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駅(ターミナル)論

昨日UPした記事では、新潟駅万代口駅舎閉鎖の話題から”新潟市”の交通政策についてボヤきましたが、もう1つの視点…駅”自体”の在り方、デザインや構内設計についての想いを少々述べたいと思います。

さっき、ツイッターで見つけて反応した呟きです。

新潟のみならず、全国で「あーそうそう。こういう風景あったよなあ」と思い出す人は多いと思います。駅前広場でクルマを下りて荷物を下ろし、見送りの家族と一緒に数段の階段を上がり…待合室で雑談してるとアナウンスが入る。「只今より〇時〇分発〇〇行の改札を開始致します」…名残惜しいからまだ立たず…壁の向こうからタタンタタンと音が聞こえてくると、ゆっくり立ち上がり改札前へ。改札口の向こうに列車がゆっくり入線してくる。
切符にパンチを入れてもらいドアへ進みながら振り返ると改札の外の柵で、家族が手を振る。デッキに乗り込んで再び振り返ると…口パクで「気を付けてね。またね」と家族が言って手を振る。手を振り返した途端、扉が閉まり…ゆっくり列車が走り出す。

旅立つ時あるあるですよね。

都会と言わず地方都市でも田舎でも、こういった構造=駅前広場から平面スルーで1番線ホームが横付けの形で造られた駅というのは、何処にも有りましたが、今は、絶滅危惧種状態です。
コレは、近代化改造する際に効率化を優先したからです。
実際、列車運行面で見ても…上り本線を1番線優先にするこのスタイルは不利では有ります。小さい駅だと1番線があり、向かいに島式2・3番線を設ける訳です。下り列車は普通に退避、通過、接続が出来ますが、上りになると、2番線を退避用にしないといけない。利用者は跨線橋を渡って出口へ向かう事になるし、優等列車への乗り換えも跨線橋を渡る必要が出る。ダイヤ設定的にも、2番線が下り本線と上り退避線を兼ねるので、干渉を避けて線を引く必要が出る。
そんな訳で、改造する際は対称の2面4線にする訳です。規模を小さくすると2面3線で本線を外側1・3番線にしたり、通過・退避なら対面式の2面4線(内側通過2線 ※新幹線でよくある形式)にしたり…。
ただ、駅舎を残しながらの改造ならいいんですが…小さい規模の駅の場合、橋上駅化する事が圧倒的に多いです。従来の駅舎だと、駅の裏側に住む利用者は踏切などで線路を渡って回り込んで駅に入り、場合によっては構内でも跨線橋を渡って向こうのホームに行く…等、動線が長くなります。それを解消して、駅の両側からアプローチしやすく利便性を高める為に橋上駅にする訳です。でも、効率化を考えて…全国どこもかしこも同じスタイル、同じ外観の駅が大量に登場しました。唯一、駅のカラーを出せる階段入り口の意匠で工夫する位。
利便性・効率化を考えれば仕方ないと言えますが、駅としての個性がどんどん無くなり、旅情も無くなりました。

駅(ターミナル)は「その街の顔」という一面もある…というのは、誰もが言う事です。それに反して、実際造られる駅は画一化されている。予算軽減第一なんでしょうね。それはそれで仕方無いですが…なるべくなら「顔」を意識して設計、デザインに予算を充てて欲しいところです。

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東京駅丸の内駅舎は創建当時の姿を再現しました。正に日本を代表する駅らしい建物です。いつ行っても記念撮影する人々で賑わっています。

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JR大阪駅改造は見事でした。遠くからでも目立つ大屋根を軸に、高架「下」ではなく、さらに「上」にコンコースを新たに設ける事で利便性という実用性と合わせ、広々した吹き抜けの構内空間を生み出し、他には無い雰囲気を出す事に成功しました。
JR西日本は先に成功の前例が有りました。

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京都駅です。基本、近代的な駅ビル化しながら、無駄に広い(笑)巨大な吹き抜け空間と大階段を設けました。東西に広がる巨大な吹き抜けコンコースは迷子になりがちですが、西側へ大階段を設ける事で自分が何処でどっちへ向かうか分かる訳です。さらに大空間は歩き疲れるところ、大階段自体を巨大なベンチ化させ、自然に人々が集う工夫がなされています。そして…

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特筆すべきは中央改札口。そう、冒頭で触れた…改札を通ればそこが1番線!それが、この巨大な近代駅に残っているんです。もちろん、京都駅在来線ホームが地上のままだから…では有りますが、この風景を残した設計者には脱帽です。実用面も心理面も…利用者目線を活かした物に出来ています。

駅(ターミナル)に必要な事。
・利用者が迷わず、疲れず利用できる分かりやすさ。
・人々が集い、憩う、楽しむ空間であること。
・毎日活用する人への愛着と、初めて訪れる人を刺激する魅力の両立。
・遠目に見た時「街の玄関口・シンボル」としての特徴を持つこと。

なので、コンペに参加する設計者はもちろん、施主たる自治体関係部署の方々も、上の4つを意識して…(予算面での限界はあるでしょうが)駅の改造、新設の計画をして欲しいものです。


さて…現在進められている新潟駅高架化と周辺整備事業
果たして、上の4ポイントは活かせているか?
工事中の仮設通路や施設を防護パネルの隙間から観察してると、極めて実用性を意識した構造のようです。

1982年に出来ている新幹線ホーム下部分を軸にしているので…
駅構内(改札内)スペースを2F中央部に集約。南側を新幹線、連絡改札を挟んで北側を在来線スペースとし、西口改札側コンコース(ぽんしゅ館側)と、東口改札側コンコース(ビックカメラ側)を広げ、南北連絡通路を兼ねる形です。
既に完成共用している南口広場は、東側(ビックカメラ側)にバス乗場(新潟駅南口停留所)とバスプール。西側(ぽんしゅ館側)に、タクシー乗場・タクシープールと自家用車送迎・駐車スペース。中央部に多目的に使える南口広場…という構成。万代口に造られる広場も、これに準じた形の構造です(東側:バス、西側:タクシー&自家用車、中央部:広場)。
どちらも駅構内出た所にペディストリアンデッキを設け、東西移動用通路は広々です。地上へは階段、エスカレータを設置。南口ではホームに平行する方向でエスカレータが設けられ、階段・エレベータはビルのような折返し型の箱型の階段室が設けられています。コレが不便。例えばビックカメラ、ジュンク堂書店側から地上を歩いてきて…エスカレータを使う場合は、反対側に回り込まないと乗れません。手前側は下りエスカレータの降り口しか有りません。
万代口の完成予想イラストを見ると、この部分は改良されていて、ホームに対して垂直方向にエスカレータ、階段が設置されていて、南口のような回り込むストレスは解消されるようです。

人々が集い、楽しむ空間…という部分、商業施設などは充実していますし、待合スペースも多いので構内は問題無いでしょうが、問題は外の広場。
今も、南口広場は、良い天気の時、春秋の気候の良い時期は…ゆっくり過ごす人も居ますし、イベント開催時は賑わいます。ただ、暑い夏や…時には雪も降る冬場は、閑散としています。そう、新潟の冬は…降雪は少なくても、雨・曇りの日が多く、何よりも寒い!
万代口に新設される広場も、緑やベンチなど憩う工夫がなされていますが…そんな寒々しい冬はどうなるか?もっとそういうシチュエーションでの人々の動線を想像して欲しかったと思います。

3つ目のポイント…愛着や魅力…吹き抜け空間を設ける訳でも無いようですし、スペースは南北、東西共、それほど広くは無さそうです。つまり、モニュメントを置くとか壁面アートを設けるような余裕は少なそうで「ああ、新潟に着いたなあ」という色を出す事は、特に意識していないのかも知れません。同じく4つ目。外から見たシンボル性も、見出し部分に貼ったイラストを見る限り、どこの都市にもある高架駅でしか無い。

もう、今からどうこう出来る事では無いですが…そういった工夫を何かしら加えて…新潟の街の「顔」になるような、集い、憩いの空間にして欲しいものです。

そういう意味で残念なのは…新潟駅前バスターミナル

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昭和33年の現・新潟駅開業時から”変わらず”存在する櫛型のバスターミナルで、全国的に見ても絶滅危惧種のスタイルです。特徴的な大屋根は、待合ベンチがある側の支柱のみで支える独特の形で、笛吹きおじさんが誘導しながら行き先案内をするのも”昭和”の風情があって印象的です。確かレーンは10本あるので、全部がバスで埋まると(滅多に見れないでしょうが)壮観なはず。これだけ大きな櫛型乗場はもう無いでしょう。
しかし、今回の完成予想図によればバスは反対側(東側:ロイホ側)に集約され、こちら側(西側:ヨドバシ側)はタクシー&自家用車スペースに振り分けられるので…恐らく現・万代口駅舎撤去後、駅前広場整備工事に入る前に、撤去されると思います。あと1,2年の命…。

駅=ターミナルというのは、交通の”接続点”という意味以上に、人々の人生の”接続点”でもあります。記憶に残る風景は、いつまでも残って欲しい物だし、新しい記憶が作られる場所は…印象的であって欲しい。
そういう意味でも、駅(ターミナル)は大事なものです。

関係各所の皆様、どうぞ心の片隅に…その意識をお持ち頂ければ幸いです。
(了)

(思いつき!)
”あの”改札越しの1番線ホームの風景…再現するというアイデアはどうでしょう?コンコースから入る中央改札口の先の正面に大きな液晶パネルを置くんです。そこに、高架上の風景をリアルタイムで”横”から映す。電車や気動車が左右に通過、停車する風景を改札越しに見れば…ちょっとは風情が出ると思います。如何ですか?無駄ですか?そうですか(苦笑)。

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