見出し画像

機能していない多重チェック体制は百害あって一利なし

『ミスが多発したため、ダブルチェック体制を強化し、トリプルチェックにてミス防止に努めます!』
どんな業務でもヒューマンエラーの発生リスクはありますが、そういった場合に、今後の対策として上記のようなセリフをよく耳にします。

しかし、実はダブルチェックやトリプルチェックではミスを無くすことは難しく、逆にそういった対応によって企業活動の生産性が低下してしまう恐れがあるのです。多重チェックが機能しない ― それって本当なんでしょうか。

そのダブルチェック、機能していますか?

ダブルチェックとは、作業した人とは別の人が「ミスがないかを確認」することです。実際に2人以上の多重チェックを採用している現場は多いですが「チェック体制を強化することでミスを防止できる」という考えは甘いでしょう。間違いといっても過言ではありません。むしろ、やり方によってはシングルチェックよりミスを誘発する可能性すらあるのです。

チェックする人が増えるほどミスは減少するように思えますが、実際には、3人以上でのチェック体制は1人でのチェックとエラー検出率が変わらないという実験データもあります。

確認の多重化とエラー検出率

出典:「ダブルチェックの有効性を再考する」(農林水産省))
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/kenko_fukushi/000085434.pdf

なぜこのような現象が起きるのかについては、チェックのやり方に問題がある場合もありますが、多くは過信による確認不足が考えられます。

たとえばトリプルチェックの場合、Twitterでバズっていた現場猫のイラストが全てを物語っていますが、1人目・2人目・3人目とも自分以外のチェック者を過信して確認を怠りがちだということになります。これが多重チェックの落とし穴で、責任が3人に分散されることで甘えが生じ、結果的にミスを見逃しやすいのです。これはリンゲルマン効果(社会的手抜き)による弊害と考えられます。

画像2

リンゲルマン効果とは、ドイツの心理学者リンゲルマンによる理論です。綱引きの実験で、メンバー数が増えるほど一人あたりの貢献度が低下する結果に至ったことから「単独作業より集団作業の方が一人ひとりの生産性が低下してしまう」という現象を意味します。要するに人数が多くなるほど、一人ひとりは手を抜いてしまいがちになるということですね。

つまり、多重チェックなどでチェック体制を強化してもミスが防げないという現象は、このリンゲルマン効果という理論で証明されているのです。

機能していない多重チェックがもたらすデメリット

実際に、機能しない多重チェックを採用することで、具体的にどのようなデメリットが生じるか考えてみましょう。

チェックミスによる損失例①-損害リスク

多重チェック防止

まず、ミスによる多大な損害リスクです。制作会社の場合、多大な損害賠償責任が発生し、メーカーの場合、回収コストや再生産での費用が発生します。また、費用だけでなく、関係各所への謝罪や再調整を行う社員の本来発生しなかった労働時間を消費することになります。

たとえば、サッポロビールとファミリーマートが共同開発した「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」でのパッケージのスペルミスという単純な見逃しによって、発売が中止された騒動は記憶に新しいと思います。

チェックミスによる損失例②-機会損失

多重チェック防止1


また、本来、事業推進の為に割くべきリソースがチェック作業に割かれることで、受注活動などの利益につながる機会を損失するという恐れもあります。

チェックミスによる損失例③-生産性の低下

多重チェック防止2


さらに懸念されるのが、チェック作業の負担による社員の生産性低下です。業務負担が大きくなることで多忙になると、個々の作業の精度も下がりがちです。疲れることでさらにミスが増える可能性もあり、そうすると離職率が上がることも考えられます。

社員が定着しないと、求人や新人教育をずっと対応し続けなければいけなくなります。一時的に派遣社員やアルバイトを雇用するとしても、その費用や教育コストの負担は大きいでしょう。引継ぎのための超過勤務が増えることで残業代などのコストもかかり、結果として生産性が低下してしまうという負のスパイラルに陥りがちなのです。

ヒューマンエラーは仕組みでカバーする

こうした「機能しない多重チェック」ではヒューマンエラーをなくすことは難しいでしょう。そこで、業務上可能な場合に限られますが、システムを導入するのも効率的な解決策のひとつです。

たとえば計算機で対応していたものを、システムでデータ処理できるようにするといったことです。自動車を運転する際にシートベルトをせずに走り出すとエラー音が鳴るといったように、エラー検知時に音が鳴ったり、色が変わったりするだけでも「チェック漏れの軽減」につながると考えられます。なるべく人の能力に依存させないことが重要です。

システム化が難しい業務の場合は、同じチェック指標での多重チェックではなく、別の視点からのクロスチェックを行い、個人の責任範囲を重くすることも有効な手段のひとつです。たとえば目視で在庫確認をした場合なら、帳簿上の在庫と照合するといった、違ったやり方で確認するといった方法です。

また、第三者視点を入れるのも有効です。社内でチェック作業を行うと、どうしても慣れや慢心によるチェック漏れにつながりがちなので、社員の負荷軽減のためにもチェック業務を外注化するのも一つの手段と考えましょう。外部視点が入ることにより、ミスリスクの低下につながるだけでなく「会社独自の無駄なルールの削除」や「ミスリスクの少ない業務フローの構築」といった効率化も可能かもしれません。

社内だけで業務完結することには何のメリットもない

このように、ヒューマンエラーを無くすには、人に依存しない仕組み化づくりが必要だといえます。

多重チェックをしているのにミスが減らないと感じたら、以下のようなステップでチェック体制を構築するのがおすすめです。

1.外注化で社員の負荷を軽減
2.余力時間を発声させクロスチェックなどチェック指標を見直し構築する
3.業務フローを見直したり再構築したりして整理する
4.効率化のためのシステム導入・仕組みをつくる

多重チェック防止3

社内チェックを多重化するといった方法では負のスパイラルに陥り、かえってミスや無駄を増やす結果になりかねません。社内での完結に固執すると、社内ルールだけではカバーできていなかった問題に気付く機会を損失する恐れもあり、会社によっては非効率な作業が暗黙のルール、負の遺産として残り続けていることもあります。

企業活動においてクリティカルな問題につながりやすいチェック作業は、できるだけ社内で完結させずシステム化外部委託も検討してみましょう。内部の負担を軽減することが、結果的にミスリスク軽減や生産性向上にもつながると期待できます。

多重チェックを効果的に改善する方法

チェック作業にお悩みなら、高品質で低価格なチェック代行サービスCHEQRO【チェックロ】へお気軽にご相談下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?