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答えよりも選択肢を。

先日に、別の場所でもお話ししたことだけれど。

子どものころ、ぼくはプロレスラーになりたかった。それが駄目なら漫画家になりたかった。理由はとてもシンプルで、プロレスと漫画が好きだったからだ。まわりの友だちはどうだったんだろう。プロ野球選手にあこがれるヤツもいたし、宇宙飛行士にあこがれるヤツもいた。「しょうらいの夢」を言わされる時間には、スパイや探偵も人気だったと記憶している。

いまになって思うのは、ほんとのほんとにプロレスラーや漫画家になりたかったというよりは、それくらいしか「仕事」を知らなかったのだ。自分の目に映る仕事の選択肢があまりにも少なく、結果としてぴかぴかにまぶしいプロたちにあこがれ、自分もそうなりたいと思っていた。パイロットや宇宙飛行士にあこがれるのも、まったくそのとおりの道筋だろう。

けれど、そうやって「わかりやすくておおきな夢」を抱いた子どもたちは、かなりの高確率で挫折する。プロ野球選手になれない自分、漫画家になれない自分、プロレスラーになれない自分を突きつけられ、おおきな挫折を経験する。選択肢の少なさは、まわりまわって挫折ありきの十代へとつながっているのだ。

『宇宙人とみつける仕事図鑑』という本を読んだ。

「しょうらいの夢」が見つからない小学生の主人公が、宇宙人と一緒にたくさんの仕事を探し調べていくお仕事ガイドブックだ。

本のなかで紹介される職業の数は、大学教授からクラブDJ、それにもちろんプロレスラーまで、576にもおよぶ。

図鑑としてのおもしろさ、(同業の人間なら誰もがあきれるだろう)編集のすさまじさを感じながら、プロレスラーと漫画家くらいしか思いつかなかった小学生当時の自分がこの本を読んだらどう思うのか、考えた。

「たったひとつの答え」を示したがる本が多い昨今、数えきれないほどの選択肢を示してあげること、つまりは世界の豊かさを示してあげることの大切さを教えられた気がした。

答えよりもほしいのは選択肢、だよなあ。