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米搗虫


米搗虫 (コメツキムシ)


コウチュウ目、コメツキムシ科の昆虫である。



今から何年も前のこと、ガールフレンドが
悪性腫瘍の為に入院、病院で開腹手術をする
事となりそのお見舞いに行った時、病院の庭
に出て元気づけの言葉を掛けているところに
ひょっこりと、可愛いコメツキムシが現れた。
彼女は女性なのでとにかく虫が大嫌いである。


『この虫はコメツキムシと言ってね、こんな
風にひっくり返して地面に置いてやるとね』


私は病院庭のコンクリート上にコメツキム
を仰向けにして置いてやる。


『うんうん』


本当は見たくもないのかもしれないが、彼女
が恐る恐る間近でコメツキムシを覗き込む。


『パチンッ!』 


コメツキムシが弾けて飛び上がった。


『キャッ!』


コメツキムシの跳ねるのと合わせて、彼女も
凄い高さまで飛び上がった。コメツキムシを
遥かに凌ぐその跳躍力である。


しゃがんで覗き込んでいた私だけを残して
コメツキムシと彼女の凄まじきジャンプ力。


彼女はコメツキムシのジャンプに驚いたの
だが、私はコメツキムシと彼女の両方同時
ジャンプに驚いて腰を抜かしそうになった。


普段はちゃんとした身なりの彼女が入院中の
ラフな姿でセサミストリートのエルモシャツ
を着ていて、エルモがジャンプをした様にも
見えた。こんな感じのやつ。



手術を前にした彼女に私は謝ると、ビックリ
はしたけどむっちゃ面白かったなとケラケラ
笑い転げている。


こんなにヘンテコリンな虫が世の中にいるん
やねと元気を貰ったと微笑んでいた。その後
の手術も無事に悪いものは除去され良かった
よかったのコメツキムシの愉快な思い出話で
ある。手術後なら笑い話にはならなかった。


コメツキムシをコメツキバッタとの表現は
俗称であって、跳ぶからバッタの名称がつく。
米を搗く機械に動作が似ているからと付いた
名称だが、米搗機器を検索するとシーソーの
様な構造で乗ると木槌が浮き、離すと木槌が
が米を叩くという単純な構造の農具である。
言うほどにコメツキムシと似ているはとは
思えないがまあいい。だが結構な体力を使う
作業だったろうと想像ができる。子供にまで
これをさせていたのかと下の絵を見て驚く。



洋名はクリックビートル(CLICK BEETLE)
この虫が跳ねる時のクリック音から付いた名。


この虫が跳ねる構造は、頭部と胸部とに突起
があって、これが頭部の角度の移行によって
トリガーとなり、跳ねる構造となっている。
なかなか良くできた構造である。



女性は虫が嫌いな理由は、再三述べてきた為
割愛して、男性が虫が好きな理由は虫のその
小さな身体の中にメカニズムが隠されている
事に探究心が揺さぶられるからである。


たかが虫、されど虫。そのメカニズムにより
新たな技術革命のヒントとなったものも多い。
新幹線のトンネル通過の際に高速移動ゆえ、
トンネルに入る時、出る時に爆音が発生する。
この音は凄まじく、近隣住人にとり騒音公害
でもあり、解決方法に蛾の触覚やフクロウの
羽と自然界で音もなく飛ぶ生き物の構造等が
取り入れられている。カタツムリの殻の防汚
機構なども住戸の壁材に応用技術が採用され
スズメバチの羽音はネズミ対策に使用される。


私もコメツキムシの身体を持って、シゲシゲ
と眺めた事があり、その構造が理解できた。
虫のメカニズム構造の解析は、やはり男性の
役割なのだろう。


コメツキムシが、跳ねるのはひっくり返った
時に正常な状態に戻す以外に、鳥などにより
咥えられた時にパチンと弾けて鳥が驚いて嘴
から落とすという防衛対策でもある。


クワガタムシを飼っていた飼育用のケースに
ついでに捕獲したコメツキムシをお友達だよ
と一緒に入れた事があるが、昆虫図鑑を読み
慌ててコメツキムシの方を屋外に逃した。


コメツキムシの幼虫は腐葉土も食するのだが
他の虫の幼虫(カブトムシやクワガタムシ)
も食べる肉食の面を持つとの解説がなされて
いたからである。ちなみにコカブトという虫
の幼虫もクワガタやカブトムシの幼虫を襲う。
もう虫を飼う事はないが飼育の際は最低限の
同居不可の虫を知っておく必要がある。


コメツキムシは兵庫県の能勢の山奥で撮影を
したもの。


虫以外の写真は全てネットでお借りした。



和名 米搗虫 (コメツキムシ)
   叩頭虫 (コメツキムシ)
洋名 クリックビートル(CLICK BEETLE)
分類 コウチュウ目、カブトムシ亜目、
   コメツキムシ上科、コメツキムシ科
分布 日本全国
種類 世界に約1万種、日本に約7百種

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