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いまこそVELTPUNCHを聴きませんか [10曲紹介]

とある用からせっかく新しいサービス登録したしなんか書くかという気になり、好きなバンドが新アルバムを出した嬉しさ・ライブが中止になった悲しさを発散するために紹介文を書くことにしました。

8月5日にニューアルバム「SUICIDE KING」をリリースしたオルタナロックバンド「VELTPUNCH」について、良い機会なので聴いたことない方向けに10曲紹介させて頂ければと。
大丈夫、PVは公式がyoutubeに出してるし、まずはサブスクで聴けます。
大丈夫です。(なに?

そもVELTPUNCHってどんなバンド?
実は8年前にベスト盤を出している20年選手です。
現メンバーは長沼秀典(vo,g)ナカジマアイコ(vo,b)荒川慎一郎(g)浅間直紀(d)の4名。(敬称略)
男女ツインボーカルが特徴のオルタナロックバンド。

メンバー交代など重ねてきたバンドではあるのですが、今回ははじめて触れる方向けに書いているので前置きはここまでに。
男女ツインボーカルで4人組ベテランオルタナバンドってことさえわかっていただければとりあえず大丈夫です。早速曲の紹介へ。

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■『CRAWL』(2008)

バンド最大のヒット曲。
この曲だけどっかで聴いたことある、という人も多いのでは。
アニメ「隠の王」のOPタイアップ曲および初のメジャー流通だけあってわかりやすくポップなバンドサウンド、ボーカルも他の曲と比べてちょっと澄んでいる。
彼らの曲を聴き慣れてくるとむしろこのポップさは浮いている気すらしてくるのだけど、イントロ~歌い出しまで行ってしまえば俗に言うエモロックを好きな人ならとりあえず全部聴いてみようとなる、彼らに触れる「入り口」としてはこれ以上無い1曲となっています。
最後、長沼さんの語りかけるような歌声にハモるみたく主張するベースが印象的。
(「Paint your life gray」およびベスト盤収録)

■『Shandy gaff in the cold glass』(2016)

歌詞の世界観・サウンドともに彼らの持ち味を詰め込んだベスト盤のような1曲。PVが怖い。
VELTPUNCHには若い頃や過去を憂う曲が多く、そこには必ずと言っていい
ほど性要素が下品でない(情景の輪郭をなぞって具体的にイメージさせるものではない)ように混ぜ込まれてくる。男女の関係を後悔する曲において綺麗事だけを並べるのではなく、当たり前に存在するものとして織り込まれる要素であり、いやらしい色付けにはならなくとも、それでもあまり歌詞の中で使用されることのない単語の数々は確かにバンドの世界観として印象を残す。

簡単な数学の問題のように答えが出てれば
僕たちの十代はあんな筈じゃなかった

から続く日々の後悔・焦燥、叫び出したい心、それでも日々は続く。
最後の絞り出すようなシャウト前、絶妙な視点でトリミングされる日常。
かの「秒速」3話の雰囲気が好きな方は刺さってくるはず。
(「THE NEWEST JOKE」収録)

■『Killer Smile』(2005)

ライブでは始まりの方のブチ上げナンバーとして定番となっている曲。
泥臭く駆け上がる音にストレートな構成、絶叫は聞き取れずせっかく歌詞を読んでも意味は難解、しかしそれ故にアクセントとなりメインボーカルのアイコさんの声が際立ち、“あたしはドキドキ中毒なんです。”など印象的なフレーズのインパクトが残る。
VELTPUNCHは「音楽を投げ出してしまいたい」という欲に抗いもがくような歌詞が多いのですが、代表曲のひとつといえるこのナンバーでもラスサビ前、僕の濁った目には君の笑顔がと、呪いのような同じ言葉がツインボーカルで重なり、抵抗するようにドラムが駆け上がり、それでも、それでもやっぱり自分の音楽の価値が「君の笑顔」に負けてしまう。

君が笑う。それだけで僕は音楽だって必要ねーよ。

ロックバンドがアルバムやライブ1曲目で放つ曲としては大胆な結論を最後に叫び、それでも捨てきれずにもがくように長めのアウトロがもう一度始まってしまうことの苦しさ、歌詞と同じくらい饒舌な感情に息が詰まる。
ファン投票1位の曲。
(「a huge mistake」およびベスト盤収録)

■『teenage dirty punks』(2007)


この曲だけでも聴いてってください!!!!!!(じゃあ最初に出せ
もの悲しいイントロから入り、女の子側からの台詞だけアイコさんが歌うというピン刺しかつ最高の歌い分け。
今がどっちの視点・心情かを感じ取りながら情景に浸ることができる。
ABメロの割と最悪な男女互いの台詞・心情からどうあっても噛み合わずすれ違い、お互いの相手に求めている居場所が違うままに曲は進行していく。
そして、

「96」のフォームで僕らは互いに背を向け朝を向かえた。

まさに天才のフレーズ。
字面でわかる通り性行為時の体位であるところの69の逆で、背中はくっついてて、お互いの大切な部分が頭のすぐ後ろにあるのに、いつでもどちらからも手が出せる距離なのに、顔も心臓も触れ合うことのない絵面。
男女が同じ部屋で隣に寝転んでいても、全く心を通わせることができない空間を表現する素晴らしい一文。

けいおん!!18話で律の部屋にて台本読みに疲れた律と澪がベッドでだれてるときの上からの図が完璧ではないんだけどイメージとしては近いんじゃないかと思います。(律の向きが惜しい(なんの話?
不穏なアウトロに赤子の声が混ざるの、色々な想像ができますがまあなんというか悪趣味だなー!ってなります。
なぜこの曲がベスト盤に入らなかったのか……なぜ……。
(「WHITE ALBUM」収録)

■『The sweetest』(2011)

個人的には彼らのアッパーチューン代表曲としては上記「CRAWL」・「Killer Smile」に並ぶ疾走感のあるナンバーだと思う。(イントロが1分ちょいあるのが初聴きの際の傷かも……)
シャウト混じりの長いイントロであっても自然と縦揺れする心地よい速度、長沼さんの男性ボーカルが差し込む形で効果的に入ってくると、うねる激しいサウンドに相反するアイコさんのキュートボイスが際立ち、それこそ回転するようにツインボーカルが目まぐるしく絡み合う。
イントロが長い曲構成もあって、歌い始めれば止まらないので、気づけば駆け抜け終えている。

個人的には名作漫画「断裁分離のクライムエッジ」イメソンです。
(「His strange fighting pose」およびベスト盤収録)

■ 『百人町』(2011)

スーパー・エモーショナル・バラード。
ロックスターに憧れてギターを毎日鳴らすだけの稼ぎの悪い男に愛想を尽かして、彼女は風俗街に消えて(帰って)いく。という設定の歌詞であるが、そこには具体的な説明などは無いのにも関わらず、「百人町」という地名やいっそ彼女が雷に打たれて消えてしまえばいいという後ろ向きな願望を焼肉の焼き加減で表現したりなど、周辺地域の文化と合わせて聴き進めれば勝手に脳内での解像度が上がっていく。

少ない独白調の言葉の中に情景模写の確かさが強く感じられる見事な歌詞。
最後に“I wanna be your sex friend I gave up "ROCK STAR"”って、ロックスターなんて諦めて君のセフレでいたい何度も何度も合唱するんですけど、インタビューで長沼さんは「一番純粋な気持ち」と回答していて、それを読んで音楽をやってない自分ですら、そっか、そうだよな、そういうものだよなと強く頷いた覚えがあります(なに???
(「His strange fighting pose」収録)

■『グッバイアンサー』(2016)

抵抗するようにうねるギター、されど過ぎていく、変わっていく、失っていくもの。“消えないでよ”と叫ぶけど、もう僕の言葉など届くはずもない。

彼らはとにかく「アルバムの1~2曲目」の期待を裏切らないバンドです。
この曲は収録アルバムの2曲目になりますが、同様のポジションである上記「Killer Smile」「The Sweetest」を経てこの曲まで聴くと、このバンドファンが求めているものについて期待通りのアンサーを、年齢を重ねた円熟感でお出しして頂いている感じが伝わると思います。(最新アルバムでも同様により厚みの増した「欲しいもの」を用意してくれています)

本曲収録アルバム「THE NEWEST JOKE」は現メンバーになって初の、かつ今週発売した最新盤を除くと最も新しいので収録曲の幅もかなり広く、初めて触れる場合はベスト盤の次はこのアルバムは適していると言えます。
今回は10曲のため紹介しきれないですが、本曲と双璧を成すアルバム始めのアゲナンバーとなっている1曲目「THE NEWEST ROCK」やふわっとした歌詞とギターで癒やし感を出しつつも途中にレゲエテイストが混ざってくる「軽い冗談」、彼らにしては珍しい聴かせる系ラブソング「また会えたらkissをしよう」、ベルパン節全開の「シーズンインザスリー」などベスト盤とはまた違った「最新の」VELTPUNCHを知るという意味ではもう1枚のベスト盤として機能するような1枚となっています。
(「THE NEWEST JOKE」収録)

■『DIC954』(2008)

去っていった恋人をひとり想う曲。PVが怖い。
DIC954はまんま特色指定番号で、曲で伝えきれないであろう「最愛の人が去って灰色となった世界」はこんな感じの色イメージだよという意が込められているとのこと。

相変わらずの僕達は昼間から映画を見てたまに泣いています。

暑くも寒くもない適温のようなゆらゆらと身体を揺らすようなリズムと叙情的なありふれたもの悲しさの中に差し込まれるキラーフレーズ。
きっと何歳になっても、染み付いたインクのようにひとり部屋で思い出してしまうであろう名文。
(「Paint your life gray」およびベスト盤収録)

■『ルゥム』(2004)

廃盤となっている1枚目のアルバムを除くと、現在聴けるアルバムでは最古のアルバム「question no.13」より3ピース編成時代初期の曲。
既にこの頃から現在まで続く世界観は仕上がっており、噛み合わない男女・燻った性欲・灰色の東京・狭い部屋・彷徨う音楽といった要素が全部詰まっている。
憂鬱と妄想、諦念が連連と終わりまで紡がれる中、我慢できなかったように途中一度だけ、毎日キミにキスがしてえよ!的衝動が出てしまうところが生々しくも流れとしてニクい。

視界・部屋、つまるところ自分の有る生活がどこか灰色がかっている感覚を覚えさせる、セツナソングとはカテゴライズできない、それでも胸がずんぐりと重くなる、日々の摩耗を音楽にしてくれるような(そしてそれを自らに重ね合わせて没入してしまうような)曲の力はこの頃から継続しており、今なお新アルバムでも発揮されています。
(新アルバム『SUICIDE KING』収録「真夏の毒キノコ」を聴いてみてね)

(「question no.13」およびベスト盤収録)

■『Your corolla』(2008)


「My Sharona」のリフまんまのイントロから始まる、音・歌詞・構成ともに長沼さんのやりたい放題感が出ている曲。ライブではラスト演奏の定番曲となっています。(割とマジで客席側もめちゃくちゃになる/詳細割愛)
身体が勝手に揺れだすような軽快なテンポにそこまで深刻ではなさそうな日々の男女の駆引きを心地よく歌い上げ気持ちよくなっているところに、不穏なギターソロが幕を開ける。

こんな音楽、二度と聴かなくてもいい!

歌詞内にある“宙を舞った花びら”“ラストダンシング”を連想させるようなギターソロが4分ほど暴走し続けるという特殊な構成、その不安になるくらい長い長い音を抜けて、最後に告げられる歌詞。
これは歌詞の中での男女の関係において、愛する人には自分の演るこんなジャンルじゃなくて、流行の楽しい音楽をみんなと聴いてほしいという意味であると過去のインタビューで語っています。
め、めんどくせえ!(でもそこがー!そういうとこがー!すきー!

(「Paint your life gray」およびベスト盤収録)

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以上、初めてVELTPUNCHを聴く方におすすめしたい10曲でした。
かーなり悩んで10曲に収めているため、まだまだ魅力的な曲はたくさんあります……!はじめてやってみたけど10曲選ぶのってすげー大変すわ!
ライブ定番曲や人気投票上位曲、バンド自体が好んでいる曲なども入れられないし。
興味があったら、つかここまで読まれた方はもうかなり聴く気まんまんかと思いますので、是非お使いのサブスクで他の曲にも触れてみてください。
そしてCDでもDLでもいいので買ってください。
(なお5thアルバム「Paint your life gray」はサブスクにありません。そういうとこ

そして今なら新アルバムも出たばっかりですぐに最新のVELTPUNCHに触れることができてしまうんだ!やったね!

■『New cinema paradox』(2020)

ここまでに紹介した11曲のリストと合わせ、個人的に推したい10曲リストも公開しておくので、興味を持たれた方はそちらも是非。
少しでも彼らの魅力が伝わればいいなと思いつつ。


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