記者が挑んだ あばら家リフォーム【2】「トイレで悪戦苦闘」
テレビのリフォーム番組を見ていると、解体してみたら基礎や柱が予想以上にボロボロだったというお決まりのパターンがあります。2020年3月に始まったウチのあばら家のリフォームでも同じことが発生しました。
(生活文化部・桜田賢一)
天井は白くよみがえる
最も心配だった天井は見た目ほどひどい状態ではなかったらしく、古い天井板をはがした上で下地材を設置しました。
その上に白いクロスを貼れば、もう完成。湿気で崩落寸前だった天井は白く、美しくよみがえりました。
湿気、恐るべし
想定を上回る状態だったのは脱衣所の床。解体してみると、長年の湿気で根太やら何やら、ほとんどが腐っています。追加工事が必要でした。工費がだいぶプラスされることになってしまいました。
湿気、恐るべし。人が利用し、定期的に屋内の空気を入れ替えることがいかに重要か、思い知りました。
トイレに泣かされる
ただ、天井や床以上に危機的だったのが、実はトイレでした。
築50年近いウチのあばら家は、もちろん和式です。東日本大震災前のまだ利用されていた頃に便器の上に専用の器具を付け、一見洋式らしく見せ掛けてありますが、和式は和式。今後も使うには、本物の洋式トイレに改修する必要があります。
よく新聞の折り込みチラシで「トイレ改修 10万円」などという破格の値段提示があります。ウチのあばら家のトイレ改修費は50万円以上。総工費の3分の1近くを占めていました。原因は和式から洋式への改修。安く済むケースは洋式便器を更新する場合で、もともと和式の場合ですと一段高くなっている部分を壊してフラットに造り替えなくてはいけません。これが高くつきました。
業者さんに笑われる
少しでも費用を圧縮しようと、便器は自ら調達することに。リフォームが始まる1カ月以上前の2020年2月上旬、インターネットのショッピングサイトから10万円弱で購入し、業者さんに渡しました。このように、工事の依頼者が設備をあらかじめ供給することを「施主支給」と呼ぶそうです。トイレを受け取った業者さんからは笑われました。
「便器を施主支給する人は初めてだよ。こだわりがある人が多いから、照明器具とかではよくあるけれど」
だってトイレ改修、かなり高額になるんですもの…。
笑われたが結果オーライ
物笑いの種となってしまいましたが、この施主支給が功を奏しました。
どうして奏功したのか。その原因は2020年の年初に発覚した新型コロナウイルスの感染拡大です。トイレを含む水回りの設備機器の一大生産地は中国といいます。そこで感染者が出て都市封鎖などが起こったため、3月には水回り品のほとんどが日本に入ってこなくなってしまったそうです。
パナソニックもTOTOもリクシルも、中国製だったとは知りませんでした。まさに「中国は世界の工場」でした。
リフォーム中、差し入れを持って行った際に業者さんから聞いたこの話。帰宅後に便器を買ったショッピングサイトをのぞくと、商品がほとんどありません。載っていても、「入荷未定」とただし書きが付いている状態でした。
未知のウイルスが発生すると、この国から便器がなくなる―。
「風が吹けばおけ屋がもうかる」というようなことでしょうか。何も知らずに決めた施主支給でしたが、けちな性分のおかげで助かりました。
その後に業者さんから追加で聞いた話では、便器は4月以降になってもなかなか入手できなかったようです。引っ越しシーズンの3月は、新しい入居者を見越してアパートなどの集合住宅の建設が完了する時期でもあります。
中にはトイレがないままアパートが施主に引き渡され、便器は後から設置するというケースもあったとか。トイレ一つとっても、コロナは社会にさまざまな弊害をもたらしたと言えるのでしょうね。
ラッキーなこともあった業者リフォームはこうして2020年の4月末に終わり、きちんとトイレ付きで引き渡されました。このトイレが後々、新たな問題を引き起こすことになるのですが、それはまた別のお話。
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