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「なぜか飛行機に乗る前に号泣しちゃって……」大久保麻梨子、台湾移住を決定づけた一人旅行

「海外移住」、生き方に“幅”をもたせる意味でも、多くの人が一度は考えたことがあるのではないだろうか。だが働き方、お金、カルチャーフィットなど、決断するにあたっては、多くの障壁が待っている。
 
大久保麻梨子は、10年以上前にその決断をしたひとり。日本でグラビアアイドルの仕事を経たのち、2011年に旅行で訪れた「台湾」に惚れ込み移住を決意。イチから中国語を学びながら、現地でモデル・女優として活動し、2013年には台湾のエミー賞にあたる『第48回金鐘獎(ゴールデンベルアワード)』にて、日本人初の最優秀助演女優賞を受賞した。その後も、CMや映画、連続ドラマのヒロインに起用されるなど、一定の地位を確立している。

■台湾旅行に行った帰り道、何故か涙が

現在、台湾と日本を映画の撮影などで行き来している彼女。順風満帆に進んでいるように思えるものの、ここ数年のパンデミックは、キャリアの方向性を考えさせる事態だった。
 
「台湾は“コロナ優等生”って言われるぐらいずっと感染を抑えていて、気をつけながらも仕事をできるような状態だったんですけど、ある時から爆発的に増加して、予定してた舞台の公演とか年単位で延期になって……。その間は自宅待機だし、どうしようと思って、YouTubeチャンネルをスタートさせたんです」
 
台湾でのおすすめグルメスポット、観光情報など、旅行に行く人達にはうってつけのコンテンツを発信。台湾で出会った旦那さんも出演しながら、すでに1年以上続けている。
 
「iPhoneと最低限のマイクで、本当小規模でやっています(笑)。見てるのは台湾人の人がほとんどで、『中国語でやってくれ』と言われるんですけど、やっぱり日本の人に見てもらいたいから、あえて日本語で中国語字幕をつけてやっています」
 
そもそも、彼女と台湾の出会いは運命的だった。日本で芸能活動をしている際、何気なく一人で行った旅行で「ここにいなきゃダメだ」という強い思いがわいてきたという。
 
「3泊4日の一人旅行だったんですけど、帰りの飛行機に乗る前に号泣しちゃって。そんなこと、もちろんこれまでなくて『絶対台湾で暮らさなきゃ』と、その半年後に家を引き払って、片道切符で台湾に行きました」

■“世話焼き”な台湾人の国民性に助けられた

あてもないまま勢いで決めた台湾での生活。芸能の仕事ビザではアルバイトができないため、一日でも早く中国語を覚える必要があった。
 
「オーディションに行きながら語学学校に通って、家では中国語字幕付きのテレビをつけっぱなしにしてました。台湾のテレビって、ずっと同じ番組を再放送するんですが、それが語学学習者には復習になって嬉しかったですね」
 
作品出演が決まるまでは、貯金をうまくやりくりしながらの生活。安くフルーツが売られていれば、1食分をそれだけにしてみたり……。また、台湾人の国民性が、異国での生活に慣れない彼女を大いに助けた。
 
「台湾の人っていい意味でお節介というか、すごく“世話焼き”なんですよね。お友達のお友達が『家でごはんを食べるからおいでよ』と言ってくれたりして。事務所を探す時にも、色々紹介してもらったりしました」
 
周囲の助けもあってか、転機になったのは、台湾に住んでからわずか1年が経たないぐらいの時期。コマーシャルのキャスティングがきっかけだった。
 
「とくに日本人を探していたわけじゃないけど、たまたま私がいたから(笑)、セリフを日本語にしてみようとか、柔軟な感じで対応してくれて。そこから、CMやドラマにもちょこちょこ出演させてもらって、演技の機会が増えていった感じですね」
 
もちろんタイミングが良かったともいえるが、そうした“柔軟さ“は、台湾の芸能界では当たり前のことだったという。
 
「ドラマの撮影で、覚えていったセリフが『今日この台本じゃないから』と、違うものを渡されたり、舞台でも現場でスタッフと話し合って、細かくストーリーが変わっていくんですよ。日本では考えられないことでした」

■今後は東南アジアでも活動をしていきたい

そうして経験を積み、冒頭でも記したように、2013年に『第48回金鐘獎』で日本人初の最優秀助演女優賞を受賞。足掛け2年での快挙は、彼女の「努力」と「覚悟」にほかならないだろう。
 
「助演女優賞のノミネートは私含めて5人。まだ語学も完璧じゃない日本人の私なんて絶対取らないだろうって思ってたらまさか呼ばれて……。万が一のために舞台でスピーチするセリフを用意していたんですけど、びっくりしすぎて頭が真っ白になっちゃって。『台湾大好きです!』しか言えませんでした(笑)」
 
すでに現地に住んで10年以上。人生の伴侶も得た。すでに、日本での「大久保麻梨子」とは違う性格になっているという。
 
「細かいことをあまり気にしなくなりましたね。おおらかになりました。台湾の人がそもそもそうなんですが、勇気を出してチャレンジしたことに対して、ウェルカムな姿勢を出してくれるというか。移住を考えている人にとってはすごくプラスな環境だと思います」
 
今後は、役者の仕事以外にも、台湾の魅力を日本に伝えられるような“エバンジェリスト”のようになりたいという彼女。いま、日常生活に不備がない語学力を手に入れたことで、より大きな目標を持つようになった。
 
「ゆくゆくは、シンガポールとか、マレーシアでも活動してみたいなと思っています。中国語を使いますし、ドラマがすべて中国語のチャンネルもあるので、チャンスがあればどんどん挑戦していきたいです」

【リーズンルッカ’s EYE】大久保麻梨子を深く知るためのQ&A

Q.いまオススメしたい台湾スイーツってありますか?

「タロ芋を使ったスイーツ!里芋よりもねっとりしていて、砂糖で甘くしたものをかき氷のトッピングにしたりするんですけど、一度食べるとめっちゃハマります。鍋の具材にも使われたりするんですよ」

Q.またオススメの台湾スポットは?

「南機場夜市です。観光客が全然行かないようなところで、交通の便は悪いんですけど、どの店も安くておいしい。魯肉飯ももちろんですが、トロトロに煮込まれた豚足が絶品なんですよ。詳しくはYouTubeチャンネルを見てほしいです(笑)」

<編集後記>

たまにの海外旅行に行くと「帰りたくないな〜」と思うことはあるが、大久保さんのように片道切符で移住を決めるなんてことは考えもつかない。日本でもタレントとして知名度はあったものの(同世代のためグラビアアイドル時代の活躍は拝見していた)、そうしたキャリアを捨てて、ゼロからスタートするというのは、よほど直感的に何かを感じたのだろう。あまりにも国内で仕事をしすぎているので、来年からは直感を得に世界へと旅立つ所存です。

<マネージャー談>

裸一貫で飛び込んだ台湾でのお話は、いつも非常に興味深いです。
並大抵の決断ではなかったはずですので、その度胸と思い切りに頭が下がります。

【プロフィール】
大久保麻梨子(おおくぼ まりこ)
1984年長崎県生まれ、福岡県、兵庫県育ち。2004年の日テレジェニックに選出、グラビアを経て女優に転向した。その後2011年に台湾へ渡り20113年台湾最大のテレビアワード「金鐘獎」において日本人では初の受賞を果たした。現在は台湾のアンバサダーとして、CMやTV・雑誌で活躍中。

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取材・文/東田俊介
写真/松井綾音


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