに写ってる赤いTシャツ姿が静流さんです。
何気なく撮った写真でしたが、隠し撮りみたいになってしまった(笑)

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その夜には与那原町でライブ!
地元の子供たちが沢山来ていて、ものすごく盛り上がったライブでした。

3日目は高速船で久高島へ。
久高島は、特に観光施設が無いものの自然が美しい島。

この島で、忘れられないエピソードがあります。

島内を自由散策する時、静流さんが
「めぐみさん、私と一緒に行きましょう」と言ってくださったんです。
物凄く嬉しい申し出だったけど、同時に
(ああ、気を遣わせてしまったなぁ・・・)と思いました。

私はもとよりコミュニケーションの得意な人間ではなく
人と群れることを好まないので、子供の頃からポツンとしてる事が多かった。
この沖縄ツアーでも始終ひとり行動だったし、静流さんは気にかけてくれたのでしょうね。

そしたら、他の参加者の子が「私たちも一緒に行っていいですか?」と声をかけてきた。
この子たち、私だけだったら声は掛けなかったでしょう。
正直、え??って思いました。

でも、静流さんは「いいわよ、一緒に行きましょう!」と快諾。
静流さんの人柄がわかるエピソードです。

そして皆でテクテクと沖縄らしい風景が広がる道を歩いた。
突き抜けるような青い空、忘れられない。

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青い海が綺麗だった。
こんな崖みたいなところも、静流さんはヒョイヒョイっと降りて行って
ものすごくタフだなぁと思った記憶が。
私はこの当時太っていたし(現在はダイエット済ですが笑)
怖くて見るのがやっとでしたね。

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そしてフボーうたきで歌を捧げました。

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なにせ2009年当時の携帯カメラでの画質なので、粗くて申し訳ないですが・・・
この時の献歌は、アルバム「SUGAR LAND」にも入っている「ソラフカク」でした。

帰りには、売店で氷ぜんざいをごちそうになりました。
優しい甘さで、冷たくて、とても美味しかった。

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実はこのツアーにはオチがありまして・・・。

千葉で発生した、殺人事件。
犯人は交際相手の母親を殺し、交際相手である娘を連れ去って逃亡、というショッキングなニュースでしたが
なんとツアー最終日に那覇で逮捕されたのでした。

帰りの飛行機が同じだったようで、羽田に到着すると警察官やら新聞記者やらがいっぱい。
なんともいえない雰囲気の中での帰還となった訳なんですが、、、

帰り際に静流さんが本をくれました。
それは「表現する仕事がしたい」という本で、13人の表現者たちが今の仕事に就くまでのプロセスを語っています。

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こちらの本は読み物としても非常に面白いので、興味のある方は是非入手していただけたらと思います。
静流さん自身の幼い頃のお話、歌手を志した頃のお話も書かれています。

他にはこんなライブも。

沖縄ツアーの少し後には、都内で被爆ピアノコンサート。

被爆ピアノとは、広島のミサコさんという方が所有していたピアノで
爆心地から1.8キロ地点で被爆し、ガラスなどで傷が付いたものの奇跡的に現存しているピアノだそうです。

このピアノを使って、クラーク記念国際高等学校パフォーマンスコースの学生さんと共におおたか静流さんが歌い
戦争の悲惨さ、平和への願いを訴えかけるコンサートでした。

学生さんらしい爽やかなコーラスに笑顔になり、
本当に素晴らしいコンサートだったと記憶しています。

この日の終演後
静流さんに一声掛けたいと思いウロウロしていたら、金髪のイケメンさんが「楽屋ですか?」と声を掛けて来ました。
この方実は、静流さんのアシスタントだそうで
「おおたかから、来たら通すように言われてるのでどうぞ!」と。
楽屋に連れて行ってくださいました。

楽屋で静流さんと、ちょこっとお話したあと
お弁当やお茶、タイヤキなど・・・
食べ物を沢山いただきました(笑)

この当時の私は、職場のパワハラで荒んだ生活をしていて
今読み返してみると滅茶苦茶な日記を残していて、恥ずかしい限りなのですが・・・
そんな私みたいな人間にも、静流さんは本当に優しかったです。

私が作った静流さん人形を、ライブ会場に飾ってくれたこともありました!

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なかなか、特徴を捉えてると思いませんか?
(*^^*)

転職と共に、少し距離が・・・。

2010年の年末に、職場からのパワハラにより解雇宣告。
色々あって転職活動をする一方、メンタルを大きく削られてライブ鑑賞どころでは無くなってしまいました。

どんどん増加する体重、
あとは悪い男に騙されたりとか(笑)
それに伴う体調不良で体力も無く
休日の殆どは疲れ切って寝ているばかりの日々でした。

最後にやり取りしたのは・・・

2015年の7月。
まだ告知前ですが、Lady Janeというお店でライブがあります
と、DMをいただきました。
久々のやり取りに嬉しくて、わくわくしながら出掛けました。

ところが、、、
お店に到着すると、私の予約は承ってない、と。
私は確かに予約したし電話の履歴も残っていましたが、お店側のミスで席が確保されていませんでした。

無理やり席を用意してくれて入れて貰えましたが、座るのがやっとのギューギュー詰めで静流さんの顔は一度も見れず。
座ってるだけでもしんどい状況でしたので、静流さんへのプレゼントを店員さんに託して早々と帰ったのでした。

これが最後のやり取りになってしまいました・・・。

それから。

私は仕事中心の日々になっていきました。
職場で役職に就任。
ますます多忙になり、現在に至ります。

今になっては言い訳だらけですが、こんな事になるならもっともっとライブに行きたかった。
悔やんでも悔やみきれません。

これからもずっと好きでいたい。

この一週間、静流さんの歌を沢山聴きました。

https://www.youtube.com/watch?v=odqMqE-UWWY
2008年のアルバム「Serenade」の一曲・ウスクダラ。
イスタンブールの風景と、これぞ静流さん!という笑顔を知ることが出来る貴重なPVです。

https://www.youtube.com/watch?v=5xHfDt35Hng
フシギな世界観の、おせなか音頭。
「年に一度、あの世とこの世が繋がって
逢えなくなったあの人と、一夜限りのダンシング」
そうであって欲しいよ。また逢いたいよ・・・!

https://www.youtube.com/watch?v=lehEZ4ty2I4
ゲーマーさんはこの曲に馴染みがあるんじゃないかな?
Final Fantasy IIIよりRoaming Sheep

https://www.youtube.com/watch?v=FEisq14L3RI
私はこんなのも好きだなぁ。
音戸の舟唄。
あまりにも凄くて鳥肌が立つ。

優しくて強くて、きれいな歌。
もうこの世に居ないのかと思うと本当に悲しいし辛いです。
でも、そろそろ前を向いていかなくては。
いつか私がそちらに行ったら、会えたらいいなぁ・・・。


なんだか長々と書いてしまいましたね(笑)
お付き合いいただきありがとうございました。

#おおたか静流


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