本日の会議相手は広島出身の人気放送作家・桝本壮志さん。広島的には『鯉のはなシアター』の企画・構成・支配人としておなじみですね。

まあ、他にも『ぐるぐるナインティナイン』『天才！志村どうぶつ園』『ナニコレ珍百景』……なども担当されてる超売れっ子の方です。ちなみに桝本さんとカミガキさん、以前から知り合いみたいで。

人生で初めての書籍を出すとき、表紙のデザインを担当してくださったのがカミガキさんのIC4DESIGNなんです。そのとき事務所にもお邪魔したんですけど、事務所がまた素敵で！

これですね（イラストは野生爆弾くっきー）。とにかく桝本さん、知識量が異常にすごくて、カミさんも「あ、この人には付いていけない！（いい意味で）　普通のマニアじゃない！」と感じたのだとか。

まずは桝本さんにとっての初の本格小説『三人』の話から。これお笑いの世界を舞台にした物語で、裏『火花』（by又吉直樹）的リアルさがあります。

物語の3人は、僕自身がスピードワゴン小沢くんとチュートリアル徳井くんと３人で同居していた時期が5～6年あって、それを連想する方もおられます。あと、僕は芸人学校の講師もやってまして、最近ではEXIT、3時のヒロイン、ぼる塾とかいろんな教え子がいるんですけど、彼らとヒザを突き合わせる中で、芸人の悩み、葛藤、テレビや業界で働く人の心の動きを間近で見てきたんです。今回はそういうリアルを書こうと思いました

桝本さんも当初は芸人を目指しており、その時期を反映した自伝的内容でもあるのだとか。

僕も広島から芸能界に飛び込んだのはいいんですが、同期が野生爆弾くっきー、チュートリアル、ブラックマヨネーズ……と、そこからM-1チャンピオンが出るくらいの才能の宝庫で。その後、僕は東京の渋谷の劇場で住み込み作家をはじめて、その劇場がつぶれて明日も見えない状態で、気付けば同期の背中が遠く見えなくなって……。そこで妬み嫉みも感じましたし、そういう意味で長い長い反省文を書いてるような作品になりました

芸人の夢を諦め、放送作家の道を選んだ桝本さん。最近は「第七世代」なんて呼ばれる若手が人気ですが、これまでと何が違うんでしょう？

一言で言うと、今後の日本は非常に頼もしいです。僕は今後の若手クリエイターには非常に頼もしさを感じてます。というのも、僕らの世代が「写ルンです」で写真を撮ってたとき、カメラの先にいたのは家族や好きな人くらいですよね？　でも今の子たちがスマホで写真を撮るとき、その先にいるのは世界の人たちなんです。この差って大きくて、中学生のときからTikTokとかやってると、カメラの前に立つことに臆病さがないんです。35歳以上のタレントはカメラの前に立つと必ず緊張します。だけどEXITとか今の若い人たちはカメラに動じない。そして「カメラの先に北欧の人が見てるかもしれない、オーストラリアの人が見てるかもしれない」という感覚でしゃべったり企画を作ったりする。自然とグローバルな意識が身に付いてるんです

なるほどー。あと、放送作家として活躍するには常にアイデアを蓄えておく必要がありますが、桝本さんなりの企画の作り方ってあります？

『三人』じゃないけど、僕は常に三角形で考えてて。一番はじめは「今のトレンドや事象、ニュース」、２つめは「それに対する自分の経験則や感情」、3つめは「それを見る人のニーズ」。常に飛び込んでくるニュースに対し「それを自分はどう思うか？」「どんな人が使いたがるか？」を瞬時に考えるんです。その中で一番尖らせなくてはいけないのは自分の経験。自分の反応の引き出しを日々増やせるよう努力してます

多くの芸人の卵を見てきた桝本さん。売れる芸人、売れない芸人、この差って何でしょう？

霊視的なものはないですけど（笑）、「この人は売れるだろうな」っていうのはなんとなくわかるようになりました。タイミングがどうあれ、僕はピュアさがある人が売れる気がします。人間として心がやせっぽっちになってないというか、物事を受け入れられるピュアさがある人は自分を変容していけるんです。たとえばEXITの兼近くんはいま飛ぶ鳥を落とす勢いですけど、彼の子供の頃からの夢って「ヒーローになること」なんです。それって『ドラゴンボール』の悟空や『ONE PIECE』のルフィの感覚じゃないですか。大人になると削ぎ落とされていくものなのに、彼は「ヒーローになりたいです！」と笑顔で言える子だったんです。だから5つ上のりんたろー。くんに「一緒に組んでM-1出ましょうよ」って飛び込んでいけるピュアさがあって。そういうピュアさは、売れてる人はみんな持ってると思いますよ

トーク力やコミュ力ではなく、桝本さんの答えは「ピュアさ」。

あとは弱い自分を受け入れる強さ。「自分弱いな」って認めたときに人は強くなれると思うんですけど、ピュアな子たちは「自分がダメでした。ごめんなさい。教えてください」って言えるんです。そして成長していく。でも頭の回転の速い人やプライドの高い人は「でも僕は～」「逆に～」とか言っちゃって、自分の作った防波堤から出られず変革できないんです。ピュアさといっても「自分の夢に対してピュア」だったり「面白いことを受け取ってほしい気持ちがピュア」だったり、いろいろあると思うんですけど、何かしらそういうものを持ってない人はエンタメの仕事はできないと思います

桝本さんが辿り着いた人気者の真髄＝ピュアさ。同じ広島人として、桝本さんとは一緒に何かできたらいいですね～、と盛り上がりました。いつかはリアルでの共同戦線、まずはリモートでのファースト会議をお送りしました！

2021.2.9 on-line