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園遊会で明かした秋篠宮さまと「殿馬」の縁 追悼◆水島新司さん(2022年01月17日17時00分)

 野球漫画の金字塔と言われた「ドカベン」の作者、水島新司さんが82歳でこの世を去った。1972年に連載を開始し、2018年に最終回を迎えるまで46年間、計5シリーズにわたって同作を描き続けてきた水島さん。完結前の2015年、天皇、皇后両陛下(現在の上皇ご夫妻)主催の秋の園遊会で語っていた漫画への思いを紹介し、その功績に思いをはせたい。(時事ドットコム編集部 太田宇律

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 2015年11月12日に東京・元赤坂の赤坂御苑で開かれた秋の園遊会。モーニングを着て正装した水島さんは、栃木県の福田富一知事、クリエーティブディレクターの佐藤可士和さん、理化学研究所プロジェクトリーダー(当時)の高橋政代さんら、各界から招かれた約2000人の招待客の中にいた。美智子さまや皇族方と共に会場を回られた上皇さまに、にこやかに「きょうはようこそ」と話し掛けられると、「両陛下のご壮健、心よりお祝い申し上げます。ありがとうございました」と招待へのお礼を述べた。

 上皇さま「ずいぶんいろいろ漫画でね」

 水島さん「元気でやっております」

 美智子さま「みんなを楽しませてくださいまして、本当にありがとう」

 水島さん「もう身に余る光栄です。そのお言葉に…もうちょっと、もうちょっと頑張ってみます」

 上皇さま「ずいぶん外国でも、漫画は」

 水島「そうですね。日本の最たる文化ですから。もうちょっと盛り上げて、世界に発信していきたいと思います」

秋の園遊会で天皇、皇后両陛下(現在の上皇ご夫妻)と歓談する漫画家の水島新司さん(中央)=2015年11月12日、東京・元赤坂の赤坂御苑

 美智子さまに「野球がお好きでいらっしゃるのね」と声を掛けられると、「野球漫画だけで45年くらい描いています」と応じた。別れ際、上皇さまからは「元気でね」、美智子さまからは「今日はゆっくりとなさいませね」とねぎらわれ、「ありがとうございます」と謝辞を述べ、皇太子時代の天皇陛下や秋篠宮さまらとも、にこやかに言葉を交わした。

 「目の前に立たれただけで言葉がなかったです」。感激を隠せない様子で取材に応じた水島さん。秋篠宮さまと話が弾んでいたことについて問われ、「宮さまが高校生のときに、私はドカベンの『殿馬』の色紙をプレゼントしているんです」と意外なエピソードを明かした。

水島新司(みずしま・しんじ)さん 1939年生まれ、58年漫画家デビュー。「ドカベン」「あぶさん」「野球狂の詩(うた)」など、主に野球を題材にした作品で好評を博しました。小学館漫画賞、講談社出版文化賞など多数の漫画賞を受賞し、2005年紫綬褒章、14年旭日小綬章。20年12月に引退を発表し、22年1月10日、肺炎のため東京都内の病院で死去。ご冥福をお祈りします。

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